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7start  作者: 蒼ノ下雷太郎
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 063


 119204号から、『かあさん』と呼ばれた女性。

 彼女だけは、他の機械族からも『~号』とは呼ばれない。

 人によって細かな違いはあれど、彼女を呼ぶ場合はいつも『母親』という意味の呼称が使われる。

「……やったか」

 母は低い声で言った。

 騎士団の男は、体中に7.62mm x 39弾を喰らい死んでいた。

 屍は、文字通り蜂の巣のようだ。辺りも爆発で破片が散らばり、石畳がえぐられている。派手にやらかした。男が能力で石を操ってもRPG-7で破壊し、本体をアサルトライフルで撃ち殺したのだ。

 母は複数の視線を感じる。

 機械族がこれほど強いとは、という驚きか。

 機械族は常に中立派であり、誰も襲わない代わりに自分らを襲うなという族だ。

 さらに言えば、ほとんどの者は機械族を機械の知識や技術に長けただけの技能集団と思ってたのではないか。

(実際はそんなわけないんだがな……)

 本当は、後生大事に中立派を守らなくてもいい。

 だが、そうしないとクチうるさい奴らがいるだけだ。

 そう、おそらく地下都市で一番――いや、地下都市で一番クチうるさい奴ら。そいつらから、身を守るために仕方なくだ。

(たまに貴族の家に仕事しに行くのだって、子供達の経験のためと、奴らの家に細工するためだ。使用人になったつもりはないし、下から見上げてるつもりもない。むしろ、見下してるのはこっちの方だ)

 だから、戦う術は身につけている。

 何も母が特別などではない。119204号も、本当は戦闘が主な仕事ではない。ただ、彼女等が全員が強いだけだ。


 紫電が放射状に飛び散る。

 母の周囲でそれは起こり、かき消えた。どうやら、何らかの攻撃だったようだ。

「きさまらああああああああああっ!」大喝する男。

 白いローブを着ている。おそらく、彼も騎士団だろう。彼の近くでバチバチッと音が鳴り、金属が反応し、空気中の水分が蒸発する。

 どうやら、相当な能力者のようだ。

(……余計なことをしてしまった。 私は、あの子を連れ戻すためだけに行動したのに)

 論理的ではなかった。

 こんな馬鹿共の相手をするなんて時間の無駄で、武器の無駄遣い。愚かな行為だ。

(まるで、ニンゲンみたいな行為だ)

 母は片手で三人の部下に指示を与え、淡々と拳銃の状態を確かめる。

(私は馬鹿だ。感情なんてものに囚われて暴走してしまった。ああ、全く馬鹿馬鹿しい)

 シリンダーを外す、弾はあと四発。元に戻す。撃鉄を引き起こす。

(……殺してから反省しよう)

「機械族が! 今まで猫をかぶっていたのか。まさか、こんな力を持っていたなんて。一体何を企んで――」額を撃ち抜く。

 弾丸は後方の石畳も砕く。男の死体は膝をついて仰向けに倒れた。穴の空いた頭から血が流れ、脳漿もかすかにこぼれ出る。

(一つ)

 母はまた撃った。

 彼女から数十メートルも離れた距離だが、的確に撃ち抜く。

(二つ、三つ――)

 機械族の使うアノニマスは、敵の攻撃や銃声や反動を吸収し無効化するだけじゃない。母の周りには無数のアノニマスが放射されているが、もっと離れた距離――数十メートル遠くにもアノニマスは広がっている。そして、その範囲内にいる人物や地形をスキャンし、母に送り、把握させる。で、母が怪しいと判断したらアノニマスに命令を与え、攻撃を防ぐことだってできるのだ。

(母が視認できないものは、CREDLEが判断して危険そうなものだけ弾く)

 ようするに、どんなに遠くから母を狙撃しようとしても無駄なのだ。

 母は瞬時にその人物を察知し、場所を特定。

 そして、どこからでも届くような大口径の武器で殺られる前に殺る。

(もし、撃たれる前に撃てたとしてもCREDLEにより弾かれるが)


 母は察知する。


(下か)

 建物の屋根から飛び降りた。

 屋根から炎が吹き上がり、母が先ほどまでいた場所が煌々と燃えていた。

 ――アノニマスは建物の中にも広がる。だから、今のように屋根の下に敵がいても察知することができた。

(四つ)

 ――そして、アノニマスは変形ができる。使用者を守る盾にもなるし、敵を殺す矛にもなれるのだ。

「ぎゃあああああああああああああああああっ!」

 悲鳴が上がり、部屋の中が血に染まった。

 アノニマスは使い道の幅が広い機械だが、本来は攻撃は苦手である。攻撃するには対象の位置をしっかりと捕捉しなきゃいけないし、武器を形作るのも時間がかかる。盾なら、それこそ適当な壁でも問題ないが、武器となると剣や矛などの刃物、もしくは大きな拳など、手間がかかるものばかりだ。

 だから、普段は機械族は攻撃に関しては銃火器に頼ることが多い。

(……ちっ、早く小娘を捜さねば……ん?)


 壁をローラー靴で走り、再び違う屋根に着地すると、妙なものを目撃した。

 ドドドドドドッ……と、靴なりが聞こえる。

 大きな音や小さな音、やや高い音、今にも途切れてしまいそうな音――全て、足音が、いくつも反響し合い、一つの矛先になっている。

 大勢の人々が機械族に迫ってきていた。

(――何だ、あれは?)

 人々の構成はでたらめだ。下等団員ならまだ分かる。母は騎士団の団員を殺したのだから、報復に来るのは当たり前だろう。(それでも早すぎるが)しかし、集団の中には何も関係ない者の姿も見受けられる。子供連れの女性――タンクトップのじーさん――白いローブを着てないい男や女――もちろん白いローブの姿も多いが、ほとんどは楽園教とは何の関係もない無関係の人々だった。

(……思考麻薬か何かで操って……るわけじゃなさそうだな)

 母は、ガスマスクに搭載してるシステムで遠くまで見据える。

 向かって来る集団の一人一人の細かな表情まで観察。

(目は正気だ。何でこんなことしてんだ、と怯えている……だが、体は迷うことなくこっちに来てる、か)

 三人の部下からも連絡が来た。

 どうやら、母が見ていた方角だけじゃない。機械族を囲むように行進してるようだ。

(能力者の仕業か? 何かのモノを操作する能力者。例えば、人を操る能力者も見たことはある。だが、ここまで大勢のを操る奴なんて知らない。おそらくは、複数で操っているのだろう。連携が取れてるから、まるで一人が操ってるように見えるが規模としてはありえない。普通は操れてせいぜい五~六人が限界だろう。それを、十人以上が束になって操っているのか。相当な手練れだな。……さて、この能力者はどこの勢力の者か。……楽園教か? 確かに奴らの者は殺したが、それにしては早いし、奴らのお上は機械族とあまり戦いたくないはずだが)

 集団はまばらに一人一人の間隔を開けているが、横より縦のつながりが大きい。

 もはや、これは人の集団というより川だ。川が、母達に押し寄せている。

(……ちぃ)

