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「ありがとうございましたー。またのお越しをお待ちしております」

 俺の名前は小椎八重涼真。只今、絶賛アルバイト中である。大学と家から丁度いい位置にあるカラオケ店でバイトをしている。

 仕事内容は接客、清掃、それと簡単な調理だ。ほとんど電子レンジでチンをするだけだから、何の問題もない。客層としてはたまに変な酔っぱらいのお客さんや地元のヤンキーみたいなのが来るぐらいで、ほとんどいいお客さんばかりだし、平日はお客さんが少ないから、ぶっちゃけ、このバイトは楽だ。

 俺のアルバイトの話はこれぐらいにしておいて、本題のご近所さんについて話そうと思う。今回のご近所さんは一緒のバイト先で働くご近所さんだ。


―――

――


「いらっしゃいま―

 あっ、お疲れ様です」

 俺は入店の挨拶を途中で止め、入って来た人物に頭を下げた。バイト先の先輩だ。それに俺の隣に住んでいる人でもある。

「お疲れ様~。今日は涼真君が中番の日だっけ?」

「はい、そうですよ。

 上がる時間は美雨音さんと一緒です」

 話しかけてきた人物の名前は雨飾 (あまかざり ) 美雨音(みうね)さん。俺と同じ大学の二つ上の先輩だ。そして、同じバイト先で働き、同じアパートに住む人だ。本人には失礼だが、物凄く地味な人だ。トレードマークは腰まで伸びている長い黒髪しかない。あぁ、あと黒縁メガネ。人は見かけによらないと言ったりするが、この人は見かけ通り、静かで争いごとに巻き込まれればオロオロするタイプの人だ。だから、冒頭で述べたような酔っぱらいやヤンキーのお客さんが来たときには少しパニックになってしまう。

 今日みたいに二人いれば、もう片方がそのお客さんの対応をするのだが、一人の時はそんなお客さんが来ないことを天に祈っているらしい。

 まぁ、普段の接客態度もいいみたいだし、突っかかってくるお客さんはまずいないだろう。

 さて、本題に入りたいと思う。彼女が一体どんなトラブルメーカーなのかという本題に。

 今、述べたように変なお客さんに絡まれる程度で済むなら、そっちの方がいい。それよりも厄介なのは彼女が「雨女」だという事と「とてつもなく、どうしようもない程の方向音痴」だという事だ。しかも、そのうちの一つ、雨女はとある条件でしか発動しない。

 その条件と言うのは俺と一緒に行動するということだ。美雨音さんと一緒に帰って雨が降らなかったという日はないぐらい雨が降る。それも小雨とかではなく、土砂降りの雨だ。

 バイト中に限らず、大学でたまたま会って、一緒に食堂に向かおうとすれば雨が降る。これも同じく土砂降りである。

 初めの頃は何かの偶然なのかなと思って気にも留めなかったが、百発百中で雨が降られると気味の悪さを通り越して怒りが芽生えてくる。

 そのお陰で今はどんな天気予報でも折り畳み傘を持ち歩くようになった。

 一緒に帰らなければいいでのは?と思う人がいるかもしれないが、そこにもう一つの要素「とてつもなく、どうしようもない程の方向音痴が」が加わる。これに関しては発動条件などなく、デフォルトで方向音痴なのだ。

 どれぐらい方向音痴なのかというと、まず大学からバイト先に直接向かう事ができない。一回、家に戻らなければ次の目的地に向かう事が出来ないのだ。

 一度、バイトに遅刻しそうになった時に大学からそのまま直接バイト先に向かおうとした時に迷子になり、気が付いたら二つ隣の町にいたことがある。その事件をきっかけに美雨音さんはどんなに遅れそうでも一度、家を経由してからバイト先に来るように義務付けられている。

 方向音痴は外だけに止まらず、バイト中にも度々起こる。例えばポテトなどの注文が入り、部屋に持っていく際に全然違う部屋に何度も持って行ってしまいクレームをもらったことが両手の指じゃ足りない程あるらしい。今はある程度慣れてきたようで間違いは少ないが、それでも月に一、二回のペースで事は起きる。

 そんな美雨音さんの厄介ぶりを説明していると、制服に着替えた美雨音さんが出勤の打刻を打つためにパソコンまでやってきた。

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