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転生した失地王がハーブ畑を耕したら、押し掛け魔女に癒しのカフェをはじめないかと誘われました!  作者: 日埜和なこ


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10/22

第10話 ハーブ畑だけではなく、村の農作物も様子がおかしい?

 食後のハーブティーは、アップルミスティアに山風樹の葉、シルヴェローズを少しとオレンジの皮をくわえて淹れてみた。


「いやぁ、ハーブとはいいものですな」


 村長のパーカーはカップの湯気を吸い込み、ほうっと満足そうな息をついた。


「薬に使われるものという認識しかありませんでしたが、料理や茶にもなるんですな」

「……街ではハーブティーも一般的だと思うが」

「そうなのですか?」

「いわれてみれば、アルヴェストンで見かけたことがあるかもしれません」


 ほほうと頷く横で、息子のエルムがそういえば、パーカーは「わが村も流行りを取り入れなければなりませんな」と笑った。


「料理にもハーブを使われるのには驚きましたな」

「そうなんですか? 日頃は塩とコショウですか?」

「いやいや、コショウは高価ですからな。特別な日にしか使いませんよ。味付けは塩を振るくらいですな。風味づけはニンニクですかね」


 なるほど。確かに、コショウはこの辺りで育たないな。カトレシアで輸入貿易をしていたと思うが、庶民が気やすく買える値段ではないか。

 

「ニンニクか……」


 今日のイノシシ肉は、シルヴェローズと塩で焼いたが、そこにニンニクをくわえてみるのもありかもな。身近な味の方が喜ばれることもあるだろうし──考えながら、ふむと頷くと、ジャスミンが「レモンは?」といった。


「レモン?」

「あたしのお祖母ちゃんは、ステーキにレモンをかけたよ」

「そういえば、大魔女様もお料理が上手でしたな!」

「大魔女……?」

「ええ、ジャスミンさんのお祖母様のことです。一年前にお亡くなりになりましたが……私たちも、幾度も助けて頂いたものです」


 ジャスミンの方をちらりと見ると、彼女はついと視線を動かした。

 なるほど。ジャスミンが自分を森の大魔女といったり、人助けをしているのは祖母の遺志を継いだといったところか。


「レモンもいいが、ここらで栽培はどうだろうな……」

「サンルームを作ればいいんじゃない?」

「……サンルーム?」

「そ! 風よけができて、温度調節も出来るわ」


 また難しい注文をしてきたな。

 確かに、サンルームがあれば寒いに弱い植物も育てられそうではあるが。店の内装を整えるのだって金がかかる。食材の調達だってタダじゃない。女神の置いていった金で、足りるのか?


「ゆくゆくはサンルームも考えるが、まずは、他にやることが多いだろう。内装もこんなんだ」


 俺がそういうと、ジャスミンは部屋を見回した。

 ここは無駄に広い。六人掛けのテーブルを五つは置けるだろう。そこに、でかいテーブルとソファー、空の戸棚くらいしか置いていない。


「そっか。もっとテーブル置かないとだね」

「そのあたりは、村にいる大工に相談してみましょう」

「助かります」

「村長さん! トマトもだよ!!」

「ああ、そうでしたな。野菜は農家に相談します」

「やったー! これで、トマトソースが作れるね、ルーファス!」


 手を叩いて大喜びするジャスミンに「だな」と頷きながら、一つ懸念材料を頭に思い浮かべた。

 トマトソースにはスバインバジルが合う。シルヴェローズでも悪くはないが、できればスパインバジルがあった方が、味の幅が広がるだろう。

 どうにか、ハーブの育ちをよくする必要があるんだが、手立てが思いつかないな。

 少し考えていると、エルムが「どうしましたか?」と心配そうに声をかけてきた。


「ん?」

「あの、なにかお困りごとかと……」


 エルムがおずおずと尋ねると、ジャスミンが「ルーファス怖い顔してるよ」といって、眉間を指差した。どうやら、皴を寄せて考えていたらしい。そんなに怖い顔をしていたのか?


「ああいや、少し育ちが悪いハーブがあるのを思い出して」

「育ちが悪い?」

「その一つが、トマトと相性がいいんだが……」

「大地の魔力が弱すぎて育たないのよ。あたしの水の魔法でも補えないから困ってるの。土地の魔力を育てるとなると、それなりに時間がかかるし」


 カップにハーブティーを注ぎ足しながら、ジャスミンは小さくため息をついた。

 話を聞いていたパーカーが「あの、実は」と口を挟んた。


「村の農家でも根菜の育ちが悪いという話を聞いたのですが、なにか、関係があるのでしょうか?」

「根菜? この時期の収穫っていったら玉ねぎとかお芋よね?」

「はい……芋は育ちが悪く、売りに出せそうにもなく、困っていまして」


 さらに、カブやラディッシュも、形が小さくて市場で売れるようなものではないという。ここ最近、天候が悪かったということもないし、害虫が増えたわけでもない。不作の原因がわからずほとほと困っていると話したパーカーはジャスミンをちらりと見た。