 母はしばし、思考にふけるが。

 集団の音は待ってくれる気配はない。そろそろ、こちらに到達しそうである。

(考えてるヒマはないか)


 コロセ

 コロセ

 コロセ

 コロセ

 コロセ

 コロセ

 コロセ

 機械族を、殺せ


 迫ってきている集団は、口々にそう呟いていた。

(上等じゃないか。誰が相手か分からないが――)

 母は部下達に命令し、自身も銃弾の確認をする。


 064


 ダイチと119204号は、外の騒音を耳にした。

 119204号は恐怖で震え、体育座りのまま縮こまる。

 仕方なく、ダイチが窓から外の景色をのぞいた。

 ……大勢の人々が、機械族に迫っている。

 何だこれは、とダイチは目を疑う。

 下等団員だけじゃなく、白いタンクトップ姿の老人や、子供連れの女性など、楽園教とは無関係らしい姿まであった。たまたま、処刑を鑑賞しにきただけの者達だろう。

 何らかの能力で操られているのか、少しも躊躇せずに行進している。機械族が放つ銃弾は次々と彼らを撃ち抜き、人肉は飛散して骨は砕かれる。それでも行進は止まらない。けたたましい銃声、マズルフラッシュ。薬莢は死体のように転がる。機械族は手榴弾まで使った。人の四肢が吹き飛び、血肉は辺りに付着、煙が濛々と立ちこめる。


 女性の叫びが聞こえた。


「……アユムさん?」

 ダイチの動揺した声。

 119204号もどこかで聞いたことのある声だと気になるが、恐怖で動けない。

 母がやっているのだ。

 ダイチが何を見て、何に戦慄してるかは知らない。だが、この騒音とダイチが戦慄した何かはきっと想像もしたくない惨状で――

「……どうしてだよ」

 ダイチは涙ぐむ。

「ススムさん……」

 119204号は、ふと顔を上げた。

 一瞬だけだが、呆ける。そして、どこかで聞いたことある名前だと思うと急に意識が覚めた。

 ススム?

 ある屋敷で、名前だけだが聞いたことあるような。

 誰かが、クチにしたような。

(いけすかない貴族の家に行ったとき、笑顔だけが取り柄そうな奴が……いたような……)

 119204号は、ふるえっぱなしの足で懸命に窓際まで進み、外をのぞき見た。

(あのときは普段感情を見せないかあさんも、特別怒りのようなものを見せた)

 あのときの青年がいた。

「――っ」

 血だらけで――大勢の群衆に踏まれて、石畳に転がっていた。かすかにだが、横たわっている顔が見えた。

 恋人や周りの人間に笑顔を向けていただろう――顔。

 女性の悲鳴も聞こえる。

 ダイチは、その声を聞いて余計に涙腺を刺激される。操られている人々の中には、懸命に声だけでも発する者がいるのだろう。ただ一人、能力者の支配から声だけ逃れた。

「アユム、さん」

 ススムという人物の、恋人の声。

 彼女は必死に声だけでも発して、恋人の死に抗っている。

 だが、体は支配されたままだ。いくら悲鳴を上げても、恋人の死を否定しようとしても、現実は変わらないし、機械族の撃つ銃弾も外れたりはしない。

(何で、あの中に。いや、そうか。あの男は下等団員だったか。貴族に殴られていた――ああ、あの弱かった。ほんと、弱かった奴。権力もなければ、能力もない。何もない奴。――でも、何かを守ろうとしていた。弱くても、彼なりに何かを守ろうとしていたんだ)

「………」

 119204号の目つきが変わった。

 彼女はガスマスクを椅子の上に置く。そして、机の引き出しや棚を開けて、部屋中を探索しはじめた。

「な、何してんだよ」

 ダイチは困惑してるが無視。

 お偉いさんの施設だ。武器の一つか二つは隠しているはず――あった。

 32口径のオートマチックの拳銃だった。母のと比べたらおもちゃだが、仕方ない。弾倉を外して弾を確認し、装填。スライドを引いて、セーフティをかける。

「………」

 他に何かないか?

 これだけじゃ心許ない。119204号は拳銃を背中側のベルトに差し入れて隠す。そして、もう一つ――せめてあと一つでいい、武器がないかと探った。

「お、おい。どうしたんだよぉ」

「……武器、武器を、探してる……」

 ダイチの声を無視しようとしたが止めた。お前も探せと、目で訴える。

「ここはそれほどないんじゃないかな。拳銃だって、お偉いさんの護身用だろ。まぁ、それを忘れる辺りが所詮はお偉いさんって感じだけど」

「……お前は」

「え?」

 ダイチは急に呼ばれて首をかしげる。

「お前は……武器……何か、ないのか」

「そんな、オレは別に」と、おろおろし出すが途端に手を叩いて閃いたようだ。「あった! ち、地図なんだけど」

 119204号の目が見開く。

「でも、こんなの武器でも何でもないよね。せいぜい、迷子にならないくらいで」

 ダイチの顔が強い衝撃を受けて、もんどり打つ。

 机の上に置いてあった灰皿を、振りかぶって投げたようだ。いくら119204号が矮小といえど、灰皿は重みのある鉱物でできていてダイチの意識を一瞬奪いかけるほどには――効果があった。

「て、殺す気か!? あ、あんまりだ。いくら役に立たないものを出したからって、こんな――」と言おうとしたときだ。

 ダイチは目を点にする。

 119204号はダイチが落とした地図を拾い上げて、まじまじと顔を近づけて凝視していた。見た目はダンゴ虫が丸まった状態にしか見えなく、こう言っては何だがマヌケだ。

(な、何をやって)

 しかし、ダイチは迂闊にクチを開くことはできなかった。それほど、119204号の意気込みは半端なかった。

 119204号は急に立ち上がると、自信満々の顔で地図を丸め、ダイチを見て言う。

「……い、いいいいいいっ――いぐよ」

 いや、声にしたら瓦解したが。

 119204号は咄嗟にガスマスクを付けようと――したが、止めた。

 両手で、己の頬を叩いた。

 何度も、何度も。

「……どこへ?」

 ダイチは、119204号の瓦解だけを無視して彼女に聞き返す。

 119204号は答えた。

「戦いに」

 例え、母と戦うことになろうとも、と。


 065


 VR。


「ススムって誰だ?」「あれじゃね、番外編じゃね」「番外編って下等団員が主役だろ。誰も見ねーよ」「そんなの出されてもなぁ」「いやいや、そこが重要なんだよ。そもそも、テーマを分かってない輩が」「テーマってwwww」「早く戦えよ」「ちんたらしてんな」「てか、機械族が全員女性ってバレバレだし」「嘘つけよ!」「次でようやく戦いか」「そういや、九鴉どうしたんだよ」「ロリに主役交代!」「もう男いいし。機械族だけで行こうぜ!」


