暗殺者
森に採取にパーティーで向かったら、何と有ったら良いねって言ってたランニングマッシュが見つかったの!皆夢中で走り廻るきのこを追っかけて採取するわ。
「ツイてるなぁ」
ケイン君が感慨深いものがあるという様に言う。
「薬効の高い奴ですよ」
タツマ君も嬉しそうに言う。ざっと4ダース程採れた。私は調子に乗って深追いしてしまって、独りになっていたのね。其れが不味かった。背後に嫌な気配がしたの。思わず伏せたわ。頭の上を矢が飛んで来た。
「え!」
肝が冷えたわよ。確実に私を殺しにきてる。誰が?恨まれる覚えはないが、縁談絡みで誰かを敵にまわした様だ。敵の動きを鈍らせないと殺られちゃう。
「蝸牛のバラッド」
相手のスピードを半分にする唄を奏でる。矢も遅くなるので人心地つくかと思ったんだけど、次々に矢。飛んで来るのよ。必死で避けたわ。毒塗ってあるのは確実。掠るわけにはいかないわ。スピード差で引き離すつもりで逃げに移ったわよ。でも引き離せない。基本的に元の能力が雲泥の差のようね。ということはプロが相手だわね。独りで手に負える相手じゃない。どうしよう。あ、前は崖だ。元々此処迄追い込む算段だったんだ。手の平の上で遊ばれた。ちくしょーめ。せめてもの抗いで面を拝んでから、この竪琴の破壊の旋律浴びせて遣るわよ。崖を背に振り返った。黒覆面で全身黒尽くめの何者かが弓矢を構えて20m程離れて立っていたわ。
「何で私を狙うか教えくれる気有る?」
答えを待たずに竪琴の破壊の旋律、指向性超音波を叩き込んだわよ。目の前から黒尽くめが消えた。ヤッたか?その時、私の右側で「ガキン」と刃と刃が噛み合う音がしたの。え!見ると両手に小刀を構えた黒尽くめに両手剣を叩き込んでる白銀のフルプレートアーマーの騎士がいたのね。ケイン君じゃない。大柄なアーマーは体格的に大人だった。でも教官にもこんなアーマーの人はいない。其れにマントに描かれてる家紋はお祖母様の実家アンガス伯爵家の物である。
「お嬢ちゃんが行動阻害の唄止めた瞬間が、チャンスだったんだがな。とんだ邪魔が入った」
黒尽くめが忌々しげに言った時、私パステルを探すパーティーメンバーの
「パステルー。何処ー」
といった呼び声が聞こえてきたの。思わずそっちに目を向けた後、右側見ると黒尽くめも白銀の騎士も跡形もないわ。
「パステル居たーにゃん。勝手に居なくなっちゃだめにゃ」
「うん、ごめんなさいませ。深追いしすぎちゃった。失敗失敗」
私は異変を悟られない様に取り繕う。きっとランニングマッシュは黒尽くめの仕込みだろうな。失敗に終わって大損でざまーみろと私は少しだけ溜飲を下げるのだったわ。でも金貨数十枚もの仕込みを仕掛けても元が取れる依頼料が、払われてる事になるわね。私が敵に回したのは余程の大物ということ。あ~んツイてない。