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二番目の街での日々(1) にぎやかになっていく街


 俺たちがこの街に来てはや、一週間がたった。

 さすがに次の街にいくのには時間がかかりそうなので、ここで資金やスキル、レベルや情報などを収集している。

 そんな俺たちが、今いるのは、

「うーん。高いな」

「まあ、スキルですからねぇ」

 スキル屋というスキルを売っているお店だった。

 つか、買えるんだな。スキルと思ったのは余談だ。

 職業やレベル、さらに過去に受けた仕事や持ち物。さらに、すでに手にしているスキルによって買えるスキルが変動する。

 さらに値段も変動する。

 たとえば、栽培というスキルは薬剤師であるスプリングしか買えない。あと、買えるのは狩人だそうである。魔法使いなら魔法スキルは基本的に購入が可能だ。

 対して、騎士や剣士のハヤテやカエデなんかは魔法を購入はムリだったりする。逆に剣技のスキルなどは、俺は購入ができなかったりする。

 とはいえ、総じてすべてが高い。

 一番、安いスキルですら一万もするのだ。

 スキルを手に入れる方法というので一番、手軽で簡単なのがこれなのだがお金がかかる。と、いう欠点がある。

「このゲーム、スキルポイントとかないんだよなぁ」

「スキルポイントって?」

 ハヤテの言葉にきょとんとした顔で訪ねるメロン。

「レベルアップするともらえる特殊なポイントだ。

 そのポイントをためることでスキルを得ることができるというやつだ」

 と、俺が説明する。

 強いスキルは大量のスキルポイントが必要だったり、前もって特定のスキルが必要だったりする。まあ、こちらも特定のスキルがないと買えないスキルがありそうだが……。

 ハヤテなんぞそういったゲームの場合は攻略本を見て、どんな育て方でスキルの振り分けなどを真剣に考えていたりした。

 中には、スキルのレベルを上げるのもスキルポイントが必要らしい。

 閑話休題、

「まあ、俺たちじゃしばらくは購入できないなぁ」

「たしかに」

 俺の言葉にクレセントがうなずく。

「とにかく、他にも見て回ろうぜ」

 俺はそういってお店を出たのだった。

 しかし、つくづくとゲームの世界とは思えない。何しろ屋台まであるのだ。屋台では、ちょっとしたアクセサリーや装飾品のほかにも串焼きや焼きそばといった軽食も売っている。他にも花売りの子供もいる。

「そういえば、知っているか?」

 と、花売りの子供をみたときにハヤテが口を開く。

「花売りって風俗のこともいうらしいぞ。

 花を売るっていうので若い女性ならばそういう意味もあったんだ」

「なんで、今、いうんだよ」

 と、俺は頭をひっぱたく。

 見ろよ。女性陣の冷たい視線を……。

「いやな。お前がちゃんと女性に性欲をもっているかの確認を」

「俺は女を不幸にしたくないだけだ」

 だが、お前の発言は空気を読んでいないと思うぞ。

「第一、このゲームはR18じゃないだろうが」

 と、俺は言えば、

「ねえ。風俗ってなに?」

 と、メロンが聞いてきた。

「ハヤテに聞きなさい」

「俺が悪かった!」

 俺の言葉にハヤテが悲鳴を上げる。

 おそらく生後数か月もたっていない赤ん坊の、それなに? それなに? と、いう質問。それは、かなりたちが悪い。

 中学の時に幼稚園の子供と遊んであげよう。と、いうのがあった。

 その時の子供は、俺が女性と顔を合わせない理由を聞きまくる。聞きまくる。

 ハヤテが、父親の女癖が悪かったんだよな。と、言ったので余計に悪化した。女癖ってなに、女癖が悪いってどういうこと?

