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転生した失地王がハーブ畑を耕したら、押し掛け魔女に癒しのカフェをはじめないかと誘われました!  作者: 日埜和なこ


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第13話 抜け目のない村長とトレヴァーの意外な様子

 ハーブを大量に摘んだ帰り道、村に立ち寄り村長に事と次第を報告した。


「そういうわけで、俺のところでこいつは預かる。ほら、トレヴァー、いうことがあるだろう?」


 トレヴァーの頭をがしりと掴み、ぐっと押せば、文句一つこぼさずにその頭を下げた。意外と素直なところもあるのかもしれんな。


「悪かったよ……村に迷惑をかけようと思ったわけじゃないんだ」

「すぐは信用できんと思う。こいつには、俺の畑だけじゃなくて村の手伝いもさせるつもりだ」

「──うへっ!?」


 顔を引きつらせて俺を振り替えようとしたトレヴァーの頭を、さらに力任せに下げさせると、村長は「まあまあ」といって笑った。


「村としては、畑が元に戻ればそれでいい。ルーファスさんには息子も世話になったし、それに、トレヴァーといったか? まだ若い。やり直せばいいだろう」

「もしも問題を起こしたら、すぐに俺に知らせてくれ」

「問題なんて起こさねーよ!」

「問題を起こしたやつがいう台詞じゃないでしょ! ルーファスと村長さんに感謝するのね」

「なんだと、ちんちくりんっ!」


 俺の手を振り払って顔を上げたトレヴァーはジャスミンと睨み合う。全くこいつらは……


「はははっ、仲がよろしいですね。では、トレヴァーくんには明日から、畑の魔力を見てもらいましょう」

「こんなへっぽこに任せるのは心配だわ。あたしが見てあげる!」

「あんだとー? 大地の魔法は俺の専売特許だ。口を出すんじゃねー、ちんちくりんっ!」

「はははっ! では、お二人に任せてもよろしいですかな?」

「任せてちょうだい!」

「任せろ!!」


 声を合わせて村長を見たジャスミンとトレヴァーは、再び睨み合った。

 この村長、なかなか抜け目のない奴だな。この二人をわざわざ乗せて頼みやがった。


「仲良くお願いしますよ。ああ、ルーファスさんも一緒にお願いしますね」

「……俺は保護者か?」

「まあ、そんなところでしょう」


 軽く笑う村長にため息をつきつつ、トレヴァーを引き込んだ手前、仕方ないかと腹をくくるしかあるまい。それに、村の畑をこの目で見て、カフェで使う野菜の仕入れを、直接話せると思えばいいか。


 いつまでも睨み合う二人の頭を小突き、今日のところはログハウスに戻ることにした。それから、何事もなく──二人はことあるごとにぎゃんぎゃん騒いでいたが、我が家に戻った。


