episode26
「私の下着壊した罰として、なんでも言うこと聞いてね」
「もうちょっとオブラートに包んで言ってくれ……」
旭日は、参ったなと額に手を添えると助手席で組み敷いていた枝真から離れようとする。しかし、細い腕がすぐに伸びてきて動きを止められてしまった。
「それじゃ、私も一緒に連れてってくれるよね?」
「は?」
旭日は、難しく眉を顰める。
「なんでも言うこと聞いてくれるっていった!」
「それとこれとは話が別だろ。というかなんでそんなについてきたがるんだよ」
ほとほと困り果てたように、旭日は枝真を見やると、ため息をつく。
正直、枝真にもついていきたい理由がこれといって明確ではない。
はっきりいって、どこに向かっているのかも、これから何が待ち受けているのかさえ枝真にはわからない。
ただ、純粋に旭日の身を案じて何かあった時そばにいれば助けになれるかもしれないというほんとそれだけの理由だった。
それに、危険を伴うと聞いた時からこのまま旭日を一人で行かせたら二度と会えなくなってしまうのではないかという気さえしていて、どうにも心が落ち着かないのだ。
「旭日くんの事が心配だから」
「危険な目にあうかもしれないんだぞ?」
「それでも、家でハラハラしながら帰りを待ってるよりは全然良いよ」
「……」
お手上げだと、旭日は諦めたように運転席に座り直すと、シートベルトを締めた。
旭日の動作に枝真も表情を輝かせ、同じくシートベルトに手を伸ばす。
「お前を連れていくにあたって3つ条件がある」
「条件?」
尋ね返すと、旭日は小さく頷く。
それから右手の拳を少女の目の前に持っていき、指を三本立てた。
「ひとつ、俺との約束は守る」
「うん」
枝真が理解したのを確認すると人差し指を折る。
「ふたつ、一人で出歩かない」
「うん」
次は、中指を折る。
「三つ目は……」
「ん?」
少し躊躇したように、薬指を折ると旭日は枝真から視線を外す。
「とりあえず、下着……新しいの買いに行くか?」
「うん!」
実は、先ほど服装を直しているとき紐が切れてうまく装着できなくなっていたブラを枝真は「邪魔だから」と外してしまっていた。
つまり、今はノーブラなのだ。
本人は、さほど気にしていないようだが夏場で薄着の肌に布一枚ではくっきり見えて周りは気になる。旭日も、男なので興味がないといえば嘘になるし。やはり目がいってしまう。
「目のやりばに困る」
「さっきは、脱がそうとしたくせに」
「言うな!」
遮るように言うと、旭日はアクセルペダルを踏み込んだのだった。




