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魔王らしくない魔王様  作者: 説那


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回想者アルフォンス

 私の名はアルフォンス。ここ最近はとても静かに暮らしている。


 今日はとても天気のいい日だ。

 空はとても青かった。

 近くの農村の直売所で、野菜を購入してきた帰り、家近くの海沿いを歩く。

 時々海から珍しいものが流れ着くのだ。それを元に魔道具などを作成して、行商人に売ってお金を得ることができる。ささやかな収入源だが、一人で生きていく分には何の問題もない。

 そういえば、流れ着いた彼を助けたのもこの辺りだったか。


 砂に埋もれるようにして、傷だらけの青年が倒れていた。

 銀灰色の髪にも砂が入り込み、更に灰色がかっていた。

 顔色は血の気が引いて白く、脇腹に大きな刺し傷があった。刺し傷から大分血が流れ出てしまったらしい。

 服は体に沿う形のジャケットとズボンを身についていたが、ボロボロで大きく裂けた部分からは身体の線も見えるほどだ。


 このまま放っておいたら死ぬだろう。いや助けたとしても命はもつだろうか。

 だがこのままにしておくことはできなかった。

 ひとまず、家に連れ帰って、身体を拭いて、服を着替えさせて・・。かなりの重労働だが仕方がない。

 水を吸って重いジャケットはこの場で脱がした。腰にぶら下げていた回復薬らしきものが入っていたベルトも外す。意識がない状態では回復薬も飲ませられない。あとで引き取りにこよう。何とか彼の身体を背負った。


「・・・。」

 私の耳元で彼が何かを呟いた。うわ言のようなものかもしれない。

 彼を家に運ぶために足を進める。

 彼が再度何かを呟いている。私はその言葉を聞き取って足を止めた。

 彼は確かに言った。

 私の娘、テラスティーネの名を。


 結局、目覚めた彼はそれまでのことをすべて忘れており、彼が私の娘テラスティーネと知り合いなのかどうかすら、問うことができなかった。

 ただ、海で漂流する状態になってもその名を呟いていたほどだから、きっと彼にとってテラスティーネは大切な人物だったのだろう。もちろん、私の娘と同名の違う人物である可能性もあるのだが。


 彼は魔力を受け取って記憶を取り戻す可能性を選んだ。だから私は魔力を与えることのできる天仕であるテラスティーネを紹介した。

 彼と別れてから1年余りが経つが、彼はテラスティーネと会えただろうか?そして、記憶を取り戻すことができたのだろうか?


『全てが終わって、私が記憶を取り戻すことができたら、またここに来てもいいですか?・・アルフォンスの娘さんもここに来る時に連れてきますよ。』

 銀灰色の髪、桃色の瞳の青年がそう言って、瞳を細めて笑う。


 私は黄褐色の宝石がついた装身具に、指先を添えて撫でた。

 私は以前、浜辺で指に嵌める装身具を2つ拾った。それらは魔道具で、それぞれ赤い宝石と、黄褐色の宝石がついていた。また、魔道具なので、本人目掛けて放たれた魔術や攻撃から身を守る結界付与の効果と、位置特定の効果がついていた。私はそれを参考にしてもう一つ指に嵌める装身具を作り、3つにした。

 そして、その内の2つを彼が持って行った。彼が持って行ったのは、赤い宝石がついたものと、青い宝石がついたものだ。お守りとして、今も持っていてくれるといいが。


 思い出に浸っていた私は足を止めた。

 視線の先には海に向かってたたずんでいる人の後ろ姿が見えた。

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