ダンジョンからの帰郷 そんでどうする?
お久しぶりです。一か月ぐらい間が空きました。申し訳ありません。
ダンジョンから帰ってきた俺たちは、宿に戻りひと眠りする。
ちゃんと、眠る感覚があったら疲れもとれたのだろう。とはいえ、とにかく人休憩をして、俺たちは荷物の整理をする。
いくつかのレアな素材があるのだが、この素材は鮮度がある。鮮度次第で売り上げの値段の違いも変化する上に、調合の可能性ぐらいも変わるというわけだ。
しょうがないので、ノートにどこでどんなものに手に入ったのか。どんな魔物から、どんな攻撃で手に入ったのか? と、いうことをメモをしてまとめていく。
そして、食事を食べる。
久方ぶりのちゃんとした料理。少しだけ贅沢をしてから、俺たちは不要な品を販売していく。そして、作戦会議だ。
「これから、どうする。ダンジョンをさらに進むか?」
正直な話、中ボスの時はとても大変だった。
大量のアイテムを使ってギリギリ勝てたようなものだ。
「最初からもう一度、冒険をして言って経験値を上げていく。
あるいは、これからどんどんと進む。
もしくは、別の町へと向かう。
どうする?」
「ユウの意見は?」
俺の質問に質問で返すクレセント。
「俺としては、町での聞き込みから察するにだけれどな。
ここの三つのダンジョンは大きなダンジョンだ。
おそらくだが、ここを完全攻略するのは簡単じゃないはずだ。
他のダンジョンに行って鍛錬をしてみるのも一つの手だ。
ここは交易の要だからな。
もう二度と来ない。と、言う可能性はない。
だから、無理にここをクリアすることにこだわる必要はない」
正直な話、水の都市へと向かうのに必要な可能性のある水中呼吸アイテム。それは、手に入れることができた。
それを考えるに、ここで一旦やめるのも一つの手段だ。
そう思って言うと、
「それやけれどな。うちは、ちょっと買いたいものがあるんや」
と、カエデが口を開いた。
「買いたいもの?」
「そうや。うちらギルドで購入するもので馬車が欲しいんや」
「馬車?」
その言葉に俺は聞き返す。
「せや。馬車や。
馬車なら、たとえ遠出をしていても大丈夫やし荷物を入れる事が出来る。野宿も安心や。長期的にみたら大丈夫やし、大人数での旅も可能や。移動時間も減る。
これから、本気で元の世界に帰る。それを、考えるなら足は必要や」
「なるほど」
理屈はわかった。
ゲーム……これが、オンライン型と呼ばれるネットで無数の人間がプレイするストーリーのないゲーム。それじゃなければ、冒険を続けていれば勝手に、移動アイテムを手に入れる事が出来るようになる。
もちろん、それを手に入れるにはイベントをクリアする必要がある。だが、たいていはそれはストーリーを進めていれば必ず遭遇する。
だが、これはオンラインだ。
「じゃあ。買い物だな。
冒険に必要な品を見繕って、どのくらいの金額になるかを調べるだな」
確かに馬車は欲しいものだ。
「まあ、問題は馬車の能力と価格だな。
それに、馬車を操るのにスキルが必要の可能性がある」
「あ、なるほど」
と、俺の言葉にハヤテが言えば、
「どういうことです?」
と、スプリングが尋ねてきたので俺は説明をする。
オンライン型などでは、あまりないがテーブルトーク系ならばあるのだ。
「あ、そう言うこと」
と、納得したのはクレセントだ。
「テーブルトーク?」
「あー。オンライン型のこれに近いな。
ペンと紙にサイコロ。それと、ルールブックさえあれば、たいがいにできるゲームだ。キャラクターをルールにそって作っていき、ストーリーをゲームマスターが作っていく。
それで、予想外の出来事が起きたりすることもあるんだよ」
いろいろとパターンがあり、有名なのではクトゥルフ神話をもとにしているやつが有名だ。俺も一度、姉さんの仕事の手伝いでやったことがある。
地味に精神にくるゲームだったことを覚えている。パソコンなどがないので、本当に面白く予想の斜め上をいく行動もお互いに取ることができるのがすごい。
とにかく、そのゲームの中には車の運転をするならば免許が必要。と、言うリアリティもあったものだ。
