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元大魔導師、前世の教え子と歳の差婚をする 〜歳上になった元教え子が死んだ私への初恋を拗らせていた〜  作者: 岡崎マサムネ


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11.最近の子どもはみんなこうです

 手を引いてキッチンに入ったものの、そのあまりの物のなさに呆然と立ち尽くしてしまう。

 最低限の調理器具はあるが、ここも何となく生活感がない。


 浄化の魔法で埃こそなくなっているけれど、長いこと使用されていなかったんじゃないかと思うような、どこか古ぼけた空気がこもっていた。

 とりあえず窓を開けて換気を図る。


 見渡す限り、食材らしきものは箱型の保冷庫の上に乗っているパンの包みだけである。

 保冷庫の中身も怪しいものだ。ノアより先に朽ちている可能性が十二分にあった。

 パンだっていつのものかわからない。


 いや、もうお腹が空いていてカビてさえいなければ今すぐそのパンにかぶりつきたい気分ではあるけれど。

 さすがにそれだけでは味気ないし、発育に良くない気がする。


「食材はあるけど」


 ノアがパンを退けて……私の視線は勝手にパンを追いかけてしまった。慌てて引き戻す。……保冷庫の蓋を開ける。


 中を覗き込むと、ハムやら野菜やら卵やら、さまざまな食材が入っていた。世捨て人とは思えない豪華な食生活である。

 さすがは謹慎中とはいえ、貴族……そして大魔導師だ。

 その割に、キッチンに使用された形跡はない。


「週に一度配達が来るんだ。残ってるものはその時引き取ってくれる」


 ノアが私の横に突っ立って、保冷庫の中身を見下ろしていた。


 ノアだって昨日は結婚式に出突っ張りでまともな食事にありつけていないはずなのに、何故そんなに興味がなさそうなのだろう。大人の体だからだろうか。


「お料理は?」

「ずいぶんしてない」


 一応問いかけてみると、予想通りの答えが返ってきた。

 謹慎中であまり遊び歩くわけにもかないだろうし、もしや毎日パンやハムを齧ってしのいでいたのだろうか。


「全部魔法で適当に分解して、胃に転移させてた。それが一番手っ取り早いから」

「…………」


 予想よりひどかった。

 昔、同じことをやって同僚にドン引きされたのを思い出した。

 結局食べた気がしないし適度に顎を使った方が頭が冴える気がしてやめたけど。あとめちゃくちゃ太った。


「……旦那さま」

「何」

「お腹が空きました」

「さっきも聞いたよ」


 じっとノアの顔を見上げる。

 真紅の瞳をずっと見つめていると、ノアが気圧されたようにじりじりと後ずさった。


「何か作ってください!」

「何で僕が」

「6歳児に料理は荷が重いです!」

「6歳児ってそんなこと言うかなぁ」


 ぎく。

 そんなことを言われても、前世では子どもとは縁がなかったので、6歳児らしい言葉選びというものがそもそも分からない。


 でも、待てよ。

 それはきっとノアも同じのはず。彼には弟妹はいなかったはずだし、謹慎中の身では気軽に友人宅に遊びに行くようなこともしていないだろう。

 もちろん自分の子供もいない。


 つまり、子どもへの理解度は私と大差ないのだ。

 であれば、拙い子どものフリでも押し切れる……のでは。たぶん。


「最近の子どもはみんなこうです」

「ませてるなぁ……」


 堂々と胸を張って言うと、怪訝そうな顔をしていたノアが苦笑いした。

 よし、乗り切れた。この調子で何とか半年、騙し騙しやっていこう。


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