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梅林宿

作者: 坂本瞳子

義母は私が疎ましかったのだろう、東京からさほどは遠くない少し西の方面に湯治に行くことを勧めた。

私はせいぜい強がって、なに少し風邪が長引いているだけで大事はないけれど折角のお義母様のお申し出だからお言葉に甘えて湯元を一人で楽しんでくると受け入れた。

婆やは共をすると言い張ったが、お義母さまご紹介の施設なのだからと説き伏せ、一九にもなって列車に一人で乗れぬはずはないのだからと遠ざけた。

かくして私は独り湯河原駅に降り立ち、義母紹介のサナトリウムとは反対の方向に歩き始めた。


二月、春はまだ遠く、寒かった。

女学校を優秀な成績で卒業してから早二年、健康を損なってからは一年以上が経っていた。

母を亡くしてから一〇年。温かな笑顔を忘れてしまいそうなのは、良く似た姉が嫁いで行ってしまってからだ。

体調の良くない私と二人では、父が再婚したがるのも無理はなかった。


あれ、可愛らしい女の子が。沢山の野菜を詰めた買い物籠を抱えて、急いで歩いて行く。自分の身体の半分くらいの大きさの籠を上手に抱えて歩くものだ。短めのおかっぱに襟首は刈上げてある黒髪が印象的で、着物の上に割烹着を着こなす姿に自らの幼き頃が思い出された。私は女の子の後を付けて行くことにした。

ところが女の子はあんまり早足で、情けないことに私は追いつくことができないどころか、眩暈を覚えた。

なんとか倒れないようにともうあと一歩、あと二歩と歩みを進め、手をついたのは大木だった。私は少し安心し、気の根元にしゃがみ込んだ。

ふうと息をついて、しばらく目を閉じた。それはとても不思議な感覚で、聞こえているのは木の鼓動か、私自身のそれか区別がつかないほどだった。


そうだ。私は生きている。そう思うと、眩暈は消えた。

見上げると、木には赤々とした美しい花が咲いていた。

あちらの木には白々と、こちらの木には薄紅の、さらに向こうの木には紅蓮の花が付いていた。

嗚呼、どうやら私は梅林の中にいた。


さて、サナトリウムを目指そうかともおもったけれど、右へ行ったらいいのやら、左へ行ったらいいのやら、皆目見当がつかなかった。

すると、先ほどの女の子よりはもうちょっと、否、もうずっと年上の一二、三にはなろうかという女の子が私に声をかけた。先ほどの子によく似ていた。

「あのう、お宿をお探しですか?」

私が笑顔で頷くと、その子は私の鞄を抱えて歩き始めた。

「どうぞこちらへ。」

私は後をついて行った。鞄は自分で持つと言ったのだけれど、お客様にそんなことはと、なかなかの強情っぷりを見せてくれた。


こんな人里離れた梅林の中、と思わせるような場所に、こじんまりとした格式のある佇まいの宿が出現した。

千鳥、道すがら教えてくれた名前、は、玄関の脇に私の鞄を置くと、スリッパへ履き替えるよう手で促しながら、「お客様のご到着です。」と大きな声で奥に伝えた。

前掛けをした背の高いほっそりとした女性が出て来た。やはり黒髪が印象的で、白い透き通るような肌に、白磁の色味がよく映えていた。

「まあまあ、ようおいでくださいました。」

少し歳上には見えるが、まだ二五はなっていないであろう。美川は私の鞄を持ち、部屋へと案内しようとしたとき、奥の方から私を覗く女の子があった。

「これ、蝶子、お客様にはちゃんとご挨拶して。」

美川に注意され、おずおずと出て来たのは先ほど梅林で出会った幼い女の子であった。

「ようこそおいでくださいました。」

聞けば蝶子はまだ七つになったばかりだという。


美川が案内してくれた部屋は二階にあり、角から二番目か三番目かの部屋だった。随分広い部屋だが、予約を取り下げた客があったとのことで一人分の料金で構わないとのことだった。しかも後払いで良いとのことだったので、私は父からの送金を当てにして、二、三日はここに泊まる気になっていた。大きな窓辺からは夜も梅林を堪能できた。