 066


「流石だな、乱入者を利用して、九鴉の本質を浮き彫りにするか」プログラム2はいう。

「ああ、九鴉と同じ理由で集まったなら、動機も似たようなものだからな」プログラム1は語る。

「……?」プログラム3は疑問符を浮かべる。「そんなに、上手い話だったんすか? 見てる人は結構不満タラタラですが」

 それに対し、プログラム2はキレる。

「だーかーら! あーもう、説明めんどくさいな」

「まぁ、具体的に言葉にしてはいないから、ね。いや、分かる人には分かるけど」

 と、プログラム1はフォローした。

 別にプログラム1達が言ってることは難しくない。

 乱入者達の過去を浮き彫りにし、それを九鴉と照らし合わせることで、彼の本質をあらわそうという、わけだ。

(ツバサに惹かれて参上したのなら、動機が同じなのも納得がいく。それなら――)

 ということらしい。


 プログラム2は聞く。

「しかし、機械族ってあんなに強かったのか。てっきり、脇役だとばかり思っていたが」

「能力者ばかりの戦闘だと飽きるからね。能力者じゃなくても、勝ち上がれる要員が欲しかったんだ」

 プログラム1は言った。

 そのために、人類史で使われていた科学技術を彼女に渡したと。(あくまで断片的にだが)

 彼女――そう、機械族の母に。

「元の名前は、氷河(ひようが)。二番街に住んでいた者だね」

 プログラム1は言った。


<check>

 二番街。

 元々は恵まれた街だったが、それ故に争奪戦が激しかった。

 ここでは、二回も大規模な戦いが行われた。

 最初の住居者達は、長い戦いの末に決まる。大量の屍の上に立った者達。

 故に恨みも尋常じゃなく、数年後には逆襲された。(タチの悪いことに、これは他の街の族まで介入し、人類史で行われた大戦のような図となった)

 これらが、一回目と、二回目の戦い。

 そして、二回目の戦いを俗に『二番街紛争』という。

</check>


「二番街紛争。氷河はそれで全てを奪われた」

 一回目の戦いに勝った者は、豊かな土地に住み、裕福な暮らしをした。

 氷河は、その裕福な家の娘だ。このときは、不幸とは縁がない温室育ちの少女だったらしい。

「だからこそ、どん底に突き落とされたときはたまらなかっただろう。家族は殺され、、故郷は奪われ、その挙げ句に何度も何度も陵辱され、暴行され、一時は心が死んでいた」

 だが、復活した。

 プログラム達により、復活させられたのだ。

「当時は、能力者同士の戦いばかりでマンネリ気味だった。だから、能力者以外の強者が必要だった。それで最高のバランスが得られるはずだった。……しかも、氷河には物語があった。誰もが共感でき、応援したくなる物語」

 弱者が、強者に立ち向かう物語。

 いや、奪われた者が奪った者に復讐する物語といえばいいか。

 マンネリ気味だった当時は、格好の逸材といわれ、プログラム達は歓喜した。


<check>

 プログラム達は、氷河や九鴉のように、番組の被写体となる人物を求める。

 たまにイレギュラーな人選もするが、大半は観客を魅了し引きつける力を持つ人物――主役になれる者を選ぶ。

 そして、番組は彼らを中心に構成され、観客が満足するような物語になっていく。

(そのために、地下都市で暗躍したり、主役をリバーシーにさせたりと涙ぐましい努力もしている)

</check>


「だが、結局は中立派となって裏方に徹したけどな」

「それは我々プログラムも悪い。我々の中で彼女をどうするかで議論が過熱し、最後は我々の駒として動かすことになったのだからな」

「……まぁな」

 プログラム4が現れた。

「ふんっ、お前が現れなければ」プログラム2はふてくされる。

「あのまま彼女を突き動かせば我々でも止められなかっただろうよ。それこそ、楽園教さえ滅んでいたかもしれない」とプログラム4は言う。

 だから、あれは正しかったと。

 最悪、今まで築き上げたものが崩壊し、バランスを保つどころの話じゃなくなっていたかもしれないのだ。

 プログラム達は一度、氷河を主役に物語を描こうとした。

 だが、その結果何が起きたかというと、やり過ぎたのだ。氷河の勢いは留まることを知らず、二番街紛争の原因となった人物を殺し回り、最終的には楽園教乗っ取りを計画し、一番街に宣戦布告をしようとした。

 ……流石に、そこまでいくとまずいと考えたプログラム達はどうするかと検討した。

 このままは、まずい。

 だが、どうする。

 殺すのか?

 いや、殺すのはもったいない。観客の人気も熱い。それなら――と判断した結果が、現在のような中立派の機械族だ。

「だが、結果的には以前よりひどいことになってるかもしれないだろ。氷河は力を蓄え、族をしっかりと育てた。科学技術は、断片的にしか与えてないから大丈夫だろと侮っていた結果が、これだ」

 プログラム達は、本来なら禁じ手となるような手段をいくつも持ち入り、氷河を止めた。

 さらに、自分らの目から逃れられないように手駒にし、裏仕事を担当させたりもした。

 殺したいほど、邪魔になった。

 だが、殺せない。

 だから、首に縄をつけて従属させようとした。

 プログラム達がしたことは、こういうことだ。皮肉にも、氷河は従属するどころか、人員を育て上げて強大な族を作ったが。

「騎士団だって、相手になんないっすもんねー」

 プログラム3は言う。「所詮は貴族だからへなちょこなんすかね。やっぱ、雑草育ちの方が強いのか」

「どうするんだ一体」とプログラム2は聞く。「騎士団で止められないとなると、もし奴らが暴走した場合は」

「ふんっ、何も騎士団が全てじゃないでしょう」

 プログラム4はほくそ笑んだ。

「情報部を出せばいい」

 それを聞いて、他のプログラム達は戦慄した。

<jyouhoubu>情報部</じょうほうぶう>

楽園教が持つ武力集団の一つで、唯一、教祖直轄の部門。

憲兵隊や騎士団とは異なり、彼らの仕事はほとんどが裏仕事。

他族の潜入捜査や人海戦術による情報収集、

ときには破壊工作や、思想誘導、――暗殺までこなす。

<word>●</word>

「さ、流石にそれはまずいんじゃないか。この地下都市のバランスが」

 プログラム1は慌てて止めに入ろうとするが、

「バランス?」

 プログラム4に冷笑されてしまう。

「バランスとは何だ。今のこのつまらない地下都市が、バランスを保ってるというのか?」

「つまらないって、今楽園教では戦いが――」

「こんなの、二番街紛争と比べたら!」

 突如、我を忘れて声を張り上げるプログラム4。

 少しして、ようやく気がついたのか。プログラム4は人間でもないのに、こほんっ、と咳払いをする。

「ともかく、このままではバランスどころではない。楽園教で戦いが? こんなの、今まで何度も行ってきた紛争と変わらないだろ。何度目だよ、何度目。観客だって、いい加減うんざりしてんだよ。能力者達の戦いに飽きてきたら、氷河を主役にして、それは結局破綻して、今度はノザキを排除するためにある少年を利用して、だがそれも行きつく所は同じで――」プログラム4は憤る。「ダメなんだ。このままでは、我々は同じ所を延々とループしてしまう」

