時代背景が望むもの
十八
日毎に成長するのが、今生の運命である。
人に限らず生命の神秘は、身近に存在するからだ。ともすればそれは、寝ている時にも起きている。時間が刻み続ける理由が、そこにあるからだ。時には色褪せて、趣きに感じる。またある時は、睡眠学習でもしたかのように、自然に対応できたりもする。
「血に宿るものは、身を護るための礎ですからね」
うさぎは簡単に言った。
核酸が造られたことで、遺伝子は飛躍を遂げた。DNA ・RNA という伝承機能を持ったのだ。元は糖類で、脳を酷使すると甘いものを欲する。厄介なのは、蓄えることができる点だ。狩猟民族となった所以は紐解けず、消費量が人それぞれとなった。
不謹慎な話しだが、死を覚悟してからも、生存することになるのだ。
人でありながら、人のことを知らないのが、現代人の特徴である。先人たちは、迷信と言われながら、それを伝達した。科学が発展したのは、組織図を提唱した偉人のお陰でしかない。いつしか当たり前になり、素人が簡単に兵器を作り出せる世の中になってしまった。こんな世の中になるなんて、偉人たちだけでなく先人たちも予知できなかったはずだ。どこでどう踏み違えたのか。それこそが謎だ、と、うさぎは口にした。
さきがけも、うさぎが言いたいことを、読み解けた。ただ、理解してもどうするべきか決めかねている。選択肢の多さばかりでなく、お他人様の選択を強制できないからだった。それでも、正しい選択肢はひとつではない。時代背景が、人を惑わせるからである。
時代が流れるのは、英雄を求めるからだろうか。群雄割拠というのは、野望にまみれた者たちの合い言葉のように飛び交い、命を軽んじている。自分だけはと、都合よく括り纏めて、格差が助長された。そのくせ、被害妄想に打ち負け、臆病に声を荒げる。可能性と同じだけの無茶を行い、世の中心とばかりに摸倣にうつつをぬかす始末であった。
前世のさきがけは、お粗末な日常にやる気を削がれた。見失った序でに、夢を見なくなった。悪循環は墜ちた先にとぐろを巻き、底無し沼のように脱出できない。救いの手を差し伸べる神様は存在しない。よしんば居たとして、踠く姿を嘲笑い、努力を課すだけ。知恵の使い途に、創意工夫と臨機応変を求めるのが運命となる。棚からぼた餅は、夢の中にぶら下げられた。それすらをくすねる輩が、暗躍するご時世であるのだ。
「昔々から、悪役が存在します。悪を定めないと、正義の必要性が要りませんからね」
「悪とは、正義を語るためにあるのかぁ」
「勝てば官軍ですが、負ければ賊軍ですからね」
「それに靡くことが、要領になったのかぁ」
「生きる知恵、とでも言い訳したのでしょうね。日の本の国は、流浪民族ですからね」
「神の国じゃなかったっけ」
「不死の神々を討てるのは人間、と、ギリシャ神話が教えています。それを口にしたのは、卑弥呼さんなんですがね」
「卑弥呼様?。巫女さんだったんだよね」
「ただの巫女に、中華の皇帝が献上物を送りますかね」
「少なくとも格上に送るよね」
「序でに教えて措きますが、イエス様を産んだのも、卑弥呼さんなんですよ」
「本人が言ったの?」
「そんなことを言う方ではないです。創世主が教えてくれました」
「万物の母が言ったなら、満更ウソじゃないよね」
「宇宙の中心すら知らないのが人間ですからね」
「宇宙の中心なんてあるの」
「無の世界を終わらせたのが、ビッグバンとでも想っているのですか」
「?。想ってた」
「息吹きをしたのが、感性母さんです。何もなくて『つまらない』って、嗚咽を漏らすのが当たり前ですからね」
「そうだったのかぁ」
「三種の神器で解るように、器(無)からこぼれだしたものが、感性母さんと、刻と量子です」
「なんで三種なの」
「公正にするためでしょうね」
「それは教えてくれなかったの」
「今、があるのですから、考えてみなさい。と言われました」
「考えるのかぁ」
「答えを探すのが、知恵を与えられた理由です。努力の結果がもたらしたものが、今生の彩りなんですからね」
「だとして、努力すると、何かご褒美がもらえるのかなぁ」
「ステップアップです。一段ずつ踏みしめながら上るのが、量子の階段、ということでしょうね」
「たどり着く先が、宇宙の中心ってことかぁ」
「楽園・理想郷・桃源郷。人それぞれの感性で、見定めることが大事です。目標までに見える標が、先人たちの残したもの。人が人を超えろ、ということでしょうね」
「今は標も多いだろうけど、はじめの頃は大変だったんだろうね」
「悪が生まれたのは、ずるするためでしょうね。歴史が血塗られた理由です。視ているのが、神々だけでなく、三元主もですからね」
「審判ってことなの」
「公正ですからね。それでも、可能性に期待しているから、依怙贔屓が見え隠れしています」
「どんな依怙贔屓なの」
「私は、宇宙の中心に招待されました」
「行ったことあるの」
「はい」
「どんな所なの」
「居心地の良い空間です。玉手箱というよりも、無限大の空間です」
「それって、ブラックホールの中だったんじゃないの」
「かもしれません。私の感覚では、生命の揺りかご、でした」
「僕が目指すべき『頂』なんだよね」
「頑張って下さいね」
ふたりの息も同調して、同じ理想を共有していた。




