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プロローグ 夏の思い出
暑い日はあまり好きではなかった。
生まれつき肌が焼けやすく、すぐに赤くなってしまったからだ。
そのためいつも長袖をきていたのだが、当然暑いものは暑い。そんな日は冷房の効いた部屋にいるのが1番だ。
…でも、俺はしょっちゅう外へ出かけた。長袖を着て、帽子やフードを活用しながら。だって俺は青空が、夏の空が大好きだったから。
青空を見ると、気持ちがふわりと軽くなるのだ。夕焼けが撒き散らした不安げな赤色、月すら霞むような重い黒色を耐え忍びさえすれば、また優しい青空が見られる。
嫌なこと、忘れたいこと全て青空は吸い取り、それは最後に雲になる。年甲斐もなくそう考えていた。
だから、青空のこんなに近くにまで来た俺は、入道雲の一部になるんだ。
ぼんやりとした思考と意識は、その答えをひねりだしてから沈黙した。