狐 其の四
普段通り風呂に入った俺は俺は風呂から上がり、体を拭きながら狐坂を見ると、なんだか怒っているようだった。怒りながらきつねそばを食べている。
面倒臭い。この一言に尽きる。まぁ、失言があったのは認めよう。だけどもさぁ、俺も鬱憤が溜まっていた利するわけじゃん? その憂さ晴らしが少ししたかっただけじゃん? とまぁ、こんな言い訳を並べても機嫌を悪くしている狐坂に通用するわけがないので素直に謝ることにした。
「なぁ、俺が悪かったからそんなに怒るなよ」
「別に、怒ってませんけど」
いや、怒ってるじゃん。と思ったが口にしてしまったら、また面倒なことになる。
「悪かった。この通り、謝るから許してくれ」
俺が土下座すると狐坂はこちらを向いた。
「じゃあ、どこが悪かったのか説明してください。
は? お前は俺が中学生だった頃の英語の教師か? そんなに俺の土下座に誠意が籠っていなかったのか? そこはお前が「いいですよ」と一言、言えば終わる問題なのにどうしてそこまで拗らせたいのだろうか。
だが、これらの言葉を死んでも口に出すわけにはいかない。理由はさっきから言っているように、ただ単純に面倒臭いことが嫌いなだけである。いくら自分に非が無くとも、いや今回は少なからず俺に火があるのだが。まぁ、とにかく自分が我慢をすれば面倒なこの場が丸く収まるなら俺は喜んで泥を被り、啜る、そんな人種だ。俺の他にもピエロに徹する損な役回りをするそんな人たちがいるに違いない。そうだと信じたい。
とりあえず、弁解はこれぐらいにしておいて俺は狐坂に「都合がいい時だけ妖怪扱いして悪かったと伝えた。すると、狐坂の口からは予想外の言葉が返って来た。
「他にはありませんか?」
他には!? 予想外の言葉に戸惑いを隠せない。本当に中学生の時の英語の教師なのでは?と思ってしまう。
俺が返答に困っていると狐坂は更に怒った口調で話を続けた。
「ほら! 悪いと思っていないじゃないですか!
私だって女の子なんですよ… さすがに下着姿を見て、どうも思わないと言われるのは傷付きます…」
うわー、そっちかー
完全にノーマークだった。そりゃフリーで弾丸シュート打たれますよ。
こんなご時世に言うのもなんだが、全く、女の子とは難しい生き物である。同じ人間なのに、こうも考え方が違うと本当に同じ人間なのだろうかと思ってしまう。まぁ、そんなんだから俺は彼女いない歴=年齢となっているわけだ。ゲームの中ではハーレムを築けるほど人気者になっているのだが、現実はそう上手くいかない。ことごとく選択肢を間違えてしまう。人生にセーブとロードが出来たらなと何度思ったことか。
しかし、そんなことを嘆いていても選択肢を間違えたことは事実である。まぁ、言うほど嘆いていないが。とにかく、俺は狐坂に謝ることにした。
「その、なんだ。どうも思っていないわけではないんだ。
言い訳にしか聞こえないと思うが、あの場面で興奮してしまったら、今後の関係というか、なんというか、そういうものがこれまで通りにいかなくなってしまうのではないかと思ったからさ。とっさに口に出てしまったんだよ」
完全に詭弁である。苦し紛れの言い訳でしかない。だが、狐坂は凄く納得した様子で、しかし、それを感じさせないように取り繕いながら「ま、まぁ、涼真さんがそこまで言うなら仕方ないですね」なんて抜かした。この狐、チョロすぎやろ。
それからの狐坂はすっかりと上機嫌になり、ニコニコしながら残りのきつねそばを啜っている。俺が風呂から上がった時には哀愁漂う背中を見せながらチマチマ食べていたクセに、今は大好物に飛びつく子どものように食べている。重ね重ね言うようだが、本当に単純で助かった。