11/16

血の行進曲

光剣剣聖（みつるぎけんせい）

本作の主人公。年齢19歳。身長169cm。

魔法が当たり前の世界でただ刀を信じ突き進む。

血の匂いを知るその刃はただ虚しく誰かを斬る。

人を救う為、誰かを傷つける。

矛盾した正義が彼を締め付ける。

孤独な祈りは今も届かない。

クリス•ポーカー

年齢73歳。身長196cm。

結婚していて、息子が2人、孫が1人いる。

元総合格闘技無敗のチャンピオン。

強化魔法を駆使して戦うのが主流となった格闘技界で、信じたのは己の肉体と魂。

無敗の伝説は今も轟く。

教えを乞わず、1人で強化魔法の頂へと辿り着いた。

老いた今もなおその拳はこだまする。

常田薫（ときたかおる）

年齢102歳。身長170cm。

娘が1人、孫が1人、ひ孫が1人いる。

歳のせいで腰が曲がり170cmとなっているが、若い頃は身長176cm程あった。

レジェンドの中では最高齢であり、名前と男勝りの口調のせいで誤解されがちだが、女性である。

「臆病者」と呼ばれる自警団を組織し、裏社会の犯罪から一般市民を守り続けた。

恐るは死ではなく誰かを守れなくなる自分自身。

防御魔法を極め、独自に生み出した魔法でボーリングの球を生み出し、戦う。

老いた体に宿した信念。

臆病な心に蓋をして、今日も球が宙を舞う。

烏丸蘭（からすまらん）

年齢22歳。身長183cm。

元々は警察官をやっていたが訳あって警察官を辞め卓越した運転技術を買われレジェンド御用達の運転手として雇われている。

沈黙の正義を貫きアクセルの音が正義を語る。

その目に宿るは正義を信じる心の炎。

美濃部寛太郎（みのべかんたろう）

年齢26歳。身長179cm

全てが平凡な彼は元会社員。

周りからの評価は幸の薄い男。

神が彼に与えた才能は、卓越した射撃能力。

趣味のサバイバルゲームで残した伝説。

1対12をたった1人で覆した伝説。

気弱な彼に与えられたもう1人の自分。

銃を握る手が彼に力を与える。

榊原蓮（さかきばられん）

年齢20歳。身長170cm。

参謀の男。

気怠く振る舞うその姿には何がある。

感情を捨て、頭と俯瞰して物事を考える力を駆使し皆をサポートする。

勝つ為の卑怯。

かつて師であった者から習った言葉。

哀しく笑うその裏に何が焼き付く。

ハンス•ノートン

年齢37歳。身長187cm。

伝説と呼ばれる殺し屋。

彼にあるのはただ一つクライアントの指示に従う事だけ。

己の美学に従い正面から敵をねじ伏せる。

歴史の裏に彼の影がある。

羽山賢（はねやまけん）

世界秩序維持機関メインテインの代表。

世界秩序を維持する為、日々思案に耽ている。

5本指と呼ばれる脅威を排除する為、レジェンド達の派遣を要請した。

以下5本指と呼ばれる国際指名手配犯の一角。

パブリック•ヴェルデ•ノーマン5世

推定年齢1702歳。身長203cm。

5本指の1人にして吸血鬼一族の生き残り。

吸血鬼は生きた年数が長ければ長いほどその力を増幅するとされている。

その目に映るは一つの理想。

祭神健介（さいじんけんすけ）

年齢不明。身長179cm。

ノーマンの右腕。

ノーマンと出会いノーマンの後を勝手について来た。

彼の心はただ一つ。ノーマンを守る事。

ペリドナルド

推定年齢1803歳。身長不明。

彼女はペナンガラン。

マレー半島、ポルネシア島に伝わる吸血鬼の一種。ペナンガル、クヤンダヤクとも呼ばれ首の下に胃袋と内臓をぶら下げている。

夜空を飛ぶ際、内臓を蛍のように光らせる。

ノーマンとは昔からの知り合いらしく彼の理想を叶える為、行動を共にする。

心に宿るは永遠に生きる事への絶望。

ヤン•カータル•ヤータル

年齢不明。身長250cm

異教徒として、弾圧されていた所をノーマンに救われ彼に心酔し、ついて行く事を決めた。

防御魔法を発展させ、腕を盾に見立てる事で、自身の腕に盾を生成する事が出来る。

生まれ持ったフィジカルと防御魔法で鉄壁の守りを実現する。

用語簡単解説

メインテイン→世界秩序を維持する事を目的として設立された国際警察。

イメージとしては異世界まで範囲を広げたICPO。

政府直属の機関。

レジェンド→表向きには、政府直属の組織とされているが実際は政府にとっての面倒事を解決したり、メインテインが解決不可能と判断した事案解決の為に動く。

政府直属の組織の為、任命規定が厳格で政府上層部の人間によるスカウト、もしくはレジェンドとして任命されている人間からの推薦によってはれてレジェンドとして任命される。

