悪役令嬢、婚約破棄~普通逆じゃね?って俺は言いたい~
皇子は僕っ子ですが、実は前世では女の子でした。
悪役令嬢も転生者ですが、自分が主人公であると思い込んでおり、何をしても許されると思っています。前世がわがまま娘で、いじめっ子であったこともあり、気が強いです。
こんにちは。僕は第二皇子であるアイル・スティル・レイモンドだよ。
まあ、最近ラノベでよくあるよね乙女ゲームとかの世界に転生したっていう話。
僕もそうだったんだ。
気づいたら、乙女ゲームでは“悪役令嬢”と呼ばれる令嬢との顔合わせをしていて、前世の記憶が蘇ったんだ。
でもね、改めて先入観なくその御令嬢を見たら、僕の顔を見て顔を赤らめていたんだ。
初心で、可愛いよね。だから、僕はその御令嬢を見て好印象だなって思ったんだ。
たくさんお話もしてみたいと思ったんだけど、あくまで王族と貴族との政略結婚なわけで、
お互いに先入観を持って、この結婚が嫌になって逃げださないようにって顔合わせは最低限だったんだ。
しかも、確かに文字通りの顔合わせだったわけだ。
表向き、いや普通に家同士の会談という形で、僕たち婚約者同士が付属品のように、一言も話さずに座って、
向かい合わせに座っているだけ。確かに、顔合わせだった。
何とか少しでも情報が欲しいと思って、僕が持っている影を使って、調べに行かせたんだよ。
でも調べる以前に、僕の影は、父から譲り受けた部隊であり、僕自身に仕えているわけじゃない。
だから、なかなか仕事の依頼を受けてもらえないうえ、ことごとく父の影に情報をつぶされた。
だからその御令嬢のことは、名前と家名しか知らないんだ。
まあ、でもある程度割り切って、あの子にふさわしくあるために、一生懸命勉学と、作法、政治を学んだ。結果、神童ともてはやされるようになったのだ。
もしかしたら、こんなに頑張って、恋する男の子って感じね、可愛いなどと思われているかもしれないが、断じて違うといっておこう。僕の名誉の為に。だって、僕は前世の記憶があるから、精神的にはもう大人だ。ロリコンなんて思われたくないじゃないか。
ただ、あんな僕を見て顔を赤らめるような初心で、純粋な女の子に、僕と結婚することで嫌な思いをさせることはできないと思ったんだ。僕が守ってあげないとなって。
だから、前世でいういわゆる“優等生”を頑張って続け、周りに群がる自称婚約者も全く相手にせずに、学園生時代を過ごしていた。
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今日はね、学園最後の卒業パーティー兼、僕たちの婚約発表兼、きちんとした顔合わせなんだよ。
楽しみだよね。ふふふっ。
あっ、もうそろそろ僕が入場する出番だな。
「レイモンド王国、第二皇子、アイル・スティル・レイモンド殿下のご来場~!!」
大きな割れんばかりの拍手と、オーケストラの音楽、周りの貴族たちの愉悦、嘲り、恋慕、嫉妬などの様々な視線が僕に注がれた。
そして、国王からのあいさつから始まり、貴族からのご機嫌うかがいのあいさつがある程度収まったころ、このパーティー会場にある女性の声が響いた。
「アイル・スティル・レイモンド殿下!この場で申し出たいことがあるのです!こちらに来ていただけませんこと?」
僕は、この声を聴いて、なんと不敬極まりないんだと、ふつふつと怒りがわいてきたんだ。だって、王族を一貴族が呼び出したり、いきなり令嬢から声掛けをしたり、命令のようなことを言ったりするなんてこの国では、そんなことはあり得ないし、処刑レベルのことだよ。これに怒りがわかないんだったら、聖人だよ。最早。
「なんだい、いきなり。とても無礼だね。」
「まあ、申し訳ありません。でも、わたくしたち婚約者同士ですし、別にかまわなくてよ」
____お前が、かまわないって決めるんじゃねえよ!大体、婚約者同士でもあり得ないし、こんな態度!................って、えっ、僕の婚約者だって!?見る影もなくない!?めっちゃ太ってるし、化粧濃いし、礼儀作法もなってないし、性格も悪そう、頭も絶対悪いよね.........________
「って、そんなことはどうでもいいんですわ。わたくしは、あなたに婚約破棄してほしいんですの。わかりますわよね?こ・ん・や・く・は・きですわ。殿下がわたくしをとても愛しているからと、どうしても婚約するといってなかなか破棄してくださらないから、わたくし公の場で直談判しにきたのです。わたくしはここにいる新たな婚約者と、愛人たちとこれから仲良くしたいので、さっさと破棄してくださいましな。」
