【一章第八話】 生命のワルツ
身体の周りを纏わり付いていた黒い靄が一瞬にして晴れる。淀みも濁りも入り交ぜたあやふや出鱈目な世界。
誰かさんの心の奥底に似て歪で矛盾ばかり、ただ此処こそが焼け落ちなかった最後のセカイ。
さっきまでいた光の世界とは違い全体的に薄暗い世界に俺は移動していた。
此処がどこだか分かっている、俺が望んで来たのだから。
俺をこんなんにさせた張本人を視界の隅に捉える。
「あれだけの絶望を見せても、まだ立ち上がるか」
「お前馬鹿だな、現代っ子がお前の考えてるほど心に大きな傷を負ってるわけないだろ。あんなもん誰もが持ってる小さな傷だ」
「嘘をつけ。私はお前の心の全てを見ていたのだぞ」
知っていたか、正直あれは結構堪えた……。心が折れそうだった。
だからか弱いわが身を守るために俺は感情を人として大事なものを捨てた。
強くなるために。
変わるために。
もう今となっては捨てたもの共に何も感じない。あれに執着などない、いっそもっと昔に捨て去りたかった。
そうすれば、そうであれば、俺はきっと
あの状況でさえもでさえも……。
いくら悔やんでももうそれは終わった事だ、これは言わば憂さ晴らし。草薙大和は、あの弱っちいガキはもう死んだ。
これは俺からしたらエンディング後のミニゲーム。
もう今となっては我が身に執着なんてモノは無い。
これはお遊びなのだ、草薙大和が憧れた理想の草薙大和になる為の。あの醜い少年を絶望に叩き落すための。
――俺が真に願い望んだことを、あの少年を救う為の……。
復讐劇だ。
「お前の絶望の味中々良かったぞ。お前のような高濃度の絶望を味わったのは二百年ぶりじゃ」
「そりゃどうも」
「それに……」
鬼が俺を讃えるような表情を見せた。
「長いこと生きてきたが、この敵を内部から崩す術を破ったのはお前が始めてだ。戦なき時代の子だとお前を見縊っていたが、あの剣の身躱しといい、今のこれといいお前に興味が湧いてきた」
敵の眼の色が闘士の眼に変わる。戦いに飢えた、そして戦いに慣れた猛々しくも何処か凛とした武人の眼。
「私は蘆屋道満というものだ、お前も名乗ってみろ」
目の前の鬼が晴明のライバルとして世にも名高き道摩法師だとは……。蘆屋道満って実在したんだな、今知ったよ。
「生憎お前に教える名前なんてものは持ち合わせてないんで。ただいうなれば、この俺の心の中でお前を討ち取る為に此処まで来た名無しの復讐者だ」
「餓鬼が、戦の礼儀も知らんのか」
「戦がない平和な時代で何一不自由なく育ってきたもんで」
「その割には、随分と色々なものを抱えて生きていたんだな」
「俺の記憶を食したのなら俺の名前くらい知っているだろう?」
「私が興味があるのはお前の絶望、痛み、後悔、悲しみなどの悪感情だ。それにあの時のお前は俺の食物だ。態々飯にした生き物の名前など覚える奴などいるか」
「ふーん、そうか」
「だが今は違う、私はお前を敵として認めてやろう」
法師の周りに影のようなものが漂い始める。
どうやらあの鬼もここでの戦い方を熟知しているみたいだ。
黒い影が法師の身体に纏わりつき、いかにも平安から鎌倉の武士が着てそうな鎧へと変化する。
「道摩よ、お前は一つ大きな間違えを起こした。それは何でもアリのこの世界で厨二病を相手にしてしまったことだ」
目の前の法師がこいつ何言ってるのという目で睨んでくる。
そう、俺がいるこの世界は俺の心の中、死後の世界でもなんでもなかった。奴は俺の心の中に態々入ってきて精神を崩そうとしていたのだ。
俺の心の中だがら俺の考えた通りのことがこの世界で起こる。
とある俺の感情が教えてくれた。
