第二十二話 エスマリアが帰ってきた。
「……前からちょっと思ってたけど、俺って結構特殊?」
「結構どころか、前例が無いほど特殊だな。」
じゃあ、イシスだけが転生者をつくる力を持ってる……というのは、嘘だったのか?
確かイシスは、『死者を異世界に送る力』と言っていたよな。
「……そっか!!!」
「なっ、なんだ急に!びっくりさせるな……」
「イシスの力は、死者を異世界に送る力なんだよ。そう言ってたし。」
「じゃあ……」
「イシスは、死んだ人を異世界で生き返らせて、その人の見た目のまま生活させるんだ。」
「なるほどな。異世界に転移する……ということになるのか。」
「そう。多分だけど、意識だけを移せる、転生させる神様が別にいるんだと思う。」
異世界転移と異世界転生……似ているようで全くの別物だ。
俺がしたのは転移だけど、脳みそでは異世界転生したぜ!と思ってたし、勘違いしてた。
「転生者で、転生させてくれた神様について語ってる人とか……いないか?」
「さあな。そもそも、転生者には数人しか会ったことがない。」
「そっか……」
「コーヒーが淹れ終わったぞ。」
「サンキュー。」
まあ、そんなもんだよな。転生者なんて、元の世界では1人も見たことないし。
数人会った事があるってだけでも、すごいんだろうな。
「ただいまー!」
「あぁ、おかえり。」
トワが勢いよく扉を開けて、家に帰ってきた。
その瞬間、隣のヘルシアは立ち上がり、転移魔法を発動させる……と、思っていたんだが。
「…………!?」
「どうした?転移魔法で、逃げるんじゃなかったのか?」
「転移魔法が……発動しない!?」
「やっぱり、来ると思ってたよ。転移魔法で入れても、出ることができない結界……張っておいて良かった!」
「…………」
ヘルシア、終わったな。
「あ、そうだ。イエスタのコーヒー、勝手に飲んでるぞ。」
「……ありがとう。見ればわかるわ。」
「そりゃそうか。」
ヘルシアは俺をこいつ……と睨みつけた後、淹れたてのコーヒーをぐいっと飲み干した。
「……もったいないからな。」
「そう。」
ぶっきらぼうな反応をするイエスタ。
俺はどちらとも目が合わないように、静かにコーヒーをすする。
「……佐久間が飲むのは良いのか?」
「当たり前でしょ。メンバーなんだから。」
「えっ?じゃあ、私も飲んでいいの!?」
「トワは1日で全部飲み干すから、だめよ。」
「そんなぁ……」
トワはしょぼんとあからさまに落ち込んだ後、何事も無かったかのように顔を上げて、ヘルシアの方を見た。
「……で、どうしよっか。」
「そうね……拷問するだけじゃつまらないし、いくつか選択肢を作るわ。」
「選択肢……?」
「絶望組式拷問を受けるか、王城に帰るか……」
「ん……ちょっと待ってくれよ?」
「どうしたの?」
さっきまで普通にヘルシアと話してたけど……
「大司教に許されてるなら、ヘルシアって王城に戻れたりしない?」
「それは……大司教に大きな負担を強いることになってしまうし……」
「どうにかするしか無い。大司教に頑張って貰って、普通に王城に戻れれば、全部解決だろ?」
「そうなると、表面上は絶望組と希望組が両方王国側につく……ってことになる?」
「え?じゃあ闘技場の話は白紙?」
「いや、それはやめておいた方が良いわ。」
イエスタは淡々と続ける。
「もし大司教が国王の説得に失敗した場合……ヘルシアもろとも処分されるはずよ。」
「それは……間違いない。私は大司教にそんな――」
「そうじゃないわ。大司教は、あなたのことを黙っていてくれるのでしょう?」
「国王に言ったところで、大司教側に大してメリット無いし、言わないんじゃないの?」
「そうなったら、ありがたいけどな……」
「結局は、国王側にアプローチするために、大司教やヘルシアは使えないの。闘技場をトワにやって貰って、そこから絶望組の話に繋げてもらうしかないわ。」
あー、ちょっとややこしいな!!!
つまり、ヘルシアは大司教と話をしたから、大司教は色々知ってる。
大司教の力でヘルシアが王城に戻れればいいけど、リスクが高い。(でもやらないと、闘技場のシーズンの関係で、1ヶ月ヘルシアを匿うことになる)
でも結局トワに闘技場で頑張ってもらって、国王に気に入ってもらう必要はあって、そこから絶望組の話に繋げていく……
必要あるか?俺らはエスマリアの居場所を教えて貰うために、色々やってたんだよな。
イエスタ達が帰ってきたってことは……
「……そう言えばエスマリアって、もう帰ってきてるんだろ?」
「今は少し遠くで、ギルニアと一緒にいるわ。足をやってて……ギルニアが運んであげているの。」
「私の魔法でポーンと運んでも良かったんだけどさ。ギルニアが運ぶって言うから……」
「エスマリアが帰ってくるなら、俺らの目的ほぼ達成じゃね?国王側につく意味ってあるのか?」
「王国を内部から崩壊させられるわ。」
「!?!?!?」
急にバイオレンスだなおい!
王国を内部崩壊って……そんなこと言ってたか?やる意味あるのかそれ?
「大司教の言っていた事はやはり……」
「大司教?何て言ってたんだ?」
「絶望組は、国王を暗殺するつもりだろうと。」
「暗殺の予定は無いわ。」
「そ、そうか……」
「……なあ、王国を内部崩壊させて、一体どうするつもりなんだ?」
王国に敵意があるのか……?まあ税金むしり取られてるし、散々狙われてるし……
「国王は、私たちを殺す気で騎士集めてたからさぁ、こっちも……ね?」
そっか。トワはやってきた騎士をボコボコにシバいてるから、どんな奴らが来てるのか知ってるんだな。
「殺しに来てるのか……」
「そうそう!見た目はかっこいい鎧を着てるお堅い兵士だけど、中身は結構野蛮な連中だったよ?」
「まあ、私たち相手に王国のちゃんとした騎士を使うのは、コスパが悪いんでしょうね。」
「国王のことだ。適当に冒険者か何かを雇ったんだろう。」
「まあ、全員消し炭にしたけどね!」
いや怖いって。にこやかな表情の裏で、やっていることが……やばいとかいう次元じゃない。
「鎧とか、装備はお金にも素材にもなるし、こちらとしてはありがたい限りね。」
「エスマリアたんの魔道具の素材に使われてたりね!」
「……絶望組を攻撃していたつもりが、まさか資源として利用されていたとはな。」
「残念だったわね。」
一瞬だけ、誰も話さない時間が生まれた。
静寂に包まれるとはこういうことかと思えるほど、何も聞こえなかった。
「戻ったぞ。」
「……ただいまです」
「エスマリア!」
「おかえり、エスマリア。」
「エスマリアたん!」
トワは、ギルニアにおんぶされているエスマリアにダッシュして飛びついた。
「あぶねえな!!!落としたらどうすんだ……」
「怪我してるじゃん!」
トワは、エスマリアに回復魔法をかけた。
超久しぶりに更新。
お待たせしました!受験、まだ終わってないけどね!