 それが、小学校高学年か中学生ぐらいならば言えるだろう。

 だが、まだあどけない。子供がどうやってできているのかしらない。

 女の子は、砂糖とスパイスに素敵なものをいっぱいで出来上がる。と、いうような迷信を信じてはいないが、詳しい仕組みはまだ教えてもらわない。

 そんな子供に、浮気だの不倫だの説明ができるわけない。

 当然ながら、ハヤテは子供に囲まれて保育士の方々に救出された。

 そして、ハヤテは子供の前での言動に気を付けるように! と、いう説教をされた。ついでに、俺は女性の顔を見ない理由を教えてもらい、幼稚園で違和感がないようにということでウサギの仮面をもらった。

 あの時の経験を忘れていたらしい。

 花売りの隠語をどうやってごまかすか?

 必死に考えていたハヤテを見かねて、俺は助言した。

「お前が大人になったら説明してやる」

「大人はいつもそういう」

「大人はそんなもんだ」

 不満げに言うメロンに俺はそう肩をすくめた。大人はいつだって自分勝手なのだ。

 他には卵屋というのもある。魔物の卵を売っている場所である。

 冒険者が契約をしている魔物やごくまれに、親が育児放棄をしたり倒されたりした魔物の卵が見つかる。それらを、見つけて売ったり逆に買ったりするのだ。

「へー」

「なるほど、これで卵を孵せば契約が可能ということやな」

 と、興味を持ったのはクレセントとカエデだ。

 二人ともまだ魔物と契約をしていないからこそ、早く契約をしたい。と、いう思いがあるのだろう。ちなみに、商品の値段はピンキリだ。

 さらに値段の理由もそれぞれだ。

 はっきりと魔物の名前がわかっていて安い。これは、魔物そのものが弱かったり育てにくかったりするものだ。あるいは、ポピュラーで普通に契約がしやすいのもここだ。

 あるいは、なんの魔物か不明というのも安い。運が良ければ強力な魔物が孵る。ただし、相性があり相性が悪ければ使いこなせない。運試しということだ。

 更に値段が上がったので、種族だけ。あるいは、レア度だけはわかるという情報が一部だけわかっているというのだ。情報量がわかれば、その分だけ値段が変化していく。

 細かい情報までわかっている奴だと、その魔物に見合って値段がつけられている。と、いうわけである。と、いうか……。

「魔物って卵から生まれるんだな」

 と、俺は植物族の卵をみながら言う。

 これが、鳥とかドラゴンとかならなっとくだ。妖精や昆虫も一応は納得ができる。

 とはいえ、羊の魔物や花の魔物といった哺乳類、植物といった卵から孵らないような魔物まで卵であるというのは……。

「そこまで、細かいことを指摘するなよ」

 と、ハヤテにあきれられる。

「えっとねー。ママが言っていたよ。

 子供は卵の中で外の世界で生きていけるまで守ってもらっている。

 卵は身を守るための鎧だって」

「なるほどそういう考え方もあるのか」

 メロンの言葉に俺は納得する。

 言ってしまえば、赤ん坊を守るための保護カプセルというやつだろう。

「だから、細かいことを指摘しすぎだって」

 と、ハヤテは言いながらそばに召喚しているウィンディの頬を撫でる。

 ウィンディは卵たちに威嚇をしている。

 自分の立場を奪われるかもしれないと警戒をしているのかもしれない。……感情表現が豊かなNPCノンプレーキャラ。そして、細かい設定。

 さらに、モルテやクレセント達の話。

 もしも、彼らの話が真実ならばこの世界の仕組みはきちんとしたゲームだからで済まないちゃんとした理屈が用意されているはずだ。と、俺は考えていた。

 とはいえ、ただ解明されていない謎。と、いう結果がある可能性もある。

 現実の世界でも、全てが解明されているわけではない。

 例えば、人間の遺伝子情報。人間を作る情報が全て記されている。それをすべて、解明出来たらその人の寿命や身体能力の素質。さらに、先天性の病気の有無まで判断ができる。と、言われている。

 だが、遺伝子がすべて解明されてはいない。

 子どもが生まれることだって同じだ。

 卵が産まれるのは、どうやって生まれるか? と、聞かれても困る。哺乳類は、おなかの中で子供を育てるが、どうして鳥は卵で産むのか? また、同じ哺乳類でもカモノハシは卵から生まれるが、どうして哺乳類なのか?

