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チートを貰って異世界に半転生半転移したらニートになりました

作者: ちっくさん

「--創世期666年、100年続けられた『人魔大戦』に終止符が打たれようとしていた。


人族には精霊王に愛されし『勇者』が。

魔族には邪龍王の加護持つ『魔王』が。


両者を旗印とし、それぞれがそれぞれを討ち滅ぼす為。

人の世を、魔の世を盤石なものとする為。


最後の戦いの火蓋は切って落とされた---」





------はっ!!?



なんだこれ?

なに?

なんの物語?

なんか聞いたことあるような無いような・・・

今期の新アニメかなにか?


てか、ここどこ?

多分ベッドに寝てると思うんだけど。


知らない天井なんですけど??



てか、さっきから視線感じるんですが・・・


仰向けに寝ている状態から、そちらへ顔を向けると・・・




「うひゃぁぁあっ!!?」


至近距離に顔。

センターパーツに黒髪眼鏡の秘書っぽいお姉さんが、耳元で手を口元でコの字にして見てる。

至近距離で!

ええ、至近距離で!




無表情だったお姉さんが、一瞬だけニコリと笑い、すくっと立ち上がる。

タイトスカートの黒スーツ、黒のピンヒール。

右手で眼鏡を軽く押さえ、左手には革製のバインダーらしきものを持っている。


「おはようございます、石橋純一さま。」


「え、あ、はい、おはようございます?」

急にフルネームで呼ばれた為、流され易い日本人よろしく、条件反射で返答してしまう。



「石橋純一さま、突然ですが貴方は金曜日終業後に婚約者である山下みちるさまと雑誌でも評判のフレンチレストランにて一人7500円(ドリンク別)のコースでディナーデートを楽しみ、その後は山下みちるさまを彼女のご実家まで送ったのち、自宅近くのコンビニで翌日及び翌々日の食事(おにぎり4つ、サンドイッチ2つ、おつまみ用にチルドの惣菜3つ、ペットボトルのコーラ、缶ビール2本)を購入し、店を出た直ぐの交差点で交通事故にあいそうになった予備校帰りの高校生、篠崎優子さまを助け、トラックに轢かれて亡くなりました。お悔やみ申し上げます。」



---はい?



「篠崎優子さまの子孫は後に新エネルギーを発見し人類に多大な功績を残しますので、元々奇跡的に助かるはずだったのですが・・・

石橋純一さまが助けようと助けまいと篠崎優子さまが助かるという運命は変わらなかったのです。

そういった経緯もありまして、石橋純一さまにおかれましては所謂『無駄死に』になってしまうんですよ。」



---えっ?

てか、一連の説明に俺のデート費用やら買い物の内訳とか必要あった?!



「いや、それより俺死んだの??てゆーか無駄死に?!」


「はい、残念ながら。あ、申し遅れました、私こういう者です。」


手渡された名刺を受け取る。


『転生神』


それだけ書かれた名刺。

神さまですか?!なんで秘書さんの格好なの?!


「あ、名前はありませんよ。そもそも、神に名前なんてものはありません。管理する世界の生物が勝手に呼んでるだけですし、同じ神でもそれぞれの文化で呼ばれ方が違いますし。あと、心を読んで申し訳ありませんが、この格好は趣味です。地球の文化いいですよね。今日もピンクの歯科助手にするか金髪チアリーダーにするか巫女さんにするか迷ったんですが、石橋純一さまが会社員でしたので秘書にしました。ブルーの制服OLも良かったのですが現実問題、女性社員に制服を設定している企業はそこまで多くないというのも耳にしましたので・・・まぁ、スーツではなく私服秘書もそこそこ多いというのでどっちもどっちかと迷いましたが・・・」


「あ、ソウナンデスネー・・・」



「石橋純一さまの死が予定外だった為、地球の神より相談を受けまして貴方をこちらにお招き致しました。言伝を承っておりますので、お伝え致します。『なんかごめんね、ちょっと目を離してたら君死んでた。ほんとごめんね。蘇生させようにも、ペッチャンコだし色々と千切れたりしてたから無理だったんだよね。ごめんね!転生神に頼んで、別世界に転生してもらう事になったから、新しい世界で第2の人生楽しんで!グッドラック!あと、なんでおにぎり4つともスパムおにぎりなの?色んな味楽しんだ方がいいじゃん!』との事です。」


「・・・はい。」

地球の神、軽いな!