強化魔法→肉体の限界を引き出す魔法。

引き出せる肉体の限界は人によって異なり、平均20〜40%が限度とされているが、クリスの場合は、100%肉体の限界を引き出す事が出来る。

条件などはなく自分のタイミングで引き出せる。

防御魔法→イメージは数値分のバリアを貼る。

数値以上のダメージを受ければ、バリアが破壊される為、無敵という訳では無い。

また防御魔法発動にはそれぞれ自分で名付けた名前をいうのが発動条件。

スキルについて→魔法は勉強さえすれば、誰でも身につける事が出来るが、スキルに関しては、後天的に身につく確率は限りなく低く生まれ持った才能として開花する可能性の方が高いとされている。

その為、スキルを持っている人間は特別な人間とされている。

魔法→東京にはそれぞれ専門の魔法学校が存在し、そこで学ぶことで魔法を会得する。

中には独学で魔法を会得する者もいる。

また魔法には「基礎」の他に独自の魔法に昇華する「発展」がある。

「皆んなに合流できるかな」

烏丸は、城内を駆け回っていた。

「何処行っても似たような景色のせいで、道を覚えにくい。ただでさえ地図も無いから余計に分かりずらいな」

そんな事を思って走っていた時、何かが足に絡みついた。

「なんだ？なんかすげー引っ張られてる気がする」

足元を見ると髪の毛の束が絡みついていた。

「気持ち悪いな。お気に入りのスーツなのに」

烏丸はナイフを取り出し、髪の毛を切ろうとした瞬間。

凄まじい力で足を引っ張られる。

余りの勢いに倒れ込む。

「な、なんだ。引きずられてるのか」

必死に抵抗するが、ズルズルと引きずられ角の部屋の中に引き込まれた。

「ようやく獲物が掛かった。退屈してたんだ。相手しとくれよ」

声がする。

見上げると首の下に胃袋と内臓をぶら下げ飛んでいる女がいた。

「私はペリドナルド。吸血鬼だ」

「おいおいノーマン以外に吸血鬼がいるなんて聞いてないぞ。蚊の大群に続いて、とんでもない貧乏くじ引いたな」

「まぁしょうがない。相手してやるよ」

烏丸が戦闘体制に入る。

「人間。退屈凌ぎにはなるかな？」

ペリドナルドも構えた。

その頃、クリスと常田はノーマンがいると思われる場所を探していた。

「かれこれ30分はこうやって走っているけど一向に敵の場所が見つからないな」

「愚痴を言ってる暇ないよ。しらみつぶしに行こう」

そんな事を言い合っていた時。

ピアノの音色が聞こえてきた。

美しく品がある。

音はこの先の部屋から漏れ出ている。

「クリス」

「分かってる」

恐らくこの先に標的ノーマンがいるに違いない。

クリスがドアノブをゆっくりと回して中へと入る。

中には、一人の男が優雅にピアノを弾いている。

「一人は約束を護り、一人は忠義を果たし、一人は、信じる道を行った」

「カータル、ベルゼント、そして、健介。

よくやってくれた。

我の馬鹿な夢について来てくれたありがとう。

お前達の思い無駄にはしない。

きっと理想を叶えてみせよう。

この曲をお前達に送ろう」

「そして、招かれざる客人達よ。

お前達には、死の行進曲を送ろう」

その時、常田が叫んだ。

「防御魔法　守護霊」

クリスと常田を覆うようにドーム状のバリアが出現し、身を守る。

直後、血の槍が辺りに降り注いだ。

血の匂いが辺りに充満する。

「見えなかった。奴の攻撃が繰り出される瞬間が。ギリギリ反応出来たけどそう何回も出来る気がしない」

常田の口から怯えの感情が出た。

するとクリスが拳を握りしめてこう言った。

「....常田いつも通り、良い感じのタイミングで援護してくれ。前線には俺が出る」

何かを覚悟し、苛立っているようにも見えた。

「分かった。やばくなったらすぐ援護する」

「助かる。よし行くか」

クリスがバリアの中から飛び出した。

「我の理想を邪魔するというならば、恐怖をその身に刻みつけよう」

