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神格者──少女たちは怪物と化しながらも世界を救う──  作者: 白影ゆうき


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二話

「あれ……ここは」

 

 意識を取り戻した加奈。側には美里。


「起きた様だな。ご苦労様」


「お母さん! 私、私は!」


 飛び起き、自分に置かれた状況を訪ねる。


「安心しろ、無事神格者として登録されたよ」


「……よかったぁ」


 美里の言葉を聞き深く安堵する。

 地べたに座り、ハッと辺りを見渡す。


「由香ちゃんは!?」


「吉戸さんも先ほど神格者として登録されたよ」


「よかったぁ」


 二度目の安堵。自分が気を失っていた時の状況を聞いた加奈。

 加奈が意識を失っていたのは十分程度。

 他の試験者は加奈の暴走ぶりを見て少し怯えた表情をしていたが「自分も負けてられないです!」と意気轟々と名乗りを挙げた。


 ベッドに拘束され加奈同様、両腕に投与される。

 同じように苦しむ由香。加奈と大きく違ったのは時間だ。

 加奈は投与から三分程で殺意を振り撒き神格者となったが、五分以上の号哭が投与室に響いた。腕には太い青筋がいくつも浮き上がり、足の拘束を破壊しベッドの三分の一が損傷。

 学者たちもモンスター化に備え避難し、美里が万が一の討伐隊として現着。

 もうダメだ。誰もがそう思った矢先、忽然と落ち着きを取り戻した由香。


「吉戸さん、体調はどうですか?」


 美里が駆け寄り容体を確認する。


「最悪の……気分です」


 そう言って由香も意識を失った。


「吉戸由香。四十五期生、第二神格者とする」と美里が報告する。


 そして今。

 意識を取り戻した加奈は由香の元に駆け寄った。


「目、覚ますよね?」


「安心しなさい。投与された薬で体が再構築されるための再起動の様なものだから」


「そうなんだ……」


 その時、加奈は感じ取った。

 自分の体が今までとはまるで違うことに。

 高いと思っていた天井は低く感じる。広いと思った部屋が狭く感じる。設備のすごいベッドだと思ったが、すごく脆そうだと。

 感覚的に、自分の身体能力が上がったと。


「つ、次は俺が行く!」


 一人の青年が声を挙げた。

 加奈たちより三、四歳年上だろうか。金髪に染めた髪をかき上げ、釣り上がった目頭が目付きを悪くさせる。

 青年もベッドに拘束される。

 その表情はひどく動揺している。加奈と由香の症状を見て恐怖したのか。冷や汗が止まらない。

 学者が投与を始める。


「あ、あ、あああああああああああ! グアアアアアアアアア!!!」


「イケナイ!」


 投与室に赤いランプが点滅する。

 青年の腕が縦に割れ、腕の本数が増える。体から無数に生える剛毛。歯は鋭い牙になり、人の骨格が失われ、この世のものとは思えない生物になってしまった。


「試験者が暴獣化した! 美里隊長、直ちに討伐せよ!」


「了解」


 腰に据えていた刀を抜き、青年……暴獣の前に立つ。


「お母さん!」


「試験生は下がってなさい!」


 防護服を着た学者たちに連れ出される加奈たち。


「グア、ガアア……」


 大きな口から涎を垂らし、美里をジッと見つめる。


「苦しいだろう。直ぐに解放するから」


 腰を落とし、刀を前に突き出す。

 一閃───暴獣に一筋の光が過ぎ去る。

 ドシンと巨体が倒れる。

 暴獣の前にいたはずの美里は、暴獣の後ろにいた。

 人の目では捉えられないほどのスピードで一太刀、一撃だ。

 避難していた試験生が戻ってくる。


「お母さん!」


「ここでは教官と呼びなさい。全く」


 刀に着いた血を振り払い納刀。

 これが神格者の力。

 美里は神格者の中でもAランクに当たるエリート隊員。


「さすが小倉隊長……」


 学者たちは驚きの表情をする。そして、試験者たちは皆固唾を飲み込んだ。

 加奈と由香は結果が違えば、自分達も暴獣化していた。これから新薬を投与をするものは

 、自分達もこうなってしまうかもしれない恐怖から青ざめ、怯えた表情になる。


「次に希望するものは」


「「…………」」


 誰も名乗りを上げない。

 この様な現場を目の当たりにして即座に手を上げることなど出来る訳なかった。ただ一人を除いて。