 ログハウスに着くなり、ジャスミンは「お腹すいた!」と声を上げると、ソファーにごろんと転がった。

 そういえば、昼はとうに過ぎている。朝も早かったし、あれだけ魔法を使ったんだ。相当、疲れているだろうし、腹も減っているだろう。


「なにか作るか。トレヴァー、なにをしてるんだ? 入ってこい」


 入り口に突っ立ったままのトレヴァーは、きょろきょろと部屋を見渡した。まあ、これだけなにもないと驚くよな。


「ここが、おっさんの家か?」

「ああ。裏に部屋がある。余ってる一室、貸してやるから使え」

「えっ!?」

「どうして驚くんだ?」

「いや、だって……そのへんでも寝れるぜ? そのソファーとかでいいんだけど」


 顔を引きつらせたトレヴァーは、ジャスミンが転がるソファーを指差した。


「畑を手伝わせるんだ。寝床くらいちゃんとやる。それに、そのソファーは」

「あたしのソファーよ!」


 そう、ジャスミンのお気に入りなのだ。夜になると自分の森に帰っていくが、ここにいる間、休んで魔力を回復するのは、そこと決まっている。


「ソファーよりベッドの方が休めるだろう」

「……まあ、そりゃ」

「気にするな。余ってる部屋だ。それより、摘んできたハーブをキッチンに運んでくれ」


 トレヴァーが遺跡で魔法鉱石を大量に詰めていた袋を指差した。石は取り出し、その代わりに摘んだハーブをつめてきたものだ。


「お前も、魔力消費して疲れただろう?」

「……まあ」

「明日からは色々やってもらうからな。今日は飯を食って休め」


 キッチンに入り、昨夜の内に焼いておいたパンを取り出す。


「ああ、ハーブはこの籠に広げて、テーブルに置いてくれ」

「籠? ああ、この平べったいやつか」

「助かる」


 俺にいわれたまま動くトレヴァーは、袋の中からハーブを出し始めた。意外にも素直だな。少し拍子抜けしながら、キッチンに向かった。

 さて、ジャスミンはだいぶ疲れていたし、あまり時間はかけない方がいいだろう。


 帰り際に村で貰った玉ねぎと芋、塩漬けにしておいたイノシシ肉はそれぞれ薄くスライスする。それから、ニンニクと、摘んできたシスルジンガーと一緒に鍋で水から煮始めた。

 鍋を煮込んでいる間に、切ったトマトと刻んだエシャロットを塩とミスティアの葉を混ぜる。


「おっさん、料理上手いんだな」

「生きるために覚えただけだ」

「……生きるためか」

「ああ。人間、食わなきゃ生きていけないだろう?」


 吹きこぼれそうになった鍋の火を弱め、浮いてきた灰汁をとりながらかき混ぜると、横にトレヴァーが立った。


「どうした?」

「……なんか、手伝うことない?」

「暇か?」

「ただ飯食うのは気が引ける」

「ははっ、ジャスミンに聞かせたいな! じゃあ、皿の用意をしてくれ。それから、ティーポットとカップもな」


 棚を指差すと、トレヴァーはスープ皿を取り出した。

 オムレツを焼いていると鍋からスパイシーな香りが漂ってくる。テーブルにできあがった料理を並べ終える頃には、ソファーでうたた寝をしていたジャスミンが欠伸をしながら体を起こした。


 すると、キュイッと小さな鳴き声がして、ふわふわした髪の間から、小さなリスが顔を出した。ジャスミンが一時的に使い魔にしたといっていたリスだ。


「なんだ、ついてきたのか?」

「んー、一時的な使い魔契約ってだいたい十二時間なんだよね」


 ジャスミンはいいながら、ごそごそと荷物から取り出した小さな革袋からナッツを出す。それを待ってましたというように、リスが飛び跳ねた。


「リスと使い魔契約だ?」

「なによ、そのバカにした顔」

「バカだろ。リスなんて最弱だろ。体力はねーし、空も飛べない、夜目もきかない、なんの取柄もないだろ? やっぱ、使い魔はフクロウかネコだろう!!」


 スープ皿をテーブルに並べながら、勝ち誇ったようにいうトレヴァーだが、それを眺めてジャスミンが鼻で笑った。ああ、これはまた言い争う流れか?


「なんだ、その顔?」

「最弱のリスね~。そのリスに、あんたは居場所を暴かれたんだけど?」

「ん、なぁ!?」

「最弱に見つかるなんて、やっぱり、へっぽこ魔術師ね~」

「あんだとぉ!? もういっぺんいってみろ!!」


 ガタンっとテーブルが揺れ、驚いたリスがキーキーと抗議の鳴き声を上げた。ああ、こいつらはどうやったら、もう少しお互いを気遣えるだろうか。


「ジャスミン、トレヴァー、飯だ。ケンカは後にしろ」

「だって、ルーファス!!」

「こいつが俺をバカにするから!!」

「バカにしたのは、あんたが先でしょ!!」


 どっちもどっちだな。

 睨み合う二人にため息をつきながら、ソファーに腰を下ろす。


「次、同じようなケンカをしたら、摘まみだすからな」


 少し声を低くして忠告すると、二人は一度睨み合ってから、そっぽを向いた、全く同じようなタイミングでだ。さらに、同じタイミングで二人の腹が鳴る。


 テーブルの上に並んだのは、根菜とイノシシ肉のシスルジンガースープ、トマトとミスティアのサラダ、玉ねぎとベーコンを入れて焼いたオムレツ、パン──トマトの赤が入るだけで、だいぶ華やかになるな。


