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神格者──少女たちは怪物と化しながらも世界を救う──  作者: 白影ゆうき


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三話

 見上げる高さのある測定器。

 由香は後ろに倒れそうなほど上を見上げる。

「これ、高いですね」

「百メートルはあるからな」

 目の前に置かれた一メートルサイズの丸い球体とシングルマットサイズの黒い壁。

「この壁に向かって本気で殴ってみろ」

「ええ、これ固そうですけど」

 ツンツンと触ってみると、予想を裏返すほどの柔らかさ。優しく触れた手が飲み込まれる。

「うわ、これ殴ったら飛び散りそうなんですが……」

「ダイラタンシー現象、言わば水溶き片栗粉の原理だそうだ。細かいことはわからないが、強い力が加われば、その分硬くなるから、飛び散る心配はないぞ」

「それなら……」

 釈然としない様子で、黒い壁の前に立つ由香。

「由香ちゃん頑張って!」「ゆ、由香さん、頑張って下さい」

 応援する二人。

 腰を少し落として構える。

 左手を前にし、右腕を深く引いた。

 息を深く吐き出して、呼吸を整える。

「ほう、武術をしていたのか」

 由香の構えを見て感心する乱多。

「……………………破ッ!」

 ズドン!

 鈍い音が測定室に残響する。

 黒い壁は変化なく、代わりに球体が勢いよく上に跳ね上がった。

 壁を殴った力が球体に伝わり飛び上がる仕組みらしい。

 モニターに映し出されたのは、飛び立つ球体を追ったカメラ映像。

 勢いは衰えず三十メートルを超えた。

「おお、Dランク超えたか」と乱多。

 加奈たちは手をぎゅっと握りながらモニターを見つめる。

 四十五メートル突破

「すごい、Cランク……いや、Bに届くか?」

 球体は少しずつ勢いが落ちていき。

「五十七メートル……ギリギリCランクだな」

「あぁ、あと三メートルだったのにぃ」

 歯を食いしばり悔しがる由香。

「ちなみに俺は六十五メートルでBランク。七十五メートル越えればAランクだ」

 自分の数字を誇らしげに自慢する乱多。

「次は誰が行く」

「えっと……い、いきます」

 ゆっくりと手を挙げるりあ。

 おどおどした様子で壁の前に立つ。

 加奈と由香が応援する中、特に構えることなく。一発。

「ええい」

 猫パンチのような動作。しかし威力は抜群。

 ズドォン!

 球体は勢い良く上昇する。

「これ、うちの記録抜かれるんじゃ!」

「……」

 乱多も冷や汗を流しながらモニターを見守る。

 衝撃音は由香の時より凄かった。

 あっと言う間に五十メートル、六十メートルを超える。

「すごい! りあちゃんBランク行ってるよ!」

 興奮する加奈と「えへ、えへへ」と照れるりあ。

 六十メートルを超えた途端に球体の勢いが突然止まる。

「六十三メートル……今雪りあ、Bランクおめでとう」

 自分のスコアを抜かれず少し安堵する乱多。

 またしても拍手を送られ、口元を緩ませながら照れるりあ。

「最後に、小倉加奈」

「……お母さんは、何メートルまで上げたかわかりますか?」

「美里教官はAランクの中でもかなりSに近いスコアだったな」

 乱多は手に持った資料を確認する。

「百メートルでSランクなんだが、美里教官が九十二メートルだな。Aランクで二番目のスコアだ」

「九十二メートル……」

 加奈は測定器を見上げる。

 同じ土俵に立ったとは言えど、美里の凄さを目の当たりにする。

 本当にAランクなんて行けるのか?

 そんな不安を抱きながらも、両頬をパンッと叩き気合を入れる。

「行けるか?」

「……行きます!」

 気合いの乗った返事。

 美里教官の元で幼少期の時から鍛えられた加奈。

 乱多含め、皆んなが期待していた──Aランクになり得るんじゃないかと。

 壁の前に立つ加奈。

「「……」」

 由香のように何か特定の武術をしていたわけではないが、それっぽい構えと共に呼吸を整える。

「コォォォォ…………ヤッ!」

 ズドォォン!!

 轟音が空気を振動させる。

 球体はもの凄い勢いで上昇する。

 五十、六十と超える。

「すごい! 七十メートルまであと少しだよ!」

 由香が興奮する中、ジッとモニターを見つめる加奈。

 六十五メートル超えると、明らかに球速が落ちていく。

「…………七十二メートル、惜しくもBランクだな」

 美里と同じ土俵に立てたと思ったが、身をもって実感した。

(やっぱりお母さんはすごいや)

 尊敬の念が上回った加奈は目の前の結果に落ち込むことなく受け入れた。

「小倉さん、お、おめでとうございます」

「ああ、うちだけCランクじゃん」

 同期の中で見劣りすると感じた由香は再び落ち込んだ。

 と言うのも、どれだけトレーニングや経験を積んでもランクが変わることはなく。各自の能力の最大値を測定した結果になる。

 現状、力の制御を出来ない三人は精々Dランク程度の力しか扱えないが、戦場で経験を積めば目の前の結果にも届きうる。

「乱多さぁん。うちがBやAになれる夢は潰えたんですかぁ」

 悔しさのあまり、藁にも縋る思いで尋ねる。

「……まぁ今より強くなれる方法はある」

「本当ですか!」

 乱多の言葉に期待の眼差しを向ける由香。

「しかし、その方法は……基本誰も取らない選択だ」

「それでも、話は聞いておきたいです!」

「うーん……新薬の再投与」

 その言葉を聞いて三人は固まった。

 またあの新薬を体に入れないといけない。その恐怖はすでに身をもって味わっている。

「さらに、神格者に新薬を再投与した時、一度目よりも暴獣化のリスクが高く、これまでの成功例も二人しかいない」

「「「……」」」

 何も言葉が出てこない。

 とめどなく溢れ出てくる殺意。人の感覚を失いかねないリスク。つい先ほど、青年が暴獣化したのを目の当たりにした。自分達はたまたま神格者になれただけかもしれない。次は……そんなことを考えると恐怖で体が強張る。

「や、やっぱり大丈夫です。うちCランクのままでもいいです」

「そうだな、Cランクも十分すごいから落ち込むことはないぞ!」

 励ます乱多。

「それに君たちは、今後現場に出てモンスターの討伐や調査など行う。危険なことには代わりない。それでも、人類の地を取り戻すべく我々も命をかけている。人から見れば強大な力だが、モンスターからすれば同等か見劣る程度のものだと思え!」

「「「はい」」」

 乱多の言葉の重みと、これから自分達が地上に出てモンスターと戦うことを想像した三人。遊びでもゲームでもなく、これは戦争。

 終焉を迎えた人類は、諦めることなく戦ってきた。

 自分達も本気で地上奪還を目指している。

 だからこそ、加奈たちは言った。

「私たちは諦めません!」


三話どうでしたでしょうか?

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