事件当日から一週間前 ゲームの世界の探索 ゲーム開始1日目(前半)
お久しぶりです。少し、忙しいので更新がかなりゆっくりです。
「おお。すげえ」
俺は思わず呟く。そよぐ風、靴から伝わる石畳みの地面。レンガ造りの壁に木でできた屋根で出来た家が建ち並ぶ町並み。そして、俺と同じくゲームの世界にやってきて興奮しているプレイヤー。
どれも、これも本物としか感じられないリアルを感じられた。
周囲を見渡して見れば、噴水の近くに掲示板がある。
掲示板には、この町の名前と地図がある。ゲームの都合上、かならず宿屋を知っておかないと困るからだ。とは言え、同時に沢山の人が集まっているので掲示板の周辺は混雑している。俺は噴水の近くの椅子に座って人混みが収まるのを待つ事にした。
どうせ、一週間の間はログアウトが出来ないのだ。
ログアウトするのは、本来ならばどこでも出来るがセーブデータなどが保存されるのは、宿屋。あるいは、ギルドと言うプレイヤーが購入した建物かテントの中である。
なぜなら、もしもそれ以外の場所でログアウトすると、肉体はそこにあって眠っている。と、言う状態として扱われる。そして、一定時間ごとに盗難に遭う。あるいは、体調不良を起こす、あるいは襲われる。と、言う事がありマイナス要素が増えて行く。
やけに現実的な要素が多いゲームである。
ちなみに、テントは有料で宿屋より高い。まあ、道具扱いなんだから無料で手に入るわけないし(イベントなら例外だろう)宿屋よりも便利がある。
建物を購入はもっとかかるが、その代わり利点もすごい。まあ、テストプレイ期間中に建物を購入出来るやつは居ないだろう。
と、俺は気になったことを認識しながらなにが出来るか調べていた。姉ちゃんの頼みもあるので、何ができて何ができないのかを調べるのは重要だ。
どうやら、脳内マップとかは無いらしい。町を歩いているだけで、だいたいのどこら辺なのかと案内してくれる便利機能だ。
たしか、このゲームにもダンジョンが存在するらしいのでダンジョンもマップを自動的に作ってくれる機能は期待できない。……メモ用紙とか売っているかな? と、思いながら俺は人の波が無くなった掲示板を見る。
この町は始まりの町『ファースト・バース』と、言うらしい。名前の横には、新たな可能性と新たな時を刻むために生まれた町。冒険者はここから旅立ち、そしてここから世界は広がっていく。と、言う文字が書かれている。
小さな町と言う設定らしく、噴水が中央にありお店は民家がまばらでほとんどが空き家。今、作られている町と言う設定らしい。だが、最低限に必要な武器屋や道具屋と言った冒険者が必要な店はここには全て揃っている。
他の町だと、宿屋は必ずあるが他のお店はあったりなかったりするらしい。
とりあえず俺は宿屋に行く。道具や武器などを購入するにしても、宿屋で泊まるお金は最低限、残しておく必要がある。やれ、道具やら武器やらを限界まで購入して冒険して体力を回復させようと宿屋に行って、お金が足りない。と、なったらただのバカだ。
宿屋にはまだ人気が無かった。
「いらっしゃいませ」
と、現れたのはNPCの店主だ。恰幅のよい年配の女性であり、給食センターのおばちゃんやお弁当屋さんでおまけをしてくれる女将さんを想像しろ。と、言われたら想像できそうな外見の人だ。
お母さん。と、呼びたくなる安堵感がある。美人じゃないが、母親と言うのはこう言う物なのだろう。あいにくと、お母さんと言うのには他人のお母さんしか知らないが……。
「おや、お客さんかい。まだ日は高いのに」
「いえ。宿の値段を知っておこうとおもいまして」
女将さんの言葉に俺はそう前置きをする。言ってしまえば、冷やかしだが……。
