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逃走冒険者(エスケープ・チャレンジャー) ゲーム世界からの脱出計画日誌  作者: 茶山 紅
事件発生 現実に帰れない現実と新しい街へ
16/54

 事件発生から二日目 旅立ち準備はゆっくりと出来なさそうです。

そろそろ、メインキャラが集まりそうです。


 ゲームの世界。レベルを上げて架空の分身(アバター)を育て上げ、もう一人の自分で現実では不可能な体験をする。

 たとえ、現実で友達一人もいないボッチくんでも、運動神経が悪い人でも、英雄や勇者になれる。それがこの手のゲームの醍醐味だ。

 辛い現実を忘れて楽しもう。と、言うのがゲームの基礎だ。

 そのゲームで俺たちは、

「まずは、お金だ」

 とても、現実的な問題に直面していた。

「このゲームは妙な所で現実的なんだよな」

 と、俺はため息をつく。料理を食べるには宿屋などで料理を買うしかない。あるいは、俺のように料理人のスキルを使って食材を料理するしかない。だが、

「料理するにも台所がいるからなぁ。旅路で料理を作るのは難しいんだよな」

 と、俺はため息をつく。

「たぶんだけれど、野外用の料理グッズとかもあると思うんだよ。持ち運び可能のカセットコンロみたいなやつ」

「あったとしても、売ってなければ意味が無いし……。

 売っていたとしても手に入れるのは簡単じゃないと思うわ」

 と、ハヤテの言葉にクレセントが呆れたように言う。

 たしかに、便利な道具と言うのは手に入れるのは簡単ではない。それこそ、売っているだけならお金を稼ぐだけで手に入る。だが、それだけではないはずだ。

 ヘタをしたら、特定のイベントをクリアする必要もある。

「とにかく、保存食の調達をかねて冒険を繰り返すだな。あとは、徒歩で何日ぐらい次の街に行けるのかを尋ねる。

 理想としては、アイテムの保管に食料は余裕を持って片道の二倍から三倍は欲しいな。

なにかのイベントがおきてまた、急にダンジョンに潜る羽目になったらしゃれにならない」

 食材は腐る可能性もあるから、保存が利く料理を作った方が良いだろう。料理のレシピとかも売っては居ないだろうか? と、思う。

「とにかく、お金かー。……世知辛いわね」

 俺の言葉にクレセントがため息混じりに言う。たしかに、ゲームの世界でまでどうしてこうも世知辛い思いをしなければならないのだろうか?

 やれやれとため息をつきながら、僕たちは歩き出す。

「草原にでも行ってみるか? また、ダンジョンに落ちる可能性もあるけれど」 

「わりと、気をつけて移動していれば良いだろ。

 それに、近場だし……ダンジョンならお金は手に入るからな」

 一応、念のためにと、済蜘蛛の糸(アラニェ・サリュ)と言うアイテムを持っている。

「食料を作っておくか……。

 それと、問題は保存食を作る方法だな。

 肉は無理だろうな」

 と、俺は言う。

 現実世界でも鮮度を保つのが大変なのは、肉や魚だ。干し肉、干し魚と言った品を作り出すのも一つの手段なのだろうが……あいにくと、料理は得意なのだが干物を作った事はないのだ。