一瞬で俺の服装が信長が好んで着てそうなマント付きの西洋風甲冑に変わった。
薄暗い空間が魔王城の王の間のようなところに変わる。
あやふやな世界が一瞬で確立された世界に変動する。
「さあ、掛かって来い化け物、掛かって来いよ陰陽師」
リアルの世界で見たように法師が漆黒の霧から刀を作り出す。闇の中から刀は引き出され、薄暗い世界で剣の光が嫌にチラつく。
法師は速攻で斬りかかっては来ない、お互いの間でにらみ合いが始まる。
先に動いたのは道摩法師の方だ。
俺の持っていた刀の鯉口を切ろうと親指が伸びていく。
見誤っていた、敵の速さを甘く見積もり過ぎていたのだ。法師が素早い動きで一気に斬りかかる。
紙一重でへしきり長谷部刀みたいな刀で道満の刀を防ぐ。ただ敵はそんなに甘くもない。弾いたと思て居たら既に法師は体を捻らせながら自身の刀剣を横に薙いで次弾を飛ばしていた。
体を反らし、次の一撃に……。
刀を持った片腕が血を巻き上げながら吹き飛んだ。
「名無しよ、取った」
期待を裏切られたとでも言いたげな冷たい一言。
法師の大振りの一撃が落雷のように落ちてくるが……。俺は至って平然、いやこの状況を楽しんですらいる。
斬り落とされた腕に意識を巡らした瞬間、腕と腕が黒い管のようなもので結ばれ合い主と結合する。
再生の力を利用して敵の脇腹に刀を……。
視野が急に広くなった。ああ俺は正しく真っ二つに斬られたのか。
ただ俺の片腕は法師の鎧を掴み、結合した腕の刀は法師の横っ腹に刺さっていた。
「ほほう、ここでの痛みはそうなっているのか……。並大抵のものはそれで壊れているぞ……。ナナキよ、よく耐えたな」
痛みに耐えるような声でこの鬼は呟く。
体の中心に意識を巡らせ、刀の形を即座に変化させ、一気に分裂させる。
急に視界が移り変わり部屋の天井が視界に入ってくる、瞬時に俺は理解した。
そうか首が落されたのか……。
これで勝ったと思うなよ。
弩を手の中にイメージして感覚が伝わった瞬間に引き金を思いっきり引く。
視界が元に戻った。
「やられっぱなしではないか名無しよ」
弩から躱す為だろうか、離れたところで息を上がらせ、顔を痛みに歪ませた敵の傷口から返しの付いた刀の破片や、刺さった鏃が排出される。
残骸は何処にもいかず闇の中へ消えていく。
傷口は何事もなく直ぐに埋まるのだ。
余興、暇つぶし。
王座に足を組み腰かける。
弩を再装填し、法師に向かって発射する……。
いとも簡単に敵は刀で飛ばされた矢を弾き落とす。
刹那……。
法師のいた地面が幾本もの鋭く太い針のような形になり足場を壊し全身に向かって攻撃を開始する。
流石と言ったところか、針の尖ってる部分の攻撃を次々と手慣れたように身躱し伸びきった針の腹を蹴って飛翔する。数の増え続ける針を生産する地面を捨て空中に身を投げた。
そんなものは大体予想できている。
法師にわざと針の連続攻撃を喰らわせ空中へと誘いながら、自分の頭上に魔法陣を四つ描く。
ある程度地面から離れさせ地面の攻撃を止めさせると同時に、魔法陣から大量の鎖付きの武器が法師目掛けて射出。
剣、刀、槍、斧、大鎌、大槌、棍棒、ハルバード、薙刀などの無数の武器が持ち手に鎖を付け、空中で身動きが取れなくない状態の法師に向かって散弾銃のように襲い掛かる。
刃が獲物を殺さんと突撃する。
法師は自らの刀で襲い来る武器を難なく打ち落としていく。
「さあて、下からはどうやって防ぐのかな?」
「ここでの戦いは初めてだが、私とて全く戦い方を考えていなかった訳では無いぞ」
迫り来る武器を打ち落とし、落下しながら叫ぶ、下からは第二陣の武器たちが串刺しにせんと迫ってきている。
