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NDA45

みなさん、お久しぶりです。

もっと早く投稿したかったのですが、時間が取れず、一ヶ月半近くかかってしまいました。申し訳ありません。


これからも亀の歩みの更新が続きますが、よろしくお願いします。





 男たちとの勝負についてはユーリ、エリザ組の圧倒的勝利で終わったが、問題はそれからの事後処理だった。エリザのおかげで男たちから情報を聞き出すことに関してはスムーズに進んだのだが、コロシアム内での賭博はそうもいかなかったのである。



 コロシアムを利用してプレイヤー同士が戦う場合、どちらが勝つが賭けの対象となっており、今回の一戦も当然のことながらその一つに入っていた。そして、この一戦は2対12、という人数差のせいもあり、ユーリ達の勝利に懸けたプレイヤーは驚くほど低かった。はっきり言って、カジカ達を除くと数えるほどしかいなかったのである。当然のことながら、ユーリ達が勝った場合もオッズも高くなってしまい、結果としてユーリたち一行がそのほとんどを手に入れてしまうということになってしまったのである。



 ユーリやカジカにしてみれば、ルールに従っただけ、と言ってしまえばその通りなのだが、それで納得しないのは他のプレイヤー達である。何も知らないプレイヤーにとってみれば、ユーリ達がコロシアムのシステムを利用して八百長をしたように見えても仕方ない状況である。それは違う、とカジカが説明しても受け入れられるはずもなく、結局、憲兵(ジャッジ)を呼ばれてしまうまで騒ぎは大きくなってしまった。最終的にエリザが事情を説明して、ついでに男たちの罪状も明らかにすることでようやくプレイヤー達も納得し、信じてもらえた。ちなみに、ユーリの目にはエリザの無双を見せつけられたプレイヤー達が萎縮してしまっただけ、にしか見えなかった。


そういった事情があり、コロシアムから出るまでで疲れきってしまったユーリ達は足取り重く、男たちから聞き出した監禁場所へと向かったのである。


「で、あいつらの言っていた場所はここか?」


 男たちから聞き出した監禁場所に来たユーリはエリザに尋ねた。当初は話すことを渋っていた男たちだが、エリザがにこりと微笑むと素直に全てを話してくれた。話し終わった後は当然のことながら、憲兵(ジャッジ)に連れられて、どこかへ消えてしまった。


「……間違いありません。ここであっています」


 男たちから聞き出した座標と現在地を確認して、エリザは頷いた。


「じゃあ、行くか……」


 ユーリは大きく深呼吸して、扉のノブに手をかけた。エリザと目を合わせて、頷き合う。そして、ユーリは扉をあけた。レンガ造りの薄暗い室内は倉庫のように雑然としていて、誰かがいる気配はない。男たちの仲間が待ち伏せしている可能性も考えたユーリだったが、予想が外れたことに安堵しながら捜索を続けた。そして、それはすぐに見つかった。


「ユーリ、いました。こちらです」


 エリザの声にユーリが駆けつけると積み上げられた木箱の影に両手足を革製の拘束具で縛られたドワーフの少女がいた。眠っているため、動く気配は全くない。男たちに囚われてからずっと泣いていたのか、固く閉じられた目許は薄紅色に染まっていた。


「……おそらく、眠っているだけ、だと思います」


 少女の口元に手を当てて、呼気があることを確認するとエリザは安堵の溜め息を零した。薬で眠らされたのか、あるいは泣き疲れて眠ってしまったのかは判断できなかったが、二人の見る限り、目立った怪我もなかった。もっとも、ゲームのシステム上、そう見えてしまうだけで、何もされていないはずがない、ということは男たちの言動を思い出せば容易に察することができた。


「まったく……本当に最低の輩だこと。まぁ、しばらくは出て来られないでしょうから自らな行いを悔い改めればいいのだけど。で、この子はどうするのですか?このままにはしておけません」


