NDA19
今回はちょっと短めです。
皆様のおかげでユニークが1万人を越えました。これからも頑張って執筆していくので、よろしくお願いします。
新たにシオンを仲間に加えたユーリ達は市場を切り上げると、そのままカイのもとへと向かった。ユーリとカジカの武器を新調する為である。
「こんばんは、ユー姉。今日はどうしたの?」
お互い、もう既に顔なじみと言ってもいいくらい顔を合わせている。カイはユーリの顔を見つけるとまだあどけなさの残るその顔を綻ばせた。しかし、ユーリの後ろに見知らぬ顔を見つけるとわずかにその表情を硬くした。
「外殻を手に入れたから約束通り、持ってきた」
ちなみに、ユーリはメイド服から普段のシャツとズボンに着替えている。騎士服でもよかったが、あの格好はよくも悪くも目立ち過ぎる。戦いに赴くわけではないのなら、この普段の服装で十分だった。ちなみに、この服でさえ下手な防具より性能はよかったりする。
「え、本当に?ありがとう……えーと、そっちの人達はユー姉の仲間?」
カイは満面の笑みを浮かべて素材を受けとり、そして、ユーリの後ろに控える三人を見た。赤毛で長身の男と、黒猫少女、そして、どこか不気味な雰囲気を漂わせた女性。それぞれ、個性のあるプレイヤーメイドと思われる服を着ている。怪しいか、と聞かれると間違いなく怪しい組み合わせだ。
「あぁ、カジカとクロエ、それとさっき仲間になったばかりのシオン。この子はカイ。ゲームを始めた日に会った子で【鍛冶】のスキル持ち。いつも、いろいろお世話になってる」
「どうも、カイです。得意なのは剣と槍です」
年相応の無邪気な笑みを浮かべてカイが名前を名乗る。
「カジカだ。よろしくな」
「はじめまして。クロエです」
「……シオン」
それに応えるようにカジカ達も挨拶を交わす。
「で、今日の用件は?約束だから素材を持ってきただけじゃないんでしょ?その人達を紹介しに来たっていうのもなんだかおかしな話だし」
「あぁ、そろそろ次の街に行こうと思ってその為に武器を新しくしようと思ってな。俺は剣で、カジカはナイフを作って欲しいんだ」
「……いいけど、僕の手に入る素材だとたいしたものは作れないよ?」
一言に生産職といってもフランのようにベータ版から続けている古参プレイヤーもいれば、カイのように始めたばかりの新人プレイヤーもいる。ゲームのシステム上、スタートラインは同じに見えるが、ベータ版プレイヤーにはベータ版から引き継いだお金と人脈がある。どんなに優れた生産スキルを持っていたとしても、素材がなければ何も作ることはできない。ある程度、ゲームが進んでいればプレイヤーから提供される素材を使うこともできるが、ゲームが始まって間もない現状ではそれも期待できない。必然的にNPCから素材を購入することになるのだが、そうなってしまうと資金が豊富な古参プレイヤーが圧倒的に有利である。その結果、出来上がる品も古参プレイヤーの方が性能のいいものができてしまい、客もそちらに集中する。結局、古参と新規参プレイヤーの間には越えられない大きな壁ができてしまうのだ。
「ある程度なら素材は提供できる。そのつもりの用意もしてきた」
そう言って、ユーリは売らずに残しておいた素材をカイに渡す。毒々しい森の素材だけではなく、狼のレアドロップである【狼の牙】もそこにはあった。
「すごい……でも、いいの?これって……高いんでしょ?」
渡された素材を見てカイは一瞬、嬉しそうな顔を浮かべたがすぐに俯く。はっきり言って、カイの懐具合はお世辞にもいいとは言えない状況である。一部の生産職にプレイヤーが集中してしまった結果、カイを含めたその他大勢の生産職は厳しい状況に追い込まれてしまった。カイにも一応、ユーリのように常連客と呼べる付き合いをしているプレイヤーがいるおかげで最低限の生活をすることはできるが、稀少な森の素材をユーリから買い取るほどの余裕はない。
「そのことなら気にすんな。素材を出す代わりにそっちの代金を割り引いてもらうつもりだから」
「あ、そういうこと……」
カジカの言葉にカイはなるほど、と頷く。
「えーと、剣とナイフが一つずつだよね。この素材だと【ベノムナイフ】が一番かな。あとは【ウルフファング】も作れるよ。単純な攻撃力だけなら【ウルフファング】の方がいいけど、【ベノムナイフ】は稀に相手を毒状態にできるから総合的に見ると【ベノムナイフ】が上だね。剣は……攻撃重視なら【ベノムソード】で、防御重視なら【黒甲のサーベル】だね。ユー姉は防御力が低いし、【黒甲のサーベル】の方がいいと思うよ」
