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魔王らしくない魔王様  作者: 説那
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元魔王エンダーン

 僕の名前はエンダーン。魔王カミュスヤーナを父に持つ魔人だ。


 僕は産まれた時から、この魔人が住む地であるユグレイティの館にいる。

 普段生活を共にしてくれるのは、プラチナブロンドの髪、赤い瞳、お父様と同じ色、お母様にそっくりの容姿を持つ養育係のアメリアだ。朝起きてから、夜眠るまで、常に一緒にいてくれる。


 アメリアは、かなり前から自分に読み書き、計算などの基礎知識や、このユグレイティの地に関する事を教えてくれていた。

 将来、僕が魔王を継承することはないかもしれないけど、魔王の子である以上、魔王であるお父様を補佐できる人物にならなくてはならない。そのために必要な知識はたくさんあった。

 お父様も、この地の魔王に成って、数年しかたっておらず、ユグレイティの地についての勉強は、共に頑張ろうと声をかけてくださった。


 お父様は、普段は、人間の住む地に滞在しており、定期的にこちらに戻ってきて、魔王の任務を行っている。何でも、お父様もお母様も育ちが人間の住む地だったそうで、あちらでも仕事があるのだそうだ。ただ、その内こちらに永住されるとは聞いている。その大きな理由は、見かけが成長しない、歳を取らないように見えるからである。

 人間と魔人は、別の人型の種族である。

 魔人は人間に比べ、魔力量が多く、寿命が長い。そして、身体の成長は30代前後で止まる。


 お父様やお母様も、ずっと人間の住む地にいた場合は、身体の成長も人間と同じように行われ、老いていったものと思われるが、ここ魔人の住む地に来ると、その成長が徐々に緩やかになっていく。つまり、身体の成長度合い、というよりは、老いていく速度が環境に依存するらしい。

 また、人間の住む地で生活していくには、お父様は魔力量が多すぎる。そして、人間の住む地で生活するにあたり、消費する魔力は微々たるもので、魔力が満たされた状態で引き起こされる、お父様の暴走を抑えられない。

 僕としては、お父様やお母様と過ごす時間が増えるのだから、これほど嬉しいことはない。


 夕食を共にし、食後の休憩を取っていると、お父様が僕に向かって声をかけてくださった。

「エンダーン。また背が伸びたな。」

「はい。この前会った時より、頭一つ分は背が伸びました。」

 お父様が頭に手を乗せ、優しく髪に沿って撫でてくださる。


「お母様は、まだいらっしゃっていないのですね?」

「向こうでの仕事が残っていて、終わっていないのだ。」

「お母様のお仕事とは何なのですか?」

 お父様は、確か摂政役という、こちらでの宰相に当たる地位についていたはずだ。首を傾げて問いかけると、お父様はその表情を緩める。


「向こうでは、こちらで言う魔術を使うのに、資格が必要なのだが、お母様はその資格の試験官を務めている。ちょうど、資格の試験があって、その対応に追われているのだ。」

「資格・・ですか?」

「そう、魔術は人を傷つけることも、操ることもできる、強大な力だ。つまり、悪いことに使わないように、個人の魔力量と適性で、魔術を使っていいかを判断し、資格を与えるのだ。」


「ふうん、人間は面倒なのですね。」

「ここでは、魔力の多い者が上に立つから、何かあれば、力でねじ伏せることになるが、向こうはそうではないのだ。しかも、人間の方が魔力量は全体的に少ないから、その分魔術は、使い方を一歩間違えれば、脅威ともいえる。」

「お父様、私も眠りの術を覚えることができました。」

「そうか?優秀だな。でも、私には効かない。そなたとは色が近いからな。」


 そう、状態異常の術は、魔力の色が近しい相手には効かないのだ。しかも、お父様の方が、魔力量が多いから、まず無理だろう。私が術をかけられるのは、お父様とお母様以外に限られる。

「アメリアに試してもらいますか?」

「術をかけてしまったら、今日は目が覚めないだろう?」

「確かにそうですね。」

 目の前で披露して、お父様のお褒めの言葉をいただきたかったのだが、仕方がない。


「もう少し成長したら、棋獣の乗り方を覚えて、共にユグレイティの地を巡ろう。」

「本当ですか?」

 お父様の言葉に、私は声を上げた。お父様と過ごす時間が増え、かつお父様の言動から多くのことを学べる機会が与えられるのは、とても嬉しい。

「自分の目で見た方が、理解は早いからな。」

 お父様は、その赤い瞳を細めて、笑った。


 僕たちの様子を少し離れたところで、アメリアが見つめている。その表情はとても嬉しそうで、僕もアメリアにそのような思いをさせられたことを嬉しく思った。

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