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水のダンジョンへ あたららしいスキル(2)

私生活の方が忙しくなり、更新がめっさ間があきました。

待っていた方(が、いたら)申し訳ありません。

もろ事情で、更新がゆっくりになるのはかなり長いと思ってください。


 とりあえずいらないアイテムなどを売っていけば、それなりの金額になる。

 続いて買い物だ。出来ることならば、ここで食料を買いたかったのだが売っているのは、スキルだけだ。つまり、この人はスキルの専門行商人なのだろう。

「水中でも活動ができるようになるスキルとかないのか?」

「それは、限定的なスキルだからね。

 使えるかどうかも大切だよ」

「確かにな」

「けれど、このダンジョンの奥地に水中で呼吸できるようになる真珠を生み出すモンスターがいるらしいぞ」

 その言葉に俺たちは顔を見合わせる。

「まあ、真珠だけあってもだめだな。

 腕の良い彫金士がいないと意味がない。

 それに、ダンジョンの奥に行くのは大変だぜ」

「それじゃ、それに便利なスキルってなんや」

 と、カエデが話しを始めた。

「こういう交渉は商売人の仕事や。

 任せな」

 そうカエデは言うと交渉を始める。

「回復系の魔法がまずはほしいんやけれどな。

 あと、出来れば移動や。移動。

 ダンジョンの場所に戻れるようにすることはできるんか?」

「悪いけれど、俺は魔法屋じゃなくてスキル屋なんだ」

 どうやら、魔法は売って泣くスキルしかうっていないらしい。

 商品などを見ていくと、魔法使いでも使えるスキルもあった。

「これらなんかは、おすすめだよ。

 どの職業にも使えて、SPも使う心配はない」

 と、ブルークラウンが見せるスキル。確かに便利だが、

「せやけれど、高いやん」

 と、カエデが言う。

 そのスキルとは、МP自動回復スキルというのもあった。他にもHPの自動回復スキルというのもある。行ってしまえば、自動回復スキルだ。自動発動であり、対価は必要ない。回復量は低いみたいだが、確かに便利だろう。

 確かに万能であり、どんな仕事でも便利だがその分だけ高額だ。

 まあ、確かに高額なのもなっとくだ。自動的に回復するのはどんな職業であれ有効だ。それを考えれば、なるほどに否定はできない。

「安くても後々、役に立つ応用が利くスキルが必要だと思うぞ」

 と、俺は言う。

 そして、俺たちは一人一つという感じでスキルを購入した。

 俺が購入したのは、回復魔法だ。少量だが、それによって体力を回復させることが出来るようになった。回復がメロンに頼りっぱなしになるわけにはいかないからだ。

 疾風は鉄壁と言って、攻撃を完全に無力化する。と、いうスキルだ。こいつは、レベルがまだ低い現在では、わりとМPの消費が高いし、一度使うと違うスキルを発動させないと、またスキルを発動できない。と、いう制限はあるがそれを差し引いても、便利だ。

 盾役でもある疾風には確かに必要だろう。

 カエデは、会心の一撃というスキルだ。МPを消費しないスキルで、一定の確率で相手にクリティカルヒットを与えることができるようになる。と、いう技だ。とはいえ、それの確率が上がっただけだ。

