表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/22

第七話 『絶望組』に入ることにした。

 俺は、自分の意思で『絶望組』に入ることにした。

 もう入ってるとか言うかもしれないけど、そうじゃない。

 はっきり言って、俺は昨日、ずっと迷ってたんだ。

 

 犯罪者と一緒に生活するなんて、真面目に考えなくてもおかしい。





 が、俺は犯罪者と一緒に生活することにした。

 理由は、魔術のプロフェッショナルであるトワから魔術を教えて貰えるから。と、みんなが美少女すぎるから。




 

 ……そして、『絶望組』の皆を助けたいから。イエスタは、重そうな過去がありそうなのに、1ミリも見せてくれなかった。

 他のメンバーも、俺には想像も出来ないほど、重い過去を抱えているだろう。

 

 それに、俺は美少女を見捨てるほどの、カス野郎じゃない。

 みんなに更生してほしい。俺に出来ることを全てやって、みんなを助けるんだ。

 

 まあ、今の俺に出来ることなんて風の玉を出すことくらいだけどな。

 

 




 

「……ふあああぁ……ねっむ……。」

「昨日、何時まで起きてたの?」

「わかんねぇ。」

「……でも、眠い原因は分かる。昨日の夜に頭を使いすぎたからだ。多分。」


 昨日の夜、俺は超暗い話をしてしまった。

 が、イエスタは、何事も無かったかのように朝食を作ってくれた。

 でも、何故か俺の朝食だけ、少し多めだった。そのせいで、イグニスからの視線を受けながら食べることになった。


「眠くなってたら、魔術なんて使えないよ!集中!」

「分かってる……。」

「分かってないね。アイスウィンド!」

「うわああああああああ冷てえええええ!!!!」

「起きた?」

「完っ璧に目が覚めたね。」


 トワは超冷たい風を、俺の顔面めがけて吹かせてきた。触ってみると、俺のまつ毛が凍っている。


「今のは氷魔術の氷を超細かくして、風魔術に乗せたもの。すごいでしょ!」

「じゃあ、俺も使える………ってコト?!」

「風の玉しか出せてない雑魚には無理!」

「ちくしょおおおおおおおお!!!!」

「そんなに虐めないの……」


 イエスタ!ありがてぇフォローだ。

 そういえば、イエスタはめちゃくちゃ氷魔術が得意だったっけ。


「イエスタ!俺に氷魔術を教えてくれ!」

「トワから風魔術と光魔術を習ってからよ。色々なものにひょいひょい手を出さ無い方がいいわ。」

「氷魔術も私が教えるから、大丈夫!!!」

「イエスタがいいなぁ……」

「ほう、いい度胸だ!今日はもう魔力回路修復しないから、自力で頑張ってね!!!」

「終わった……」


 それから数時間、治癒なしで練習し続けた結果、俺はどうにか風の刃をイメージして、飛ばすことに成功した。

 的にしていた木には、小学生が石でガンガンやった時くらいの傷がついた。


「なんとか出来たけど、しょっぼいな……。」

「出来てるだけ凄いよ!魔力回路、本当に治してあげなかったのに!」

「そろそろ治してください……」

「えー?いいよ!」


 そう言って、トワは回復魔法を使ってくれた。

 魔力回路が修復されていく……。血管が潤うような、超痺れた腕に血が流れる時みたいな気持ちよさだ。クセになる。


「ああぁ……」

「変な声出さないでよ!」

「ごめんごめん。」

「……こんなクソザコ威力じゃあ、まだまともに戦えないな。」


 対人戦のことは……出来れば考えたくない。だが、魔物と戦うにしても、木にちょろっと傷がつく程度では、魔物には傷ひとつ付けられないだろう。

 

「木の繊維に垂直な形で、あんなに傷をつけられるんだから、人に向けたらゴリゴリに致命傷だよ?魔物にも多少は効くよ。」

「……そうか。もうそんな威力になってるのか。」

「そう!ほんとに、おかしい位の成長速度だよ!」

「……ちなみに、トワの風魔術だと?」

「私?私はねぇ……」


 トワはひょいっと、左手の人差し指を横に振った。

 その瞬間、横幅が5m程ある風の刃が生まれ、目の前の木を数十本なぎ倒した。


「………………」

「こんな感じ?」

「……強すぎじゃね?」


 めちゃくちゃ軽くやってあれかよ。

 本気で詠唱とかしたら、一体どんな威力に……


「えっへん!」

「これは、えっへんして良い威力だ……」

「よくないわ。森を早く直しなさい。」

「えぇーーー……」

「早くしなさい。」

「……なんで…………」


 トワは何か言いながら、魔法で木を直していく。倒れた木が、流れるように元に戻る。

 まるで森の時が戻っていくようで、つい見入ってしまう。

 

