星に願いを?
十
乙女が閃きにより、我を取り戻していた。
「あたしたちが介入した方の行く末を教えて頂けますか?」
なんちゃって科学者はほくそ笑み、語り始めた。
あの方は、斉藤 真子さんといい、私の仲間になる、純子さんの姉です。彼女は殺意から爆発物を作ります。最後の最期に踏み留まる意思を持っていて、同じ殺意を抱く知り合いに、それらを託すことになります。
経緯を捜査で知る警察に追われ、自殺するのです。しかし変わる未来では、輩たちに殺されることになります。その殺人に、元素が使用されることになりますから、私を煙たく思う学者さんと繋がることを知ることになるでしょう。
「知ることになる、のなら、元素兵器を発表しなければ良いだけでは?」
さきがけは、想ったままを口にした。
「そうなると、元素兵器と知らない多くの一般人が死にます。元素の可視化に行き着かなければ、人が絶滅するのを指を咥えて傍観するだけになるのですよ」
「それはないだろうが、近代文明を目の当たりにして、いささか不安は拭えないな」
「それは、科学者の自尊心でしょう。人が心を失くした近代文明は、科学者の使命感すら金の亡者におとされるのが世の常になります」
「そんなはずはないでしょう。卑弥呼様が育てた心が、容易くなくなるとは思えません」
「いや、人の価値観が変わる近代文明なら、心なんて簡単に失くすよ」
「それ程までに、人は変われるものか、さきがけよ」
「親をも簡単に手にかけるのが近代文明なんだよ、ひでちゃん。自己完結の風潮は人なんて微生物以下に堕ちるはずさ」
「権力=金の図式は、世間を席巻します」
「冴えてるね、その洒落」
「洒落たつもりはないですよ」
「図解式が悪いのか」
「違います。心を失くす原因は、傲慢を意識下に措けない人の幼さですからね」
「なんちゃって科学者さんが言う、感性が育たないからだよね。誰しもが持つ欲が、目先を曇らすんじゃないかなぁ」
「幼いことは、悪いことなのでしょうか」
「気付いても、どう修正すれば良いのか解らないから、なんでしょうね」
「躾の問題なんですか」
「見えないものは大事にできないのが人なんです。先ほど言った抗体もそうです。血が流れている理由を勘違いしているか、思い込みで履き違えてしまったようですね」
「血清か」
「ひでちゃんが言うと、洒落にならないよ」
「死を受け入れたくない方々が模索した結果に、世間が飲み込まれるからでしょうね」
「僕が知っている歴史も、権力者たちが行う変更かなぁ」
「百姓が、征夷大将軍になるために行った変更、だよな」
「源氏という血を守るための決まりごとでしょうか」
「貴方がお二人を選択した理由ではないんでしょうか」
なんちゃって科学者は言って、さきがけに手を差し出した。
「僕の心が、先を読んでいたのかなぁ」
「心が?か」
「疑問を持つ人の心は、神さんの贈り物ですからね」
「ということは全て、卑弥呼様の思召になりますね」
「罰が悪いから、私のところに現れないのでしょうね」
「それってシャイな証拠だよね」
「シャイ?」
「純真無垢のことです」
「我らが集まったのは繋がりのため、ということなんだな」
「心に刻み付けて下さい。この世に不必要なものはないです。必要な時が必ずあります。感性が母なら、時間が父なんですからね」
「刻み続けるのが優しさなのですか」
「そういう優しさもあるのです。それが、親心なんですからね」
なんちゃって科学者は言って、宙を見上げた。
窓から見える夜空の星たちが、光に強弱を与えて輝いていた。光のお告げを解読できる人間は、今のところ存在しない。なんちゃって科学者でさえ、電磁波で形を変える雲の知らせを解読するのが精一杯であった。それでも電磁波を解読する心を持っている。疎通が上達すれば、時間がかかっても交信に至るだろう。努力の見返りは、ご褒美だからだ。