 現代日本の冷蔵庫とは偉大な発明品であった。

 と、しみじみと思う。とにかく、肉類は火を通したとしてもおそらく常温では一日しか持たないだろう。この世界で、食中毒と言うのがあるかは謎が多いが……。

 料理のステータスに鮮度と言う項目がある限りだと、腐っている。

 と、言う表記もあるだろう。状態異常、食中毒とか腹痛と言うのは……思うに間抜け以外のなんでもない気がする。

 その点では、野菜だと保存が利くだろうが、それも種類による。

 人参やジャガイモ、小麦やお米と言った品なら保存が聴く。加工していれば、別だろうが……。それでも、保存食ぐらいなら売っているかも知れない。

「保存料理か……。ユウ。

 お前、たしか料理が得意だったよな。保存が利く料理とかしっているか?」

「ああ。知って居るけれど、俺のは家庭料理だぞ。

 それこそ、旅での料理が出来る……数日も保存が利く料理となるとあんまりな」

 果実の蜂蜜付けやジャムなら作った事がある。だが、それを主食にするのはいろいろと問題がある。いや、まてよ……。

「まあ、コンロがなくてもフライパンぐらいなら手に入れる事ができたら……。

 肉をたき火で焼くことは出来るだろうな」

 肉だけではなく野菜も焼くことが出来る。

 塩と砂糖に胡椒で簡単な味付けしかできないだろうが、それでもマシだろうし……。

「フライパンとか売っているの?」

「フライパンとしては売ってなくても、せめて焼くための調理器具があっても良いと思う」

 冷蔵庫が手に入った事を考えると、食材を一定以上購入する必要があるかもしれない。あるいは、

「まあ、いろいろと調べて見るか」

 と、俺たちは言った。

 とにかく、まずはお金である。

 ……ああ、世知辛い。そう思いながら、俺たちは草原へと向かう。

 その後は戦いである。草原で兎や根っこのモンスターを倒して息ながらドロップアイテムを集める。

 延々とそれを繰り返して行くが……。

 変化と言うのは、まったく持っていない。

 地道に経験値を上げてゲームになれていくだけだ。

 そうして、どうにかして地道な経験値とお金稼ぎ……と言う、RPGでは地味とすら評され退屈とされる行動をし続ける一日だった。

 体感時間として一日と言うその行動は、なんというか……実際に、肉体を動かしている感覚があるせいで疲労が酷い。

 町に戻ればまだ混乱しているプレイヤーたちも多く、人ごみが溢れている。宿屋も満員状態でいも洗い状態の中で食事を取る羽目になる。更に、宿の料理が常にワンパターンのマンネリの食事と言う事もあり、飽きてきて気分も憂鬱だ。