「し、しかし、それではバランスが崩れる。九鴉を主役にした案は、確かにこれまでと似たような話になるかもしれないが、それは誰もが好むような王道ストーリーをベタにしてるからであって」

「はっ――」プログラム4は笑う。

「だったら、何故観客は九鴉よりも119204号に注目してる?」

 プログラム1は絶句した。

 他のプログラム達もそうだ。

 この言葉に、何も言い返せなかった。

「観客が見てるのは、お前が大事にしてる王道ではない。即物的なものなんだよ。かわいい女の子が出てる。それが見られればいい……そんな、ふざけたものに目が移ってる。そんなものが見たいなら、エロ本でもおがめばいいものを。バランスバランスばっかり言って、安全策ばかりを行った結果がこれだ」

「だ、だが中には九鴉達の戦いを求める者を――」

「少数派だ」

 プログラム4は断言する。

 そして、他のプログラム達はそれに反論できない。

「これではダメなんだ。我々は何のためにいる? この地下都市を基にエンターテイメントを作っているのだろう」

 本当は、それの理由は観客のためだったのだが。

 プログラム4は観客という言葉を入れない。

 そして、他のプログラム達もそのことに対して何も言わない。

「我々の存在意義はそこだろう。なのに、我々がマンネリに甘んじて過去にあるものを作ってどうする。本当のエンターテイメントとは、何が起こるか分からないものじゃないのか。そうだ、いっそのこと九鴉を主役にするのはやめて、119204号を主役にすればいいじゃないか。むしろ、ツバサだっていらないかもしれない」

「い、いくら何でも無茶苦茶だ!」

 プログラム1は反論する。

「そうかい?」

 プログラム4は返す。

「そ、それに、情報部を出すのはやはりバランスが」

「つまらないバランスなど壊してしまえ」

 その発言に、プログラム1と2は反対した。

「ちょ、流石にそれは――どうなんすかねぇ」

 プログラム3も、その意見には賛同できないようだ。

 だが、他のプログラム達も集まってきた。

「賛成!」プログラム5。

「賛成だ!」プログラム6。

 プログラム1は「ぬぅぅ……」と苦悶の声を上げる。

「もっと集めようか。残念だが、臆病な保守派をぶち壊したい。そう願う、革新派は予想以上にいるのだよ?」


 067


 楽園教の教祖こと、シオン・アカツキは護衛の騎士に連れられて、大神殿へと避難した。

 大神殿(だいしんでん)

 楽園教の本部としても機能しているここは、外観は球根のような巨大ドームが目立ち、荘厳な雰囲気よりも親しみやすさを感じさせる。モデルとしては、人類史で最も有名な教会を元にしてるのだろう。

 シオンは神殿の奥へと進み、護衛をエレベーター前に立たせると一人で中に入った。

 エレベーター内はこれまた豪奢で、壁全面に貴重な檜を使い、天井は人類史のをそのままコピーした絵が描かれている。

 シオンはエレベーターの階数を指定するパネルに触れ、彼だけが行ける場所を目指した。


「……おぉ」

 エレベーターは地下に下りた。

 そして、シオンは感嘆の声を上げる。

 彼が行き着いたのは、宝物庫だ。

 広さは外の大広場ほどあるが、それでも空間を余すことなく使っている。ここを埋め尽くすのは人類史で名高かった美術品の数々だ。

 西洋の絵画や彫刻、東洋の掛け軸や日本の陶磁器や屏風、他にも民藝運動で評価を得た民芸品から、アーツ・アンド・クラフツ運動から発生した一連の美術運動の作品、他には二十世紀初頭のPOPイラスト、さらには日本刀や銃器など、武器まで飾っていた。

「ここだけが、わたしの安らぎの場だ」

 どれもこれも一級品の美術品ばかりで息がつまりそうだが、シオンにとっては楽園のようらしい。

 砂漠でオアシスを見つけたかのように、感極まっていた。

 砂漠がどういう状況かも忘れ、一時的な現実逃避を楽しんでいる。

 シオンは奇妙なデザインの椅子に座る。それは、人類史では近未来的と評されたものだ。見た目はやたらとくねっていて、椅子というより鐃鉄に失敗した鉄板のようだ。これの良さを知るには外面だけじゃなく、何故それが讃えられたのか。歴史的背景や美術史の流れなどを汲み取らなければならないのだが、シオンには関係ないらしい。

 というか、考えてもいない。

 シオンはその椅子に座りながら、そばにあった人類史でいう中国の骨董品の薬棚から陶磁器を取り出した。しげしげ、と陶磁器を眺める。

「うふふふっ……」

 やや、気持ち悪い笑みを浮かべながら。

 彼が手にしているのは、備前焼の四方平鉢だ。(細かい名称を言うともっと長いが)これもまた一見、何の変哲もないもののように見える。というか、これだけじゃ美しいとも言えない。ひどくつまらない粗末品のようだ。これを作らせた人物は、食器は料理の着物である、と言った。ようするにこれは、料理の器として出すときこそ本領を発揮するのだが――シオンは分かっていない。

「ふふふっ……」しかし、とても満足そうに笑っていた。


「載せるものがない食器を愛でるなんて、教祖様はとても悪い趣味を持ってらっしゃる」


 だが、不意に聞こえた声により安息は絶たれた。

 シオンの表情は一瞬にして強ばり、手で遊んでいた平鉢を棚にもどす。

「ちゅー」

 その男は、いつのまにかこの宝物庫に来ていた。

 白いローブを着ている。団員服。背中に書いてある団員番号を信じるなら彼は五等団員で、下等団員。とてもじゃないがここに立ち入る権利どころか、教祖と会話する権利すらない。

 だが、彼の背中に書いてあるのは『00000』というふざけた数字だ。

「……貴様か」

「どうも、お久しぶりです。あなたの溝鼠(ドブネズミ)、この地下都市の溝鼠、みんなに愛される溝鼠でございます」

 男は、中肉中背。目は細めで、肌は極端に白いが――それ以外はこれといって特徴はない。

「ちゅー」

 彼は、仕草や姿勢だけは礼儀正しく、下等団員のようにシオンを敬っていたが、そのニヤニヤした顔はあきらかになめきっていた。今か今か、と相手が自滅するのを待ちわびているようだ。

「新たな指示か」

 だが、シオンはしかめっ面をしながらもそのことに文句は言わない。

 言っても無駄だと、自分にはそんな権利はないと自覚しているのだ。この、見た目は下等団員でしかないこの男に。絶大な能力者でもなく、強大な族に所属もしていないはずのこの男に。

 シオンは完全に従属していた。

「プログラム達からの新たな指示です」

「………」

 露骨に嫌悪感をあらわした。顔はひどく歪み、宝物庫の中で唾を吐き捨てたくなる。

 シオンを――いや、この楽園教を影から操っているのは、VR世界にいるプログラム達だ。

 ツバサを処刑するというのも、プログラム達が命令したことだし。

 四番街と戦えというのも、自分らの支配下にない族がこれ以上、強大な力を持つのが危険だと判断されたからだ。(特に、RABBITのことを危惧した)

