第六話 トントントンカラリンと隣組
障子を開ければ顔なじみ廻して頂戴回覧板知らせられたり知らせたり(あのリズム)
舞台は、再び異様なる御前会議に戻る。
沖縄の失陥は実はそれ程の問題ではない。
どうにかこうにか連絡要員をドイツから持ち込まれていた設計図を基に作らていたロケットに括り付け沖縄に送り込むことには成功した。
沖縄にいた軍民のほとんどは統合され今は深い海の底で休眠状態にある。
今頃は上陸したアメリカ軍は目を白黒させて消えた日本人を探していることだろう。
では、何が問題なのであろうか?
それは、現在日本本土にいる人間すべてが変異してしまったということである。
変異とはなにか、来訪者たちは親切心と新たな同胞の発見に嬉しさのあまり日本人達に原型を留めない程の改造(彼ら曰く贈り物)を施してしまったことである。
平均身長3m、平均体重500キロ、その腕力は鋼鉄をいとも簡単に引きちぎり、速力90キロメートル、
陸上兵器のほとんどで殺傷は不可能な皮膚と内臓器官、水と太陽光さえあればその巨体を維持できる代謝能力等などである。
つまるところ日本人は歩く要塞となってしまった、
それのどこが問題だ、強靭で結構と思うかもしれない。しかし、急にこんな存在になってしまった存在が、今までの生活環境を維持できるだろうか?
答えは否だ。今本土にいる日本人は銃を持てば粉砕し、服は動きに耐えられず切れ端となり、あらゆる建物の床を粉砕し、天井に穴を空け、一切の現代科学の産物が手の中でガラクタにする有様である。
帝国海軍を例とすれば全ての艦艇が使用不能となっていた。
大和に至っては、立てこもった乗員を引きずり出すため隔壁と扉が引きちぎられ、勢い余った者が第一砲塔を折り曲、第一艦橋に飛び込んだ物はそのままの勢いで外に飛び出し自由落下のすえ人型の穴を空けるなど廃艦寸前の有様である。
ともかく列島の外に人を送り込めない、船も飛行機も操縦する事ができない、日本人は列島に閉じ込められた状態なのである。
アメリカ軍のとある将軍は日本を石器時代に戻してやると発言したそうだが、現状日本は石器時代どころか猿人の時代まで遡ってしまった。
かかる事態を打開するべく統合帝国全国民参加型御前会議がここに開かれているのである。