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第1話 神山志向(1)
神山君は自分を語らない。
自分という存在を把握できていないからか、或いは単にそういうのがカッコいいとでも思っているのか。
他人に彼を知る術は無い
彼が他人を知る術は無限にあるというのに
ここに一人の女性がいる。
名を神山貞恵、神山君の母親である。
彼女は普通だった。
異常なまでに普通に執着する、異常者なのだ。
彼女は自分を語らない。
それが普通だと信じているからだ。
故に息子の志向を理解できない。
否、理解する気がない。
こんな母親を、神山君は嫌悪する。
実は似た者同士であることに気づくこともなく、彼、そして彼女は交わらない。
お互いにお互いが、自らの志向の正反対側の存在だと認識しているからだ
神山君は今日も無言で家を出る
サブタイトル修正しました
2012.1/30