「腹が減ってると、イライラするもんだ。さあ、食え」

「いただきまーす!!」


 スプーンを持ったジャスミンは、さっそくスープを口に運んだ。


「美味しいー! シスルジンガーの香りが爽やかでいいわ。あ、お芋も入ってるのね」

「ニンジンを入れてもよかったな」

「お野菜たっぷりのスープ、大好き!! こっちはトマトのサラダ!!」

「エシャロットとミスティアで和えてみた」


 喜んでぱくぱく食べ進むジャスミンは、相変わらず幸せそうな顔で食べる。その横に座るトレヴァーといえば、スープを飲んだ後、驚いた顔のまま固まっていた。


「口に合わなかったか?」

「……いや、そうじゃなくて」

「こんな美味しいのに! 好き嫌いするから、へっぽこなのよ」

「おい、ジャスミン。ケンカを売るな。放り出すぞ」

「うっ……はーい」


 少し不満そうな顔で、ジャスミンはオムレツを口に運んだ。直後、目を輝かせてじたばたと足踏みをする。気に入ったらしいな。


 トレヴァーの様子が気になったが、こういうタイプはあれこれ訊いたところで、素直に話しはしないだろう。自分から話したいと思ってくれたらいいんだが。

 パンをちぎって口に放り込むと、トレヴァーが「美味い」と呟いた。そうして、オムレツに、サラダにと次々口に運び始める。どうやら、味に問題はなかったようだな。


 ほっとしながらスープに口をつけると、すすり泣くような声が聞こえた。


「美味いよ……ルーファス」


 トレヴァーを見ると、涙を流しながら食べていた。それに気付いたジャスミンがおろおろし始め、自分を指差した。いや、ジャスミンにバカにされて泣くような男じゃないだろうけど。


「ちょ、泣くことないでしょ!?……あ、あたしも、い、言い過ぎたわよ」

「ちげーよ!」


 ぐいぐいと涙を拭うトレヴァーは、鼻を啜ると俺を見て「ありがとう」と呟く。


「なんか、訳ありか?」


 訳ありでなければ、あんな無茶な金稼ぎなんてしないだろう。

 俺は魔法には詳しくない。だけど、トレヴァーがやっていたことが、どれだけ危険かはわかる。争いの最中なら、敵国の作物にダメージを与えることだってできるし、魔力が必要な部隊のため強制的に魔力収集するよう使われる可能性もある。


 クロヴェル遺跡でみた魔法陣と輝く魔法鉱石を思い出しながら、スープを飲んでいると、トレヴァーは「いつか」と呟いた。


「……いつか、話す」


 まあ、そう簡単に話しはしないだろう。けど、この短時間に、いつか話したいと思ってくれたのか。それで充分だな。すぐカッとなるし、ジャスミンに食って掛かるのは問題だが、悪いやつではない。少しばかり子どものように感じるが、それも話せない訳が関係しているのだろう。


「心配するな。俺にだって話せないことはある。無理に訊いたりはしない。その代わり、さっきもいったがジャスミンと無駄なケンカをするな。こいつにだって、隠し事の一つや二つはあるだろう」

「かっ、隠し事なんて……」

「お互いに迷惑がかからない隠し事なら、構わん。その代わり、ジャスミン。お前もトレヴァーにケンカを売るな」

「売ってくるのはトレヴァーだもん!」

「なら、買うな。ケンカなんぞ、なんの価値もない。わかったな」


 争ったって、なにもいいことはない。俺はそれを身をもって知ったからな。


「お互いどうしても腹が立ったら、俺に話せ。まずは話し合うことだ」

「……わかった」

「うぅっ、わかったわよ!」

「よし、じゃあ、食うぞ。俺も腹が減ってるんだ。ほら、冷めちまうぞ!」


 急かすようにいえば、二人は声を揃えて「はーい」といいながらフォークをオムレツに刺した。

次回、明日8時頃の更新となります


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