法師の肩から赤く透けている羽のようなものが生えたと同時に無、数の武器たちをそりゃまあアニメのような旋回で回避したのだ
空を蝶の様に舞い俺から、魔方陣から距離を取る。
まぁあの羽からどっかの漫画みたく、ショットガンのように無数の針を遠距離から飛ばしてくることはなかった。
無意味な連続攻撃は無駄か。ならば……。ふっふっふ、お前の羽じゃ何処にも飛べねぇ、ってか。
魔法陣から第三陣が法師に向かって射出された。
今度は武器の柄に鎖が付きその鎖同士が網のようにお互いを絡めながら突き進んでいく。
勿論、これだと簡単に回避されてしまう。
予想通り陰陽師も回避行動に移っていた。
しかし、法師が今まで避けた武器たちがブーメランのように法師の背後や上空から、退路を塞ぐように帰って来る。
絡め捕るのだ、折に入れるのだ、枷にするのだ。
逃げ場を失ったと見るや法師は剣を構え、一体となった網ではなく背後から迫る武器に向かって特攻する。
剣を次々に落す法師だが次第に数の暴力に圧倒され、地面に落ちていく剣の数が減っていく。
遂には力尽き何とか槍は躱したものの、背後から迫る鎖がが肌を掠め、法師を取り囲む。
法師はその鎖を断ち切ろうと刀を当てる……。
――これだ、狙っていたことが起こった。
鎖は大丈夫だと思ったのであろう。残念、その鎖は何かに触れると煙幕を展開し、無数の暗器が飛び出すようになっている。
「さあ、雨が降るぞ、鋼の雨が」
法師が触れた鎖から手裏剣や苦無を筆頭に投げナイフや針、分銅までもが煙幕の中飛び出し、他の鎖に当たり、そこからも霧や暗器が放たれ爆発的な集中攻撃を生み出す。
もちろん暗器たちは俺の方に伸びてる鎖までも取り込み攻撃の範囲を拡大させる。
周囲全てに向かっての圧倒的な数での集中攻撃、そして飛び交う武器には意志がないから予測も不可能。
まあ俺はバリアーを張っているから攻撃の渦に巻き込まれないし、霧の中だって晴れてるように周りが見渡せる。
霧の中で法師の羽は、みるみるうちに穴だらけになり、霧が晴れる頃に体が暗器まみれとなりは地面に墜ち始めている。
間髪入れず地面を針に変え串刺しにしようとする。
羽の飛行能力はまだあるようで地面擦れ擦れまで高度を下げ、ギリギリのところで針を躱しこちらに向かってスピードを上げ突進してくる。
雰囲気で用意した軽い階段が死角となり、姿を現した頃には勢いを増し加速した状態で俺の頭上に現れる。腰からは鋭利で堅甲な金属質の触手を生やして。
「其方は接近戦での戦闘能力がない無い事はもう分かっているぞ、接近戦なら私の方が有利だ」
「接近戦に持ち込んだら勝てるとでも? そんなのはただの慢心でしかない」
王座から立ち上がり、新たなる刀を創造する。
刀を構える、敵を斬る為に。
頭上から勢いと落下速度を纏い平安の世の陰陽師が刀を構え落ちて来る。
触手が俺に向かって伸びて来るが、造作もなく刀で切り落とす。
――しかし、目の前から道摩法師が消えた。
視界に残っている影を追い姿を捉えたときはもう遅かった。
刀が足元擦れ擦れまっで迫っていた……。
顔の口角が最高潮になる、俺も敵も。
空間一帯に炸裂音が響き渡り、一方の後頭部から血が吹き出す。
「余興もこれまでだ、お前に勝機があるとでも思ったか? 言っただろう厨二病相手にこの世界で勝てるはずが無いと」
道摩の後ろに瞬間移動して超至近距離で銃を放ったため、返り血が此方に降りかかる。
血はシールドにベットリと付きこの空間から消えていく。
「確かに近距離の戦闘はお前の方が一枚上手だった。しかしお前はこれの存在を知らないだろう?」