「ああ。そうかい。うちは、一晩10Mだよ」
1Mが一円として考えると安いが、セーブする安定の場所なのだから当然と言えば、当然かもしれない。俺は、また後で来ますといったらせいぜいがんばりな。と、応援された。最初から、そういう風に設定されているAIとはいえ応援されるとうれしい。
その後、道具屋と武器屋にいく。……やっぱり武器は高く、少し上のものを買うにしても全財産を出しても足りなかった。まあ、当たり前と言えば当たり前かも知れない。
レベルがたとえ低くても、攻撃力の高い武器を持てばわりと強くなる。まあ、こう言うゲームの場合は威力が高い武器と言うのは、そう簡単に手に入らない。
自力で作るか、あるいはなにかのイベントなどで手に入ると言うものばかりだ。
ゲームは好きではないが、姉ちゃんの影響でその程度の知識はある。
俺は武器を買うのを早々と諦め、道具を買う。
道具はどうせ、いずれ使うのだ。買っておいて、損は無いはずだ。
俺は宿代を七泊分である70Mを残して購入する。
下級体力薬 値段20M(10個)
HPを10回復する。体力回復の薬の中で最も下級であるが、その分だけ安い。とても苦い。液体。
下級魔力薬 値段40M(10個)
MPを10回復する。魔力回復の薬の中で最も下級であるが、その分だけ安い。ただし、体力薬よりやや高い。噛むと辛い。錠剤。
解毒薬 100M(3個)
毒状態を回復する薬。毒から回復する。とても苦い。液体。一部、解毒出来ない毒もあるので注意。
救済蜘蛛の糸 値段100M(1個)
最後に立ち寄った町に戻れる糸。ダンジョンで使う場合は、ダンジョンに戻る。戦闘中は使えないので注意が必要。毛糸玉。
攻撃力を上げたりする道具とかお守りもあったが、とりあえずはこれで良いだろう。
30Mほど余ったので、メモとペンを購入した。ペンはインク付きで20M。メモは十枚束の用紙で10Mだった。
とりあえず、それで購入した品についてなどをメモったり気が付いたことをメモる。道具を調べるとすぐにそれに対して、答えが出るのはありがたい。だが、鑑定はどう言うのに使うのかが謎だ。……推測では店で売っているアイテムなどは、説明があって店で売られていない……落ちている道具などは、鑑定が必要なのかも知れない。
あと、説明文にあった味……どうやら、薬などは無味無臭ではなくしっかりと味があるらしい。しかも、不味いようだ。
そう思いながら俺は外へと向かう。
普通、冒険者などに仕事を斡旋する場所があるはずだが、どうやらこの町は初心者の町であり、そう言うのは次の町などにしかないらしい。
ちなみに、次の町にいくにはやはり歩いて行くしかないらしい。この町は最近、出来たばかりの町らしく、徐々に発展していくので発展していけば冒険者に仕事を斡旋する冒険者相互協会と言う組合の支部が建てられるかもしれないらしい。
ギルドじゃないんだ。と、思ったがなんでもギルトは冒険者の集団であるらしい。冒険者相互協会で三名以上でギルドが作れるらしい。
俺はギルドを作るつもりは無いが、この手のゲームでは集団でやるのも一つの手段だ。そう思いながら、俺は町の外へと出た。
道があり草原が広がっている。
そして、冒険者がわいわいと行動をしている。
中には契約をしようとしている面子もいる。そんな中で、俺の前に現れたのは一匹のうさぎ……に似た異形が現れる。
手にはピンク色のオモチャのようなハンマーを身に着けた茶色い毛並みをした二足歩行のうさぎで赤いチョッキを身に着けている。
ばっと俺に殴りかかってくるそのウサギ。どうやら、戦闘になったらしい。ばっと、相手のステータスが浮かび上がる。
『スモール・ハンマー・ラビット 獣族 レベル3 無属性