「お食事を用意する間、どうぞ温泉をお楽しみくださいませ。」


私は早速、風呂場へ向かった。風呂へ行く途中、また女の子とすれ違った。女の子は千鳥より年上で一五歳くらいだろう。

「どうぞごゆっくり。」

その知的で頭の良さそうな雰囲気に、私は会釈をしただけで通り過ぎた。


風呂場へ入ると、湯気がすでに心地良さをもたらした。露天風呂の塀の上部は梅の花で包まれており、湯気に混じって香りが届いた。

のぼせないうちにと思いながら、いつもよりも少し長めに入浴し、後ろ髪を引かれる思いで自室へと向かった。

しかしながら、二階への階段を折曲がったところで、壁によたれかかってしまった。

「お客様、大丈夫でしょうか?」

手を貸してくれた女性は千鳥よりも年上に思われた。その美しさに私はハッとした。弾力のある肉厚の、女性らしい手つきであった。上品な友禅をなんとも優雅に着こなし、長い睫毛と厚い唇が印象的な、母を思わせるような大人の女性であった。


私は恐縮したが、肩を借りてなんとか部屋に到着した。そこには豪華な食事が用意されていた。肉も魚も野菜もふんだんに、見目麗しく盛りつけられていた。

「ご気分が優れないようでしたら、お食事は後になさいますか?」

いやいや、こんなご馳走を前にして食事をしないだなんて。意地汚いと思われるかもしれないが、俄然と食欲が湧いた。そんな私を見て微笑を浮かべて自己紹介をしてくれた。

「女将の月光と申します。」

月の光と書いて「ツキコ」と読むのだそうだ。

月光は女将にしては若かった。なんでも、一番下の蝶子が亡くなった直後に両親共に亡くなったらしく、遺してくれたこの旅館を姉妹でなんとかやりくりしているそうだ。

「へぇ、五人姉妹でですか?」

「いえ、八人姉妹でして。」

なんでもまだお目にかかっていないお嬢さんがいて、全部で八人、女ばかりなのだそうだ。

しかも、月光は私のことを気に入ったのか、年下の小娘と気を許したのか、三女の鶯子は母親が違うことまで話してくれた。


夕食をしている間中、月光は実にいろんな話をしてくれた。

鶯の子と書く「ササコ」は母親が違うとはいえ、実にしっかりしていて、頭も良く旅館経営のセンスがあること。

四番目の朱鷺と牡丹は双子であり、朱鷺は師範学校に通い、牡丹は記者見習いとして地元の小さな新聞社で勤めながらも、旅館を良く手伝ってくれていることなど。

私一人で食べながら月光の話を聞くのは気が悪いと告げたが、女将として私という客人を丁重に扱ってくれた。


こんなに楽しい夕食はいつぶりだろう。

私は幸せな気持ちに包まれ、喋りつかれたのもあって、早々に眠りについた。


翌朝、朝食を運んでくれたのは袴姿の朱鷺だった。師範学校へ出かける前に、できる旅館の手伝いをしているらしかった。朱鷺も清々しい、美しい娘だった。


朝食を終えた私は、窓辺から梅の木々を眺めながら読書に耽った。

蝶子、千鳥、黄金がそれぞれ学校へと出かけて行くのを見送った。

私に手を振る蝶子の頭を後ろから叩き、抑え付けるようにしてお辞儀をさせたのは頭の良さそうな黄金だった。黄金と書いて「キン」と読むのだそうだ。

蝶子は少し恥ずかしそうにして、足早に学校へと駆けて行った。


鶯子が床を片付けにやって来た。