わざわざ法師の前に瞬間移送して、威力を見せびらかすように、刀を持っている方の手を黒鉄の銃で吹き飛ばした。
「そもそもこの戦いでお前に全く勝機なんてものは無いんだよ」
反対の手で刀を取った法師が俺に向かって斬りかかるが、バリアに防がれ、甲高い音を上げ刀の刀身が折れる。
刀の片割れは無残に落下する。
「曲がらずして折れるとは笑止」
リアルの世界でこいつに言われたことの真似だ。
「結界を張っているとは思わなかった……」
段々と法師の声が小さく霞んでいく。敵は自らが負けたということを薄々だが悟ったようだ。
「ばぁか、基本中の基本だよ」
指を軽く鳴らす。
法師のもう片方の腕と折れた刀身が爆発する。
「余興なんだよこの戦い自体、俺は最初からこうやってお前を倒すことも出来た。おっと、この世界から離脱しようとしても無駄だ、もうこの世界の出口は俺の意志でしか開くことは無い」
法師の両腕から黒い煙が上がる。
そう、こーゆのはアニメや漫画とかで再生するときのお約束の展開。勿論再生なんかさせないがな。
両手に持った白銀の銃と黒鉄の銃の引き金を引き続ける。
流石は百万発入りのコスモガン、いくら撃っても玉切れにならない。
取り敢えず、再生するのに時間が掛かる位の酷い状態になるまで撃ち続けた。血と肉と硝煙と何だか分からない酸っぱい臭いが鼻孔を撫で上げる。
こんな酷い死体や生々しい肉片を見ても吐き気も何も感じないな。
極めつけは指を鳴らして上半身と下半身を切断。
白骨化した蛇が八体、鎧を突き破って俺の背中から展開される。
「此奴を喰え」
白骨化した八岐大蛇は喜々として目の前の肉を喰らい散らかす。
白い蛇が深紅に彩られる頃には死肉は食い荒らされ、赤黒く染まる鬼の砕けた骨の残骸が無残にも散らばっていた。
各所に散らばる骨たちは、黒い煙を上げながら一か所に集まり骨だけだが人体を形作っていく。再生能力も憐れなモノだ、意志に関係なく元に戻ろうとするみたいだ。
転がっている骸骨に向かって魔法陣を四つ描き、細いピアノ線のようなものをくっつき合っているいる最中の骸に向かって射出する。
魔法陣から射出されたワイヤーは、骨だけの法師に絡みつき身体の内側から縛り上げ、爪先立ちにしか立っていられない様に繋がり合い始めた死骸を吊り上げる。
再生の煙はワイヤーを飲み込み、肉や皮膚が形作られる。
目の前の法師の背中や手足からは無数のワイヤーが皮膚を突き破り魔法陣を終着点に伸びている。
ある程度人体の形が作られてきたところで、さらに魔法陣から鎖で軽く手足を縛り上げ、爪先立ちに力尽き足をついてしまったら、首が閉まるように首にも鎖を付けておく。
元の姿になるまでにかなりの時間が掛かった。
「やっつと再生したのかい、ほんとに待ち草臥れたよ。それじゃあ今から拷問を始めるとするか」
目の前の法師は、こんな状況になり、痛みに顔を歪ませながらも、なにかまだ武人のような堂々としたものを感じる。
皮膚からはワイヤーが食い破って出ており少しで動くと血が滲み出て来る。とても痛いだろう、ただ痛みに屈し膝を付くと首が閉まる。
悶えろ、悶えろ。暴れれば暴れる程ワイヤーは体中を蹂躙し血は流れる。
死んでも終わらぬ、死ねすらしない。
「お前は一体何をした……。力を得るために何を捨てた……」
荒々しく息を吐く、法師の肩は上に上がる。それと同時に体の内から外に張り巡らされてるワイヤーが触れたモノ全てを裂く。
「力なんてもの俺は手にしてない。ただ覚悟を得るために人として大切なものを捨てて来ただけだ。これも全てお前が気付かせてくれたことだ」