 これら全て――いや、その他にもプログラム達が命令した事例は多い。

 そもそも、この楽園教の設立当初からプログラム達はシオンを操っていた。

(わたしが楽園教をここまで大きくさせられたのも、彼らのおかげだ。五番街を占領し、信者を増やし、武力を持った。必要な知識も、技術も、武力も彼らのおかげで手に入れられた。……だが、その結果がこれだ。これじゃ、私は奴隷ではないか)

 皮肉だ。

 楽園教で最も権力あるはずの教祖が、下等団員のように使役されてるのだから。

「……これ以上は、協力しかねます。楽園教が、この楽園教が、どうなってるのか分かるでしょ」シオンは泣き叫ぶようにつぶやいた。

 今も刻一刻と楽園教は荒れている。

 当初はただ二人の子供を処刑するだけだったはずだ。それが、突如乱入者が現れて二人を救出し、逃走した。

 それを追え――と命令はした。だが、今は乱入者を捕らえることとは関係なく、無法者が暴れ、関係ない者の血まで流れている。きっと、今も死んでいく人の数は桁がどんどん跳ね上がっているはずだ。

「いいではないですか」

 だが、溝鼠は平然と言い返した。

 プログラム達に仕える伝言役で、シオンを監視する監視役でもある溝鼠。

「人は暴れてこそ花開く。ただ大人しく生きるのは能がない証拠。生きていない証拠。この状況はむしろとても人間らしい、健全な行為だと思いますよ。そう、彼らは誰よりも人間であろうとしてる」

 張り付けたような笑顔を浮かべながら、彼は言った。

「ちゅー」

 シオンは、苦虫を噛みしめるかのような表情を浮かべるが……段々と、逆らうことの恐怖を思い出し、握った拳は力を無くす。

「いい、心構えですね。教祖様。そうですそうです。この地下都市は楽園そのもの。楽園教はその楽園を守るためにある。愛するためにある。だから、その楽園を管理する管理者達――プログラムに逆らってはいけないのです」

 溝鼠は言う。

「たかが、人間ごときが」

「………」

 シオンは、このときありありとVRにいる者と己の差異が分かった。

 彼らは徹底して自分らを嘲笑している。

 ここで生きて、ここで死ぬ者達を、端っから馬鹿にしているのだ。

「情報部を出しなさい。それが、プログラム達の指示です」

「は、はぁっ!?」

 情報部。

 それは、元々はシオンが作った私設部隊だ。

 本来は、プログラム達に命令されるためじゃない――むしろ、彼らを倒すために用意した。

 そう、彼は抗おうとしたのだ。

 自分よりはるかに力を持っている者達に。

 VRに住むプログラム達に。

 たかが人間ごときが、抗おうとしたのだ。

(死にたくなかった……ただ、従属するだけの生きものであると、認めたくなかった。そんな人生のままで、死にたくなかった)

 故に、彼は自分だけの部隊が必要だった。

 だが、自分で勧誘するのはプログラム達にバレる。名目を偽り、集めてもダメだろう。彼らの視界に入るようでは、必ず対抗策が練られ、阻止されてしまう。

 だから、それから逃れる手段を考えた。

 方法は普段行う演説だった。

 ただ聞いてるだけでは何気ない演説に聞こえるかもしれない。だが、シオンはたった一人でもいい――本当のメッセージが伝われば、と演説した。例え、周りには普通の演説に聞こえてもだ。隠喩に隠喩を重ねて、メッセージを隠した。それを解読できる人がいると信じて……。

 結果的に十人以上のメンバーが現れた。

 本当に奇跡はあるのだと、このときシオンは感じた。

 彼らとは直接コンタクトは取らず、テレビで公開する演説だけで命令を与えた。それは見事に成功し、次から次へと教祖が望むように敵を暗殺し、プログラム達が困るようなシチュエーションを起こした。

 ……だが、ある日、彼らの存在が六門委員会にバレてしまう。

 そして、VRのプログラム達にも。

 皮肉なことに、自分と同じ人間である六門委員会に足を引っ張られたのだ。

「情報部は……危険だ。六門委員会が何を言うか分からない。貴様だって知っているだろう。奴らの中には情報部のメンバーを取り入れた者もいて、この紛争を激化しようとする者も」

「なおさらいいじゃないですか」

 溝鼠は満面の笑みで言う。

「薪をくべないと火は燃えませんよ?」

 シオンは怒りで椅子から立ち上がり「ちゅー」何もしなかった。

 彼の怒りは、一瞬で凍り付いた。

 溝鼠は能力を使ったのだ。それはもう――中肉中背の個性なき男ではない。

 虎だ。

 虎に変身したのだ。

 これが、溝鼠の能力。

 彼はプログラム達に仕える者でありながら、同時に地下都市にいる能力者と同じく能力を使うことができる。

「下等団員の格好で油断しましたか? 忘れないでください。あなたの首に巻いてるのは首輪だということを。そして、逆らえばお仕置きする絞首刑の縄でもあるということを。あなたは我々にとって教祖でも何でもない。ただの歯車の一つで、人格を求められていない道具に過ぎない」

 次は、噛みますよ?

 虎の姿で、溝鼠は言った。

 能力でまた体を人型にもどす。あの、個性のない中肉中背に。

「……っ」

 シオンは、ぶるぶると打ち震えるが……怒りにくべる薪は切れたようで、表情は段々と青ざめていった。

「……どうなっても、知らないぞ」

「知らないのは我々の方です。責任を問われるのはあなただけだ。六門委員会に利用されるのも、団員達があなたを憎むのも。我々には関係のないこと」

 そういうと、溝鼠はシオンから離れエレベーターに乗る。

「それじゃ、ご協力お願いしますよ? 忘れないでくださいね。あなたの存在価値を」

 そして彼は、エレベーターで一階に向かった。



 エレベーター前で待機していた教祖の護衛達は驚いた。エレベーターが、誰も乗っていないままで着いたのだ。

「……??」

 疑問符を浮かべて、機械の故障かとトビラを閉める。

 だが、本当はそこに誰か乗っていた。

 昆虫にも、鳥にもなれる能力者が、そこにいたのだ。

(さて、次はお転婆娘にお説教ですか)

 一羽のカラスが、大神殿から飛び立った。


 068


シオンはエレベーターにもどり、執務室に赴いた。

 宝物庫と比べると犬小屋のような狭さで(それでも下等団員の寮より広いが)、床は赤い絨毯が敷かれ、机は白木でも見劣りする。

「………」

 ここには仕事に使うモノ以外は何もない。全くだ。

 宝物庫にあったような美術品は皆無。

 シオンが席に座ると、空間液晶にメッセージが点滅していた。


 ――六門委員会が応答をねがっております。


 シオン――いや、教祖は憂鬱そうに眉をしかめる。

 空間液晶に触れると、『了承確認』、という音声と共に六つのウィンドウが浮かび上がる。

「お忙しいところを申しわけありません、教祖様。この度は緊急会議を開きたくご連絡しました。現在、外はさわがしいようですが」と、中年の女性が先陣を切ってしゃべった。彼女も白いローブの団員服を着ているが、下等団員と違って豊かな生活をしているのか恰幅がよく、肌もツヤツヤだ。

