心を読むな
僕はこの学校の中で最も立派なドアの前に立っていた。校長室である。
「2年3組の小林 裕也です。」
ドアをノックし、返事を待つ。すると中から
「入りなさい。」
と、少し優しい声がした。
「失礼します。」
僕はドアを開け、中へ入った。
「先生、ご用件は?」
「まぁ取り敢えず座りなさい。」
「はい…」
校長は、漫画のようにハゲている訳ではなく髪はふさふさで頼れるおじいちゃんという感じだ。…何考えてんだ僕…
「どうだい調子は?」
「はい、絶好調ですよ。」
「んー、そうは見えんが…まぁ良い。」
あ、バレた。
「用件というのはこれなんだかね…」
校長は、賞状のようなものを取りだした。
「これは?」
「県警からの感謝状だよ。犯罪者逮捕に君は協力したわけだからね。」
「協力ってそんな…」
そう言うんだったら停学なしでよかったろうが!
「まぁ私もそう思ったんだかね、市教育委員会直々のものだったからね。」
「…サラッと心を読まないでください。」
「まぁそれは置いておいて、何やらあらぬ噂が出回っているようだね?」
「………」
「やはり停学の理由は公表した方が…」
「…それはやめてください。」
「何故だね?」
「ほら、こんなカッコイイ理由だったらモテまくって大変じゃないですか。」
…教師なんてそう簡単に信用できるかよ。
「…嘘とは感心しないな。まぁ君のような人間のことだ井上さんや水川さんの立場が崩れるのを危惧しているさんだろう?」
「………」
「男子生徒に助けられた女子。そんな立場を築いてしまったら、あの2人を生意気に思う生徒も出てくるだろう。助けられたからって特別づらするな。ってね」
まぁそれもある。が、
「僕はそんなに良い人間ではないですよ。」
「そうかな?まぁ良い。戻りたまえ。」
「はい、失礼しました。」
「何かあれば遠慮なく言いたまえよ。」
「ありがとうございます。それでは…」
…校長が言っていたことも嘘ではないがそれだけではない。DQN集団に彼女らを人質に取られ僕にボコられろと要求してくるかもしれない。僕が死のうが別にどうでもいいが、彼女たちを危険にさらすかもしれない。そして何よりも、僕と遊んでいたともなれば彼女たちを見る目がだいぶ変わってしまう。
「それだけは避けないとな。」
僕は教室に戻った。次の時間は数週間後の体育祭の役割を決めるらしい。
あらかじめ、あの2人には僕とは違う係になるように言っておいた。彼女らがこのまま僕と関わるのは今のままだとすこぶるまずいからだ。
役割決めが始まった。学級委員が仕切って実行委員から決めていく。
「まず、実行委員を男子から決めていきます。やりたい人は挙手してください。」
…まぁいないだろう。こんな面倒臭い仕事やるやつは。
「じゃあ推薦はいませんか?」
来た。僕の推測が正しいなら…
「はいはーい!小林君がいいと思いまーす!」
K2号が言った。
やはりか。面倒な仕事押し付けるなら僕以外にはいないだろう。
「はい。じゃあ小林君でいいかな?」
うん。ここも思った通りだ。嫌われ者にいいか悪いかなんて聞かねぇよな。
「はい。男子実行委員は小林君に決定でーす!」
「殴って解決しないで話し合いしろよお猿さーん?」
さぁここからが問題だ。誰が女子実行委員になるか…
「それでは…女子?」
うん、誰も挙げないよな。って井上さん?そんな悲しい顔しないでおくんなまし?
「じゃあ…はい。」
全員の視線が正面の学級委員長に集まった。
「金原!?」
K1号が叫んだ。そりゃ叫びたくもなるだろう。確かあいつは金原を狙ってたからな。
「うん、だって他にいないし。」
周りがざわめき始めた。そりゃそうだ。クラスで1、2位を争うくらいのカースト最上位だぞ?
周りに笑顔を振りまき、教師陣からも信頼を集めるようないい子ちゃんだぞ?
金原 菫…目的はなんだ?
まぁそれより気になんのは…
「よろしくね、小林君?」
…やっぱり“乾いてやがる”
なるべく外には出ないようにしましょうぜ!
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