「まぁ、予想はしてたけど、そういう系の武器になるか……」
素材を渡す前から毒系の武器になるだろう、と予想していたユーリとカジカは顔を見合わせて頷き合う。
「じゃあ、俺は【ウルフファング】を頼む」
「俺は【黒甲のサーベル】で」
「私……【ベノムナイフ】」
「「「……えっ!?」」」
それが当然の流れだと言わんばかりにナイフを注文したシオンに三人の、否、クロエを含めた四人の視線が集中する。
「……おかしい?」
四人に見つめられてシオンは困惑した表情を浮かべた。シオンとしては二人に便乗して武器を新調しようと思っただけで、驚かれるようなことをした自覚は全くない。
「いや。おかしいわけじゃねぇけど……ナイフなんて使えるのか?」
カジカが驚き半分、心配半分の表情でシオンを見た。シオンのスキル構成はまだ聞いていないが【調合】を持っている時点で戦闘系の構成でないことは間違いない。もちろん、カジカのように戦闘系スキルを一つも持っていない場合も考えられるが、シオンを見る限りそうは見えない。スキルではなく、プレイヤーの技量に依存した戦いはリスクが高い為、選ぶ人間は多くない。
「少しだけ。ナイフしか使えないから……」
シオンの返事にカジカは内心、ため息を零した。その言葉から察するにシオンはカジカと同じタイプである。【調合】以外のスキルも生産系や情報系のスキルと見て間違いない。基本的に武器はそれぞれの武器に対応したスキルを持っていないと使えないのだが、例外が存在し、ナイフ系の武器だけは誰でも装備することができた。そのためカジカのようなプレイヤーには意外と重宝されている。
「まぁ、いいや。それじゃ、【ウルフファング】と【ベノムナイフ】、【黒甲のサーベル】が一つずつでいいんだね」
カイに尋ねられた三人は頷く。
「じゃあ、すぐに作るよ。少し待ってて」
カイはそう言うと手際よく素材を並べて、スキルを使い武器を作っていく。瞬く間に三人が注文した武器を仕上げると大きなため息を零して、その場に座り込んでしまった。
「はぁ……流石にちょっと疲れた」
生産系スキルといえば、使えばMPを消費することは往々にしてある。プレイヤーメイドで作った場合はそれほどでもないが、スキルメイドで何かアイテムを作った場合は作ったアイテムの性能や価値に比例して必要なMPが増加する。今回、カイの作った武器は、普段作っている武器よりも性能が良かったので、それに必要なMPもいつもより多く必要になったのだ。
「ありがとう。でも、そんなに無理しなくてもよかったのに」
急がなくてもよかったのに、と言外に呟くユーリにカイは笑顔を返す。その笑顔を見たユーリはそれ以上何も言えなくなり、カイから作られたばかりのサーベルを受け取る。外見だけを比べるとユーリが今まで使っていたサーベルと大差ないが、大き目の護拳部分が黒ずんでいて、鞘から引き似てみると刀身もやや黒かった。重さは以前使っていたものよりも軽く、試しに振ってみると使い勝手も悪くなかった。
「どう?」
「あぁ、いいみたいだな」
新しい武器の感触を確かめたユーリは笑みを返す。手に馴染む、とまで言えないが初めて触ったにしてはかなりしっくりきていた。カジカとシオンもそれぞれ、満足そうに微笑んでいた。
「ありがとう、カイ」
「うん。ところで、ユー姉、一つお願いしてもいいかな?新しい街に着いたら、僕をそこに連れて行って欲しいんだ。いい?」
一度行ったことのある街はワープゾーンを利用して一瞬で移動することができる。本来は移動時間を短縮する為のものだがパーティーを組んでいるプレイヤー全てが移動対象になる為、生産職など戦闘の苦手なプレイヤーが知り合いに頼んで新しい街に連れて行ってもらうことも可能である。というよりも、ほとんどの生産職はワープゾーンを利用しないと移動ができないのが実態である
「あぁ、いいよ」
ユーリはそう答え、同意を求めてカジカ達を見た。カジカ達がそれぞれ頷いたのを確認するとユーリはにっこりと微笑んだ。
「約束だ、カイ」
そう言ってユーリ達はその場を後にした。
今回は武器新調のお話でした。
区切りのいい所で終わらせたので、ちょっと短めでしたね。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
今週は色々と行事が詰まっていて忙しいので次回予定日は未定です。しかし、一週間以内には必ず投稿します。
それでは次回もお楽しみに。
ではでは。