あと、スパム好きなんだよ!

そこは選択の自由じゃんか!


「・・・やはり、地球の方は理解が早くて助かります。異世界転移・転生の読み物が人気な分、取り乱したりしないので本当に助かります。」


「あ、はい、ありがとうございます。」


「それで、石橋純一さまは本来なら異世界転生してもらうのですが、少々神界でも事情がございまして、半転生・半転移になりました。先日、『神界ノベライズ大賞第・・・』あ、回数忘れましたすみません、があったんですがその大賞受賞作の作者が石橋純一さまだったんですよ。」


えっ?


「大賞受賞作は複数の神で管理して、世界を作成するんですが石橋純一さまの受賞作で作成した世界の運営がちょうど軌道に乗ってまして、どうせならそちらへ行って貰おうという話になりました。もちろん、チートスキルを付与して降りて貰います。ご迷惑をお掛けしましたのである意味接待プレイです。」


「いや、そもそもそんな物語とか書いた記憶無いんですが・・・でも、チートスキル貰えるって事は時間停止のインベントリとか全属性の魔法とか生産職スキルカンストとかなんか色々スキル貰えるって事ですよね!選べるんですよね?何個ですか?組み合わせ考えるの楽しそうだなぁ。なんかテンション上がりますね!死んだのはショックですけどなんか楽しみです!やー、無双とかやばいですね!!」


「いえ、スキルは1つです。」


「えっ」


「1つだけです。」


「えっ・・・」


「設定としてはスローライフ系です。流行ってますよね。勇者とか魔王とかそーゆーのではありません。お気楽極楽にゆったりと第2の人生楽しんでください。特に何かしなきゃいけないとかありませんので、好きに生きてください。」


「・・・えー、、、あの、貰えるスキルって何なんですか?」


「お伝え致します。『全知全能』です。職業はとりあえず設定してません。というか職業とかあまり関係ありませんので気にしなくて大丈夫です。現地で好きに選んで下さい。何でもなれますので。」


「・・・『全知全能』って、どんなスキルなんですか?」


「読んで字の如くです。石橋純一さまの作った世界なので全知全能です。何でもわかりますし何でもできます。全知全能ですから。ある意味、創世神のようなものですからね。石橋純一さまの作り上げた設定の世界ですから。神が下界に降りて遊んでるようなものと思って下さい。ただ、向こうの世界は軌道に乗っておりますので大幅な改変や、人身掌握などは出来ませんので、限定的な全知全能というところですかね。」


「いや、すごいのはわかりますが、俺が作った世界とかわからないんですけど。」


「大丈夫です。向こうに行けばわかります。全知全能なので。石橋純一さまは地球では享年26歳でしたが、向こうでは14歳でとある領主一家の三男坊になります。見た目は地球での石橋純一さまの14歳当時の姿にしておきました。設定上、黒髪黒目は珍しくありませんし、石橋純一さまは容姿に関しては中の上くらいなのでそのままでいいと思われます。あまりイケメンになりすぎても王族とか世界のメインどころから求婚されたりでスローライフ送れませんし。」


「スローライフ限定なんですね・・・」


「うーん・・・とりあえず軌道に乗った世界ですし、せっかく作ったので大元は変えて欲しくないのですが・・・まぁ、英雄になりたい!とかあるのならそっちでもいいですよ。製作委員会で作者の意向として協議します。石橋純一さまの作った世界ですし。ちょっと委員招集して会議しますのでお待ち頂けますか?」


「あ、いや、なんか大ごとになりそうなのでいいです。大丈夫です。ご迷惑お掛けしてすみません。そのままでいいです。スローライフ満喫します。」


「ご理解ありがとうございます。では、そろそろ向こうの世界に行きましょうか。あちらには石橋純一さまの設定どおり、ケモミミ美少女も、のじゃロリも、巨乳エルフも、くっ殺女性騎士もいますので、王族とかメインどころ以外のフラグはばんばん立てて楽しんでくださいね!スキルや魔法も全て設定通りですので、向こうの世界に着けば全てわかるようになっております。全知全能ですから。ではでは、行ってらっしゃいませ!」








---やってきました異世界。


そして理解しました。

確かに、俺の世界でした。




「我が刃にひれ伏せ!!双牙龍神滅殺剣っ!!!」

・・・いや、ただの連続攻撃でしょう!!