そう俺は結局人を辞められなかった。揺るぎない覚悟を得る代償として、弱い自分を親友を裏切って得たあの詰まらない日常に満足してしまった俺の中のぬるい感情の全てを消し去っただけだ。
「此処での痛みは何処に向かうか知っるよな?」
なにも答えないので話を続けた。
もう此奴は返事を出来る余裕も無いだろう。荒れ狂ったように自らの内に秘めた感情をさらけ出している。
「ここでの攻撃は全て心に向かう、現実で受ける痛みと心で受ける痛み、同じ痛みでも、どっちが痛いでしょうかねぇ?」
親指で人差し指を鳴らした。
指で法師の目を潰す。以外に目は硬かった。
いくら潰しても、目は黒い煙に包まれすぐに再生してしまう。
両手に杭を出す。
「これが何か分かるかな?」
太い白木の杭をゆっくりゆっくり目に向かって近づけて、視界が遮られないギリギリで止める。
法師が悲鳴を上げ出したら一気に加速して再生できないように目に杭を打ち込む。
大きな悲鳴が上がる……。楽しい、楽しいもっと酷い事をしたい、これが抵抗しにモノを甚振る気分か。俺が恐れ憧れた強者だけが為せること。
「次は口だな。ああ、お前拷問って言ったのに何故俺が何も聞いてないかって? そりゃあこれはお前の体に、精神に、どれだけやったら壊れるかって聞いてるんだよ」
物や武器を取り出すときは指を鳴らし、法師を傷付ける動作をするときは親指で人差し指を鳴らす。
手に小刀を取り頬を切り裂く。面倒だがら頬骨ごと斬りおとし、新たに歯肉が再生したところで歯が再生する前に鉄製の返しの付いた針を打ち込む。
全部打ち終わったところで舌を切り落とし、再生が始まらない様に赤く熱された鉄を喉に打ち付ける。
それでも舌は時間が掛かったが再生したので声帯の辺りを切り取り、鉄製の巻菱を声帯の辺りに埋め込む。
黒い煙で傷口が塞がれた後、法師からは声なき声でしか悲鳴を上げられなかった。
「耳は最後にしてあげるよ」
指を鳴らし無数の時計が周りに配置される。
時計の針が、時を刻むことにそれぞれの音を奏で始める。
「次は鼻」
鼻を切り落とし、鼻の中に太い杭を打ち込む。
「じゃあそろそろ身体をやるか」
腹を小刀で引き裂き、釘や棘、手裏剣などを内臓や体内に入れていく。
腕や足にも同様の処置を施す。
体内のワイヤーは切れてもすぐに繋がった。
楽しい、楽しい、楽しすぎる。ああこれだけやっても壊れないとか、楽しい。
さっきから俺の口角は上がりっぱなしだということに気が付いた。
なぁお前もこんな気分だったのか? なぁそりゃ楽しいわな、そりゃ抵抗しないと分かっているモノにやるのは楽しいわな。
指を鳴らし、魔法陣から電流を流す。最初は弱い電流だが段々と電流の強さを強くしていく。
「次は耳だ」
一端、電流を流すのを止め、親指で人差し指を鳴らし、耳に杭を打ち込む。
耳を突いたと否や、いきなり超高電圧の電流を流してやった。
適当なタイミングで硫酸で窒息させたり、電流を止め、周りに血の海が出来るがまで身体を切り裂いり、わざと弱い力で攻撃したりした。
熱した鉄を体に当てたり、溶けた鉛を体に垂らした。
全身に杭を打ち付け、指を叩き潰した。
俺は俺の頭に浮かぶことを全部やった。
全身が幸福感に満たされていくのが分かる。憧れと、羨望と渇望と、それとそれと。やりたかったことだ、耐え続けてきた、一度でいいから逆転してくれと祈り続けてきた。
あれほど望んだ復讐だ、あれだけ待ち望んだ初めての反撃だ。
痛みに慣れて来たのか、壊れてしまったのか法師は地面に足を付け首が閉まった状態で無限の痛みを味わいながらピクリとも動かなくなった。
だが続ける俺は。