「あ、あの……私、行きます」


 手を挙げたのは、今雪いまゆきりあ。艶やかな黒髪のロングストレートの女の子。眼鏡をかけ、落ち着いた瞳は、彼女の性格そのものを表している様だった。

 見るからに怯えた様子。戦場でモンスターを倒すことの出来なさそうな小心者に見える。

 学者たちは心配した様子だったが「では、ベッドの方に」と案内したのは美里だった。

 悲惨な事件が起きたばかりなのに、それでも手を挙げる勇気と度胸。それを見抜いていた美里は彼女に一言声をかけた。


「君は強い、だから怖がる必要はない」


「は、はい!」


 緊張した様子はあるものの、美里の激励に勇気を貰い、堂々たる表情でベッドに横たわる。


「それでは、新薬の投与を開始する」


 りあの腕に新薬が混入して行く。


「…………」

「…………」

「…………」


 特に反応を見せない。

 りあはピクリとも動かない。


「まさか死んだのでは?」


 学者たちは心電計を確認するも、りあの心臓は動いている。

 特徴的な反応を見せることなく数分後。

 何事もなかったかの様に目を覚ました。


「意識はあるか?」


「……はい」


「自分の名前は言えるかい?」


「今雪、りあです」


「よろしい。今雪りあ。四十五期生、第三神格者とする」


 周りから拍手を送られ、恥ずかしそうにするりあ。


「すごい! いまゆき、りあちゃん? 本当にすごいよ! ね、小倉さん!」


「そうね、本当にすごいよ」


「え、えへ。そ、そんな。二人ほどじゃないよ」


 謙遜しながらも、褒められて嬉しいのかニヤけながら言葉を返す。


「次に希望する者はいるか?」


 残った三人は誰も手を上げなかった。


「であれば、次回の試験の時にまだ勇気が残っていれば、立候補してくれ」


 そう言って今回の神格者の試験は終了した。


「今回神格者となった三名。後ほど測定室に来るように」


「「「はい!」」」


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 測定室。

 ここは神格者たちの能力を測る場所。

 周りには重々しい機械や装置が並べられている。


「ここでは、君たちの能力水準を測らせてもらう」


 筋骨隆々の隊員。保田ほだ乱多らんた

 小麦色に焼けた肌に、腕には無数の傷跡。涼しそうな頭は一際輝いていた。


「ここでの測定が今後のランクにも影響してくる」


 加奈たち三人は緊張の面持ちで話を聞く。


「ここでAランクが出ても最初はEランクの任務から当たるからそう緊張することはない。現場の経験を積めば君たちの水準に相応しいランクの任務に当たってもらう」


「あの!」


「どうした吉戸隊員」


「もしSランクが出たらどうなりますか?」


 乱多は高笑いをした。

 目に涙を浮かべ、自分の膝を強く叩く。


「そんなことは滅多にないから安心しろ。俺でもBランクだ。SもAも出ることはほとんどないし、仮にEランクだったら神格者でもサポートに回ってもらうからな」


 馬鹿にされてような気がして頬を膨らませる由香。

 ランクが上がるに連れて力が強大化される。神格化してない一般人が一だとした場合、Eランクは大凡三倍の力を得る。

 DランクはEランクの五倍。CランクはDランクの八倍。BランクはCランクの十倍。AランクはBランクの十五倍。SランクはAランクの二十倍。


 単純計算でSランクは一般人の三十六万倍の強さを誇る。

 絶大なる強さを持つが、該当者は少ない。

 現在、アナスタシに所属する神格者のうち、Sランクは二人。Aランクは五人。

 ほとんどがBからEで止まっている。


「でも、神格者になってからすごく強くなったって感覚的にわかるんですが!」


「それはみんなそうだ。Eランクでさえ、普通の人間の三倍の強さを手に入れるんだからな」


 またしても頬を膨らませる由香とまぁまぁと宥める加奈。


「測定、まぁ体力測定のようなもんだ。誰からやる?」


「はい! うちから行きます!」


 真っ先に名乗りを挙げたのは由香。


「さっきは小倉さんに一番手を譲ってしまったので、ここでうちが先に行かせて頂きます!」


 気配の乗った返事。

 ついに自分の実力を測れる。そんな期待と興奮に包まれながら測定器の前に立った。

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