長く滞在したいので自分でやると言ったが、月光に叱られると、聞き入れてはもらえなかった。

宿泊費を父に送ってもらうので住所を教えて欲しいと伝えたが、御代はお帰りいただいた後に送っていただければ大丈夫ですとの答えだった。

なんともおかしな答えのようにも思われたが、旅館の支払というのはそんなものかもしれないと、大して気にせずにいた。

そして鶯子の案内にしたがって、梅林を散策することにした。


この梅林は緩やかな山の斜面にあるようだった。紅い梅と白い梅が混ざり合って、まさに「梅の絨毯」を織り成していた。

大きな木の根に腰を下ろすと、私はうたた寝してしまった。香しい梅の香りに包まれていた。


「どうぞ、こちらへ。」

目を覚ますと、立ち姿の美しい背の高い男の人がいた。

私は逃げる場もなく、そこにしゃがみ込んだままでいた。

その人は優しい微笑みを投げかけ、私の手を取った。

もの言わず、ただ優し気に私に微笑みかけた。


「小夜子様。」

私は今度こそ目を覚ました。

どうやら夢を見ていたらしい。

「お風邪など召されませんように。」

声をかけてくれたのは黄金だった。学校からの帰り道だったらしい。もうそんな時間。

私は昼ご飯を食べるのも忘れてしまっていたらしい。

宿に戻ると、月光が涙をちょちょぎらせて歓迎してくれた。

私がいなくなったのかと、どうやって探そうか、警察に連絡しようかと慌てていたらしい。

そこへ鶯子が帰って来た。私を探しに出かけてくれていたらしい。

私は侘びた。いやいや、自分たちが勝手に慌てふためいたのだと、侘びる必要のないことを説明してくれた。

月光は私に身体を温めるようにと、風呂を勧めた。

鶯子は同じく私を探しに出かけた美川を迎えに行ってくると、もう一度出かけた。

私はばつの悪い思いを風呂で洗い流した。


部屋に戻るとまた豪勢な夕食が用意されていた。月光が昼食を取っていない私のことを気遣って、まだ夕方になったばかりだというのに早々に夕食を用意してくれたのだ。

そして申し訳なさそうにしながらも、自分は他の客の夕食を用意しなければならない、時間もちょうど良いので妹たちと一緒に食事をさせて欲しい、今夜の夕食代は宿泊料から差し引くのでと提案があった。

もちろん私は快諾した。

黄金は今の学年になってから百点以外は取ったことがないと、頭の良さを自慢してくれた。

千鳥は八〇点以下は取ったことがない、旅館の手伝いも良くするし、蝶子の面倒も良く見ていると自慢してくれた。

蝶子は勉強はともかく、お買い物は自分の役目なのだと自慢してくれた。

一気に三人も可愛い妹ができたようで、私は大変嬉しかった。


夜は更け、また次の朝も寝坊をした。

起こしてくれたのはやはり朱鷺だった。

「昨晩は妹たちが長居させていただいたようで。」

いやいや、とても楽しかったのだと、いつか朱鷺や牡丹ともゆっくり話がしたいと答えた。

朱鷺は可とも不可とも答えず、早々に師範学校に行ってしまった。


そして鶯子が床を片付けにやって来た。私が散歩へ出かけようとすると、この辺りの梅林は様々に美しい姿を見せてくれるので昨日とは別の方向へ行ってみるようにと、そして昼前には戻るようにと勧めてくれた。

