一話
初めて、白影ゆうきです。
続き物として出すのは2作目です。
バトルモノは初めてになるんですが、楽しんでもらえると嬉しいです。
鬱蒼と生い茂る植物が街を包み隠す。
以前は大勢の人で賑わい、見上げるほど高い建物が並び建っていた東京は、今や見る影もない。
崩れ落ちたビル群。アスファルトはヒビ割れ、血と獣の匂いが漂う。
こうなった経緯は、五年前。突如として世界中に現れたモンスター。
ゴブリンや巨人、鬼やドラゴン。架空、空想、物語の中だけでしか見たことのない生物達いが世界を混沌へと誘った。
各国の軍と日本の自衛隊が動いたが、何者かによる電波や電子機器が乗っ取られてしまい、あえなく敗退。
日本の人口も十分の一までに減ってしまっていた。
じわじわと進行を許すしか無かった人類に、一人の天才科学者が希望の新薬を開発した。
その新薬を体内に入れることにより、物理学を凌駕する強大な力を手にすることができた。その力のおかげで現在はモンスターの進行をなんとか食い止めている。
そして、ここにも一人。強大な力を手に入れた者がいた。
目の前のは人間の上半身と馬の下半身を持った生物────ケンタウロス。
剛毛な毛並みと、筋骨隆々な体躯。ファンタジーで見かけた温厚な様子はなく、二メートル近い大きな剣を持ってる。
そんな巨漢なケンタウロスが青年の前に三体。
対す、青年の手には白刃が輝く長剣。漆黒のスーツを見に纏い、短い黒髪が風に揺られる。
ガアァァァと咆哮と共に一体のケンタウロスが青年に突進した。
大剣を振り下ろし、地面を強く叩きつける。
大地が揺れ、土煙が舞う。直撃すれば人間など木端みじん。
獲物を仕留めたと思ったケンタウロスはニヤリと笑みを溢す。
土煙が明けると、人間の姿がない。
────キン!
金属が響く音と共にケンタウロスの首が地面に落ちる。
その背後には先ほどの青年が立っていた。
残った二体のケンタウロスは驚きの様子を見せるも、すぐに少年向かって突っ込んできた。巨体とは裏腹に、ものすごいスピードで距離を詰めらる。
二体のケンタウロスは、合わせるように大剣を振り翳した。
────ザン、ザシュ。
目にも留まらぬ速さと共に、二つの剣技の音が鳴り響いた。音と同時に動きを止めたケンタウロス。
青年は何事もなかったかのように、その場から立ち去る。
遅れて、ドスンと重い者が落ちる音が聞こえた。二体のケンタウロスは上半身から切り離されてその場で倒れた。
これが人類の手に入れた新たな力。
人々は彼らを希望の意味も込めて『神格者』と呼ばれた。
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「私もついに神格者の試験を受けられる!」
意気揚々とする少女。
小倉加奈。茶色い髪にふわりとしたボブカット、瞳は大きく透き通る灰色がかった淡い紫色。
幼き頃に両親を亡くした小倉は『アナスタシ』の訓練生として日々を過ごしていた。
人類存亡をかけた戦い。訓練は決して甘くはなく。とにかく生き抜くための術を叩き込まれる。
大人でも根を上げる訓練に幼少期から耐え抜けた小倉は、期待の兵として一際目立っていた。
「お母さん!」
加奈が手を降る方には光を受けて輝く金髪のボブヘアが特徴的な女性。
緑色のヘアバンドを付けており、深いエメラルドグリーン色の瞳からは落ち着いた印象を受ける。
「加奈、訓練時間内は教官と呼びなさい。何度も言ってるでしょう」
「はーい教官」
だらしなく返事をする。
両親を幼くしてモンスターにより亡くした加奈を救出した人物────小倉美里。
孤児になった加奈は、美里から離れようとしなかった。当時から神格者として戦場で活躍していた美里は、加奈の里親として世話をしてきた。
母としても、神格者としても尊敬している加奈は、美里の髪型を真似て日々神格者になるための訓練をしていた。
「今日が何の日か覚えてる!?」
「全く、そう言うのは自分から言うものじゃないぞ」
美里は持っていた紙袋を加奈に差し出した。
「誕生日おめでとう」
小さい紙袋を受け取った加奈。
脇目も振らずに中身を確認する。
「わぁ……可愛い!」
安っぽいハートのヘアピン。
それでも、今の時代では高価な物。状態の良い娯楽用品は素材デザイン問わず高価になっている。
早速前髪につける加奈。
「どう……似合ってるかな……」
「似合ってるよ」
「えへへ、ありがとう」
満面の笑みを向ける加奈に微笑ましく感じる美里。頬が緩むのも束の間、
「今日で十二歳になったとう言うことは、わかってるね」
「……はい」
空気が変わった。
先程までの、和やかな雰囲気は一され、美里の真剣な表情に加奈もつられて姿勢を正す。
「神格者の試験を受けると言うことは、二度と人間には戻ることができない」
真剣な表情で話を聞く加奈。