「問題は保存食だよなぁ」

 と、俺は呟く。

「まあ、三日ぐらいなら食料も持つだろうし……。

 なんとか強行軍してみないか」

 と、ハヤテが言う。

「いや、けれど……それで、なにかがあったらどうするのよ?」

 と、クレセントが言う。

 確かに予想外の事が起きているゲームだ。

 この町の外ではなにが起きているのかと言う事が解らない。

 慎重に行動するべきだと思うが、

「いやさ。俺のサブ・職業は情報屋だろ」

 と、ハヤテが言う。

「どうも、噂だと……物が不足しているらしいんだよ。この町で」

「へ?」

「そのとおりや」

 と、俺が驚く中で肯定の声がした。そちらを見ると、

「誰?」

「あ」

「あんたは……カエデさん」

 と、途惑うクレセントに声を上げる俺にハヤテが名を呼ぶ。

 そこには、関西弁の日本人形剣士……もとい、カエデがいた。

「ちょっと、ここええか? 人混みが多くってこのままやと立ち食いや。立ち食いは、大阪の基本やけれど……今日は歩き回ってええかんげんに足がつかれとるんや」

 と、言うとこちらが許可を出すより先に座るカエデ。

「あ、そっちの姉ちゃんは初めましてやな。

 わてはカエデや。職業は剣士で、サブは商人。

 自称、またの名を浪速の商人剣士と呼んでや」

「自称なのか……」

 と、思わず俺は呆れてしまった。

 カエデさんはそう言うと、俺たちと同じ夕食セットを食べながら言う。

「どうも、長期間の旅人が大量にいる。と、言う状況や。

 しかも、一部のやつらは状況に混乱して動かずにただ食べては寝てのニート化してるやつらもおる。まあ、正確に言えば現実逃避かもしれへんかもな。

 とは言え、そのせいでこの町の備蓄している食料が減っている。

 そのうち、食料とか食べ物が高額化するかもしれへん」

「そこまでシステムがあるのか……」

 と、俺は呟く。

 俗に言う食糧不足というやつだ。

 だが、そうなるとこちらとしても困るな。

「だとしたら、さっさとこの町を出ないと……逆に厄介か」

 と、ハヤテが言う。

 確かにこのゲームで空腹もしっかりと感じる。

「それでな。わてと、一緒にいかん?」

「へ?」

「あんたらのパーティーにいれて欲しいんや。

 見ていたところ、あんたらが一番まともと言うか現実を受け入れている。

 せやから、仲間に入るのが一番良いと思ったんや」

「俺は賛成だぞ。カエデの強さは知っているし……。

 クレセントは?」

「別に不満はないわ。けれど、やっぱり回復役が居ないのが問題だと思うわ」

 ハヤテの言葉にクレセントがそう言う。

 確かに、正論だ。

 剣士も前戦タイプだ。武器を持たない肉弾戦タイプのクレセント。武器を使うカエデ。そして、盾役となるハヤテ。後衛の魔法使いである俺。

 だが、出来ればそこに回復役が欲しいものである。

 とは言え、回復役は現状ではものすごく人気が高いだろう。

「まあ、メロンが回復を出来るし……序盤ならまだ、ぎりぎり大丈夫かも知れない。

 出来れば、後衛がもう一人ぐらいはいて欲しいな」

 後衛が俺だけと言うのだと、前衛を無視した攻撃が出来る。そんな相手が居たとしたら、厄介な事になりかねない。

「確かに、魔法には回復魔法もあるやろうからな。まあ、本職の回復役とは違うやろうけれど……。他にも後衛が欲しいな。まあ、その分だけ食費がかかりそうやけれど」

「うーん」

 早めにパーティーを見つけたいが、この状況では混乱がある。

 だが、逆に言えばこう言った状況を受け入れて冷静に判断が出来る。

 そんな人材がある意味では、理想的と言えば理想かもしれない。

 だが、あまりにも理想的すぎてそうそう居ないだろう。

 と、言うか……。

「回復役はすでに売約ずみだろ」

 と、僕は呟いたのだった。

 事実、本当に売約積みだった。

 周囲を見てみれば、すでに神官の職業はすでにそばに居る。中には、それでいてさらにスカウトしている人もいる。かなり好待遇を用意されている様子だ。

 まあ、無理が無いだろう。

「これから、プレイヤーが増えたら神官もいるだろうけれど……。

 と、考えていた人もいただろうけれど……。

 プレイヤーは増えないだろうからな」

 と、ハヤテが言う。

 たしかに、現実の方はどうしているかはしらないが……。

 ハッキングされて五十人のテストプレイヤーが昏睡状態。

 それで宣言通りに販売を開始します。と、言うような会社があったら神経を疑う。と、言うかまちがいなく叩かれる。

 つか、会社そのものが販売どころじゃなくなるはずだ。

 つまり、冒険者はこれ以上は増えない。

「すでに、回復系のアイテムの買い占めも起きているわ」

「こりゃ、早めに出ないと……厄介な騒動が起きそうだな」

 初心者用の和気藹々とした村だっただろうが、今はほとんど無法地帯だ。

「厄介な騒動?」

 と、俺の頭にいるメロンが聞き返す。

「ま……いろいろとな」

 そう言いながら、俺たちは食事を終える。

 そんな中、

「どうわ!」

 突如として現れたのは、一体のモンスター。

 街中で現れたと言うことは、誰かが契約しているモンスターだ。

 そして、こいつは……、

「「モルテ!?」」

 現れたのは、子供が描いたようなお化けのモンスター。恐怖よりも愛嬌が先立つのだが、唐突に現れたら普通にビックリする。

 たしか、モルテと契約していたのは……。

「お前、一人か? スプリングは?」

 そう、たしかモルテは死霊術士のスプリングと契約をしていたのだ。

 モルテはおたおたと手振りでなにやら、僕たちを案内しようとしている。

「なにか、あったのか?」

「よし! 行くぞ」

 途惑う中で、ハヤテはそう言うとこちらの了解も得ずに走り出す。

「あ、おい。……えっと、どうする」

「なんや。よーわからへんけれど、無視するわけにもいかへんやろ」

「同感ね」

 途惑う僕の質問にカエデとクレセントはそう言ったのだった。

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