だから、
「馬車を動かすのに馬を購入する必要もあるかもしれない。そして、馬を操る騎手としての技量が必要かもしれないな」
「なるほどな。なら、馬車はやめるんか?」
俺の言葉にカエデは納得したように言う。
馬車があったとしても、使えない道具だとしたら使えない。しかも、馬車となればひょっとしたらアイテムボックスに入らない可能性だって高いのだ。それを考えると、購入を躊躇してしまう。けれど、
「いや、この世界はひどく現実的だ。
馬車の相場を調べておいた方がよいだろうな。
購入して必要なスキルなどを調べる。そうした方が良いと思うな」
と、俺は静かに言う。その結果、俺たちは今日は買い物になった。
状況になったら馬車を購入したりすることになるだろう。
そう思いながら俺たちは馬車を売っているお店にやってくる。
お店にはたくさんの馬車がある。シンプルな屋根なしの馬が一匹でひく小型の馬車。屋根があって、寝泊まりも可能な馬車もある。
豪華絢爛な飾りがある馬車などもある。
「この無駄に豪華な馬車ってなんの意味があるんだ?」
と、俺は周囲に宝石が飾り付けられている馬車を見ながら言う。
そこに、
「どうもー」
と、現れたのは一人のちょび髭男性。
「お客さんら冒険者ですか?」
「ええ。馬車を購入を考えているんですが相場がわからなくて、ほかにも馬車を使う上で必要なスキルなどを教えてください」
「了解や。馬車を使うならば馬も購入する必要があるな。
あるいは、魔物を使うな。魔物の強さと大きさによって魔物を使うことができまっせ。
……まあ、ゴーストやフェアリーは向いてませんが」
だろうなー。と、俺はメロンとモルトを見ながら苦笑交じりに言うちょび髭の言葉に納得する。第一、メロンもモルトも馬車を引っ張れる力はなさそうだ。ウィンディも小さすぎて不可能だろう。
「一般的には動物系の魔物が主体とされてますな。
馬を売ってはいますが、馬を操るには騎馬スキルが必要や。
騎馬スキルは、騎士が職業ならすぐですが他の職業はそれなりに時間がかかりますな」
なるほど……。
「とはいえ、馬は臆病な生き物や。
魔物との戦いやとすぐに逃げ出してしまう。冒険者が馬を使っての旅はあまりおすすめしませんで。下手をしたら馬が驚いて逃げ出してしまうわ」
「それじゃ、行商人とかはどうしているんですか?」
「街道ならまだ、大丈夫や。街道付近に来る魔物はあまりいないからな。
けれど、冒険者はダンジョンや森に入るやろ。
そこなら、無理や」
なるほど、納得した。馬が臆病というのは聞いたことがある。馬は意外と繊細らしい。かつて、織田信長が火縄銃を使ったときに、その銃声で馬が錯乱してしまった。と、いう話を聞いたことがあるほどだ。
戦争で使われる軍馬はそれように育て上げたそうだが、当然ながら高いだろう。それなら、魔物を使う使役する力を使うのが早いだろう。
とはいえ、馬車を操ることができるような魔物がいない。そうなると、購入は見送った方が良いだろうな。と、俺は判断する。
言ってはなんだが、馬車は車のようなものだ。即断即決で購入できるものじゃない。だから、冷やかし扱いはされないと思うしな。
車と同じようなものだ。車だっていろいろと見比べていろいろと考える。そもそも、車の購入には高確率でローンを組む。即金で買える人間というのも少ない。
そう思いながら、俺たちは馬車を見ていく。
馬車の中には中にクーラーボックスがあったり、専用の魔法箱がついているのもある。
「この魔法箱っていうのは、要するにものをたくさん、いられるんだよな」
「ええ。冒険者の方々の必需品といってもよいな。備え付けなので大増量に入れることもできるんや」
と、ハヤテが確認をしている。
大きさは学校の跳び箱の五段分ぐらいだろう。かなり大きいがその分だけ容量は大きくしかも、保存がかなり効くようになっているそうだ。
クーラーボックスも保存効果があり俺たちが手に入れているしなよりも上等だ。ただし、当然ながらその分だけ金額は腰が抜けそうになるほど高かった。