「あ、うん、まぁ、そうなんだけど……」


 ドワーフの少女を攫った男たちと性別こそ同じだが、彼らの行為に対してはユーリも憤りを覚える。未遂で終わったとはいえ、ユーリもこの少女の同じような目に遭っていたかもしれないと背筋を冷たいものが駆け抜けた。そんな悪寒を振り払ってユーリはドワーフの少女を見ながら、難しい顔を浮かべる。今回、ユーリ達の目的は男たちへの復讐であって、この少女の救出の為に戦ったわけではない。つまり、ドワーフの少女を助け出す、と男たちには言ったものの、具体的にどうするのかについては全く考えていなかったのである。


「この子、どうしようか」


 その言葉でユーリが何も考えていないことを理解してエリザは頭に手をあてて、ため息を零した。


「とりあえず、起こしてみましょう。それと、カジカ達を呼んで……いや、カジカは呼ばないほうがいいですね……」


 目が覚めて見知らぬ男が目の前にいては、ドワーフの少女の精神によくない影響を与えかねない。


「カジカ達にはこの建物の前で待ってもらおう。もし、目覚めなければ、運び出せばいいわけだし」


 ユーリは頷くとカジカ達に連絡を入れた。もし、男たちの仲間が中で待ち構えていた場合に備えて、カジカ達はここから少し離れた場所で待機していたのである。事情を説明して、建物に入らずに入口付近で待つように頼むとユーリは改めて、囚われの少女を見つめた。背丈は小学生と言っても通じるくらい低く、薄汚れたツナギ姿に、左右に分かれた橙色の三編みは少女の幼さを際立たせているように見えた。そもそも、ドワーフは外見上の種族特性として、かなり小柄である。プレイヤーの元々の体格にもよるが、男性プレイヤーでも150cmあれば背の高い方であり、女性であれば小学生に見間違えてしまうほど背の低いプレイヤーも珍しくはない。もっとも、それはあくまでも見た目の話であり、単純な腕力であれば、竜人(ドラグーン)に次ぐほどであり、決して他種族に劣っているわけではない。


「エリザ……流石に、見た目通りの年齢ってことはないよな?」


 もし、この少女が見た目通りの年齢あったならば、と考えたユーリはエリザに尋ねる。エリザはわずかに顔をしかめたが、左右に首を横に振った。


「流石にそれは、ない、でしょう。見た目が気になるのはわかりますが、ドワーフでいえば成人の体格です」


 はっきりと、ない、と言い切れないのはエリザもユーリと同じことを考えたからである。男たちに暴行された、という事実は被害者の心に大きな傷を残す。もし、それが未成年の、しかも、外見通りの年齢であったならば、その傷は更に深いものになる。ユーリやエリザにフォローできるものではない。


「けど、まぁ、とりあえず、起こすか……」


 これ以上、悩んでいてもどうしようもない、ということでユーリは眠っている少女の肩を軽く叩いた。しかし、反応はない。そこでユーリは少女の正面にしゃがみこむと肩を掴んで少し強めに揺すってみた。すると、少女の瞼がピクリと動いた。そして、少女ハッと開くと小さな悲鳴を上げて縛られている両腕を振り回した。


「ゃ、触らないでっ!!」


 小さいながらもエルフをはるかに凌ぐ腕力(STR)をもって振られた少女の腕は見事にユーリの顎を捉え、華奢な体がふわりと浮き上がる。そして、そのままユーリの意識は闇の彼方へと消えていった。




・*・




「おい、起きろ。おいっ!!」


 グワングワンと大きく体を揺らされてユーリは目を覚ました。宿かどこかの一室らしく、白地の天井がランプの灯りに照らされていた。ベッドに寝かされていたらしく、真新しいシーツの匂いが備考を擽る。鈍く痛む顎に手を添えて、ユーリが体を起こすとそこにはカジカ達の姿が、あのドワーフの少女の姿も、あった。少女はユーリが目を覚ましたことに気付くと誰よりも先に頭を下げた。


「あ、えと、その、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。あたし、びっくりして、怖くて、それで……」


 少女の涙混じりの声は痛々しく、しかし、目覚めたばかりのユーリはいきなりの展開を理解することができず、困惑の表情を浮かべていた。現状認識のできていないユーリには少女に謝られる理由が思いつかなかったのである。