そうは言われても、私は昨日のあの夢の君にまた会いたくなっていた。とはいえ、方向もよく分からずに散策していたため、どの方角へ行ったものか見当はつかなかった。

私は無闇に歩き回った。あの大木を目がけて。もう梅の花などどうでもよかった。あの、大木の根元に腰かければ、また夢の君に会えると思っていた。

歩けども歩けども、大木は見つからなかった。

私は焦り始めていた。少し、ほんの少し、息が苦しくなっていた。


「小夜子様。」

私を呼び止める声があった。それは鶯子であった。昼が近いのに戻って来ないと心配して、おむすびを拵えて持ってきてくれたのだった。

鶯子は敷物も持ってきてくれていた。小高い丘の上に腰かけると、梅の絨毯が一望できた。正に絶景が目の前に繰り広げられていた。

こんな美しい景色を目の前にしながらも頬張るおむすびは美味しくて、私は自らの生を感じた。

「美味しいですね、おむすびって。」

私が泣きそうな声になっているのに気づいて、鶯子は不思議そうに私を見た。

「ごめんなさい。私ね、九歳のときに母を亡くして、とても悲しかったはずなのだけど、お母さんが死んだばっかりなのに。そのとき、お姉ちゃんが作ってくれたおむすびがとっても美味しかったなあって、思い出してしまって…。」

「すみません。」

「いえ、謝るようなことじゃないのよ。」

鶯子は返す言葉がしばらくの間は見つけられないようだった。そして、やっと見つけた言葉を発した。

「小夜子様、きっとお聞きですよね?」

鶯子は八人姉妹の中で自分だけは母親が違うということを話し始めた。鶯子は生まれた直後に旅館の家に引き取られたため実の母には会ったことがないどころか素性もまったく知らない、自分の母は卑しい女なのかもしれない、それでも父は分け隔てなく姉妹の一人として自分を育ててくれた、そのように扱ってくれる姉たちにも妹たちにも感謝しているとのことだった。

そんな話を聞きながら、私は流れる涙を止めることができなかった。それを紛らすように私も語った。

母のように慕っていた姉が嫁いでしまったこと、義母は嫌いではないがどうしても懐けないこと、父までも遠くに感じてしまうことなど。

鶯子は私を抱きしめてくれた。私たちは互いを抱きしめ合って、涙を流し続けた。


夕方、旅館に戻ると私たちの泣き腫らした目を見た月光は、驚いた表情を見せながらも、あえて私たちには何も聞かなかった。

翌日は朝早くから取材に出かけると早めに戻って来た牡丹が夕食を共にしてくれた。

牡丹はよく喋ってくれた。聡明であり、知識も豊富であり、男勝りであった。

今書いている記事のこと、明日の取材のこと、将来の夢などなど、盛りだくさんに語ってくれた。

私よりも一つ年下であるのに、とてもしっかりしていて、私はよっぽど世間知らずのお嬢さんであった。


今日もいろんなことがあった。楽しいことも、悲しい想い出も。

ここでずっとこんな風に過ごしていきたい。そんな風に思い始めていた。


翌朝も朱鷺が起こしてくれた。

いつもは朝食を運ぶと早々に出て行ってしまう朱鷺だが、今日は一緒に朝食を取らせて欲しいと懇願された。

もちろん私は快諾した。

朱鷺は師範学校の様子や、教師としての将来の夢を語ってくれた。

牡丹とは正反対の、女性らしい朱鷺であった。

言葉数は少ないけれど、言いたいことを明確にはっきりと主張する朱鷺であった。

長く話すことはできなかったけれど、朝から清々しい気分になった。


私は鶯子が来るよりも前に出かけてしまった。

少し違う空気の色が見られるのではないかと思った。

けれど、道に迷ってしまったようだ。この梅林の中には目印がなく、どちらの方向へ進んでいるのかがまったく分からない。

まあ、そのうちどこかに突き当たるだろうと、もう焦ることはなくなっていた。

「やあ、また会いましたね。」

それは、あの夢の君であった。

背の高い、優しい微笑みの男性。


夢の君に促され、私たちは大木の根元に腰かけた。

夢の君は私と同じ旅館に逗留しているとのことだった。脚に痛みを覚えることがあって、医者の勧めにしたがっているそうだ。最近では随分良くなってきたけれど、梅の絨毯があまりに美しいのでもうしばらく滞在することにしたが、春になるころには東京へ戻るとのことだった。