HP20/20 MP10/10 状態・興奮』
鑑定とか判定とかしなくても、モンスターの名前や状態が解るのは便利だ。と、思う中でスモール・ハンマー・ラビットがハンマーをもって殴りかかってきたので、俺はとっさに避ける。魔法使いは物理攻撃に弱いのだ。俺は瞬時にスキルを発動を始めるための呪文を発動させる。魔法系列のスキルは発動するために、呪文を唱える時間がかかるのだ。
もちろん、本当に呪文を唱えるわけではない。魔法を使うと決めた瞬間に周囲に術式と呼ばれるコードが周囲に広がる。とは言え、低級の魔法は威力が低いかわりに詠唱の時間は短い。攻撃を避けてしばらくしたら、すぐに呪文が発動できる状態になった。
「ファイヤー」
唱えた瞬間に杖から炎がわき出て、スモール・ハンマー・ラビットに命中する。
ばしゅっと火が包み命中する。HPはかなり削られたが、決定打にはならない。そんな中で、スモール・ハンマー・ラビットのもっているハンマーが輝いていく。
なにかしようとしている。そう俺は判断すると、同時にさらに魔法を唱える。
唱えたのは、次はファイヤーではなくアクアだ。生まれた水の水球がぶつかってダメージを与えたが……、正直な話しファイヤーより威力が弱かった。
HPはファイヤーに比べると涙が出るほど、情けない威力だった。まあ、考えて見れば水の魔法なんて威力が弱そうだ。
俺としては、もしかしたら水中で呼吸を使ったり何もない空間で渦や大津波を起こせるかも知れない。と、少しだけ期待したのと火が使えて水が使えると万能な感じがしたからだ。こしかし、こうなると光の魔法であるライトもあとで確かめた方が良さそうだ。
と、俺は思う中でスモール・ハンマー・ラビットが殴りかかってくる。
先ほどまでと違うスピードに命中しそうになり辛うじて避けるが、かすめる。その瞬間に体に激痛が襲い掛かる。
『スモール・ハンマー・ラビットのスキル ラビットハンマーが当たりました。
かすめる事で威力が下がりました』
と、言う文字が浮かび上がる。
どうやら、モンスターもちゃんとスキルがあるらしい。考えて見れば、このゲームはモンスターと契約して使役する事が出来ると言うのが売りだ。
契約するモンスターがスキルを使えないと言うのは、つまらないだろう。
そう納得しながら、もう一度……こんどはファイヤーを使う。どうやら、ラビットハンマーは発動するのに時間はかからないが、発動した後にしばらくの間があくようだ。
おそらくだが、スキルの発動にはMP消費するだけのデメリットではなさそうだ。おそらく、スキルを連発してがんがん行くのは出来ないのだ。
まあ、これからレベルが上がって行くにつれてそれも変わるかもしれない。
と、思いながらスモール・ハンマー・ラビットが倒れる。倒れた後に、仲間になりたそうに見ている。と、言うイベントは無かった。
只単に、ラビットが仲間になりたい。と、思わなかったのか……。あるいは、そう言う形で仲間になるわけではないのかはわからない。
そんな中で地面に何かが落ちる。
『ドロップ・アイテム! 子ウサギのハンマー うさぎ肉(小)を手に入れた』
と、俺の手元に現れたのはアイテムだった。
どうやら、モンスターに勝利するとアイテムが手に入るらしい。とは言え、必ずというわけでもなさそうだ。と、どこかの誰か……素手で魔物を殴っているあたり、体術士だろうが、布と毛皮を手にいれていた。
『子ウサギのハンマー ドロップ・アイテム 道具 希少価値3 状態・良好
スモール・ハンマー・ラビットが持つハンマー。木製で軽く人間では使いこなせない。ただし、殴るとうさぎの顔マークがつくのが可愛いと言う事でうさぎ好きは集めたりしている。顔のマークはいろんな種類があるので判子としても使われている
