裏第十八話
ここでは分岐ではなく設定の違いです
もし花と桜がいとこじゃなかった時の一つの可能性
「すいません。お待たせしました」
まずは桜から紹介した後姉さんだ。そう思い俺は花に近づく。
「そんなに待ってないから大丈夫だよ。約束の時間もまだだしね。は、花、こちらが……」
「へぇ、こちらが遼さんのお友達の桜さんですか。かわいいですね」
花の顔は笑っているのだが、目は明らかに笑っていない。殺意に満ち溢れている。
「あ、初めまして。中田桜です。今はまだ遼の友達です」
「今は、まだ?」
もうなんかやばい雰囲気を出しているんですけど。とりあえず花にも挨拶をさせないと
「花、自己紹介をしなきゃ」
「そうですね。私は瀬戸内花。遼さんの妻になる予定よ」
こんなところで宣戦布告してどうするんだよ。それに明らかに自分のほうが立場が上のような言い方だな。
「へ、へぇー、そうなんだ。遼の彼女だったのね。ごめんなさい、知らなかったわ」
「いえ、"まだ" 彼女ではないですよ。でも遼さんは必ず私のものになるわ」
花の表情やセリフ一つとっても狂気を感じる。やはり二人を合わせるのは失敗だったか。
「花、落ち着いて。それぐらいにしないと桜も困るだろ」
「遼さんはその子を庇うんですね。そうですか」
そう言ってなにやらかばんの中を漁りだす花。もう嫌な予感しかしない。
「遼さんが私だけを見てくれるように、この女は死ねばいいんだ!」
花がかばんから何かを取り出し桜の前で腕を振り切った。一体何をしたんだ。
「え?」
次の瞬間、桜の首からは赤い鮮血が噴水のように噴出した。
「あっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
自分が何をされたのか気がついた桜はパニックを起こし血を噴出しながら暴れまわる。一成や姉さん、他のメンバーはその光景に目を奪われて誰も動けずに吹き出る血を浴びる。
「あはははははは!遼さんこれで私だけを見てくれますよね?」
俺も桜の血を顔に浴び目の前は真っ赤になっているのだが、何が起こっているのか理解が追いつかず頭が真っ白になる。
花が持っていたのはサバイバルナイフ。こんなものどこで手に入れたのかわからないが確実に銃刀法違反だ。
「さ、くら……」
目の前では血を噴出した桜が苦しんでいる。あれ?こういうときどうしたらいいんだっけ?このままでは桜が死んでしまう。桜が、死ぬ、嫌だ!
「桜!」
みんなが放心状態の間に桜は地面に倒れ小柄な体が小さく痙攣している。そんな桜を抱きかかえるが血が出すぎている。もう助からないだろう。
「あれ?遼さん、何でそいつに優しくするんですか?もう虫の息じゃないですか?」
「花……何をしたかわかっているのかっ!?」
「私と遼さんの障害になるやつを殺したまでですよ。何か悪いことでもしましたか?」
もう花はだめだ。ヤンデレもここまでだとは思わなかった。桜を殺したのは俺だ。俺が二人を会わせてしまったからだ!
「うーん、それ以上そいつと一緒にいるなら遼さんも殺してしまいますよ?」
「なん……だと……」
「だって私よりもそいつのほうがよかったんでしょ?私のものにならない遼さんなんていらないです。ではさようなら遼さん」
花が俺の前で再び手を振り上げた。ナイフを持った手だ。
俺の喉が切られた。血が吹き出る。俺も桜と一緒に死ぬのか。だがせめて、せめてこいつだけは道連れにしてやる!ただでは死なない!殺してやる!
血を噴出したまま花に近づき右手に持っているナイフを無理矢理奪う。花も俺が立ち上がりナイフを奪うとは思っていなかったようだ。驚きの表情を隠せない。
と思ったのだが、次の瞬間花はうれしそうな顔をしてまるで殺してくれと言わんばかりに自分の胸を差し出してきた。
「遼さんに殺されるのなら私はうれしいです。これで死んでも一緒ですね」
何を言ってやがる。お前だけは地獄行きだ。死んでも一緒になんてたまったもんじゃない。
もう目が見えなくなる手前最後の力を振り絞り、花の首目掛けてナイフを突き刺した。心臓だと胸が邪魔して殺せないと思ったからだ。
最後の光景が喉を刺され殺されるにも関わらず笑った顔の花。もう完全に狂っている。そして最悪な最後の光景だ。
こうして学園前に三つの死体が並ぶこととなった。
今世紀これ以上の事件はないだろうとその後処理した警察官は言ったそうだ。