「舞い踊れ!!エターナルフレイムロンド!!」

・・・いや、ただの火球の魔法でしょう!!



とても香ばしいスキル名・・・

スキル発動すると勝手に口に出るキメゼリフ。

恥ずかしいポーズ付きだよチクショウ!!



ああぁぁぁぁあ・・・

実家の押入れの奥底に眠ってる黒歴史厨二ノートじゃんか!!

物語じゃなくて設定集だよ!!

所々にヘッタクソな絵描いてある設定集だよ!!

忘れてたよ!!

とっくに忘れてたよ!!

この世界で生きてくのかよ!!


勇者と魔王、実は異母兄弟だよ!!

父親も死んだ事になってるんだけど、実は神様なんだよ!!

そんでラスボスは人族の王様だよ!!

でもって正体は邪神だよ!!

勇者と魔王は戦いの中で何だかんだお互い認め合って、好敵手の雰囲気なって、そしたらなんやかんや邪神が正体を現しちゃって、なんか魔王が勇者庇って邪神にやられて勇者覚醒するよ!!

世界中の精霊の祈りを力に変えた勇者が金色のオーラ纏って邪神追い詰めるけど、土壇場で邪神が変身して大ピンチに陥るんだよ!!

その時の冥土の土産で邪神から勇者と魔王の出生の秘密が明かされるんだよ!!

勇者と魔王を戦わせて、お互い消耗したところに両方ともトドメを刺すっていう邪神の計画だったんだよ!!

でも、勇者パーティの聖女の奇跡の力で魔王が回復して、勇者と魔王の光と闇の合体技で邪神を消滅させるんだよ!

その後勇者は王女と結婚して勇者が王様なって、平和な世界になるよ!!

魔王は死の淵から助けてくれた聖女といい感じになって、大団円だよ!!

ベタだよ!ベッタベタだよ!

恥ずかしいよ!

これが神さま達の中での大賞作かよ!?


それよりも、スキルとか魔法とか自分で使うたびに、近くで他の誰かが使うたびに、ガリガリ精神削られるよ!!

料理で火を点けたりするときも、夜に館の明かりを点けるときも、何かしらで水をだすときも、常にこの調子なんだぜ?!

それが当たり前なんだぜ?!

恥ずかしいよ!!


なんで全知全能使ってスキル名とか魔法名とか、もっと普通にしようとしたらポップアップが出るんだよ!?

『管理者コードを入力してください』って、知らねぇよ!!

何となく関係ありそうなの入力したけど3回ミスしたらロックされたよ!!

全知全能もっと仕事しろよ!!


ピコーンって音が聴こえて誰かの声が頭に響いてきた。

え?

転生神さんですか?

管理者コード、この設定集作ったときの作者名?!

もっと早く言ってよ!!

黒歴史バリバリの名前かよ!!

めっちゃカタカナと漢字じゃんかよ!!

数字とアルファベットの組み合わせじゃねーのかよ!?

カナ入力とか漢字変換とかできんのかよ!!

知らねぇよ!!

わかった、それはもういいからロック解除してよ!!


ダメ?

なんで?

天界の神さま達が嫌がってる??

は?

どんなスキル名とか魔法名なのか、みんなで予想して楽しんでるから邪魔すんなって?

はぁぁあああ?!!


だれか助けてよ!!

もう嫌だ!!

誰にも会いたくない!!

ずっと屋敷に引きこもってやる・・・!!




---チートを貰って異世界に半転生半転移したらニートになりました。


おしまいっ!

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