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5.今世は、少しくらい他人のために

 私は決意した。

 よし。黙っていよう。

 6歳の身空でドカンはごめんだ。


「神託も、結婚しろとは言ったみたいだけど……離婚するなとは言ってないから。半年くらいしたら自由の身だと思って、我慢して」


 彼は私に、そして自分自身に言い聞かせるように言うと、さくさくと地面を踏み締めて、家に向かって歩き出す。

 その後ろを歩きながら、彼の話に出てきた単語について考えた。


 神託。

 胡散臭さは拭えないけれど、神のお告げ。


 もし、神様なんてものがほんとうにいるのなら。私をこんな形で生き返らせて……無論蘇生に関しては魔法の干渉があってのことだとは思うけれど……そして、彼と結婚するように仕向けたのはきっと、私への啓示なのだろう。


 お前が死んだせいで道を踏み外した教え子を、どうにかして更生させろと。

 そういう、神の思し召しなのだろう。


 何故彼が私のことをそこまで持ち上げてくれているのかは分からないけれど、少なくとも彼の謹慎に私が関係しているなら……何かできることがあるなら、したいと思った。


 何せ前世の私は、それはもう好き勝手に生きてきた。

 大好きな魔法の研究と実践に明け暮れて日々を過ごして、その上大魔導師なんてたいそうな称号までもらって。

 最後は、実験がてら試した自分の魔法の暴発で死んだ。


 もっとやりたかったことがあったのにという思いがないではないけれど、最後まで魔法に夢中でいられた。幸せな人生だったと思う。

 自分のやりたいことに忠実に、本当にただ、自分のためだけに生きた一生だった。


 だから今世は、少しくらい他人のために……ノアのために生きたっていいんじゃないかと、そう言われているような。

 確信は何もないけれど、そんな気がしたのだ。


 大魔導師の称号は、優れた魔法使いにのみ与えられる。

 少なくとも魔法大学を主席で卒業しているはずで……ノアの実力は、本物だ。

 それなのにこんな森の中で隠居生活をして、「消えたい」とかぼやいているなど、もったいない。


 だって彼はまだ若い。今からまだまだ、たくさん魔法を極めていける。

 彼を失うのはきっと、世界にとっても、魔法の発展にとっても損失だろう。


「先生のいない世界なんて、無くなっちゃえばいいのにね」


 ぽつりと、独り言のように呟くノア。


 怖いよ。

 極端な危険思想だよ。


 何だか自暴自棄になっているようだし、大魔導師と呼ばれる魔法使いが本気で「世界、無くなっちゃえばいいな〜」と思って行動したなら、本当に無くしてしまえるかはさておき、大惨事は免れない。


 前世の私は幸いにしてそんな危険思想を抱くことはなかったけれど、そんな無害な私ですら、うっかり魔法の暴発で自室を吹っ飛ばしたのだ。

 彼の魔力量なら……王都くらいならドカンと一発、この国ならドカンと四発、だろう。


 これは神様も口出ししたくなるかもしれない、と思った。

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