3.ここでの任務はもう終わりですかね、ライラ-うん、終わりなんじゃあないカナ-
全46話予定です
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ここでの戦闘はほぼ終了し、銃撃も散発的なっている。
「ここでの任務はもう終わりですかね、ライラ」
そう言ってチェン・シュエメイは横倒しにしていた敵戦車を通常の態勢へと戻す。
「うん、終わりなんじゃあないカナ。あらかた狩りつくしたでショ」
そう返すのは、先ほどライラと呼ばれた人間だ。彼女はライラ、ライラ・サチ准尉。チェン・シュエメイと同じく准尉を拝命している、いわゆる新人だ。
全方位警戒システムはとても良く作動している。たとえ相手が人間でRPGを構えていたとしても直ぐに察知することが出来る。そして察知出来ればあとは潰すのは簡単だ。マシンガンに指をかけるだけでいい。そうすれば相手は[人だったもの]へと変わる。
リオ・ガジェコスタ空軍基地をベースにレイドライバー部隊は侵攻していた。機械化部隊はそのあとについて来て、残党処理を担っていた。
帝国でもレイドライバーにとって機械化部隊というのは、足手まといか弾避けにしかならないのである。ここでも問題となるのは[囲まれない事]である。どの兵器にしてもそうだが、周囲を囲まれて斉射されてはいくら敵が旧世代の武器を使用していたとしても敵わない。なので、絶対に囲まれないように、と厳命されてここにいる。
「しかし、敵はやはり弱いですね。おまけに、バンクを照合すると九十年代の武器をまだ使用している。もう何十年前ですかって話ですよ」
シュエメイは戦闘が終了したのを確認して一個一個、遮蔽の為に横倒しにしていた車両を元に戻していく。ライラはマシンガンを装備して周辺警戒をしている。
ツーマンセル。
警備、警察、軍隊……。どこの場面でも一ユニットとしてはこれが最小である。大体の組織において一人で行動を、というのは存在しない。ユニットの最小単位が二人、つまりツーマンセルなのである。
この考え方はよく出来ている。一人が何かすればもう一人が周辺を警戒する。または一人が前を、もう一人が後ろを、といった具合に一人で行動している時に出来る[死角]をうめられるのである。
そして現にこうやってシュエメイが整地をして機械化部隊が通れるようにし、ライラが残党をプチプチやっている、といった具合なのだ。
「我々は確かに新人ダヨ。だけど、派兵されたからにはその責は果たさないといけないデス。クロイツェル参謀やクラウディア少佐からの期待もある。気を引き締めないとデスね」
ライラはそう言って先ほども一人、RPGをこちらに向けていた人間を処理していた。
帝国のレイドライバーも盾を装備している。更にはリアクティブアーマーを着ているので一度の被弾なら耐えられる。コンピューターも一体あたり二台装備しているので、実質六個の脳で戦場を見ている計算になる。計算上は。
「これなら我々だけで旧アルゼンチンを占領できそうですね」
シュエメイが少し嬉しそうである。それほど対戦車の戦闘は[楽な]ものだったのだ。レイドライバーに対抗しうるのはレイドライバーしかない、というのが現在のセオリーとなりつつある。
「シュエメイ准尉、気を引き締めなイト。その先には旧ブラジルが待っているんでスヨ。それに、ここ旧アルゼンチンは縦に長い。という事はそれだけ行軍に時間がかかるというのを意味しているのダカラ」
とシュエメイをたしなめる。シュエメイは[了解していますよ]と返しながら整地作業を続けている。
「戦闘機も新しいのを連れてきましたし、空母も向かっている、これだけ揃えば勝利は約束されたようなものです」
そうシュエメイに言わせるだけの戦力は投入している、という事か。しかし、補給はどうするのか。その答えの一つが燃料庫、弾薬庫への攻撃の厳禁である。つまりは奪って使うという話なのだ。そうすれば補充はレイドライバーの弾薬だけで済む。こればかりは規格品ではないので補充が必要なのだ。
動力源についてはバッテリーで動いているので充電すればよい。予備パックを使用しているので昼間中行動していても十分電力は持つのだ。
「さて、と。今日はこの辺りで野営ですかね」
機械化部隊が付いてきたのを確認して二人して野営の準備をする。
「正直、戦闘に出ると食事が一番うれしいデスよね」
「確かに」
そう言って笑いあう二人を見れば、どこにでもいる女子二人と変わらないように見える。だが、この二人はレイドライバーのパイロットなのである。
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