お見合い
お父様にお受けすると言っちゃった私。覚悟を決めた積もりでもドキドキだった。それに何で見初められたかが疑問で、実習の時のジークフリード様との会話をぐるぐる、ぐるぐる思い出してたんだよね。でも、パーティーに穴埋めバード加入の挨拶して、すぐ戦術的話しで使えるスキル魔法の確認して、フォーメーションと作戦手順きめて討伐。初めてした雑談は確か。
「フラウ男爵領は確か隣国との国境の領でしたね。国境警備と検閲の任の部隊の受け入れご苦労さまです。男爵は役職は無かったね」
「はい。父は無役の在地領主ですね」
「苦労させているようだね。済まない」
「殿下のせいでは…」
で、終わり。そんで、次の会話はお亡くなったお母君のお悔やみ。ま、亡くなったのが3年前だから儀礼的な範疇だなー。後はモンスターについてとか学院生活についてとか。うーん、やはり謎だ。そうだ何曲か演奏した。でも皇宮楽師と比べると劣る。やっぱわからん。てな感じがお見合い迄続いたんだよねー。おかげでジークフリード様に求婚されてる事で急に注目されてる事をスルー出来てた。怪我の功名。
そしてお見合いの日がやってきた。お祖母様の形見のドレスで望んだ。お祖母様は伯爵家からの降嫁だったから殿下相手でも相応しい装いなのよ。お祖母様グッジョブ。
「お久しぶりですね。パステル」
「お久しぶりです。殿下」
会話が続かん。何か続けなきゃ。
「殿下は何故私をお望みに?」
「パステルはせっかちだったのですね。いきなりとは」
「申し訳ございませんでした」
「いや良いよ。母の話ししたの覚えてるかい?」
「ハイ。お悔やみ申し上げて殿下から」
「悲しかったけど涙は出なかったと言ったら、君は『泣け無いのを悲しむ必要はない、心が凍っただけだから』と。そして私と母に一曲手向けてくれた。その時やっと泣けたのだ。私はパステルを望んだ理由わかって貰えただろうか?」
「たったそれだけで」
「凍った心を溶かしたのだ。大きかろう?」
演奏に集中してて殿下の涙なんて気づいてなかった。それに特別気の利いたセリフでもないしなぁ。これは困った。殿下の中の私は献身的な吟遊詩人。実像とのギャップ有りすぎて、どうしよう。
「君が儀礼的に対応したのはわかってますよ。でも、私の心を動かす何かがあるのも確か。深く考えずとも良い」
何かとは何だ?殿下もわかって無い。
「バードとしても優秀であった。そこも加味している。不安気な顔をするな。私を惚れさせたのだから堂々としておれ」
「惚れ…」
私はかーっと顔が赤くなるのを感じて慌てちゃった。惚れたとストレートに取り繕わず言われて舞い上がったのよ。この殿下、もしかしてジゴロ?おんな慣れしてる。終始殿下のペースでお見合いは終わった。