「ミカン、落ち着け。まずはユーリに事情を説明してからだ。いいな」


 カジカの声にミカン、と呼ばれたドワーフの少女はハッとした表情を浮かべ、ユーリから一歩離れた。そして、どこか怯えたような表情でユーリを見上げた。涙に濡れた蒼色の双眸は赤く泣き腫らした瞼のせいで際立って見えた。


「とりあえず、今の状態を説明するぞ。この子を助けに行ったところまでは覚えているな?」


「あぁ、カジカ達に外で待つように連絡して、それで、その子を起こそうとして、それで……」


 そこまで口に出して、ユーリは少女に顎を思い切り殴られたことを思い出した。油断していた、と言ってしまえばその通りなのだが、不意に顎を殴られたユーリはそのまま意識を失ってしまったのである。


「まぁ、そういうことだ。気絶したお前を連れて、あそこから一番近い宿に運び込んで、お前が目を覚ますのを待っていたんだ」


「待っていた、というよりここに着いてすぐに起こそうとしましたけど」


 クロエがボソリと呟くとカジカはわずかに顔をしかめてみせた。カジカにしてみれば見た目はどうであれ、中身は男であるユーリを少々雑に扱っても問題ない、という認識なのだ。しかし、他の仲間たちはそう思っていないようで、手荒に扱うな、と無言で睨まれていたのである。


「ちなみに、ここまでは私が運びました」


 吸血鬼(ヴァンパイア)であるエリザの腕力はここにいるメンバーのなかで最も高い。本気になれば、成人男性を文字通り、殴り飛ばせるほどの腕力をもってすればユーリ一人をここまで運ぶことなど造作もないことだった。


「これ。痛み止め」


 シオンはユーリに黒い液体の入ったマグカップを差し出した。


「ありがとう、シオン……苦っ……」


 シオンお手製の痛み止めを一口飲んだユーリはその苦さに顔を顰める。しかし、その効果は抜群で、マグカップを飲み干す頃には鈍く響いていた顎の痛みが嘘のように消えてしまった。


「で、この子なんだけど、お前に言いたいことがあるそうだ」


 カジカにポンッと肩を叩かられたミカンはわずかに体を震わせながら、しかし、真っ直ぐとユーリの前に立った。そして、深々と頭を下げた。


「ごめんなさい。助けに来てくれたのに、あたし、またあの人たちが来たんだって思って、それで無我夢中で……本当にごめんなさい」


「あ、さっきの謝罪はそういうことだったのわけね。うん、まぁ、あの状況だとそう思うのは仕方のないことだし、殴られたのはこっちの不注意もあったんだから、怒ってないよ」


 震える声で謝罪するミカンを前にして、ユーリは優しく微笑んだ。あの状況でのミカンの恐怖心を考えると目の前にいたユーリを反射的に殴ってしまったのは、ある意味、仕方のないことである。シオンの薬のおかげで痛みは消え、ゲームのシステムのおかげが目立った腫れもない。ここでミカンを責め立てる理由はなかった。


「はい……ありがとう、ございます」


 ミカンはそう言うと崩れるようにユーリの腕の中に倒れこみ、大きな声を上げて泣き出した。突然のことに驚くユーリにエリザは耳打ちをする。


「助け出されてからずっと泣いていたんです。助けに来てくれた人を殴ってしまった、謝らないとって……おそらく、助け出されてからそのことにずっと気を張っていていたんです。ユーリに謝ることができて、気が緩んだんでしょう」


「そう、か……お疲れ様」


 ユーリは泣きじゃくるミカンを宥めながら、優しい声で囁いた。しかし、ミカンの涙は止まることなく、それからもずっと泣き続けていた。




無事、囚われていたお姫様の救出に成功したナイトさん。でも……

ユーリをいじめてるわけじゃありません。彼の?彼女の運が悪かっただけです、きっと。



次回は七月中には投稿できるように頑張りますので、どうぞ、お楽しみに♪



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