「昔でしたら、大魔女様にご相談していたところですが……」

「あたしに相談しなさいよ!」


 ぷうっと頬を膨らませたジャスミンは、少しして「他に要因があるのかも」と呟いた。


 俺のハーブ畑だけなら元々枯れていたのだから、その影響と考えるのが妥当だろう。しかし、手入れを続けてきた農家で、作物の育ちが悪いというのは、なにかありそうだ。


「村長さん、なにか最近おかしなことはなかった? 例えば……外から人が入ってきたとか」

「特には……」

「父さん、村に魔術師が立ち寄ったことがあったじゃないか」

「魔術師? ああ、一ヵ月前だったか……?」

「そうだよ。この辺りで鉱石が取れるところはないかって聞いて、いなくなったヤツがいただろ?」


 エルムの話に、ジャスミンが「鉱石?」と反応する。

 これはもしや魔法に関係する話なのか。だとすると、俺が口を挟めることはないな。


「鉱石って、魔法の媒体を探していたの?」

「そういえば、そんなことをいってましたな」

「その魔術師が妖しいわ!」


 ガタンッと音を立ってて立ち上がったジャスミンはパーカーに「そいつは、どこに行ったの?」といいながら、真剣な眼差しを向けた。


「鉱石が採れる場所といったら、クロヴェル遺跡です」

「クロヴェル遺跡?」


 聞いたことのない名前に首を傾げると、パーカーは「枯れた遺跡です」といった。


「すっかり狩りつくされた遺跡で魔物も少ないんですが、まだ多少の魔法鉱石が採れるんですよ」

「その鉱石も、小ぶりなものばかりで、魔術師が喜ぶようなものじゃないって教えたんですが……」


 眉をひそめたパーカーとエルムが顔を見合った。すると、ジャスミンが「ますます怪しわ!」と声を上げた。

 これはもしや、その遺跡に行く流れか……?


「ルーファス、行くわよ!」


 ああ、やっぱりそうなるか。

 俺は丸腰だぞ。その魔術師が話のわかるやつだといいんだが。一抹の不安を感じつつ「仕方ないか」と呟くと、ジャスミンは「カフェのためよ!」と拳を握った。


 ◇


 翌日の早朝、クロヴェル遺跡を目指すことにした。

 場所は森とは反対側、ログハウスから北東に三、四キロほど進んだところにあるという。向かう途中、村を通ることになるため、パーカーに畑を案内してもらい、状況を確認することにした。


「確かに、これは酷いわね」

「そうだな……まるで、育っていない」


 荒れた畑は、俺のハーブ畑よりも酷い有り様だ。カブはラディッシュだったかといいたくなるほど小さく、玉ねぎも二回り以上小さい。芋なんて、根っこと見分けがつかないようなものまで出てくる。

 俺のハーブ畑はジャスミンが魔法の水を上げているから、多少育ちがいいのか? とはいえ、これほど差が出るもは妙だな。


「ジャスミンちゃんの魔法でなんとかならないかね?」

「んー、土の中で育つ植物って、水の魔法じゃ補いきれないのよね」


 畑の土を手の中で捏ねたジャスミンは「水の力は十分だわ」と呟いた。


「魔法のことは、わかんないけどね……」

「大魔女様は、魔法でよく助けてくれたが」

「頼りすぎてたのかね」


 農家の面々がこそこそと話している言葉が聞こえてきた。

 偉大な祖母を持つというのは、なかなか苦労だな。プレッシャーを感じなければいいが──ジャスミンをちらり見ると、そこにはやる気に満ちた青い瞳があった。まるで夏空のように輝きを浮かべている。


「この大魔女ジャスミン様に、まっかせなさーい! 絶対、原因を見つけちゃうんだから」


 愛用の杖を空に掲げ胸を張ると、こそこそとしていた農家たちは目を瞬き、誰かが「おおっ!」と感嘆の声を上げた。すると、ぱちぱちと拍手が起こり「頑張れよ!」「ジャスミンちゃん、よろしくね!」と調子のいい声まで聞こえてきた。


「さ、行くわよ。ルーファス!」


 意気揚々と歩き出すジャスミンの後ろをついていくと、しばらくして、彼女は苦笑を浮かべて「やっちゃったなぁ」とぼやいた。


「なにがだ?」

「頼られると弱いのよね。啖呵きって出てきたからには、ちゃんと原因見つけて解決しないとね」

「……お前はお人好しの度が過ぎるぞ」

「しゃーないじゃない。お祖母ちゃんがそうだったんだから!」


 あっけらかんとそたジャスミンは、杖を両手で持つと「うーんっ」と声を出して背伸びをした。


「クロヴェル遺跡に向かった魔術師の目的は、大方予想ついてるのよね」

「そうなのか?」

「当然でしょ。あたしを誰だと思ってるの──」

「大魔女ジャスミン様だろ?」


 またこのやり取りかと思いながら苦笑すると、ジャスミンは少しはにかむように笑った。


「で、魔術師の目的はなんだ?」

「魔法鉱石よ」

「……小さくて、魔術師が喜ぶものはないって、村長たちがいってなかったか?」

「素人目にはそうでしょうね」

「どういうことだ?」


 立ち止まったジャスミンは、杖の先で地面を小突いた。そうして「この辺りにだってあるのよ」と呟くと、深く息を吸った。


「我が声に応えなさい。ルミナス!」


 短い詠唱の直後、ジャスミンの身体から立ち上がった青白い魔力の輝きが揺らぎ、地面に吸い込まれていった。その直後、細かな砂がほわんっと光り浮き上がった。しかし、彼女がふうっと息をつくと、バラバラと足元に落ちて光は消えた。


「……魔法鉱石なのか?」

「その残りかすみたいなものね。クロヴェル遺跡の魔法鉱石は、魔力に反応して貯める性質を持っているの」

「魔力を貯める?」

「そ! 魔力を貯めた鉱石を魔術師が磨くと、宝石に負けない輝きを生み出すのよ」

「宝石に負けない……?」


 つまり、クロヴェル遺跡に向かった魔術師は、その魔法鉱石を売るつもりなのか?

次回、本日19時頃の更新を予定しています


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