________なにこれ..........僕の聞き間違いかな、なんで僕がどうしても婚約したいことになっているのかな、愛してなんかもいないよ。最初は好印象だったけど。そして、どうして直談判しようという思考回路になるの?まったく理解できないよ。それに、新たな婚約者?愛人?バカげてるにもほどがあるでしょ。婚約者がいる身でそんなことするなんて、自分が貴族っていう自覚ある?あーーーー、いやある意味十分理解しているか、自分のわがままは自分の家が権力を持っているから大抵のことは叶えられるということを。貴族の義務や、マナーを理解していないというだけで.........._____________
____________あーあぁ、今日楽しみにしてたんだけどなあ。こんな気分の悪い一日になるなんて考えもしなかった。しかも、“悪役令嬢”なのに、ある意味質の悪いヒロインみたいな行動とっているし、なんなんだろうね。僕が転生して、乙女ゲームのシナリオが改変されるかもなと思っていたけど、ふふっ、ある意味改変されたね、最悪な方向に........_________________
「ふふふっ、質の悪い冗談もほどほどにしなよ。そんなセリフを聞かされたら僕の耳が腐ってしまうじゃないか。さっさと黙ってほしいなあ。」
「はいっ!?なんですって!?冗談なんかじゃないですわ!さっさと婚約破棄なさいまし!」
______陛下、一応僕なりにかばいましたからね?あとはもう知りませんよ。__________
「はははっ、一応言っとくけどね。僕は、君のことなんかひとかけらも愛していないよ。それにこの婚約は僕たちが決めたんじゃない、家同士の政略結婚だ。僕自身が婚約破棄したくないと思うわけないじゃない。思うとしたら、それは君の父上か、陛下だけだね。それにさっきから、あまりにも、無礼すぎるよ、たとえ婚約者だとしても、ある程度の礼節は重んじるものだ。婚約者だからと考慮したところであまりにも不敬なんだよ。それに、婚約者のいる身で、新しい婚約者と、愛人たちだって?ただでさえ、婚約者を勝手に新しく作って印象が悪いのに、愛人だって?この国は、貞淑であれをモットーに、淑女教育をされている。もちろん、紳士たちも。そんな国で愛人なんか作っているとなったら誰も婚約してくれないに決まってる。見てごらん。隣にいる君の自称婚約者と愛人たちの顔を。苦渋に歪んでいるだろう。きっと、自分たちが婚約しているご令嬢と逢瀬していたなんて知らなかったんだろうね。しかも王族の。それなのに自信満々と語り続けて、あほらしい。君は一体学園で何を学んできたんだい?本当に信じられない。周りを見てごらん、この視線は嫌悪と、拒絶と、蔑みと、嘲笑の視線だよ。誰も心配そうな顔なんてしていないね。君を好意的にみている人なんていないんだよ。それに、こんな公の場所で、人を馬鹿にするような発言を大声で言うなんて、貴族として、いや、人間としてどうかと思うよ。さすがに、もう家同士で決められた婚約だとしてもこんな公の場で騒ぎを起こしたからなくなるだろうね。もう君は、貴族の令嬢なんかじゃなく、罪人だ。」
_____あららー、なに唖然とした顔をしているんだか。当たり前だろ。家も取り潰しだろうねぇ。いわないけど、僕を侮辱したんだ。たった一つの希望をあとで自分の父から壊されるという悪夢を現実で体験してもらおう。最後まで苦しんで死ぬことだね。ふふっ。____________
「おい!そこの騎士たち!さっさとこの連中を取り押さえて、不敬罪で地下牢獄へ連行しろ!」
「「「「「はっ!」」」」」
「なによ!私悪いことしてないじゃない!?なんで牢獄なんかに連れていかれるの!?訳わかんない!?
私は貴族令嬢よ!後で、お父様にあんたたちを罰してもらうんだからね!!!!」
「もう!痛いのよ!!!離してよぉ!!」
_____さすがに、君の自称婚約者と、愛人たちはうなだれていて、おとなしく連行されているなあ。それに比べて、こいつはぎゃんぎゃんうるさいなあ。もう首を掻っ切ったらどうだろう。ふふっ、もう一生会うこともないだろうね。サヨウナラ____________
+*+*+*+*+*+**+*こうして、改変された乙女ゲームのシナリオは、終わりを迎えた。+*+*+*+*++*+*
________fIN.__________
皇子は案外最初は努力家の優しい男の子かと思いきや、実は結構な腹黒でえぐいことも普通に考えるという一面が見えましたね。人間って本当に見かけで判断しちゃだめですよねー。作者は人間不信気味なので、皇子みたいな人柄はちょっと苦手です。でも、物語の登場人物としてみると頼もしいなと思っちゃいますね。