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世界にダンジョンが出来た理由  作者: つられるクマー
1章.ギルドマスターとダンジョンマスター
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4.確認作業も意味がある

 じりじりと肌を刺す強い日差し。風ひとつない炎天下の夏の昼。

 日本にあるダンジョンの中のひとつであり、異変の日に確認された35のダンジョンのうちの攻略されていない『癒しの毒沼』と名付けられているダンジョン。

 その入り口の前に武具を身に着けた男女――探索者であろう者たちが大勢集まっていた。


「これで全員かなー」


 探索者たちに紛れて参加しているイチコが確認の声を上げる。

 その場にいた探索者たちの視線が一斉にイチコへと向いた。


「クラン『空へ向かう者』36名、全員います」

「パーティ『ダンジョン探検隊』4名、全員参加でーす!」

「クラン『†最弱の勇者†』12名、確認」

「ソロ探索者、レン」

「ソロのレティです」

「クラン『初心者救援会』からは5人ですぅ」


 クランやパーティのリーダー、ソロで参加してきた者は探索者名をそれぞれが名乗る。

 今回は目的が目的であるので人数が多く、個々それぞれの自己紹介を省いている。


 ちなみにクランとは同じ目的や思考を持つ探索者たちが集まり、作り上げたグループの事である。

 拠点(ホーム)と一緒にクラン名とクラン所属メンバーを申請するとある特典がついてくるので、クランを作る探索者も多い。

 10名以上の専属メンバーがいる事がクランの条件であるので、兼属メンバーが多い場合は注意が必要だ。


 パーティはクランとまでは行かずとも、ダンジョン攻略で組む事が多い、2人から8人程度のグループの事である。

 ギルドカードにはパーティシステムというものがあり、ギルドカードにメンバーを登録しておくことで色々な便利な機能を使う事ができる。

 パーティ名があるということは、固定メンバーでダンジョン攻略をしているというある種の主張であり、それ以外の深い意味はない。


「私はソロ探索者のイチコです。ギルドマスターさんから今回のリーダー依頼をいただきましたー。よろしくでーす」


 ギルドマスター本人ですと名乗る訳にはいかないので、イチコは無難にそう名乗る。

 小柄な女性であるイチコがリーダーである事に異を唱える者は誰もいない。

 この集まりに参加しているという事は、つまりはそういう事であるからだ。


「えーと、掲示板やギルドマスターさんの通知である程度は把握していると思いますが、一応かるーく説明しますねー」


 イチコが自分用に作ったギルドカードの裏面を操作しながら、続けて言った。


「今回の目的は『踏破後殺人事件の犯人であるダンジョンマスターを殺害する事』です。

 ギルドマスターさんの予想ではダンジョン『癒しの毒沼』のダンジョンマスターが犯人だそうで、動機はわからないけれど、ここ最近の新しく発見されていたダンジョンは全てそのダンジョンマスターが作ったモノとみて間違いないそーです。

 んで、ひとつずつ潰していっては犯人に逃げられた上に同じ事件を繰り返される可能性があるので、判明している全てのダンジョンに同時に攻略を仕掛けるのが今回の作戦です。

 他のダンジョンにはすでに別の上位探索者が向かい攻略を開始しています。

 私たちの担当は『癒しの毒沼』で、一番ダンジョンマスターが居る可能性が高いそうです。

 難易度が高く、特上級との事なので人数は多めに――私を含めて60人で挑みます」


 そこで説明を区切り、質問はありますかとイチコが探索者たちを見まわした。

 何人かの手が上がる。

 イチコが順番に聞き、考えながら答えていく。


「ダンジョンマスターは本当に存在するのか?」

「存在するみたいですねー」


「ギルドマスターさんはどうしてここにダンジョンマスターが居ると特定したの?」

「…特定した訳ではないそうですよ。今回挑む全てのダンジョンのどれかに居るだろう、だそうです」


「いなかった場合は?」

「その為の大規模ダンジョン攻略だそうです。どこにもいない場合でも、今までの事件からすれば踏破すれば必ずどれかのダンジョン入り口に出現するだろう、とのことでー」


「その場合、探索者が殺される可能性は?」

「ほぼ確実に殺されるでしょうねー。そして、その場合は私が皆さんを連れて出向く事になってますねー」


 軽い口調とは裏腹に、淡々と感情を乗せずに答えていくイチコ。

 探索者たちは最後の質問に顔を青くしたが、それよりもイチコの返答が気になったらしく質問を続けた。


「出向く、とは?」

「文字通り、ダンジョンマスターが出現したダンジョンの入り口へ行くという事ですねー」


「国内とはいってもダンジョン間はそれなりに開いていなかったか?時間がかかるだろ」

「……転移魔法を使えるアイテムをギルドマスターさんから頂いたので、それを使いまーす」


 今回限りの使い捨てだそうですけどねーとイチコが続けるが、探索者たちは転移魔法という言葉にざわついていた。

 探索者になれば魔法が使えるようになる者が増えるが、それでも転移魔法というものを使える探索者は今のところ一人もいない。

 だからこそ、その存在があるのだと知ると転移魔法への憧れもあり、騒ぎになるのである。


「転移魔法を覚えられるかどうかは知らないので、作戦後にでもギルドマスターさんに問い合わせてくださいねー?」


 予想よりも興奮している探索者たちを目の前に困惑しながらイチコはそう付け足した。

 すると探索者たちの士気がなぜか上がったようで、叫ぶ探索者まで出始める。

 こういう場合はどうすればいいのかとイチコが目をさまよわせ始めた時、大きな花火が上がった時のような爆発音が辺り一帯に響いた。

 驚いた探索者たちは静かになる。


「……騒ぐのは後にしよう。まずはダンジョン攻略だよ。特上級なんだから、気を抜いたら転移魔法を覚える前に死ぬよ?」


 レンの声がその場に静かに聞こえ、その言葉で『癒しの毒沼』というダンジョンがどういう場所であるかを思い出したのか、探索者たちは興奮から覚めたようで静かに頷いた。

 その様子に助かったとイチコがレンへと感謝を向ければ、レンはお互い様だよとにっこりと笑う。


「じゃ、突入前にざっと、ある程度のマップ情報と罠と出現モンスターの確認もしよっかー」


 イチコの提案に全員が頷いた。


 その数分後。

 ダンジョンマスターを狩る為の大規模ダンジョン攻略作戦が開始された。

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