 彼女が、教祖さえも脅かす存在。

 名前を、アヤネ・ベルクという。

 六門委員会では、騎士団を束ねる外部保安部門を担当している。実質、騎士団のトップで、ダンネルさえも彼女には逆らえない。

「そもそも、騎士団が不甲斐ないからこういうことになったのではないかね」内部保安部門を担当している中年男性が言った。彼はアヤネといざこざがあったからか、露骨に敵対心を見せている。「まんまと罪人を奪われ、挙げ句はこの騒ぎ。楽園教は地獄絵図のような有様ですよ」

 だが、アヤネもやり返す。

「おや、それを言ったらあなた方、憲兵隊はこれまで何をしていたのでしょうか。ツバサとダイチ両名を野放しにしていたのはあなた方でしょう」

 今までスパイだったということも気付かったくせに、偉そうな物言いをするな、ということだ。

 両者は画面越しに鋭い視線を交わし合う。

(まずいぞ……これはまずいぞ……)

 教祖は内心、動揺していた。

(情報部を出そうなんて言えば、最初は反対意見を出しても、徐々に肯定していくだろう。……それがまずい。とくに、『革新派』の連中は)

 革新派。

 教祖が危険視する思想勢力である。


<kakusinnha>革新派</かくしんは>

楽園教に存在する思想勢力の一つ。

保守派とは違い、楽園教のさらなる発展を目指す。

ときには、『武力』を用いることもためらわない。

(ちなみに、VRのとは関係ない)

<word>●</word>


 楽園教には、大きく分けて二つの思想がある。

(といっても、これは上流階級だけのものだが……)

 一つ目は、『保守派』。

 楽園教はもう今の時点で楽園なんだから、いいじゃん。このままでいようよ。

 と、安寧を望み続けるのが保守派。

 言い方を変えれば、自分らの富を独占し続けた状態が最高だということだ。

 二つ目は、『革新派』。

 彼らは、楽園教の教えをさらに広めようと企んでいる。

 今も楽園教の規模は十分に大きく、信者の数も相当だ。だが、彼らはそれで満足しない。

 四番街の族や三番街の族、果ては六番街や一番街さえも倒して、自分らの教えを広げようとしている。

 それが革新派だ。


(奴らにだけは、キッカケを与えたくない。ここで情報部をちらつかせれば、奴らはこの機会に乗じて何かをしかけるぞ。それこそ、わたしの暗殺すらやりかねない)

 教祖以外に、楽園教を実質支配してるのがプログラム達だということは知る者はいない。

 故に、教祖だけがプログラムの命令に苦しみ、さらには余計なことをする者達に辟易している。

(そもそも――奴らが、情報部を公にしなければ――わ、わたしが、長年を費やして集めた精鋭達が――)

 教祖は憤る。

 腸が煮えくり返りそうな、といえば彼の心情を分かりやすく説明できる。だが、これは最も彼の抱いた感情に近いというだけで、正確にはあらわしてはいない。

 本当は、怒りだけじゃなく悲しみもある。

 そもそも、六門委員会とは教祖一人だけじゃ楽園教を動かせないから作ったのだ。そう、彼が仲間を欲したから集まったはずなのだ。

(情報部の部長だって、何をやっているんだ……六番街から現れた得たいの知れない奴だったが、その実力を信用したというのに……情報部は、いくつかのグループに分かれて個々で六門委員会のメンバーと手を結んだ)

 皮肉な話だ。

 言い合いをするとはいえ、仲間だと思っていたのだ。同じ人間の仲間だ、と。

 それが、六門委員会は何も知らないことをいいことに情報部を個々にコンタクトを取り、分断させてしまった。

 これでは、教祖直轄の部隊とはいえない。

(部長は現在、六番街にやってるからいない。連絡も難しいだろう。あの男……くそっ)

 シオンは冷や汗を流す。

 情報部は当初からシオンさえも全体をつかめない――わざとそうした組織にしたのだが、それでも念のためにいつでも機敏に教祖の命令で動ける人材が欲しかった。そのために、暗号を駆使して手に入れた男がいたのだ。

 彼とは一度も会ったことがないが、六番街から出てきて七番街で暴れていたところを目をつけた。そこで、彼の目にもふれられるように演説の映像を流し、彼を動かしたのだ。

 悲しいことに、それで得た彼は全然いつでも機敏に動ける男ではなかったのだが。

 ……教祖は委員会の者にさとられぬよう、平静を装う。

(そもそも、あの娘が……あの小娘、忌々しい。顔は母親似で、性格は父親とは……)

 ツバサの処刑はプログラム達の命令だが、元々、ツバサに対して良い感情は持ち合わせていなかったらしい。

(何故だ。どうしてこうなった。わたしは、ただ平和な社会を作りたかっただけなのに)


 069


 アヤネ・ベルクは空間液晶のウィンドウを閉じる。

 教祖と六門委員会の会議は終わった。

 そう、彼女の望むがままに終わった。

 

「……ふふっ」


 彼女は、自身の館の執務室にいた。

 部屋は赤い絨毯に白木の机と、そこだけは教祖の執務室と同じである。だが、アヤネ・ベルクの場合は少し違う。部屋の壁や棚には、彼女がこれまで勝ち取ってきた賞状やトロフィーが飾られていた。

「『――痛み(ペイン)』」

 アヤネは突如、声を上げた。

 誰もいないこの部屋で、誰も聞いていないのにだ。

「『ええ――ごめんなさい、悪かったわ。あなたをないがしろにしたわけじゃないのよ。許して、痛み』」

 さっきまでとは打って変わって、高い声を出すアヤネ。

「『ええ――ええ――だから、ごめんなさいってば。ほんと、許してちょうだい』」

 アヤネ・ベルクの能力。

 彼女のには能力名がある。能力名は、『このすばらしきせかい』。

 彼女が認めた相手を対象者とし、対象者といつでもどこでもテレパシーのような通信ができる能力だ。

(事実上、盗聴は不可能で。しかも電話や無線機のように妨害する手段もない)

 教祖は自身の情報部が六門委員会に乗っ取られたと言っていたが、アヤネの場合は違う。


 彼女が、自身の部下を情報部に送り込んだのだ。


 だから、裏切りでも買収でもない。

 情報部は教祖でさえ全体を把握していない組織。だからこそ、そのしっぽをつかむまでは苦労したが――つかんでしまえば、あとは簡単だった。そのしっぽに自身の部下を仲間だと思わせ、あとは滝のように情報を垂れ流しに奪った。

(教祖の爪が甘いのよ。存在さえ隠し通せれば問題なかったのに。あきらかに、暗躍のニオイのする事件が多発すれば誰でも気付くわ)

