【天然危険物】ランキングに苦言を呈する虚しさ
メカ少女型イマジナリー相棒〈チロン〉との対話劇形式で個人的見解を垂れ流す毒気ましまし連作エッセイ。
新装開店第3弾は、なろうのランキングはクソ! とか本気で思ってる書き手さんにとっては可燃性高めな話&ちょっとした提案であります。
黒崎 「新装開店第3弾は、〈小説家になろう〉のランキングの状況に苦言を呈する行為についてとかを、ねっとりホザこうかと」
チロン 「おー。なにやらデンジャラスでワクワクが止まらないのです」
黒 「なろうのランキングは同じような作品ばかりでクソ! みたいな発言をみかけることがあるけど、僕様的にはまったく不毛な愚痴だと思うんだよね。殊に書き手がその種のことを言うのは、単なる勝ち組への敵愾心──ルサンチマンとしか思えない。嫉妬なら心の糧にもなりうるけど、ルサンチマンは当人にとっても病原にしかならないのよね」
チ 「いやん。のっけから可燃性の高い発言に惚れ惚れするのです。でも、ランキングが類型的な作品ばっかなのは、なろう自体にとっても好ましい状況ではないのでは?」
黒 「確かに弊害はあるだろう。特にライトユーザーはランキングを頼りにしがちだから、必然的に既成の流行りものばかりが注目され、それ以外の作品には光が当たりにくい。ランキング制度の負の側面だな」
チ 「でしょ、でしょ?」
黒 「でも、なろうには(もちろん他の小説投稿サイトにも)新着情報と検索システムがある。全ての読者がランキングだけで作品を選別してるわけじゃないし、埋もれた良作を発掘してくれるスコッパーさんもいる。
あと、これが一番大事なことなんだけど──ランキングは純然たる市場原理の経過であり、今現在の流行を表示する計器に過ぎないんだよね。計器に文句言っても虚しいだけさな」
チ 「??? どーゆーことです?」
黒 「需要と供給が一致した結果がランキングにあらわれてるだけ、ってこと。
とある作品が注目されて上位に躍り出ると、その人気にあやかろうともくろむ作品が雨後のタケノコよろしく量産され、二匹目のドジョウも喜んで食べてくれる食欲旺盛な読者とともに流行を形成する。
かくして同類項のドジョウたちがランキングを席巻する状況は、僕様みたいなトレンドと無縁な書き手にとっては確かに苦々しいけれど──
だからといって流行テンプレを上手に利用してる作品群を見下す言動は見苦しいし、それは多くの読者をバカにする行為でもある。読み専さんならともかく、他ならぬ物書きがライバルの読者を腐して溜飲を下げるだなんて、無様すぎて笑えない喜劇じゃない?」
チ 「なるほど。ランキングの状況にケチをつけるのは、たくさんの読者をディスるのと一緒なわけですね」
黒 「そういうこと。ごく単純で、ごく当たり前の話なんだけど、意外と盲点だったりするんだよね」
◆ ◆ ◆
黒 「さて、ここまではランキングにケチつけるのは不毛って話をしてきたけど、それはあくまでも〝流行をディスっても無意味だべ〟って話。実のところ、ランキング制度にまつわる少々厄介な問題はあったりする」
チ 「さっき言ってた〝負の側面〟とか?」
黒 「いや、それは不可抗力だから気にしてない。気がかりなのは流行の硬直化さ。
異世界転生チーレム、スローライフ、ざまぁ、追放、悪役令嬢、もう遅い──長いスパンでみれば、なろうの流行はちゃんと移り変わってるんだけど、そのペースは思いのほか鈍い。
日々大量の流行テンプレ作品が投入され、あっと言う間に市場が飽和するのに、何故かそのまま安定して主流派になり、次の流行が生まれにくくなってる気がするんだ。これは今のウェブ小説界全般の傾向かも」
チ 「それがランキング制度のせいだと?」
黒 「うん。無関係ではないと思う。主因は流行テンプレばかりを求めがちな読者層と、そこに安住して冒険しない書き手にあるんだけど……現行のランキング制度がそれらを後押ししちゃってる感は否めない」
チ 「んー……ランキングは市場原理の結果なのだから、それはどうしようもないのでは……?」
黒 「まーな。でも、いたずらに流行テンプレを延命しちゃう副反応を断ち切る方法が無いわけではない」
黒 「ちょっと話が飛ぶけど、抱かれたくない男ランキングってあるだろ? あれの上位の面子って毎回代わり映えしなかったよな」
チ 「うん」
黒 「そうなると陳腐化して注目度が下がる。で、どうしたかというと、圧倒的チャンピオンを〝殿堂入り〟にして卒業してもらった。強引に新陳代謝をうながしたわけだ」
チ 「ふむふむ」
黒 「そこで僕様は提案したい。なろうのランキングにも〝殿堂入りシステム〟を導入してはどうか、と」
チ 「おー。御主人の分際で建設的なのです」
黒 「具体的には──
① 各ジャンルの日間ランキングにおいて、1位100ポイント、2位99ポイント──というように100位まで殿堂ポイント(仮称)を付与する。
② 三ヶ月ごとに殿堂ポイント上位3作品を〝殿堂入り〟とし、すべてのランキングの対象外とする(ここで全作品の殿堂ポイントはリセットされる)。
③ 殿堂入り作品の評価ポイントやブクマ数は非公開とする(作者は閲覧可)
──こんな感じで、どうかと。
②に関しては、集計を半年ごとにしてもいいし、殿堂入りさせる作品数にも検討の余地があるかな」
チ 「①と②はわかりますけど、③にはどういう意味があるのです?」
黒 「そうしないと〝殿堂入り作品ランキング〟を作れちゃうだろ。それじゃ意味が無い」
チ 「あ、なるほど」
黒 「殿堂入りした自著を完結させ、新たに別枠で続編を書くような人がでてくるかもだけど、それを容認するか殿堂入り詐欺とか呼んで排斥するかは、読者に委ねよう。
殿堂入りシステムは市場原理に介入するものなので、ともすれば市場を縮小させるおそれがある。が、硬直化したランキングに嫌気がさしたアグレッシブな書き手が離脱しちゃうと、ますます流行テンプレばかりになり、次のトレンドが生まれないまま飽きられることになりかねない。やってみる価値はあるんじゃないかな」
チ 「んー。現状維持と改革のどっちがよりハイリスクか──見極めるのは難しそうですね」
黒 「だとしても、考えなくちゃならないときが来てるんじゃないかな。このまま座して死を待つか、剣ヶ峰に挑んで死中に活を見出すか。
個人的に、その議論は書き手によってなされるべきだと思う。
〈小説家になろう〉の主役は、その名の通り、小説家になろうとしている人なのだから」
チ 「むむ? なにやら小綺麗に終わらせようとしてません?」
黒 「……その一言で台無しなんだが」
チ 「むっふー。してやったり、なのです」
──終劇──
お読みいただき、ありがとうございます。
今回は、ちょいと可燃性の高いネタなんで、ちょいと不安ではありますが──
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では、また。いずれ──