第二十二話 私は烏賊 あなたの頭上にいるの
その日、一匹の烏賊が宇宙へと飛び立った。烏賊の名はセルゲイコロリョフと言った。
衛星軌道に到達した烏賊は地球にそして大宇宙に、人類が地球と言う揺り籠を飛び出す第一歩を泳ぎ、、、じゃない歩き出した事を亜空間リンクを通して高らかに宣言した。
なぜこの烏賊は衛星軌道を泳いでいるのか、それはソ連統合が関係している。大日本帝国は知らなかったが、この時期ソ連はアメリカに並ぶ、宇宙開発大国への道を歩き始めた所だったのだ。
ソ連はアメリカのペーパークリップ作戦と同じく、大量のナチスドイツの技術と技術者を自国に接収していた。
彼 らが持ち合わせていた、V2ロケット技術、そしてナチスドイツ幻の計画プラン、ゼンガー爆撃機計画、大日本帝国の、生物工学が融合して生まれたのが、今宇宙を泳ぐ烏賊「秋水改」の姿である。
この成功に大日本帝国は安堵の声を漏らした。かなりと言うか無謀極まりない計画だったのだ、ほぼ勘で人を(烏賊だが)宇宙に送り出すなど。
統合したセルゲイコロリョフが亜空間リンクに
「これだけの技術があるなら今すぐ宇宙に行くべきだ」
「行きたい、行かせろ、今すぐ行くんだ、フォン・ブラウンより早く」
「死なないんだからいいだろ、何度でも人体実験できる、嫌なら私自身が行く、烏賊セロ」
と喚き散らした上、勝手に自らの体を改造し始めた事で計画はスタートした。
ドイツからの技術者を統合したことで、ヴェルナー・フォン・ブラウンの名を知った彼は宇宙への情熱を燃やしに燃やしていたのだ。かの宇宙狂いに負けてなるものかである。
この成功は大日本帝国に一つの確信と革新を与えた、集合意識の作り出す「勘ピューター」でも軌道計算が可能であり宇宙に飛び出すことができるとの「確信」
宇宙から地球を見る事で地球全体を把握する事ができるようになった「革新」である。
今まで日本列島のみに限られていた惑星改造の触手を地球全体に伸ばすことができるようになったのだ。
大日本帝国は地球全体を一つの生命「集合惑星の星」へと変える視野を手にしたのである。
余談であるが、地球を周回する軌道監視衛星兵 第二号の名前はヨシフ・スターリンである。鉄の男は星になった。