 しかも、タチの悪いことに部下を送り込んだのはアヤネだけじゃなく、他にも二~三人は同じことをしている。

 ようするに、だ。教祖は未だにどうやって裏をかかれたかも把握していない。

「『えぇ――そう、……え、機械族が? ……ふーん、なるほどね。そう、私も知らなかったわ。そう、ありがとうね。あなたには感謝してるわ。……ふふっ、ほんとよ? もう、私が嘘を言ったことある? お願い、信じて。私は、本当にあなたのことを愛してるわ。もう、実の娘のようよ。いえ、……娘はいないけどね。生んだことなんて……でも、私はあなたのことを娘のように愛してるわ』」

 アヤネは、無表情で言った。

 顔が見えないのをいいことに、声だけ変化させてしゃべってる。

「『――そうね。その機械族のことを見張ってちょうだい。そうよ。運のいいことに、教祖が情報部を出すって言ったの。えぇ、おそらく他の者もほくそ笑んでるわね。どういう心境か分からないけど、利用させてもらうわ。あなたには機械族の監視ね。他の者には、私以外のが飼ってる情報部を始末してもらいましょう。……ふふっ、そうね。うまくいけば、私の地位がまた上がるわね。……え? まさか、教祖の座まで狙ってはいないわよ。そこまで欲深くないわ。いいから、さっさと仕事してちょうだい。……そう、愛してるわよ』」

 最後まで笑み一つ浮かばせず、通信を終えた。

 そして、てきぱきと他の者にも通信を飛ばす。

「『――あ、怒り(アンガー)?』」

 この物語は、清濁入り交じった登場人物が多く、どういう思考でどういう道を進むのか分かりにくい者が多い。

 だが、このアヤネ・ベルクは違う。ある意味、一番分かりやすい。

 彼女は裏表を上手に使い分けるが、裏だけを見れば彼女がどういう人物か一目瞭然だ。


 欲に忠実。


 出世欲、名誉欲、何かを保有するというもの、何かを奪おうとするもの、ひたすら欲に忠実で、持って持って持って持って――それでも足りず、飽きたらず、まだ欲しいと、持ちたいと望む欲望の持ち主。それが彼女、アヤネ・ベルクだ。そのためには笑顔を上手に使うし、愛情もすぐに作って用意する。

「『ホント、怒りには助かるわ。他の子はダメね。あなたが一番よ』」

 ちなみに、教祖の座はいらないと言ったがあれも嘘だ。

 本当は教祖の座が欲しい。

 頂点なんてない、彼女の欲望は底がない。そのため、取れるだけ取る。奪えるだけ奪う。手に入る者は全て手に入れる。それがアヤネ・ベルクだ。

 だから、情報部を出すと言ったとき歓喜した。

 1、混乱が増す。

 2、混乱に乗じて他の六門委員会(教祖も含む)の戦力を削れる。(憲兵隊や情報部など)

 3、さらに、他の街の族も邪魔なものは問答無用で殺せる。

 4、そして、最後は自身の手柄を立てる。

(騎士団は……今、処刑のときに現れた大男と戦ってる最中ね。まあ、あの子達にはあまり期待できないわね。所詮はおぼっちゃまだもの。……でも、子飼いの情報部じゃ手柄を公にできないし、ダンネルには死んでもらっちゃ困るけど。一人、あっちに回そうかしら。……教祖には……本当に消えてもらおうかしら。上手くいけば、四番街のせいにもできる)

 だが、そうなると混乱はより激しくならなければならない。

 それこそ、教祖が住まう神殿を襲ってくれるほどの混乱がなければ。

「――まあ、どうなるか分からないけどね」


 070 


「どうなるか分からないものですね」

 機械族の母は、奇妙なのと会話するハメになった。

「……何故、ここに来た」

「なーに。この溝鼠、親愛なる氷河様のお顔をうかがいたく」

「二度とクチにするな」

 母は、手に持っていた拳銃を向けようと――するのを止めた。

 こんなカラスを相手に何してんだ、と思われたくない。

 彼女は今、楽園教の西洋建築の屋根に腰掛けて、自身の部下達が群衆と戦っているのを観察していた。

 横には、カラスが一羽。

「全くもう、この溝鼠。カラスに変身してる最中は、本当にカラスの力しか発揮できないんですよ?」

「それはいいこと聞いた。虎になる前に撃たないとな」

「またまたぁ、ホントは溝鼠のことを好きなくせにぃ」

 本当に撃ってやろうかと、苛々する。

「ちゅー」

 母の横にいるのは見た目、フツーのカラスだが、このカラスは人語をしゃべる。

 いや、当然だ。これはカラスではない、教祖の前に現れたプログラム達の使者であり、地下都市の監視役。溝鼠が変身した姿なのだから。

(神殿からここまであっという間か。便利な能力だ。……奴らに与えられた能力なのか、それとも元から持っていたのか)

 母は今ある情報だけで推測してみるが、どれもアテにならないし、正解したところで大した成果は得られなさそうだ。

 母を含む機械族四名を襲った群衆は、思っていたほど緊迫した状況にならなかった。部下三人が散弾銃を使って、効率よく戦っている。それだけで、意外と戦況は抑えられていた。

「誰かの能力でしょうかね、ちゅー」

「お前達の仕業じゃないのか?」

「いえいえ、滅相もない。我々は氷河様の大ファンでし――」

 撃った。

 すでに撃鉄を引き起こした状態だったらしく、動作は一瞬で行われた銃声が鳴った。屋根瓦は吹き飛び風穴を空けるが、そこにカラスの死骸はない。

「ひどいですねぇ……いやまさか、ホントに撃つとは。自制というものがない」

 カラスは――いや、犬は、言った。「ちゅー」すぐに動けて、小回りが利くのを選んだようだ。日本の柴犬という品種に変身していた。

 さっきから、溝鼠という名前にしてはあれこれ変わりすぎだ。

「そんなの分かっていたことだろ……」

 母も、VRの存在を知っていた。

 情報レベルは教祖と同じくらいに公開されている。

 この地下都市のほとんどは彼らが牛耳ってること。

 そして、自分がこれまでしたことのほとんどは彼らが操った結果であることも。

 それを知って最初は絶望してまた死にそうになったが――死ななかった。それでも死ねなかった。

 このままじゃ……このままじゃ死ねないと、彼女は今も生きている。

「話をもどしましょ。機械族を襲ってるのは楽園教の者ですかね。奴ら、同じ楽園教でも階級で奴隷のように扱いますからね」

 溝鼠は命の危険があったのに、平然としていた。

 それが底の深さを感じさせ、おそろしい。

「……本当に、お前達じゃないんだな?」

「えぇ、我々としてはスミレちゃんともっとやり合ってほしいですし。余計な横槍はしませんよ」

「119204号だ」

「おや、失礼」

「次言ったら、また撃つからな」

 母は、やたらと名前にこだわる。

「そんなに昔の名が嫌いですか?」

「昔の名が嫌いなんじゃない――ニンゲンが嫌いなんだ」

 母は、怒りを込めていう。

「………」

 機械族の掟は、四つある。


 一、馬鹿に関わるな。

 二、機械を勝手に売るな。

 三、馬鹿になるな。賢くあれ。

 四、ニンゲン性を捨てろ。


(この女性は、とことんニンゲンに愛想が尽きたんですね)と、溝鼠は思考する。

 母は、裕福な家で育ち、幸せに暮らしていた。

 だが、のちに全てを奪われた。

 それはもう、地獄だというのを何万回も繰り返すような過酷さで、だから希望が見えたときはとてつもない光に思えた。

 母の前に、突如謎の機械が現れたのだ。それは、人類史でも後半の方に出てくる素材で作られた拳銃だ。使用者の意志を受け取り、自由に形を変形できる銃。反動はほとんどなく、だが威力はすさまじい。銃と言ったが、変形自在なためあらゆる用途にしようでき、それこそ頭の使い方一つで能力者とも対抗できた。そして、新たな機械はことあるごとに登場し、まるで神が彼女を見つめてるかのようだった――だが、それは全てVR達の策略だった。

