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幕間 現れた事に意味はあるのだろうか

 異変の日。

 そう呼ばれる、世界に最初のダンジョンが現れた、始まりの日。

 最初にそのダンジョンが現れたのは日本であった。


 日本の東京。

 東京駅の真上とも呼べる、雲よりも高いその場所に、最初のダンジョンは出現をした。

 雲よりも高い位置であるというのに地に影を落とすほどに大きい、空中に浮かぶ大きな島。


 その浮島は石造りの塀のようなものに囲まれているようで、地上からは中を知る事が出来ない。

 飛行機やヘリコプター等を使い浮島へと調査に乗り込むには高度が少し高過ぎる為に今の技術では不可能とまでは言わないが、入念な準備とたくさんの資金が必要であり、これも断念。

 唯一、衛星写真によって判明した事は、塀で囲まれたその中には青々とした大小さまざまな木々によって作られた森があり、泉のようなものが数か所存在し、浮島の中心には何かの建物がひとつ建っている、という事のみであった。 


 浮島に建物が存在している。

 その事実に誰もが驚愕し、その浮島がどこから来たのか。誰がその建物を建てたのか。人が住めない高度のはずだが誰か住んでいるのか。

 あれは失われた大陸だと主張する者、某国の空中要塞だと決めつける者、異世界が地球と融合する前兆だと恐れ慄く者、ただの集団幻覚だと取り合わない者。

 たくさんの謎とたくさんの憶測に、世界が騒いだ。


 けれどもその騒ぎもほんの少しの間だけであった。


 浮島が東京上空に現れてから丁度10日後の午後0時のお昼時。


 まず日本各地にそれまでそこには無かったはずの、建造物や洞窟・森等が突然出現した。

 最初にそれらに気が付いたのは、それらが出現した地域に住んでいる人々であった。

 少し前まではその場所になかったそれらについて役所や警察に通報・問い合わせが相次ぎ、すぐに報道機関が日本各地の現場へと駆けつけ、あっという間に話題へと上った。


 浮島が東京上空に現れてから丁度10日後の午後6時の夕暮れ時。


 日本に出現した謎の建造物や自然物等と似たようなものが、日本に近い地域から太陽の進む方向に向かって順次出現し、世界中がそれらについて騒ぎたてた。

 浮島も含めると全部で35という、多いのか少ないのかわからない数の、不思議な出現物。


 ある国は自国に出現したそれを調べる為に軍を投入したが、その出現物へと足を踏み入れた者は誰一人として帰ってこず、連絡も取れないまま、調査は中断される事になった。


 ある国は自国に出現したそれが危険であるかないかがわかるまではとあらゆる観測装置や調査機器を用意したが外から調査しても何もわからず仕方なく潜入するも、やはりこちらも誰も帰らず、連絡も取れず。


 ある国は他の国の出方を窺い、その出現物に調査に入った者が誰一人として帰ってこないという話を知ると危険な施設であると断じて一切の立ち入りを禁止した。

 しかしその数日後。その出現物から不思議な生き物――後に魔物(モンスター)と呼ばれるそれらが溢れるように出現し、滅ぼされてしまった。


 突入した者はおそらく死に、突入せずとも魔物が溢れてくれば多くの者が死ぬ。

 人々は出現物を危険なものと判断し、出現物が現れた国はいつ魔物が溢れてくるのかと慄き、出現物が現れなかった国もいつ自国にその出現物が現れるのかと恐れた。

 浮島から始まった不思議な出現物――まるでゲームの世界にあるダンジョンに似ている事から出現物をダンジョンと呼ぶようになり、そのダンジョンの理不尽さに世界は絶望に染まっていった。


 そんな中、ひとつの不思議な噂がゆっくりと広がり、ゆっくりと人々の間に浸透していった。


『ダンジョンに対抗できる手段があるらしい』


 武器をもった軍すら帰れない。

 国ひとつ滅ぼすほどの魔物たちが出現する。

 今は35で止まっているが、いつまた新しく出現し始めるかわからない。


 その事から噂を否定する者は多かった。

 けれど、信じる者も少なくはなく、その中の何人かはとあるウェブサイトへとたどり着く。


『探索者になろう』


 大き目の文字で一番上にそう書いてある、個人で作ったような簡単な作りのウェブサイト。

 同じアドレスであるはずのそのページは、見る人間のよく使う言語で表示されるという不思議さもあり、そのウェブサイトへたどり着いた人間の多くは藁にでもすがる気持ちで、『探索者』へと登録していったのだ。




 浮島から始まった異変の数々は世界を恐怖の底へと叩き込み、絶望を植え付けた。

 それから程無くして、探索者と呼ばれる人々がダンジョンを攻略しはじめ、魔物からの脅威を遠ざける。


 突然現れたダンジョンも、用意されたように現れた探索者も。

 どちらも世界を混乱させる為に誰かが用意したものだったのではないかと後の学者が語る。


 それが事実であるならば、誰が何の為に、それらを用意したのであろうか。


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