 そういった世界の神秘は数多い。

 魔物の卵もそうだったら、どうしようもない。

 世界には何か理由があるが、全ての理由が判明されているわけではない。

 宇宙や世界に神秘があるということだろう。

 と、俺は思いながら街並みを見ていく。

 武器屋では、武器を販売している。

 また、鍛冶屋もあった。

「どう違うのよ?」

 と、スプリングがあきれたように言う。

「うーん。聞いてみたらどうだ?」

 と、鍛冶屋にいる少年に聞いてみると、武器屋の武器は普通の武器。だが、その武器や自分での材料を使い鍛冶師や彫金士などが、改造や作製ができるということだ。

 その場合は、自分専用に作り直すことができるということだ。

「たとえば、魔力石を材料にすれば普通の剣が炎の属性を持つ剣にできる。

 あるいは、壊れた武器を修繕することもできる」

「あ、武器って壊れるんだな」

 と、俺は思う。

「当り前だ。

 あと、剣や刀などはちゃんと手入れをしておく。ここでは、手入れなどもしているぞ。

 剣がどれだけ痛んでいるかも確認ができる」

 と、言われる。要するに、そういった職業を持ってなくてもプロに頼める。と、いうことだろう。それは、助かる。

 何しろ、今、ここにいる冒険者は全員がテストプレイヤーだ。

 それぞれが、勝手なことをしている。

 だから、職業に偏りがあったとしても変化はないのだ。

「うーん。職業か。

 そういえば、この場にいる全員のサブ職業がないから支出が大きくなりそうだな」

 と、俺はうめく。

 俺は料理人。ハヤテは情報屋。カエデは商売人。クレセントは、考古学者。スプリングは遊び人だ。サブ職業などが変化できないのも問題だよな。と、俺は思う。

 その後に、住宅街へと向かう。

 住宅街といっても、ピンからキリまである。

 工房や宿屋など治安が悪かったりする場所は、家の購入金額が安かったりする。対して、住みやすい場所は購入金額が安い。あと、貴族や王族などがいる場所があるが、俺たちのランクでは入れなかった。

 ランクによっては居れる場所も町にはあるらしい。

「家も買おうと思えば、買えるのね」

 と、スプリングが言う。

「まあ、おそらくだけれどさ。

 大きなギルドになると、本部が必要だからじゃないかな?」

 と、俺は言う。

「俺たちのギルドは小さいし、今はテストプレイ。

 本格的に始動となると、ギルドが大きくなることはあるだろ」

「ああ。たしかにな」

 と、その言葉に納得するのはハヤテだ。

「ギルドっていうのは、集まりだからな。

 どこで話し合ったり、情報を交換する。

 まあ、チャットとかでも良いんだけれど、大人数でのクエストもあるけれど、人数が多すぎると逆に分け前が減ってしまうということもあるしな。

 本部を作っておいて、そこを拠点とする。

 つまり、拠点としての土地を売っているというわけか」

「まあな。ここは大きいし、わりと初心者が来るはずの都市だ。

 おそらくゲームが開催されれば、初心者がやってくる。

 初心者をスカウトするにも向いているだろ」

 と、俺は言う。

 最初の町を出て、ようやっと本格的な都市に来た。

 ゲームも本番ということも手伝い、楽しめるはずだろう。

 とはいえ、それは本来ならだ。

「まあ、高いけれどな」

 と、俺は言う。

 家を購入するのは高い。

 例外として家賃というのがある。

 宿代より高いが、一年ごとに契約を更新する形だ。

 ギルド名義で購入して、全員で折半するという手段もあるというわけか。

 ちなみに、ローンはなかった。

 ゲームの世界は即金性だったそうだ。

「まあ、とにかくお金だな。

 旅をするにもいろいろと欲しい品もあるし」

 と、俺は商店を見回していった。

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