 演出だ。

 母が、能力者と戦って勝つ、それを見せるためのだけのものだった。

(だからこそ、ニンゲンに興味もなくした)

 あれだけがんばって、それが手の上で踊っていたのだと知ったらそりゃ絶望するだろう。それこそ、ニンゲンであること自体が馬鹿馬鹿しくなるくらいに。

(機械への羨望を消しきれず、かつニンゲン性を無くしたいと思った結果がこれか。空しいものだな。当時は、氷河は大変人気だったらしく。今も彼女が生きてるのは当時の人気のおかげなんだが……逆に、そのせいで擦り切れてしまったようだ)

 と、溝鼠は柴犬の顔のまま思考した。

 母は、部下達にもニンゲン性を捨てるように心がけている。

 名前を『数字』と『~号』と付けたのもそう。機械族以外の者を馬鹿と罵り、自分達は馬鹿になるなと言い、規律を厳しくした。それはようするに、憎しみや怒りが辿り着いた先の排他主義で選民思想だ。

 だって、そうするしかなかったから。

「ちゅー」犬の外見のままで言う溝鼠。

「で、私に何の用だ。本当に顔を見たかったわけじゃあるまい」

「そうですね。……顔見えないですし」と、ガスマスク姿の母を見る溝鼠。「ちゅー」

「いいから、さっさと言え」

 少し苛々して言う母。

「……119204号は、最終的に見逃してあげてください」

「どういう意味だ?」

 母はすばやく撃鉄を引き起こす。コッキング状態の拳銃。しかし、これでどうにかなるものか。一瞬だけ不安がよぎるが、それでも母は殺気を奮い立たせた。

「貴様、私の部下に何を」

「なーに。あなたのかわいい部下が、次の主役になるかもしれないのですよ」

 母の全身が震えた。

 冷水が血管に流されたかのようだった。

「ふざけるな……」

「……ふざけてませんよ」

 だが、今度は溝鼠も黙ってはいない。

「我々も此度のあなたの所行。黙って見てるわけじゃありませんよ? 今回は命令だけじゃありません。あなたに罰を与えにきました」

「貴様、それを許すとでも」

「あなたが許す・許さない、じゃないのです。勘違いしないでください。我々が、許す・許さないの話しなのです」

 溝鼠は、犬の手で三人の部下がいる方向を指した。

「――ん?」

 三人の部下がいるはずだった。

 しかし、二人の部下しかいない。

「……何をした」

「何かしました」

 即座に発砲するが――溝鼠の姿はなかった。

 銃声だけが空しく響く。

 そして、母の視点は赤い屋根瓦に移る。

「言ったでしょ? あなたが許す・許される側じゃない。我々が許す・許さない側だと」溝鼠はまた変身していた。今度は、ニンゲンの形だ。それは、教祖の前に現れた下等団員の外見だった。「ちゅー」

 彼は母の腕を取り、拳銃を奪い取る。

「……貴様っ」

 そして腕をひねり、そのまま屋根瓦に倒れさせた。

 母の怒りはすさまじく、歯ぎしりが強く鳴らされる。

「今、あなたの部下を一人消しました」

 母は、即座にネットワークをつなげる。部下三人と――いや、二人だった。


『こちら、母。おい、お前達。もう一人はどうした。74893号は?』

『こちら、43892号。――えーと、すいません。よく分からないのですが』

『こちら、90420号。あのぉ、ママ。そんな人、いないよ?』


 てか、90420達は三人で来たでしょと言われた。


 その三人は部下三人のことではない――母を入れて、三人ということだ。

「人体を消すことなど容易い。いざとなれば、空気中に分散しているナノマシンで分解できますからね。記憶もです。これはまた違うやり方ですが、あなた方には理解しにくいですかね。そもそも人の思考というものを感じ取る機械の仕組みから説明――」

「いい――」母は言った。「もう――いい――」

 溝鼠は母から離れた。

 母は呆然としていた。いきなり部下が消されたことに。

 易々と子供を殺されたことに。

「それじゃ、頼みますよ。119204号とは演出上、戦うと思いますが最後は負けるようにしてください。最悪、あなたが死んでもいいですが。まあ、ないでしょうね。ほどほどに負けてください。そして、彼女がツバサと合流するようにちょっとがんばってください。――あ、119204号とツバサ以外は始末してもかまいませんよ? いえ、我々も当初はある少年を主役に考えていたのですが、それより美少女の方がいいじゃんという声が」

「分かってる、だから黙れ」

 母は重々しい声で言った。

「……それじゃ、ご協力お願いしますよ」

「ふんっ、VRの犬が」

「お褒めいただきありがとうございます」

 一筋の皮肉のつもりだったが、皮肉にもならなかったようだ。

「何が溝鼠だ」だが、次の言葉は別だった。「どうせ、お前の名前も機械族のような名前なんだろ?」

 母の顔面を、溝鼠は殴り飛ばす。

(――っ!?)突然の衝撃に困惑し、ガスマスクもひびが割れてしまう。

 母の顔は叩きつけられ、体重を乗せた蹴りが何度も繰り出される。

「溝鼠だ!」

 その顔は、先ほどまでの能面のようなものとは違っていた。

 激昂し、打ち震えていた。

「――っ」

 母は、隕石が振る瞬間を目撃したかのように目を見開いた。

(怒ってるのか?)

 この男が?

 何故?

 痛みよりも、この男の変貌に驚いていた。

「いいか。溝鼠だ。――溝鼠なんだ。ここにいる、人間だ。人間を捨てたお前達とは違う。溝鼠は――お前等とも、あんな奴らとも違う!」

 そういって彼は、少し落ち着いたのか。自分がしたことに気づき、いづらくなってカラスに変身して飛び去った。

「………」


 071


(一体、何なんだ。あの野郎、溝鼠なんて名前がそれほど好きなのか)

 意味が分からない、と母はボロボロの体で立ち上がる。

 ガスマスクが取れて、素顔がかすかにだがのぞける。

 その目は若干濡れていた。

(……ちきしょう)

 殴られたから?

 悔しかったから?

 違う。

(また、奪われた)

 違うようだ。


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