「……やっぱり、魔法って凄いんだな。」

「当たり前でしょ?魔術も魔法も、すごいものに変わりないからね!!!」


 トワは一瞬で森を元通りにした後、こちらにキリッとした視線を送りながら、そう言った。

 綺麗な紫色の瞳が、俺の脳天をぶち抜く。


「…………」

「……何?もしかして、私の魔法に感動しちゃった?」

「……いや、トワってこんなに綺麗な顔してたのかって。」

「……!?!?!?」


 トワはキリッとした表情を一転させて、超あたふたした表情になった。

 あまりにも急激な変化に、思わず笑いが込み上げてくる。


「ぶっふw………………www」

「ちょっと!何笑ってんの!?」

「本当に、あなた達は何をしているの?」

「ごめんイエスタ……w」


 まずい……ツボにハマった……www

 そんな急に、表情って変わるものなのか。

 超カッコつけた表情からそうなったのもあって、ギャップがとんでもない。


「……はぁ…………」


 イエスタがため息をついて、額に手を移した。

 冷静なイエスタを見ていると、正気に戻れる。


「…………ふう。」

「急にそうやって落ち着くの何?おかしくない!?」

「いや、超面白おかしかったけどな。」

「おかしいの意味がちょっと違うでしょ!?」


 トワは、まだ顔を真っ赤にしている。


「……告白されたのかと思った。」

「それは違くね!?」

「だって!綺麗な顔とか言われたら、勘違いしちゃうでしょ!?」

「……えっと、トワって何歳?」

「まだぴちぴちの2000歳よ!!!」

「…………」


 ……そうだよな。 

 イエスタの方を見ると、何か言いたげな表情をしている。

 そのイエスタも、こちらにゆっくりと視線を向けてきたので、俺は小さく頷いた。


「……えっ?……何?」

「なんでもない。」

「何も無いわよ。」

「……そう?ならいいけど。じゃあ、さっさと魔術の続きやろうよ!」

「もう疲れた……」


 魔力回路を治してもらったとはいえ、大分魔力を使ってしまった。


「今日はキツいかもしれん。」

「そんな事言ってたら、いつまでも魔術は半人前のままよ!」

「……まあ、今日はこの位でいいんじゃない?そんなに急いで、また倒れられたら、困るのはこっちだもの。」

「それに、エスマリアが何て言うか……。」

「たしかに。やめようか!!!」


 トワは手のひらを大回転させて、俺に休むよう言ってきた。

 そのままぐいぐいと背中を押されて、家の中に押し込まれた。


「……とは言え、今日ここから何をすれば?」


 スマホも無いし、暇つぶしに読書……?


「……イエスタ、俺に貸せるような本ある?」

「無いわね。」

「即答かよ……」

「でも、そんな本がある場所なら知ってるわ。」

「マジで!?」

「ええ、今から行く?」

「行きたい!」


 この世界の知識を知りたい。

 まだまともにこの世界がどんな世界か、理解していないからな。

 冒険者の役職とかランクとかについてもよく分からないし、イシスの他にどんな神がいるのかとか、転生者特有の能力とかも……あるかもしれないじゃん?


「じゃあ、行きましょう。これを着て。」


 トワから渡されたのは、くたびれたローブ?


「……これは?」

「顔を隠すためのローブよ。結構大きいから、便利なの。」

「へぇ……なんか、めっちゃ犯罪者っぽいな。」

「犯罪者だもの。当たり前でしょう?」

「そっか……俺は犯罪者じゃないのに……。」

「なんか、さくたんはもう犯罪してそうだけどね?」

「してないって!」


 ……多分。


「……ねえ、関所を通らずに、街から出たりした?」

「……あ、イグニスについて行った時に。」

「イグニス……ね。分かったわ。トワ、エスマリアに伝えておいて。」

「了解。」

「イグニス、終わったな。」


 ……あれ?俺も終わってね?同じ罪犯してるし。


「おめでとう佐久間。あなたも立派な犯罪者ね。ちなみに、城門を通らずに街から出ると、懲役1年はほぼ確定ね。」

「やばい本格的に終わった……」


 不正入国者になって、一文無しになった時の次に終わった。


「……でも、私達が作った戸籍にはまだ記録されてないから、()()()()()()大丈夫よ。」

「そうだよな。バレなければ……」


 ……あ、これ犯罪者の思考だ。

 うわあああああああああああ、俺はいつの間に犯罪者になってしまったんだああああああああああ!!!


「……早く出かけよう。」

「そうね。」


 イエスタがめちゃくちゃニコニコしながらそう言ってくる。かわいい。

 ……けど、性格の悪さがこれ以上無いほどに伝わってくる。今の俺に向ける顔じゃねえだろ。

 こいつ髪は真っ白なくせに、腹の中は真っ黒だな。



 

 俺はそんなイエスタについて行く形で、絶望組の隠れ家を後にした。

誤字脱字等はご指摘ください。


今回はちょっと短めの、佐久間が決心をして、風の刃を使えるようになる話でした。

イグニスの登場が極端に少ない気がしてるので、近いうちにイグニスがメインの話を出すかもしれません。あくまで可能性ですが。

第八話、できるだけ早めに仕上げたいと思います。ぜひお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