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永劫の絶望

光剣剣聖（みつるぎけんせい）

本作の主人公。年齢19歳。身長169cm。

魔法が当たり前の世界でただ刀を信じ突き進む。

血の匂いを知るその刃はただ虚しく誰かを斬る。

人を救う為、誰かを傷つける。

矛盾した正義が彼を締め付ける。

孤独な祈りは今も届かない。

クリス•ポーカー

年齢73歳。身長196cm。

結婚していて、息子が2人、孫が1人いる。

元総合格闘技無敗のチャンピオン。

強化魔法を駆使して戦うのが主流となった格闘技界で、信じたのは己の肉体と魂。

無敗の伝説は今も轟く。

教えを乞わず、1人で強化魔法の頂へと辿り着いた。

老いた今もなおその拳はこだまする。

常田薫（ときたかおる）

年齢102歳。身長170cm。

娘が1人、孫が1人、ひ孫が1人いる。

歳のせいで腰が曲がり170cmとなっているが、若い頃は身長176cm程あった。

レジェンドの中では最高齢であり、名前と男勝りの口調のせいで誤解されがちだが、女性である。

「臆病者」と呼ばれる自警団を組織し、裏社会の犯罪から一般市民を守り続けた。

恐るは死ではなく誰かを守れなくなる自分自身。

防御魔法を極め、独自に生み出した魔法でボーリングの球を生み出し、戦う。

老いた体に宿した信念。

臆病な心に蓋をして、今日も球が宙を舞う。

烏丸蘭（からすまらん）

年齢22歳。身長183cm。

元々は警察官をやっていたが訳あって警察官を辞め卓越した運転技術を買われレジェンド御用達の運転手として雇われている。

沈黙の正義を貫きアクセルの音が正義を語る。

その目に宿るは正義を信じる心の炎。

美濃部寛太郎（みのべかんたろう）

年齢26歳。身長179cm

全てが平凡な彼は元会社員。

周りからの評価は幸の薄い男。

神が彼に与えた才能は、卓越した射撃能力。

趣味のサバイバルゲームで残した伝説。

1対12をたった1人で覆した伝説。

気弱な彼に与えられたもう1人の自分。

銃を握る手が彼に力を与える。

榊原蓮（さかきばられん）

年齢20歳。身長170cm。

参謀の男。

気怠く振る舞うその姿には何がある。

感情を捨て、頭と俯瞰して物事を考える力を駆使し皆をサポートする。

勝つ為の卑怯。

かつて師であった者から習った言葉。

哀しく笑うその裏に何が焼き付く。

ハンス•ノートン

年齢37歳。身長187cm。

伝説と呼ばれる殺し屋。

彼にあるのはただ一つクライアントの指示に従う事だけ。

己の美学に従い正面から敵をねじ伏せる。

歴史の裏に彼の影がある。

羽山賢（はねやまけん）

世界秩序維持機関メインテインの代表。

世界秩序を維持する為、日々思案に耽ている。

5本指と呼ばれる脅威を排除する為、レジェンド達の派遣を要請した。

以下5本指と呼ばれる国際指名手配犯の一角。

パブリック•ヴェルデ•ノーマン5世

推定年齢1702歳。身長203cm。

5本指の1人にして吸血鬼一族の生き残り。

吸血鬼は生きた年数が長ければ長いほどその力を増幅するとされている。

その目に映るは一つの理想。

祭神健介（さいじんけんすけ）

年齢不明。身長179cm。

ノーマンの右腕。

ノーマンと出会いノーマンの後を勝手について来た。

彼の心はただ一つ。ノーマンを守る事。

ペリドナルド

推定年齢1803歳。身長不明。

彼女はペナンガラン。

マレー半島、ポルネシア島に伝わる吸血鬼の一種。ペナンガル、クヤンダヤクとも呼ばれ首の下に胃袋と内臓をぶら下げている。

夜空を飛ぶ際、内臓を蛍のように光らせる。

ノーマンとは昔からの知り合いらしく彼の理想を叶える為、行動を共にする。

心に宿るは永遠に生きる事への絶望。

ヤン•カータル•ヤータル

年齢不明。身長250cm

異教徒として、弾圧されていた所をノーマンに救われ彼に心酔し、ついて行く事を決めた。

防御魔法を発展させ、腕を盾に見立てる事で、自身の腕に盾を生成する事が出来る。

生まれ持ったフィジカルと防御魔法で鉄壁の守りを実現する。

用語簡単解説

メインテイン→世界秩序を維持する事を目的として設立された国際警察。

イメージとしては異世界まで範囲を広げたICPO。

政府直属の機関。

レジェンド→表向きには、政府直属の組織とされているが実際は政府にとっての面倒事を解決したり、メインテインが解決不可能と判断した事案解決の為に動く。

政府直属の組織の為、任命規定が厳格で政府上層部の人間によるスカウト、もしくはレジェンドとして任命されている人間からの推薦によってはれてレジェンドとして任命される。

