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なんだか問題点がありましたが大丈夫そう


「さてと……それでこれからだな」

 そういってオレは周囲を見渡す。

 さんざんな騒動があったがこの部屋の探索でもしようとなった。

 何かしらの秘密でもありそうだしそれがなくても様子を見てみよう。

 何もないなら休憩しようという意思だ。

 何しろあんなことがあったのだ。

 精神的には披露しているのだ。

 この体験型のゲームじゃないにしても精神的な疲労はバカにできない。

 操作の結果次第では何がおきるがわからない。

 この体験型ならばなおさらだ。

 さらに言うならいつ、現実に戻れるかはわからないというのも大きい理由になるだろう。「とにかくついでだからここを見てみよう。

 なんか休める場所として便利すぎる場所だからさ」

 そう言ったのはハヤテだ。

「どういうこと?」

「こういう場所。単純に考えたらセーフティーゾーン……。

 モンスターに襲われない休憩ゾーンという可能性もあるんだけれどさ。

 ほかにも可能性として隠し通路がある特殊なギミックが隠されている。

 そういった場所があるんだよ。

 こっちの利益になったりするならともかく、最悪。モンスターハウスになる可能性もあるからな」

 モンスターハウス。

 ゲームなどでたまにきくトラップの一種だ。

 ある一室に入るとその瞬間に閉じ込められる。

 そしてそこから出たくても出れない。

 さらに大量のモンスターに襲われるというものだ。

 体力があったりモンスターのレベルが低かったりして万全の準備があるならばよい経験値稼ぎの場所になるだろう。

 だが、疲労していたり予想外。さらにモンスターのレベルがけた外れだった場合はそこはゲームオーバーへの入り口になるというわけである。

 確かにそれはご遠慮したい。

「最初からモンスターハウスだとわからないって場合もあるの」

「ああ。特定の条件があったりな。

 主なのは宝箱を開けたらそれが罠だったってパターンだけれどな。

 強敵モンスターを倒して宝箱を手に入れる。

 けれど宝箱にはトラップが仕込まれていていくつかのトラップを解除。

 けれども最後の最も凶悪な罠が宝箱がある部屋がモンスターハウス。

 そんなことだったりするのもあるな。

 それでうまく勝てたとしても宝箱が空っぽとかいうのもある」

 それはあんまりだなぁ。

 ハヤテの言葉に全員が絶句したがハヤテによるとありえないわけではないそうだ。

 ゾッとしない話である。

 なのでこういったゲームだとそういったのは調べるものらしい。

「まあ。ゲームの難易度とか考えるとここはまだ序盤だしダンジョンも初心者も入るダンジョンだ。ダンジョンが奥になって奥深い方になれば話は別だけれど……。

 ここならたぶん大丈夫だろうと思うけれど」

 そうハヤテは言いながら周囲を見渡す。

「こういうのを探索にたけているやつも欲しいよな」

「欲しい人材なんていくらでもいるだろ」

 ハヤテの言葉にオレは言う。

 人材というのはいくらいてもかまわない。

 基本的に人材というのは何かしらの長所と短所がある。

 その長所をどれだけ生かし、短所を長所へと変えることができるか。

 それが大切なことだと思う。

「まあ。確かにな。

 こういったゲームってやっぱりいろんな職業を集めてとかそういうのがあるからな」

 そうため息をつくハヤテ。

 人材を集めるというのはあるし俺達の目的はこの世界からの脱出だ。

 何が必要になるかわからない以上、戦闘に必要な職業も必要だろうが生産にたけたもの。あるいは探索や調査にたけた職業必要だろう。

「とはいえ、あくまで俺達のぶんだしなー。

 まあ。俺達はできることをできるだけだな」

 そう言うと俺達は休むことにした。

 そしてしばらく休んでから探索を続ける。途中、モンスターに会うがヴァイオレットは足手まといでもなく問題なくパーティーを組むことができた。

 むしろ順調というか周囲の空気を読むことができることができていた。

 おそらくあの面子のしりぬぐいをしていたのだろう。

 そそれゆえに周囲の人間の様子を見ることが得意なのだろう。

 相手の顔色をうかがうことになれているからそう言ったのが得意なのだろう。

 だが、その分だけ自分がと前に出ない癖がある。

 おそらく主張せずにという性格になってしまったのだろう。

「なんというか補佐としては優秀だけれど前に立って戦うタイプじゃないな」

「えっと……何か問題があるかな?」

 俺の言葉にヴァイオレットは困ったように尋ねるので、

「まあ。別に際立った問題じゃないんだけれどな。

 ただちょっとな。まあ。そこは俺が何か言う権利はないんだろうけれどな」

 そう俺は言う。

 おそらく彼は自分から何かを行動できない。

 主張できずにただ誰かの後始末をする。

 それも誰かをいさめたり不愉快にさせることはできないのかもしれない。

 それはおそらく長い間の環境によるトラウマのようなものだ。

 けれど俺もトラウマがある。それをあれば何も言えないのも事実だった。

 そのことを言えば何も言えないので黙っておく。

 しかしそれを考えると何とも言えないのも事実である。

 トラウマというのはすぐに治るものじゃない。

 俺だってそうだ。

 長い年月を生きていたがいまだに女性に顔を見られるのを嫌だ。これでもだいぶ、マシになったものである。今はサングラスやマスクなどをしていれば大丈夫だ。

 だが、ひどいころ……小学生のころなんてひどかった。

 顔を見られるのが嫌だ。

 ある意味では自意識過剰かもしれないような考えだがそういった感想。それがあったことから髪の毛を長く伸ばして顔を隠すようにしていたり常に仮面をつけていたりしていた。常に仮面をつけているようであり人に関わることも嫌う。