「すみません。冷やかしのようですが、いろいろとみて考えさせてください。
それに、何しろお金も足りなくて」
「いえ。気にしてませんわ。
馬車はやっぱ高額やからな。ものによったら、馬車の購入はあきらめてレンタルという手段もありまっせ」
どうやって返すんだろう? と、思ったがなんでも町ごとに支店がありその支店へと馬車を返すらしい。借りた場所からの証明書をもらっており、それを返却することでわかる。ちなみに、この場合は魔法の契約書をつける。一定の期限以内に、返さないと犯罪として処罰されるそうだ。
……レンタルカーみたいなものだろう。基本として、借りた場所に返す必要があるが、ごくまれに……旅行用などにはそういうのがある。そういうのはたいていは、駅付近にあるのだ。姉は出張などで新幹線で移動する。そして、他県へと渡るときに車を借りる。わざわざ借りていた場所に戻るよりも、時間の短縮などを考えてそういう手段を使うのだ。
「まあ。ありがとうございます」
と、俺はお辞儀をして出る。
「うーん。馬車か……」
「借りるの?」
「いや、それも一つだがひょっとしたらなんでけれど」
俺の質問に俺はある仮説を口にする。
「ああ。あの手段か」
と、重度のゲーマーであるハヤテも思いついたらしい。
「つまり、商人の行商や仕入れ。あるいは、旅行客などの護衛だな」
「そういうことだ」
と、ハヤテの言葉に俺はうなずいた。
とはいえ、まだ冒険はしないでおく。冒険者ギルドに行き、そういう冒険がないのか? と、いうのを聞いてみると、
「はい。ありますが、行商の時期というのがありますからね。
ここ最近は、商売はあまりない時期ですが。あと、二週間もすれば商人が大移動を始めるはずです」
ちなみに、このゲームでも一週間は七日間となるのだ。
まあ、現実ではわずかなものである。
「なら、無理をせずにダンジョンに潜るか。
問題は、ダンジョンの中だと時間感覚がおかしくなることだな」
と、俺は言う。もちろん画面を広げれば現実世界の時間とゲームの世界の時間がステータスに写される。とはいえ、それでも限界はあるのだ。
アラーム機能があればよいのに、それもない。
「まあ、一定時間になれば自動的にゲームからログアウトする機能があったわけだからな」
と、俺はつぶやく。ゲームの世界で一週間。
そうなると、自動的にログアウトが近いというアラームがでる。
何しろ、そのゲームの世界でのログアウトができないのだ。そのために、そのアラーム機能がないので、それが使えない。とにかく、二週間というのもわりと難易度が高いな。と、思う。ゲームの世界での一日はわりとたつはずだ。
「大丈夫ですよ。ふつうは、たいていは多少の際はあれ行商の護衛などの依頼はあるはずです。なので、普通なので今の時期が珍しいのです」
と、受付のお姉さんが笑みを浮かべて言う。
それを言うならば、安心できる。
とにかく二週間。それならば、レベルアップや資金調達。それらを考えてまた迷宮に潜るのもよいかもしれない。
そういうことも手伝って、迷宮へと潜る準備をする。
アイテムを買い足して、必要な品をまとめる。
お金はギルドにためておく。
ギルドは銀行のような意味もあり、お金を貯めることもできればアイテムをまとめて預けておくことも有料だが可能だ。
この場合、預けたのは敗北になったとしても、なくなることはない。そういった利点がある。お金に少しだけ余裕があったので、預けておいたのだ。
そして、荷物の整理などをして食料なども調理をしておく。
ダンジョンで食べるのは魚料理が多くなるだろう。なので、肉料理を少しで野菜を多めなどにしておく。さらに、魚を調理できるようにしておく道具。主に塩を用意しておく。
……できることならば、塩だけではなく醤油も欲しい。とはいえ、このゲームの世界には醤油もみそもなかった。
日本人が開発したくせにみそも醤油もないのか! と、どなりたい。あいにくと、醤油の作り方もみその作り方も知らないので、俺は泣き寝入りをするしかない。
ため息をつきながらも、俺は保存食を作り終えてハヤテたちとダンジョンへと向かったのだった。