強化魔法→肉体の限界を引き出す魔法。

引き出せる肉体の限界は人によって異なり、平均20〜40%が限度とされているが、クリスの場合は、100%肉体の限界を引き出す事が出来る。

条件などはなく自分のタイミングで引き出せる。

防御魔法→イメージは数値分のバリアを貼る。

数値以上のダメージを受ければ、バリアが破壊される為、無敵という訳では無い。

また防御魔法発動にはそれぞれ自分で名付けた名前をいうのが発動条件。

スキルについて→魔法は勉強さえすれば、誰でも身につける事が出来るが、スキルに関しては、後天的に身につく確率は限りなく低く生まれ持った才能として開花する可能性の方が高いとされている。

その為、スキルを持っている人間は特別な人間とされている。

魔法→東京にはそれぞれ専門の魔法学校が存在し、そこで学ぶことで魔法を会得する。

中には独学で魔法を会得する者もいる。

また魔法には「基礎」の他に独自の魔法に昇華する「発展」がある。

ノーマンと剣聖の激しい斬り合いが始まった。

中心地はまさに竜巻のようだ。

「どうした吸血鬼。こんなもんか」

「素晴らしい。ここまでの剣術はじめてだ。惜しむらくは片腕である事か」

お互い斬撃をいなしているが、なんとノーマンが徐々にだが、押され始めた。

（片腕でこの手数。惜しい、惜しいぞ。両腕ならどれほどの逸材というのだ）

「少し趣向を変えよう」

ノーマンが距離を取る。

「逃すかよ」

剣聖がすかさず追撃に行く。

「ここは我の領域だ。全力を持って来い」

ザク。

ノーマンが自身の腕を切り、血が床へと舞った。

「生まれよ血の人形達」

「血の十字軍（クルセード•マーチ）」

飛び散った血が人の形を成し、行進する。

「独自流　川のせせらぎ」

血の人形を斬り捨て、ノーマンへと近づこうとするが、生み出される人形の数を上回れない。

（ダメだ。埒が明かない。）

「さぁどうする人間。血の人形を突破出来るのか？」

「フゥー」

剣聖が大きく息を吐いた。

直後、真上へと飛んだ。

釣られるように人形達も後を追う。

「狙いはあくまでノーマン。人形はおまけだ」

「突くのではなく打つイメージ」

「独自流奥義　地獄突き」

凄まじい速さの突き。

閃光となった刃が人形達を穿つ。

一つ残らず、人形の眉間を貫いていき、延長線にノーマンの姿がある。

それを見てもノーマンの余裕は消えない。

「面白い。ならばこちらから出向いてやろう」

言葉と共にノーマンが飛ぶ。

手の血が螺旋を描き槍を作る。

スッ。

瞬時に傷が塞がる。

ノーマンの接近に剣聖が気づく

「ノーマン！！」

刀をしまい、迎え撃つ。

「人間。受けてみよ」

「血の歓喜（ブラッド•ジェイン）」

自身の勢いを乗せた一撃が剣聖へ飛ぶ。

「独自流奥義　川神（かわかみ）」

魂を乗せた居合で迎え撃つ。

ガーン。

轟音と共に両者の力がぶつかり合う。

「やるな人間。一撃受け止めただけで快挙よ。地獄で自慢するといい」

「お前の魂ごと斬り捨てる」

衝撃で辺りに砂埃が舞い続ける。

お互い譲れない。

まさに魂を賭けた攻撃。

拮抗したように見えていた。

だが...。

「惜しいぞ人間。万全状態のお前と死合いたかったぞ」

パキン。

血が飛ぶ。

「グハァ」

剣聖の信念ごとノーマンの槍が貫いた。

「なら相打ちだ」

折れた刀をノーマンの首元へ走らせる。

グサ。

気づけば、手の甲に赤き花が咲き乱れている。

自分の血と気づくのに一拍遅れた。

「....血の槍（ブラッド•モンストーム）」

剣聖の肉体を無数の槍が貫いた。

そのまま下に落ちる。

ノーマンは悠然と空を飛んでいる。

「これで分かったであろう人間。我には叶えねばならぬ夢があるのだ。それを邪魔すると言うならば、命脈をきる。諦めろ。そして立ち去れ」

ノーマンは目を光らせ冷徹にそう言った。

「...愚かな。まだ分からぬのか」

傷だらけの剣聖が立ち上がった。

「俺は悪を斬り、誰かを救う事が仕事だ。この程度でへこたれてる暇はないんでね。刀は折れても信念までは折れないんだ」