うさぎ肉(小) ドロップ・アイテム 食材 希少価値3 状態・新鮮
ラビット・うさぎ・バニー・兎と名がつくモンスターを倒す事で手にするアイテム。どくとくの臭みのある小さなお肉。調理すれば食べれるようになるが、生では人間は食べれない。だが、モンスターの中には生でも食べれる』
と、言う説明文が浮かび上がった。
うさぎ肉は、俺が調理すれば良いだろう。たしか、調理は宿屋にある専用の部屋を使うらしい。彫金師・鍛冶をする作製部屋。料理や調合をする部屋の二種類の調理部屋がある。専用の道具を購入すれば、部屋を使わなくても良いらしいが購入するのにお金がかかる。
ちなみに、宿屋で使うのはお金は5M、使う。
だとすると、もう少しばかり稼いだほうが良さそうだ。と、俺は思いながら草原を適当に探索する。
結果として、この戦いの後にスモール・ハンマー・ラビットを3体。マンゴラ・チャイルドと言う植物系の魔物を2体を倒した。
『ゴンドラ・チャイルド 植物族 木属性』
と、表記されたこの魔物は茶色い大根が人間の形をしているような形で大きさは、子供らしく五歳児程度の大きさだ。虚ろな目の模様があり、髪の毛のような頭をうごめかしていた。どれも状態が興奮だったが、どう言う意味だろうか?
どうやら属性があるらしく、木属性は予想通りと言うべきか火の魔法を弱点としていた。逆に水属性の攻撃はあまり効果がなかった。
ちなみに、余談であるがライトの魔法は周囲を明るく照らすと言う夜や洞窟などには使えそうな魔法だが、戦闘には無意味な魔法だった。
まあ、レベルアップをしていくことで使える魔法になるかもしれない。
結果として手に入れたのは、うさぎ肉を三つ。子ウサギのハンマーを2つ。赤い布を二つ。兎の毛皮(小)を一枚。これらは、スモール・ハンマー・ラビットから手に入れた品だ。そして、マンゴラ・チャイルドからは甘い根っこを二つ。辛い葉っぱを一つ。しょっぱい花の蜜を一つだ。
『赤い布 ドロップ・アイテム 材料 希少価値2 状態・良好
魔物の一部が身に着けている布。得にたいした効果はないが肌触りがよく丈夫なので冒険者の装備に使われる。
兎の毛皮(小) ドロップ・アイテム 材料 希少価値3 状態・良好
兎・ラビット・バニー・うさぎと名がつく魔物を倒した事で手に入る毛皮。防寒に優れており、冒険者だけではなく服などにも使われる。ただし、小さいので服には使えない。
甘い根っこ ドロップ・アイテム 薬剤・食材 希少価値3 状態・新鮮
植物系のモンスターでスモール・チャイルド・ベビーと名がつくモンスターを倒す事で手に入る根。得に薬効はないが、薬などを甘くするためにも使われる。食材にも可能。ただし、甘みは薄い。
辛い葉っぱ ドロップ・アイテム 薬剤・食材 希少価値2 状態・新鮮
植物系のモンスターでスモール・チャイルド・ベビーと名がつくモンスターを倒す事で手に入る葉。得に薬効はないが、薬などを甘くするためにも使われる。食材にも可能。ただし、辛みは薄い。
しょっぱい花の蜜 ドロップ・アイテム 薬剤・食材 希少価値2 状態・新鮮
植物系のモンスターでスモール・チャイルド・ベビーと名がつくモンスターを倒す事で手に入る蜜。得に薬効はないが、薬などを甘くするためにも使われる。食材にも可能。ただし、塩っ気は薄い』
希少価値が4以上が出ないのは、はたまたここがまだ序盤だからか……。そもそも、何点満点なのかが解らない。……百点満点は嫌だな。と、思いながら魔力が無くなったので、俺は町へと戻ることにする。
ちなみに、戦ってレベルが一つ上がったのだが、体力などは回復しないシステムだったようだ。