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逃走冒険者(エスケープ・チャレンジャー) ゲーム世界からの脱出計画日誌  作者: 茶山 紅
事件発生 現実に帰れない現実と新しい街へ
21/54

新しい街での二日目(2) 逃走騎士団(エスケープナイツ)


「それじゃ、ギルドの名前だけれどどうする?」

「浪速のど根性」

「百合と薔薇の浪漫」

 ハヤテの言葉にカエデとスプリングが言う。

 ……どう言うセンスをしているんだ? と、言う思いが脳裏に浮かべば、

「どう言うセンスをしているのよ」

 と、クレセントが呆れたように言う。

「ええやないか。この状況、気合いが必要と言う事や。

 浪速の根性は最強やで」

 なにが、どう最強なのかは知らないが……。

 とにかく、それは嫌だ。

「で、百合と薔薇の浪漫の理由は?」

「GLとBLが好きだから」

「「「却下(や)」」」

 言われた言葉に思わず叫ぶ。

「GLとBLってなに?」

 と、メロンが尋ねる。

 GL……ガールズラブ。つまり、女の子同士の恋愛物の事だ。

 対して、BLはボーイズラブ……男の子同士の恋愛物の事だ。

 確かに、それを隠語の一つで百合とか薔薇とか言う。

 とは言え、

「悪いが、それはそう言う趣味の人間の集まりの場合だけにしてくれ」

 と、俺は懇願した。

 女を傷つけたくないし、なるべく頼みは聞くようにしたい。不幸にしてしまうのは確かなのだから……。なるべくそうならないように、気をつけている。

 だが、何事にも妥協できない事というのはあるのだ。

 メロンが、

「ちょっと! ちょっと! あたしの質問を無視しないでよ」

「魔境の事だ。

 一度、そこに入り込み奥へと行けば二度と戻って来れない。

 そこは地獄であり楽園でもある……そうだ」

 過去に一度、姉さんの頼みでそう言う系列のゲームをしてみたことがある。危うく変な魔境へと潜り込みそうになって、さすがに涙ながらに勘弁してくれ。と、頼み込んだものである。そのため、一通り……BLに対する知識はあるが……。

 深入りしてはいけないと言う事も理解した。

「魔境」

 と、言う俺の間違っていないが勘違いするように言った言葉にメロンは呻くように言った。……誤解しているだろうが、気にしないことにする。

「もうちょっと、格好いい名前が無いのかよ?」

 と、ハヤテが言う。

 まあ、ハヤテの言う気持ちも分からないわけではない。

「ここは、目的を考えて見ろよ。

 たとえば、そうだな。この世界で商売をしてみよう。とか、まあ……趣味について話し合いたいとかそう言うのなら、それでもかまわないと思う。

 けれど、実際には違うだろ。

 僕たちの目的は、この世界からの脱出だ」

 と、俺は言う。

 そう脱出だ。

「エスケープか」

 と、ハヤテが言う。そして、

「それじゃあさ。逃走計画とかはどうだ?」

「それは、格好いいの?」

 と、ハヤテの発案にクレセントがあきれたように言う。

 たしかに、目的は解るが……格好いいようには聞こえない。

「……エスケープナイツ……逃走騎士団はどうだ?」

 と、僕はしばらく考えて言う。

逃走騎士団(エスケープナイツ)?」

「そうだ。

 まあ、逃げるために戦うと言う意味だな。

 確かに俺たちは逃げだそうとしている。けれど、ただ戦いを恐れて逃げるんじゃない。

 現状を受け入れてその上で現状へと立ち向かう。

 僕たちの勝利条件がここからの脱出なんだから……。

 だから、逃げ出すための戦いだ」

 逃げるなんて臆病物かも知れない。

 だが、逃げる事も戦いだ。

「あたしは賛成。

 まあ、騎士団なんて名乗っているけれど……騎士は一人しか居ないのは洒落ているわね」

「別に良いだろ。リーダーはハヤテなんだから」

「なんで?」

 クレセントの言葉に僕が答えれば悲鳴混じりに驚くハヤテ。

「人付き合いとか誰かと仲良くなるのは、この中ではもっともお前が長けている」

「いや、まとめ役とかはユウの方が上手だろ」

「俺は参謀タイプだよ」

 と、ハヤテの言葉に俺はそう肩をすくめて言う。

 どちらかと言うと裏で糸を引くとかそう言うほうが俺のタイプだ。

「顔役は任せた。俺は頭をやる」

「なら、財政管理はわてやな」

 と、僕の言葉にカエデもそう言ってギルド名とギルドマスターも決まったのだった。

「だからなんで俺?」

 約一名は未だに文句を言っていたが、多数決である。

 民主主義とはそう言うものだぞ。

「さてと……続いてはこれからどうするかだな」

 と、冒険者協会に向かいギルド登録をする。

 そして、本部の机で適当に話し合いをしていた。

「どうするか……かー」

「ああ。ギルド登録した。目的はこの世界からの脱出。

 けれど、脱出するにはどうやるか? だ。

 あのハッカーは自分を倒せ。と、言っていたけれどどこにいる正体不明の相手は謎だ。

 どう言うことを企むと思う?」

「せやなー」

 と、俺の言葉にカエデが考えるように言う。

「このゲームが実はイベント……ちゅーのは、わからんな。

 とは言え、一時間が一週間と半日、四ヶ月と一週間。大体、そんくらいしたら、それが本当かどうか解るやろうけれど……。本来、この手のゲームは一時間以上は危険やしな」

「たしかに」

 と、カエデの言葉にクレセントが頷く。

「あー。聞いた事がある。

 脳に直接的に影響を与える。電脳架空世界(ヴァーチャルリアリティ)

