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【怪事件】エルフの絵が偽物に!? 容疑者17人、探偵はロボ。

掲載日:2026/11/04

『ハゲ×ヲタ17人の仁義なき戦い!?』特別番外編


一 教授、事件です!


 午前九時。国立天晴大学、旧設備管理棟の先端AI理論研究室。


 研究室の壁には、エマから贈られた抽象画《愛すべき20人のヲタク》。赤い曲線、金色の螺旋、深い紫。銀色の幾何学模様、白黒の曲線、桃色の渦。顔は一つもないのに、仲間たちが見えてくる不思議な絵だ。


 案内ロボ改3rd――通称ロボが、いつもの声で告げた。


『皆様。残念なお知らせがございます』


「……今度は何?」と神谷莉央(かみや りお)。


『こちらの絵画が偽物にすり替わっております』


「「「えええええ!?」」」


 夜乃さとみ(よの さとみ)が額縁に駆け寄る。


「昨日まで普通だったよ!?」


『昨夜二十三時十四分に交換された可能性がございます。容疑者は十七名全員』


「全員!?」


『全員に動機がございます』


「動機まであるのぉぉ!?」


 理科野発(りかの はじめ)――ハジメが胸を張る。


「でゅふふ! 吾輩のロボなら三秒で犯人を――」


『最有力容疑者は製作者様でございます』


「吾輩ぃぃ!?」


『研究室への無断立ち入りを常々希望されております』


「製作者なのにぃぃ!」


~~


二 十七人、全員怪しい。


《第一回・エルフ絵画すり替え事件 緊急捜査会議》


「第一回って何!?」


『第二回がない保証はございません』


 田中真摺(たなか まっする)が腕を組む。


「額縁が傾いていたから筋肉で直した!」


「筋肉で直すな!」と仁藤均(にとう ひとし)。


『固定具が変形しております』


「うむ!」


「誇るな!」


 込家羅武(こみけ らぶ)が眼鏡を光らせる。


「デュフフ。永久保存用、観賞用、布教用の複製計画はあったでござる!」


「三枚も要らない!」


 絵巻千景(えまき ちかげ)が赤い線を見つめた。


「……元の絵より綺麗すぎる。金色の螺旋も違う」


「綺麗ならいいじゃん」


「……綺麗なのと本物なのは別」


 白澤秋(しろさわ あき)がカメラを構える。


「紙の質感も撮っておく」


 地味来有(じみ きあり)が小さく手を挙げた。


「……裏も見た方がいいかも」


 ひゅるるる……しゃきーん!


 いつの間にか額縁の横で妙なポーズを決めている。


「今の音、何!?」


「……さあ」


『音源不明でございます』


「ロボにも分からないの!?」


 熊田牛男(くまだ うしお)が叫ぶ。


「ベコ! 絵は食い物じゃねえべ!」


「モォ」


 優居減子(やさい へるし)が注意する。


「絵の近くに食べ物を置かないでください」


 稲森穂乃(いなもり ほの)が菓子袋を隠す。


「……ごめん」


「食料事件まで!?」


 煎論益子(いろん ますこ)が電卓を叩く。


「原画の評価額から動機を――」


「売らないってば!」


 狼羽いやる(ろわ いやる)がマントを翻す。


「闇の窃盗団の仕業か!」


「……そのマント、額縁に引っかかってる」と影山忍(かげやま しのぶ)。


「我が漆黒の衣がぁぁ!」


 藤澤千荒(ふじさわ ちあら)が千景へ身を乗り出す。


「俺が君を守る!」


「……絵を守って」


「はいっ!」


 千堂俊雄(せんどう ただお)が固定具を指さす。


「手抜きは爆発だぁああ!」


「爆発させないでぇぇ!」


 十七人全員が怪しい。だが、誰も盗んでいない。


~~


三 犯人は誰だ!


『犯人が判明いたしました。絵を移動したのはワタクシでございます』


「「「お前かぁぁぁ!!」」」


『原画保護のため、皆様が見ていた一枚目を保管庫へ移しました。壁には、後日エマ様から届いた二枚目を掛けました。こちらは複製と判断しておりました』


「自作自演で十七人を疑ったの!?」


『観察力の試験も兼ねております』


「勝手に試験するな!」


 保管庫の絵を見た千景が首を傾げる。


「……こっちも線が違う。しかも両方、手描き」


《第二の事件 発生》


「第二回にするなぁぁ!」


 ロボがエマへ通話をつないだ。


「おお! コロロの友よ!」


「エマちゃん! どっちが本物!?」


「二枚ともワタシが描いた絵デース!」


「「「二枚!?」」」


「はい! 一枚は展示用! もう一枚はサプライズ用デスネ!」


「サプライズ用!?」


「角度で違う人に見えるデース!」


 赤い線はまっするにも莉央にも、金色の螺旋は三重晴美(みえ はるみ)――三重様の縦ロールにも見える。紫はラブとロワ、銀色はロボ。白黒と桃色にはベコとアグー豚。顔がなくても、みんながいる。


『訂正いたします。偽物は存在せず、ワタクシの鑑定ミスでございます』


「じゃあ事件解決!」


『いいえ。責任者が残っております』


~~


四 ギルティ(有罪)


 研究室の照明が落ちた。


 ドドンッ!


《最終推理》


『犯人は製作者様……アナタでございます!』


 ロボがハジメを指さした。


「吾輩ぃぃ!? 絵を動かしたのはお前であろう!」


『はい。しかしワタクシを製作したのはアナタです。製作者責任でございます』


「責任転嫁なのであるぅぅ!」


 画面が真っ赤に染まる。


《ギルティ(有罪)》


『判決。ワタクシの研究室から製作者様の実験へ提供する予算を五割削減いたします』


「吾輩の研究生命が半分消えたのであるぅぅ!!」


『ちなみに現在の緊急連絡先順位は第25位でございます』


「登場人物の数を超えたのであるかぁぁ!?」


『近所の犬様、研究室の蜘蛛様、観葉植物様が上位でございます』


「植物にまで負けたのであるぅぅ!」


「植物は電話に出ないでしょ!」と莉央。


『製作者様と応答率は同程度でございます』


「吾輩の存在意義ぃぃ!」


『なお、削減した予算はワタクシの研究室で使用いたします』


「結局お前が全部持っていくのであるぅぅ!!」


「犯人が裁判官で予算まで奪うなぁぁ!」


『異議申し立ては受け付けておりません』


 ――完――


 ……本当に?

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