 クレセントは、瞑想である。体力を回復させる技だ。ただし、この技は自分の体力しか回復させることができない。とはいえ、回復専門のメンバーがいないから助かる。

 スプリングはМP付与である。わかりやすく言うと、自分のМPを他者に分け与えることができるという技だ。どちらかというと、攪乱や支援系のスプリングだ。

 ちなみに、スプリングが当初は回復を覚えようとした。のだが、死霊術士では回復魔法を覚えることができない。と、いう悲しい事実が分かったのであった。

「ご愛用、ありがとうございました。

 ありがとうね。ご愛用を」

 と、ブルークラウンはそういうと空中バック転をする。

 すると、ぽん! と、いう音とともに紙吹雪が舞ってブルークラウンが消えた。

「不思議なやつね」

 と、メロンが言う。

「まあ、気持ちはわからんでもないな。

 おそらくだが、そういうキャラなんだろ。

 なんども、同じ場所に現れない。

 まったくの運しだいのキャラ」

 と、俺は言いながら疾風のウィンディにクレセントのエクリプス。

 二体は連れていると、幸運やらが手に入るモンスターだ。

 考えてみれば、この二体がそばにいるとレアなアイテムがやたらと当たる。

「こりゃ、途中で帰還となっても黒字になるかもしれないな」

 と、俺はつぶやいた。

 とはいえ、目的である水中での活動可能というのは難しい。

「まあ、とにかく無理しない程度にやるしかないな」

 と、カエデが言う。

「めざせ! 戦力! あるいは水中行動が可能になるアイテム!」

 と、俺が言う。

 そして、またもダンジョンを歩いていく。

 やがて見えてきたのは、それなりに広い部屋である。

 その奥の道には、青い水晶が光っている。

「……怪しい」

 と、俺は思わずつぶやいた。

「あれは、なんでしょうか?」

「多分だけれど、エリアボスの部屋じゃないか?」

 と、疾風が言う。

「エリアボス!?」

「ダンジョンの一角にある強敵のボスだ。

 前のゴーレムがボスならこいつらは、たぶん中ボスだな。

 あの青い水晶はなんなのかは解らないけれどよ。

 仮説ならあるぞ」

 と、疾風が言う。

 さすが、ゲーマー。こういう知識は豊富だ。

「ワープゾーンだよ。

 多分、入るとボスが現れる。

 ボスを倒すと、あの水晶を使って入り口に戻れる。

 また、入り口からここへ一瞬へ戻れる。と、いうシステムだ」

「なるほど」

 ダンジョンがある程度、長いならばあまりにも延々と続くのはゲームとして退屈だ。特にゲームの世界をリアル体験するようなこのゲーム。

 現実に変える必要なども考えると、そういうシステムは必要だろう。

 ……現実に帰りたくても帰れない状況だけれどな。

「なら、念のために体力や魔力を回復させてからするぞ。

 とりあえず、休憩をするぞ」

 と、俺はそう宣言をした。

 うまくいけば、脱出ができるが出来なかったらアウトだな。

 まあ、出来なくてもそろそろ限界だ。

 もちろん、このダンジョンに入ってからの地図を書いている。

 ここまでなら、最短距離でまた来ることができるはずだ。

 俺はそう思いながら、残っていた食料をすべて使う。

 睡眠があまり楽しめないこの世界。食事というのは、数少ない心の底から安堵できる娯楽の筆頭である。

 俺が作ったのは、ベーコンとトマトにハムを挟んだパンをそのまま、卵液に浸した変わり種のフレンチトーストサンドイッチだ。

 あと、野菜たっぷりの野菜スープだ。

「甘いのはないの?」

「いい加減に、甘味は限界が来たんだよ」

 と、俺は言いながらドライフルーツを渡す。

 乾燥させた果物であり、新鮮なフルーツの甘味はない。だが、乾燥させたことで水分が飛んでしまい、甘みが濃縮しているのだ。

 ちなみに、普通の果実は甘いものだが太ることはない。だが、ドライフルーツになると、太ってしまうことがあるので気をつけないといけないのだ。

 まあ、そう思いながら食事を食べていると、

「ああ。なんだ?」

 と、いう声がして現れたのは四人組のパーティーだった。

 剣士、格闘家、魔法使い、そして神官。

 と、絵にかいたようなオーソドックスなパーティーだ。

「こんなところで、なんで食事をしているのかよ?」

 と、言ったのは格闘家だ。男性であり、やや目つきの鋭い印象を感じさせる筋肉質な体つきの少年だ。

「あそこが、中ボスの部屋だからな。

 気力とかを回復させているんだよ」

 と、俺が説明すれば、

「あ、なるほどですぅ」

 と、答えたのは眼鏡をかけた三つ編みの少女だ。

 俺はさっと顔をそらす。

「? どうしましたか?」

「ああ。気にしないでくれ。

 こいつ、ちょっと女性恐怖症? なんだ?

 悪い奴じゃないんだ。ちょっと、いろいろと問題がある家庭でそだったもんでね」

 と、疾風がフォローする。

 やってきた四人のパーティーはまともなパーティーだった。

 剣士の名前は、ブレイブで、パーティーのリーダーだ。

 格闘家の名前は、ロックと言ってブレイブとはゲーム友達だそうだ。

 神官の名前は、さくら。眼鏡をかけた三つ編みの知的な印象の少女だが、かなりのゲーマーらしい。ゲーマーと言っても名うての実力者というわけではないらしいが……。

 逆に実力者として有名なのは、魔法使いの方でブロッサムというらしい。

「ブロッサム!? それって、あのブロッサムさん!」

 と、疾風が反応する。

「知っているのか?」

「ああ。伝説のゲーマーだよ。

 オンラインゲームでは、特に人気が高いしクオリティも高い。そんなゲームの上位プレイヤーとして名をはせている。しかも、ソロだ。

 で、彼女が作っているホームページによるゲームの評価。

 ゲームを始める上での指南盤と言われていてだな。

 彼女が五つ星評価を与えたゲームに外れ無し!

 それを、やらなきゃゲームプレイヤーの恥!

