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アポカリプス Apocalypse   作者: 秦 元親
【第一章】終わりの始まり
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【序】 エンディングテーマ

「はぁはぁはぁ……。クソっ、クソが、ああはぁぁぁ……。何でこうなるんだっ、何でだよ」


 当たり前とはこうも簡単に崩れるものなのか…。

 ずっと続くと思っていた、いつもの日々はこんなにも儚く散っていくのか……。


 今なら理解出来る気がする平家物語の意味が。


 そりゃ昔から分かっていたさ、永遠などないって。日常なんて一瞬で、簡単に、盛大に、轟音を轟かせながら簡単に崩れていくことぐらい。

 それでもこんな唐突だなんて誰も思わないだろう。


 ――何も変わらないと思ってたあの平凡な毎日は、一瞬で壊れていった。しかも盛大に多くの命を散らせながら。


 子供は大きな声で泣き叫びながら巨大な軍勢に飲み込まれ踏み潰され、道はあかに染まっていく。

 男は家族を守る為に立ち向かいしゅに染まった剣で切り裂かれ、女は力の限り逃げるが後ろからあけに染まった槍が胸に突き刺さる。


 酷い光景だ、どうしてだ、どうしてこんなことになっていやがる。

 訳の分からない残虐で狂気的な光景が脳裏によぎる。



 体中の毛穴が開き、汗が流れ落ちる……。


 吐き気、目眩、頭痛、止められない震え、数々の異常が体を駆けずり回る。

 そうだ、異常だ。世界がおかしい。


 

「次は俺の番かもしれない」

 頭が上手く回らない、状況が上手く掴めない。訳の分からないまま殺されたくなんてない。


 どうしてこうなった。


 ただ分かる事はある……。

 

 逃げなきゃいけない。

 逃げないと殺される。

 逃げなきゃ……。


 俺はあの刀を彩る深紅の絵の具になんてなりたくない。

 さっきから走りっぱなしだ。


 体力切れで止まってしまった足を無理やりにも一歩また一歩と歩みを止めないよう動かしながら体力の回復を待つ。

 

 もうあの日々は、あの日常は、あの取るに足らない毎日は帰って来ないのか。

 

 人は失ってからしか物の大切さが分からないというが、あの取るに足らない毎日が、あの何も無いと思っていた毎日が、こうも美しいものだったとは……。

 

 やはり人は失ってからしかその価値が分からないみたいだ。

 だが俺もあんな毎日に価値を見出していたのか。何もないと思っていた、無価値で無意味で……。


 ――それ故、美しい世界に。

 

 こんなバカみたいになことが次々と頭に浮かんでくる。

 どうやら俺は自分の思っているよりもあの恐ろしく、そして詰まらない日々に執着していたらしい。


 世界が崩れ、壊れていっている。

 あんなに待ち望んだ崩壊なのに、この日常が壊れる事をあんなに望んでいたのに。


 いざ世界が壊れだしたら、俺はそんな新たな世界を拒んでいた。

 


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