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元大魔導師、前世の教え子と歳の差婚をする 〜歳上になった元教え子が死んだ私への初恋を拗らせていた〜  作者: 岡崎マサムネ


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エピローグ(2)

 きらきらと、星よりも明るく暖かいそれが、私の瞳に光を注ぐ。

 この家にあった分だけではない。十や二十ではきかない。街中のランタンをかき集めないと足りないくらいの、光の粒が空を彩る。


 お父様も、お母様も。

 この光景に見とれていた。


 私と手を繋いでいるノアを見る。彼も空を見上げていた。

 ランタンの明かりに照らされた横顔は——とても。

 とても、きれいだった。


 じわりと胸の奥が暖かくなって――それなのに、喉の奥がきゅっと狭くなる。

 ああ、私は、この魔法が本当に、好きで。

 彼もきっと、好きでいてくれたことが――嬉しい。


 なすべきこと、なんて、大げさだったかもしれない。そんなもの、言い訳だったのかもしれない。

 そうじゃなくて――ただ、私が、ノアといたい。そう思った。


 ノアが、私を見る。

 溢れる光を映した瞳で、彼が私を見つめる。


「だから、もう少しだけ……僕と一緒にいてくれないかな」


 繋いだノアの手を、ぎゅっと握る。彼も私の手を、握り返した。


 ランタンに照らされた中で、私は両親に向き直る。

 ぽかんとしていた両親は、はっと我に返ったように私を見た。


「心配してくれてありがとうございます。お父様、お母様」


 ぺこりとお辞儀をする。

 2人の愛情は、大切なものだ。引っぺがしたりしては、いけないものだ。

 今世はきっと、大切にしたい。それは間違えないつもりだ。


 ……だけれど、それでも。


「でも……私、もう少し、旦那さまのところにいようと思います」


 私の言葉に、寄り添い合った両親は黙って、耳を傾けてくれている。

 私はえへんと胸を張って、言った。


「旦那さまは、私がいないとダメなので」

「待って、すごく語弊がある」


 ノアが隣から口を挟んできた。

 悪戯めかして笑って見せると、彼はやれやれとため息をついた。

 私たちのやり取りをじっと眺めていた両親に、向き直る。


「旦那さまのところで魔法を勉強して、そして」


 両手を空に向かって広げる。

 夜空にきらめく光たちを見上げて、さわやかな森の空気を吸い込んだ。


「私もランタンで、空をいっぱいにしたいんです!」


 ノアがすっと右手を空に向けた。

 集まっていたランタンたちが、ふわりふわりとさらに空高く、舞い上がる。

 そしてそのままゆっくりと、街の方へと列を作って、飛んで行った。


 残ったランタンは、4つだけ。


「もう危ないことはしません。だから、お願いです」


 もう一度、両親に向かって頭を下げる。

 私より一拍後に、ノアも頭を下げた。


 両親は、しばらくの間黙っていた。

 辺りがしんと静まり返って、風で木々が揺れる音だけが、わずかに聞こえる。


「アイシャ」


 お父様が、私を呼んだ。

 唇をキュッと結んで、お父様の顔を見上げる。

 お父様は――少し寂しそうな、それでいてちょっとだけ嬉しそうな顔で、笑った。


「いい先生を見つけたんだね」


 その言葉に、私は大きな声で元気よく、返事をする。


「はいっ!」




これにて本編は完結です!


この後オマケの後日談が何話かあるので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結おめでとうございます! 前世も今世もやりたいように行動するアイシャと、前世でも今世でもアイシャに惹かれ禁術を使っちゃうノアの二人が好きでした
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