「筋力解放　50%」

「悪いが手抜きは無しだ。最初から全力でいかせて貰う」

ノーマンの体が変化する。

体からは血液が飛び出し、固まってゆく。

血液は槍へと形状を変えノーマンの手に収まる。

「悪いな人間。死ぬことになるぞ」

互いにスタートをきる。

「血の獄番（ブラッド•パンサー）」

高速の突きが飛ぶ。

「我流奥義　魂の喝采（ソウル・ブレイカー）」

魂を乗せた一撃で迎え撃つ。

轟音が鳴り響く。

しかし。

グサリ。

「ガ」

「言ったであろう。死ぬ事になると」

クリスの肉体をノーマンの槍が貫いた。

「だがらなんだってんだ」

ガシ。

「ん？どうするつもりだ？」

「こうやんだよ」

なんとクリスは槍の根本からチョップでへし折った。

すかさず、ノーマンが距離を取る。

「凄まじいパワーだ。だが、当たらねば意味を無さん」

「蒼龍弾（ツインボールボーイ）」

ノーマンが地面にある血液から壁を生成し、攻撃をいなす。

「お前もだ」

「クソ」

「さてといつまでも構っている暇はない。さっさとケリをつけるとしようか」

「血の罰（ブラッド•テンペスト）」

「防御魔法　相互理解（グッドラック）」

クリスと常田の前にバリアが展開される。

上と下から血の槍が貫く。喰らえばタダでは済まない威力。

「ふむ今のをいなすか。だが、いつまで持つかな」

再び奴が攻撃に転じる。

「血の槍（ブラッド•モンストーム）」

血の槍が降り注ぐ。

バリアは攻撃を防ぐがいつ壊れてもおかしくない程にボロボロになっていく。

「おい常田。これじゃ埒が明かない。アレやるぞ。遅れんなよ」

「了解」

「何をしても構わないが、我には届かない」

その頃、烏丸は苦戦を強いられていた。

「ったくやりにくいな。ただでさえ飛んでいるし、何より髪の毛がうざいな」

「どうした人間。避けてばかりでは私を殺せないよ」

「チィ」

（俺の第六感がいってる。奴の攻撃を喰らってはいけないと。何か分からんがヤバい）

「って言っててもしゃーない。とりあえず」

小石をいくつか拾い上げて言う。

「悪いがこっちも暇じゃないんでさっさとケリをつけさせて貰うわ」

「フフフ。なんだい石蹴りでもするのかい？」

「いや。ドッチボールだよ」

烏丸が小石を投げつける。

「当たると良いわねぇ」

すると烏丸が詠唱を始めた。

「爆発魔法　連鎖爆発（チェーン•エクスプロス）」

投げた小石が次々と爆発する。

煙の中から怒号が飛ぶ。

「私の大切な髪をよくも」

煙が晴れると一部が消し飛んでいた。

「許さない。私の美を汚す奴は誰であっても」

「じゃあ降りて戦えよ」

怒り狂ったペリドナルドの攻撃が始まる。

「確殺童顔（かくさつどうがん）」

ムチのように奴の髪がしなる。

幾つかを受け流すが、そのうちの一つが烏丸の腕を掠った。

（まずい）

間髪入れず、烏丸が掠った部位の肉を削ぎ落とす。

「勘がいいみたいね。切断したのは正解。即効性の毒が、肉体を蝕むからね」

「冗談じゃねーぜ。ケバブみたいじゃねーの」

（良かった。斬っておいて）

「でも今ので殺し方は思いついたから。もう安心していいぞ吸血鬼」

「不死身の私を殺す手段なんて存在しない。やれるものならやってみなさい」

「おいどうなってるんだ」

烏丸の激闘の最中、剣聖もノーマンのいる部屋にたどり着いていた。

部屋に入るとノーマンと思しき男とクリス、常田が倒れていた。

「あの人達が負けた。ありえないだろ」

「なんだ。まだいたのか。諦めて帰った方が身のためだぞ」

「そうそう。そこに転がっている奴らは何か大技を繰り出したようだが...。

まあ所詮は人間の技。我には通じん」

剣聖の腕の筋肉が隆起する。

「お前はこの俺が斬り捨てる。覚悟しろノーマン5世」

「やってみろ。お前達全員血の池に沈めてやろう。地獄で再開するといい。」

決戦の火蓋が切って落とされた。