 トモダチのいない寂しいというよりも異端というべき子供だっただろう。

 そんな過去を知っていながらいまだに友人を続けているハヤテには感謝している。

 とにかくそんな中でも異母姉と疾風がいたことから俺は多少は、社会に溶け込めている。まあ。このままだとオレはちゃんと学校に入学できるのかはわからない。

 高校に入学できたのも奇跡のようなものだ。大学にははたして入学できるのか? それも怪しいし就職も難しいだろう。

 まあ。最近は在宅ワークなどもあるしフリーランスの仕事もある。

 できることならば義母姉を安心させるように収入の安定した職業を務めるべきなのだろうが子のトラウマは難しいだろう。

 なのでオレの方は何も言わない。

 むしろヴァイオレットのトラウマよりも俺のトラウマの方が問題があるしな。

 そう思って黙ったのだが、

「いや。そういわれると気になるんだけれど」

 そういわれてしまったので、

「不愉快になる指摘かもしれないぞ。

 お前は自分から率先して動くところがない。

 あえていうなら常に他者のフォローをして自分が決定打を打つのを嫌っている。

 目立つというよりも注目されない方法を選んでばかりだ。

 多分だけれどお前はさ。あのバカ共のしりぬぐいをしていた。

 そのせいで無意識でその面倒を見ること。自己主張をしない。

 そういった癖がついているんだと思う」

 そういうと忌々しそうに顔をしかめるヴァイオレットだが、怒ることはなかった。

「あー。かもしれないな。

 確かに思い返せばあの時ああすればな。そう思う方法もあったんだが、あの時にそう動くことができなかった。

 どれもオレが率先して動くというか目立つ手段だった。

 あいつらと縁を切ろうと思っているのにこれか」

 そうため息交じりにヴァイオレットはつぶやいたのだった。

「まあ。習慣なんてそうそう変えることなんてできないもんだろ」

 そういったのはハヤテだ。

「例えば、俺はさ。朝起きると必ずスマホゲームでログインボーナスを取る習慣がある。それってこのゲームの世界でも変わらないんだよな。

 ついついスマホを探してしまっていたりする。

 まあ。あんまり眠った気がしないからなんだけれどさ。

 おかげでしばらくの間は、朝に落ち着かなかったんだよな」

 現実ではログインボーナスがもう途切れたんだろうな。

 そう嘆きながらハヤテが言う。

「まあ。ログインボーナスはさておいてさ。

 朝はご飯を食べるって人は必ずご飯を食べている。

 何かの拍子に朝ごはんがパンだったりするとたまにならともかく毎日だと落ち着かない。そんな人も多いんだよ」

 ちなみにオレの家は朝はパンである。

 昼食はそれぞれコンビニだったり学食だったり食堂だったりする。異母姉さんに至っては取材などで遠出することもあるのでお弁当で食べる必要がないことも多いのだ。

 そのために朝は基本的にパンに野菜ジュースにフルーツに目玉焼きとベーコンという組み合わせである。たまに合宿や旅行などで朝食がご飯だったりするとちょっと新鮮な気分になったりしたものである。

 だが、それらは非日常の延長だ。

 毎日の習慣となっていると逆にしていないと落ち着かない。そんな感じだろう。

 特にヴァイオレットのは、ほぼ無意識レベルの行動だ。

 食事前にいただきますという。家を出るときに鍵をかける。服を着るときにパンツをはく。そういった半ば無意識でありたまにちゃんとしたっけ? そう終わってから自分の行動に疑問を感じてしまう。

 そういったレベルでの行動だったのだ。

 だからこそ無意識でそれをしてしまうというわけだ。

「お前も意識していたわけじゃないんだろ。

 ならそれは癖みたいなもんだよ。

 オレもゲームとかでついついこうしてしまうとかあるんだよな。

 それが迷惑をかけてしまったり不快にさせてしまう癖というわけじゃない。

 それならそこまで自己嫌悪しなくてよいんじゃないかな。

 治したいと思うのならそれは止めないし協力する。

 けれどそれを泣くほど嫌がることはないと思う」

「うちもそう思うで。

 別に嘆くほど恥ずかしいことやない。

 そりゃ嫌な過去を思い出させることやろうけれどな。

 どんなことも使い方次第や。

 ダイナマイトが本来、採掘に使うためのもので沢山の人をたすけるもんやった。

 それやのにそれを使って人を殺す兵器にされてしもうた。

 そういったのと同じや。どんな技術や能力も使い方次第や」

 そうカエデが笑って言ったのだった。

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