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星の戯れ 竹取物語変化  作者: 龍月小夜
    其の二・・・第一の関門『隠し山道』
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第91話 食糧問題

 桃太郎の一行は北へと進んでいました。あたりは平地を挟んだ谷底の景色が続くばかりで、川の流れがあるわけでもなく、一行以外には人の姿や獣一匹見かけない状況です。

 昼の時刻はとうに過ぎています。そろそろ何か食べなければ、出だしから疲れていてはどうにもなりません。おかあが用意してくれたおむすび弁当や、いつものおやつより多めのきび団子のことが気になってきました。

 相変わらず二匹と一羽が先に立っていますが、突然、ふうたが振り返ると四つ足でしょこしょこと桃太郎の所に戻ってきました。

 「なんか、ええもんあるんすか?」 並んで四つ足で歩きながら見上げます。

 「ええもんて?」

 「食べるもん。なんか、そんな雰囲気醸し出してはるから」

 「何でそんなことわかるんじゃ?」 

 「だから雰囲気すよ、雰囲気。何か持ってるんでしょ? 嘘のつけないお方」 ふうたは桃太郎のスネをピシャリと片手ではたきました。

 「いた!」 桃太郎は思わずつまづきそうになりました。「何するんじゃ、このサル!」

 「う〜〜〜」 しろが珍しく桃太郎に向かって唸っています。とびすけもじっと桃太郎を見据えているようです。

 「しろ、おまえ、裏切る気か」

 「裏切るて、あんさんが月で交わした約束のことを思い出したら、うちらと一緒におるのが当たり前やと思うと思うで」 ふうたが言います。

 「約束?」

 「無理せんでよろし。思い出さんと説明してもわからへんやろし」 ふうたはふいっと前を向きました。

 しろも寄ってきて何やら桃太郎の肩掛け袋を鼻先でクンクンと嗅ぎ始めました。しろは一応家族の一員のように思っていたので食餌をやらないというようなことはできません。わざとらしく今さら匂わなくても・・・

 ・・・今、裏切ったのに? 食いもんだけは逃さんと・・・?

 とびすけだけがその場で置物のように動きません。

 「お腰につけた、きび団子、一つ、うちらにくださいなっと」 ふうたは調子をつけて言うと桃太郎を振り返ってキキっと笑うような顔をして見せました。

 完全に読まれとる! そこまでバレとるんか?

 桃太郎は不気味になってきました。

 「しょうがない。おまえらの一味いうことにしといたるわ」 桃太郎はとうとう本心から諦めました。逃げようと思っただけで寄ってたかってボコボコにされそうな気がしてきたからです。なにしろ相手は得体の知れない動物・・・なのか、『もどき』なのか・・・なのですから。しろまでが信じられなくなってきました。

 「そうそう。それがよろし」 何だか勝ち誇ったようにふうたが言います。そして突然、「そんなことよりあそこにあんなのあるけど?」 

 ふうたが遠くを指差します。そこには、何やら小屋の壁が朽ち落ちて屋根だけが柱で辛うじて残っているような建物の残骸があります。初めて見る『人の痕跡』です。

 まあ、あのあたりで最初の休憩を取るのも悪くはないか・・・。こいつらを大人しくさせるためにも。

 桃太郎はそう思ってふうたに言いかけました。

 「わかってますて。皆まで言いな。あそこでご飯でっしゃろ」 

 ふうたは片手を上げて桃太郎を遮るようにそう言うと、二匹と一羽はピューッとそこまで駆けて行きました。とびすけは羽をばたつかせて飛び跳ねるようにして。

 逃げる機会といえば機会でしょうが、その速さを見るととても逃げ切れそうにはありません。ただでさえ、この大人の体になってから本気で走ったこともないのですから。

 自分はこいつらの囚われの身なんか・・・? 自分はこいつらの考えることを読めない・・・?

 複雑な思いがよぎります。

 桃太郎はいきなり重くなった足取りで、その崩れ小屋の前まで来ました。二匹と一羽はその中の、半分ほどしか残っていない床板の上で固まって座っています。確かに桃太郎が座ってお弁当を広げるぐらいの床は残っています。桃太郎は仕方なく残った床板に腰掛けました。ギシギシと軋みます。床面も何だかささくれ立ったりしているので、とても上がって座り込む気にはなれません。

 桃太郎は横目で動物たちを睨むと、肩掛け袋を外し、被せ蓋をめくりました。一番上のきび団子の包みを取り出すと、次のお弁当の包みを取り出しました。まさかこいつらの分まで足りるとも思えません。

 おむすびは自分のものとしても・・・

 桃太郎は動物たちを見やりました。とびすけは相変わらず置物、しろはいつもの食餌の時のように前足をきちんと揃えて座っています。ふうたは・・・

 両手の平を前に重ねるようにして突き出しています。もらう気満々です。

 桃太郎はきび団子の包みを解くと、懐から懐紙を取り出し、一枚の上に適当に五、六個団子を置いてそのままふうたの手の上に乗せました。きび団子をくれ、と言ったのですから。

 「うお〜〜〜、ご丁寧に」 ふうたは器用にそれを自分の横に置きました。

 「全員の分やぞ」 念のためにと桃太郎が言います。

 「わかってますて。皆まで言いな。そこまで期待はしておりません」

 そういうと、ふうたは一つ取って頬張りました。しろにも一つその足元に転がします。しろは団子は初めてではないので、慣れたようにパクつきます。とびすけの所にも一つ。

 ・・・大体、キジが団子なんか食うんか?

 桃太郎が思うと、「へんへんほひひほひゃいまんはらは」 ふうたが口をもぐもぐさせながら言いました。何だか喋りにくそうです。

 「なんて!?」 桃太郎は聞き返しました。読めたらわかることなんでしょうが。

 ふうたは、口の中のものを呑み下すと、もう一つきび団子を取りながら言いました。

 「天然のキジとちゃいますからな」

 とびすけはきび団子を少しずつついばみながら、小さな塊にまでなると、それをくわえて上を向き、一気に嘴の奥へと呑み下しました。

 桃太郎は自分のおむすびを食べ始めました。もう子供ではないので、お菓子を取られてもどうとは思いませんが、これからの『食糧』の一つだと思うと、他に乾飯(ほしいい)や干し芋や豆類などの携帯食も持っているとはいうものの、いつまで持つか、食べ物を手に入れられる、いわゆる『店』と呼ばれるものにどれほど出会えるのか、野の草木から取り込めるのかどうかも心配になってきます。この動物たちも食べさせないといけないのですから。

 

 

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