 そう言われているんだ。

 うわぁあああ。ファンなんです。

 握手してください」

 と、疾風が手を差し出す。

「ええ。いいわよ」

 と、ブロッサムが手を握る。……桜にブロッサム。どれも、同じ名前だな。と、疾風とは対照的に冷めた印象で俺はそう思っていた。

 だが、ほかのメンツはブロッサムという名前に、興奮している様子だ。

 まあ、考えてみればこのゲームに参加したのはゲーム業界の革新的なゲーム。それを、いち早くにプレーしたい。と、いうゲーマー達が大半だ。

 あるいは、ゲーム業界に大きくかかわる会社の子供たち。

 当然ながら、ゲームというのは基本的に対象は子供である。まあ、大人でもゲームをする人間はいるし、この手のゲームというのは長い間、していればしているほどレベルが高くなるというものだ。むしろ、お金がある大人の方がカモかもしれない。

 まあ、それはさておいておこう。

 とにかく、ゲーム好きにとってカリスマとか名プレイヤー。と、いうのは目を見開くような注目したくなるような相手なのだろう。

 とはいえ、俺のように例外がいるのだが……。

 そう思いながら、改めて桜とブロッサムを見る。

 ブロッサムとは、英語で桜を意味する。正確に言えば、チェリーブロッサムというべきであるが、チェリーはサクランボを意味する。とにかく、偶然にしては考えられない。

 それに、この状況では有名プレイヤーとなれば逆にそれは厄介のはずだ。と、俺は考える。有名プレイヤーとなれば、元の世界に返してくれるかもしれない。と、いう期待や、この世界が『ゲーム』なんだから、面倒を見てくれるだろう。と、いう思い込みをして寄生しようとするやつもいるはずだ。

 それらを考えてチームを組むのを躊躇する可能性もある。

 それに、名があるプレイヤーというのは厄介だ。

 ゲームの世界。それは、恐ろしい。実際のところ、ゲームでたとえゲームオーバーになってもこの世界では死ぬことはない様子だ。

 ……なんらかのデメリットを背負っている。と、いう可能性もゼロではないが、それはまだわからない。とにかく、ゲームの世界だ。と、思い込んで嬉々として英雄奇譚を始めるという可能性もある。

 英雄奇譚。それを、ゲームの中で勝手にやるならばそれは勝手にしてほしい。

 だが、このゲームの世界は現実だ。

 俺としては、元の世界に戻りたいのだ。

 あいにくと、ゲームがそれほど好きというわけではない。それに、俺が寝たきりになれば、姉はどうするだろうか? 俺を見捨てて、幸せになろうとするならばそれで良い。どうせ、俺が生まれたことで姉は真っ当な家庭の幸せを失ったのである。

 だが、姉がそれで見捨てるような人じゃないことも俺は知っている。俺たちは、おそらく入院されるだろう。そして、現実に戻そうと現実でも何等かの動きがされる。

 だが、その間はずっと俺たちは入院患者だ。それも、植物人間とほとんど同じようにであって、おそらく入院費は膨大になる。植物人間となった患者が、あきらめて延命活動を着られて本当に死人になる。と、いう話を聞く。これを、殺人だ。と、否定する声もあるが、遺族にしてみればいろんな意見があるのだろう。俺としては、身近に起きたことじゃないので、何とも言えない。と、いうのが本音だ。

 とはいえ、姉がもしも俺の入院費を稼ぐために生活が苦しくなる。と、いうことになるのは嫌だ。と、本気で思う。

 その時は、容赦なく見捨ててほしい。と、思う。

「……なあ、カエデ」

 と、ふと俺はカエデに話しかける。

「なんや。まさか、ここでこの戦いが終わったらうちと結婚したい。とか、言い出したりはせえへんよな」

「あいにくと、俺は永遠に独身のつもりだ。

 俺は女を不幸にしかしない」

 カエデの言葉に俺はそう即答する。

「いや、そこはそれは死亡フラグやないか! と、突っ込んでほしかったんやけれど」

「このゲームの脱出で長引くことになったら、延命治療が俺たちの肉体にされる。けれど、それもいつまでも長期間は無理だろう」

 と、俺は言う。

 その言葉に全員が黙る。

「なあ。この場にいる誰かが一人でも、元の世界……現実に帰還できたらさ……。

 姉に伝えてくれ。俺を生かすために、無理をしないでくれ。

 幸せになる足かせになりそうだったら、容赦なく俺を見捨ててくれ。ってな」

 ばっぎ!

 俺の言葉と同時に疾風に俺はぶん殴られた。

 ヒットポイントが容赦なく削られた。

 こういう形でも減るのかよ!

 あと、やっぱり痛いぞ。

「ふざけるなよ! ユウ!」

 一応、ここがゲームということもあり本名を呼ばない疾風。

「お前、いつまでも自分は死ぬべきだ! と、考えているんじゃない!

 いいか、どんな経緯があろうとどんな形で生まれてもだ!

 命っていうのは、生きるために生まれてきたんだよ!

 そして、生まれてきた以上、人間は幸せになるために生きているんだ!」

 そういって疾風は言う。

「お前は生きろ!

 生きたいと思え!

 そうじゃなければ、お前を生かそうと育てているお前の姉。

 ほかでもないその人を、バカにしているんだ!

 お前がその人を不幸にしているんだ!」

 と、疾風が叫ぶ。

「……行くぞ」

 それだけ言うと、疾風が歩き出す。

「疾風?」

「中ボスと戦うんだ」

 と、疾風は宣言した。

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