夢の君はご自身のことをこのようにたくさん話してくれた。駅の方で買物があるとのことで、大木の根元で分かれた。

私は少し迷いながらも、夢の君の説明にしたがって、なんとか自力で旅館に戻った。

美川が昼に軽食を拵えてくれた。


私は不謹慎かなと思いながらも、夢の君のことを尋ねた。これこれこのような優しい笑顔の君がこの旅館に泊まっているでしょうと。

美川は驚いた顔をした。そのような男性は宿泊していないと。他の客のことだからと嘘をついているのではなく、誠にそのように長く滞在している客はないとのことだった。

そもそもその男性の名前はなんというのかと尋ねられたとき、私は浅はかにも名前さえ聞かなかったことに気が付いた。私は俄かには信じ難く、玄関先でなんとなく待機してみた。


蝶子が、千鳥が、黄金が戻って来たが、待てども待てども夢の君は現れなかった。

ここへ来てから初めて、私は胸騒ぎを抑えられないまま眠りについた。


翌日、朱鷺が来るよりも前に私は目覚め、朝食も取らずに散歩へ出かけた。もちろん大木を目指して。

梅林の中を彷徨い、歩き続けたが、大木は見つからなかった。

牡丹が出かけて行くのが見えた。

朱鷺も袴姿で出かけて行った。

蝶子が、千鳥が、黄金が学校へと出かける姿も見えた。

私がまだ彷徨っていると、黄金に出くわした。私が行こうとすると、黄金は私の袖を掴み、首を横に振った。

私は黄金を振り払った。


息が苦しくなった。涙が流れ始めた。私は彷徨った。夢の君を求めて。


「ホー、ホケキョ。」

鶯が甲高い声で春の到来を告げた。その鳥の姿を認めることはできなかった。


辺りをもう一度見回すと、大木を見つけた。それは、薄紅色の花弁を纏った見事な桜の木が聳えていた。その一本だけの桜の大木はとても立派で迫力があって、少し怖いくらいだった。

私は失望に苛まれ、旅館へ戻ろうとした。ところが、旅館は見つからなかった。

梅林の中を何度か通り抜けた。駅には辿り着けるのだが、旅館はどうしても見つからなかった。


夜中、駅に着くと義母が私を迎えた。義母は私を強く抱きしめた、止めどなく涙を流しながら。

「探したのよ、小夜子ちゃん!」


聞けば、私は東京を出てから約一週間行方不明になっていたらしい。

義母だけでなく、父も姉も、お義兄さんまでも私を探しに湯河原へ来てくれたらしい。

どうして義母だけがプラットフォームで待ってくれていたのかと聞いたら、

「鶯がね、ここで待ってろって言った風に思えたのよ。」

と答えた。

そんな義母の言葉を父も姉も一笑に伏した。


義母は真剣に眼差しで教えてくれた。

梅の花の品種には八人姉妹の名前とよく似ているものがあると。

「月の光」、「美川梅」、「鶯宿」、「朱鷺の舞」、「玉牡丹」、「黄金梅」、「姫千鳥」、そして「蝶羽重」。

そして、梅は一つの花から八個の実を結ぶことも教えてくれた。

あの人たちは梅の精だったの?


では夢の君は?桜の精だったんだろうか?

でも、桜の精と梅の精って仲が悪いの?


義母はこう答えてくれた。

「桜の精というと素敵な印象かもしれないけれど、その桜の木の精は小夜子ちゃんを気に入ってさらって行こうとしたんじゃないかしら。それを八人の梅の精が救ってくれたのよ。」

父と姉は呆れていた。

けれど、私は妙に納得した。

そして、そんなことよりも、お母さんと気が合いそうなことが分かって、私はなんだか嬉しかった。

「でももう大丈夫よ。これからは何があっても小夜子ちゃんのことを手放したりしないから。」

お母さんは、笑顔で私を受け入れてくれた。

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