 ただそれによる脳への負担や現実への虚無感。

 現実(リアル)虚構(ゲーム)の区別がつかなくなる。

 そんな事からこれの開発と共に医学学会とかから、一日に二時間以上のプレイを禁止するようにと言うお達しが出たとか」

 と、ハヤテが言う。

「……なるほどな。勝手にプレイ時間を増やしている。

 まあ、たしかにゲームにのめり込むんで廃人になるのはヤバいしな」

 と、俺も納得をした。

 ゲームの世界で衣食は出来ているが、それはあくまで架空の体験だ。

 実際の肉体では食事もしてないし、風呂にも入っていない。

 それを延々としていたら、たしかに生活に問題が出るだろう。

「まあ、それはさておき……。

 とにかくは、情報収拾が良いと思うわ。ハッカーがゲーム感覚の遊びの可能性もあると思うし」

 と、クレセントが言う。

「遊び?」

「ハッカーって言うのは、言ってしまえばパズルゲーム感覚の人とかが多いのよ」

 と、クレセントが説明を始めた。

「ハッカーって言うのは、言ってしまえばプログラマーの一種。

 ハッキング……言ってしまえば、外部からプログラムを弄くるやつの事。それは、並大抵の知識と技術だけじゃ無理よ。

 言ってしまえば、知能が高い人間と言う事よ」

「なるほどね」

「得にハッキングは妨害されるようにしている。その事も手伝って、知能がかなり高い人間と言う事よ。それを、考えるとハッカーと言うのは知能が高い。

 けれど、それで人に迷惑をかける。言い換えると、精神年齢が低い人が多いのよ」

 随分な言いようだな。と、思ったが黙って億。

「まあ、プログラマーと言うのはそう言う意味でも一芸に秀でている。逆に言えば、ちょっとばかりその……社会に不適合な所があったりするのよね。

 ハッカーとなると、それが得に酷い。だから、実際に出る方法をつくって居ると言うのは可能性としては、零じゃないわ」

 と、クレセントが冷静に言う。

「なんやずいぶんと詳しいな」

「……そうね。同じギルドになったし、ユウの過去も聞いたわ。

 それを、聞くからにはあたしの方も話す必要があるわね」

 と、クレセントが言う。

「このゲーム。

 ……あたしの兄がプログラムしたの」

「「「「「ええ?」」」」」

 クレセントの言葉に俺たちは驚きの声を上げる。

「つまり、このゲームを作ったってことは……あなた、あの会社。

 マロウッセ社の社員なんか? あんたの兄ちゃんは?」

 と、驚いたように尋ねるカエデ。

「違う! 兄さんは元々は、自分の小さな会社。

 四季社と言う会社をしていた。小さな会社だったけれど、兄さんはすごく一生懸命に作ってこのゲームをつくり上げていた。

 母さんと父さんが考えて遺した遺産と言うべき、このVRゲームシステムのためのゲーム。

 それをつくり上げるために、必死だったのよ。

 ようやっと……出来たと思っていた時に、あの会社が……無理矢理、奪ったのよ」

 と、歯がみしながら言う。

「……兄さんは……あいつらに殺されたようなものよ」

 その言葉に俺たちは息をのむ。つまり、こいつの兄は……。それに、遺産と言っていたゲームシステム。それを全て奪われたと言う事か……。

「じゃあ。なんで……」

「兄さんが作った作品だと言う事実まで奪われた。

 だから、あのゲームを作って……兄さんが作ったと言う証拠を見つけ出してやる。そう思ったのよ」

 と、クレセントが言う。

「なるほどな。……と、なると運営側はあんまり機体できへんな」

 と、ため息混じりに言ったのはカエデだ。

「カエデさんはクレセントの話を信じるの?

 あ、もちろん僕もクレセントの話を疑っている訳じゃ無い。疑っている訳じゃ無いけれど、証拠は無い。それに、お兄さんの遺言とか言葉だけだよね。

 知らない情報を組み合わせると誤解がある。と、言う可能性もある」

「言うな。ハヤテ」

 と、ハヤテの言葉に俺はしみじみと言う。

「自慢じゃないけれど、ゲーマーだからね。

 推理ゲームも得意なんだ。その影響で、ミステリードラマなんかも見るし」

「意外な趣味」

 と、 スプリングが言う。

「意外かなぁ?」

 と、肩をすくめつつ、

「で、ドラマとかだとさ。こう言うのって誤解とかもあったりするんだよ。

 何かの誤解……まあ、別にこの運営を否定したい訳じゃ無いんだけれどさ。

 僕たちはそれの真偽を確かめる手段はないんだ」

 スプリングの人柄は信じられる。だが、鵜呑みには出来ない。

 冷徹と言われそうだが、正論でもある。

 そんな中、

「いやな。そう言う事をしそうな会社なんや」

 と、カエデが言う。

「あそこの会社はなー。

 一言で言えば、こてこてのブラック企業というやつや。で、ゲーム会社ちゅーのは言ってしまえば才能しだい。

 あんまり会社の質が悪ければ、いくらでも独立可能や」

 と、言う。

 つまり、あの会社がこのゲームをつくり上げる技術は一から無い。

「せやけれど、財力とかそう言うのを使って……。

 まあ、アコギな手段を使って作品を奪い取って所有権を手にする。

 ちゅーのは、珍しく無いというわけや」

「なるほどなー」

 と、俺は考える。

「ま、あそこの技術者やプログラマーが作れる技量のゲームやない」

「まあ、真実はどうしても……。

 運営が期待できなさそう。と、言うのは真実だな」

「……どう言うこと?」

 俺の言葉にスプリングが首をかしげた。

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