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チンジャオロースー(青椒肉絲)

作者: 色原 理音

いらしてくださり、ありがとうございます。

ふだんから、肉はがっつり、たくさん食べたいと思う方だ。

けれども、チンジャオロースーに関しては、あまりそういう気持ちにならない。

牛肉と野菜とを一緒に食べたいなあ、と思うときに中華料理屋などで頼む。


まずは厨房でジャアジャアと材料を炒める音を聞くところから、もう食事が始まっている。

そしてしょうゆやオイスターソースの香ばしい匂いがほんのりただよい、「お待たせしましたあ」と店員さんが湯気の立つ皿を持ってきてくれる。


細切りの牛肉、同じように細く切られたピーマンとタケノコが、いかにも油、というつやつやした照りをもって皿に盛られている。

はしでつまみ、やけどせぬよう、息を吹きかけて口に運ぶ。


すると、焼き肉でもステーキでも味わえない優しいとろみとともに、しょうゆや塩コショウ、そして牡蠣かきのうまみたっぷりのオイスターソースがみた牛肉の味が口いっぱいに広がる。


とろみは、牛肉を炒める前に片栗粉や小麦粉がまぶされているせいかもしれない。

チンジャオロースーは作らないけれど、家で肉を炒める前にも薄く片栗粉をまぶす。

片栗粉をまぶした方が、肉の水分が保たれ、カラッカラにならない気がする。

ただし火の気や、あまりないとは思うけれど粉塵爆発ふんじんばくはつには充分な注意が必要だ。


私が食べるチンジャオロースーの肉は、細くても、牛肉。

しょっぱい、にも、甘辛い、にもおさまらない味がどんどんにじみ出てくるので噛みがいがある。


同時に、ピーマンの青くさい、でもみずみずしい苦み、タケノコのシャキシャキした食感とほのかな甘みが味を重層的なものにするのだ。

ピーマンやタケノコが牛肉の味を引き立てる、というのではなく、三位一体さんみいったい、という感じだ。


牛肉は大好きだけれど、チンジャオロースーに関しては、必ずしも牛肉が主役でないのにおいしいところも好きだ。

ネギやショウガが入っていると、いっそうピリ辛感が増して、それはそれでいい。

額にじんわり汗をかきながらも、体がゆるむ。


ほわわわぁあん。


それにしても、オイスターソースを作り出した人はすごいな、と思う。

山の幸と海の幸の味が、無理なく溶けあったものを食べられるので。

野菜がたっぷり入っているためか、脂っこいわりに、チンジャオロースーのあと味はさっぱりしている。


なお、昔、美しい中国人のマダムが箱に描かれたチンジャオロースーの合わせ調味料が売られていたように思ったけれど、それはどうも記憶違いのようだ。

マダムの名をかんした商品は、ラーメンだった。


ここまでお読みいただきまして、どうもありがとうございました。

ご来訪に心から感謝いたします。

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