「...それならば仕方ない。来い」

意地を賭けて、剣聖は再び向かい合う。

激闘の最中、烏丸は防戦一方を強いられていた。

（攻撃は凌げる。何処かで仕掛けないと勝てない。何か逆転のアイディアはないか）

ガン。

「よそ見している余裕はなくってよ」

「確殺童顔（かくさつどうがん）」

烏丸が真正面から受け止める。

「どうした？さっきより勢いが落ちてんじゃないのか」

「これでいいの。貴方は既に詰んでいるのだから」

（下だ！！避けろ俺）

咄嗟に身を引いたが、ペリドナルドの髪の束が左目の上を斬り裂いた。

「愛の罠（ラブ•ヘア）」

「これで貴方の視界は消えた。温情で毒は入れてない。さあいつまで待つかしら。」

「やってくれるねぇ」

血が目の視界を奪い死角が生まれる。

「確殺童顔（かくさつどうがん）」

再び奴の攻撃が始まる。

直撃は避けるが、それでも削られていく。

視界を奪われたのが、かなり応えている。

「イテテテ。もっと優しくしてくれよ」

「ダメよ。貴方は私の髪を傷つけた。ジワジワと削り殺してあげるから」

たまらず烏丸が距離を取る。

そして、烏丸は聞いた。

「なぁ冥土の土産に聞かせてくれよ。なんでノーマンについていくんだ？」

「貴方には関係ない。と言いたい所だけど良いわ教えてあげる。どうせ死ぬのなら土産話の一つくらい持たせてあげるのが粋ってものよね」

「最初はただの暇つぶしのつもりだった」

ここはブラッド•ムーン。

吸血鬼が生きる世界。

吸血鬼は永劫の時を生きる。

故に死への恐怖などはない。

ただ命が尽きるその日を待ち続ける。

ペリドナルドは絶望していた。

永劫の時を生き続けなくてはいけない事に。

「最初は良かった。好きな事が出来て、無茶が出来たから」

「今はただ退屈だった。

やりたい事がなくなった絶望。

永遠に生きなくてはいけない。

途方もない旅をしなくてはいけない事に」

そんな時に声を掛けてきたのがアイツだった。

「なぁペリドナルド。俺と一緒に人間と吸血鬼が暮らせる平和な世の中を作らないか？」

「最初は何を言っているのかさっぱり分からなかった。元々ノーマンが吸血鬼の中でも変わり者であるのは知っていた。だけどそんな言葉が出てくるとは思いもしなかった」

「アンタ正気なのかい？人間と吸血鬼が暮らせる平和な世の中だ。無理だろう。諦めな」

「無理じゃない。我はやらなくてはならないのだよ。約束したのだ。「あの子」と」

ペリドナルドがため息をつく。

「はぁ。またあの「人間」と無茶な約束したのかい。アンタも馬鹿なんだが、正直者なんだか」

「頼む。協力してくれないか。お前しかいないのだ」

「....はぁ。相変わらず、真っ直ぐ言うんだから。

いいわ。暇つぶししたかったし」

「流石は我が友。早速行こう。今すぐ行こう」

「まったく気だけは早いんだから」

そこから無限にも感じる旅が始まった。

無論吸血鬼というだけで、殆どの人間は逃げていった。

しかも風の噂で聞いた。吸血鬼と人間達との間で、戦争が起き、同胞は皆んな人間に殺されたらしい。

「....ノーマン。まだやるつもり？どう考えても人間と共存なんて出来るわけない」

「いや出来るのだ。必ず分かり合える日がくる。あの者がそうだったように」

そう言うノーマンの目は真っ直ぐだった。

でも何処か、破滅に向かっているように見えた。

ノーマンの顔は、夢に取り憑かれた「人間」のように感じる時があった。

少年のようなでも何処か不安定。

「私も馬鹿だ。でもここまできたらアンタの夢を見届けてみたくなった。いいよ何処までもついていくよ」

「ありがとう。ペリドナルド。必ず我は実現してみせる」

数年後、祭神とカータルが仲間に加わり、夢の実現に一歩近づいた気がしていた。

「昔話はこれで終わり。さっさと地獄へ行ってちょうだい」

「悪いな必勝策を編み出した。もう負けないよ」

血みどろの戦いは何処へと向かっていくのだろうか。

答えは神だけが知る。