「物理も常識も通用しない生物兵器になる。それでも神格者になる覚悟があるのか」
「昔からお母さんみたいになれたらって、私みたいに親のいない人たちを少しでも助けられたらって……ずっと考えてた」
拳をギュッと握り、発する言葉に力が入る。
「もうお母さんに助けられるだけの私じゃなくて、お母さんと一緒に世界を、人々を助けたい!」
「…………教官と呼びなさい」
「あ、教官」
神格者──天才科学者が生み出した新薬。その源となる素材がモンスターの血液。
通常であれば有毒。人間のDNAと血液に含まれる遺伝子情報を一つ一つ解き、パズルのように再形成された物。それを人体に投与すると甚大な力が手に入る。
しかし、強力な副作用もあり。強い殺戮衝動に駆られること。一定の精神力、肉体を兼ね備えてなければモンスターと化してしまう。そんな危険な薬であっても、得られる力が大きく、今の人類の要となっている。
神格者として希望する者も多く、定期的に神格者の試験が設けられていた。
そして、今日誕生日を迎えた加奈も神格者としての試験資格を得て、精神と肉体のテストを受け、適性があれば新薬の投与となる。
十人に一人は精神に異常をきたし、モンスターとなってしまう。低くない確率で自分の娘がモンスターとなり、最悪自分の手で殺めなければならない美里にとっては酷く複雑な気持ちだ。
それでも、今は戦力が足りない状況。
試験会場を見守る美里。
「精神力のテストと、肉体のテストは大したことないわね」
日頃から美里のスパルタ教育を受けている加奈にとって、試験のテストは容易なものだった。
「すごいです! うちも負けないです!」
加奈に力強く語りかけるのは同じ神格者の試験者。
燃えるような鮮やかな赤髪のポニーテールが印象的。髪は腰まで届くほど長い。
ルビーのように真紅で、真っ直ぐ前を見据える強い眼差しは、彼女の自信を表しいている。
「うちは吉戸由香よろしくです!」
「私は小倉加奈」
「小倉! あの小倉教官の小倉ですか!?」
「そう、私のお母さん」
「なら、この結果も頷けます」
「結果って?」
由香は天井から吊るされているモニターに指を刺した。
そこには試験者のリストが記されている。
「あそこ、加奈さんだけ点数が満点です」
「あ、ほんとだ」
精神力、肉体の強度。それぞれ五十点の配分。満点が百。
八十点が新薬投与のボーダーライン。
試験者の平均は六十点代で、ボーダーラインを超えるものは多くない。
「うちは八十一点でギリギリでしたが、神格者になればAランクは固いと思ってます!」
「私だって、お母さんがAランクだからBくらいは……」
「資格のあるものは次の部屋に並びたまえ」
試験監督が、新薬の投与室に案内する。
「いよいよだね」
「緊張してきました」
通路を通る際に各方面から殺菌作用のある煙が撒かれる。
加奈たちは周りを見渡しながら、数十人いた試験者が七人まで減っていることを知る。
「あれだけ多かったのに」
期待と不安で胸の音が高鳴る。手に汗握り、投与室に入る。
いくつかのベッドが並べれられ、ベッドには無数のホースのようなケーブルのようなものが繋がっていた。
上を見上げると、ガラス越しに美里が見守っているのが見えた。
加奈は母親の顔を見て、決心したのか最初にベッドに横たわった。
心内では不安でいっぱいの美里。それを加奈に悟られまいと、表情には出さないが、無意識に拳に力が入る。
拘束具でベッドに固定される加奈。周りには白い防護服を着た大人たちが数人。
「第一投、小倉加奈……これより投与を開始する」
右腕と左腕同時に新薬の投与が始まった。
(……熱い!)
体内に薬が入ると同時に感じた強烈な熱。
腕が焼かれ、体の内から燃え盛るような熱さ。
「あぁ、あぁぁ……あァァァあぁあっぁぁあぁぁあああ!!」
突然暴れ出した加奈。
拘束具で押さえつけられているが、それすら破壊しかねない暴れよう。
頭を左右に振り、肩から腕。腰から足にかけて拘束具を振り解こうとする。
見守っていた六人の試験者は顔を青ざめる。このままモンスター化してしまうのではないかと。
(殺す殺す殺す────違う!)
内側から溢れ出る殺意。これは加奈の殺意ではなく、投与された薬。モンスターから採取した血液から溢れ出る殺意。
(これは私の感情じゃない。私はお母さんの様な強い神格者になるんだから!)
「私の邪魔をしないでぇぇぇぇ!!!」
大声と共に、殺意を振り払った加奈。
精神的にも肉体的にも疲弊した彼女は息を切らすも、
「無事乗り越えた様だな。小倉加奈。四十五期生、第一神格者とする。おめでとう」
白衣を着た者から贈られた賞賛。その言葉を耳にし、加奈は意識を失った。
どうでしたでしょうか?
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