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転生したら不正入国者だった。終わった。  作者: 旅人凛人
一章

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15/23

第十四話 防御魔法はアメーバだった。

「……なんで口を割らないかな。」

「仲間を売るなんて、出来ないからです……!」

「犯罪者の癖に、生意気な野郎だ!」


 バンッ――バンッ――


「……………………ペッ」

「お前が吐けば、潰せるんだって。早く言えよ。」

「……言えって言われたら、言わないのが、お決まりです。それに、この程度の拷問、拷問とも呼べません。私が、本当の拷問を教えてあげましょうか?」

「……どうやら、ここで死にたいようだな!!!」


バンッ――バンッ――バンッ―――











「……エスマリアって、まだ帰ってこないのか?」

「エスマリアが外出する時は、いつも魔道具を買い漁るのが目的だから、戻らない時は戻らないわよ。」

「……なんか、引っかかるんだよな。」

「どこが?」


 希望組が王国側だったなら、まず真っ先に、王国側に絶望組のアジトである、この家の場所を教えるはず。

 なら、挨拶なんてせずに、奇襲を仕掛けてくるはずだ。王国は、わざわざこの森を大人数で捜索したりしてたのに、その情報を求めない訳が無い。


「……今は分からん。ただ、矛盾みたいなものがあったから、気になってな。」

「矛盾……ね。ギルニアなら、そういう違和感に気付けるかな?」

「そうだ、トワ。忘れないうちに、ギルニアを呼び戻しておいて。」

「おっけー。通話魔法やるね。」


 トワはそう言うと、2階への階段を上った。


「……私達も、しないといけない話をしましょうか。」

「しないといけない話……?」

「ええ。もうゆっくり本を読んでいる暇は無い。組織については、今は希望組と王国の存在だけ知っていればいい。」

「そういえば、俺この王国の名前知らないんだけど。」


 近くの都市がタスメニスって名前なのは覚えてるけど、王国第二の都市としか書いてなかったからな。


「この国の名前は、ギフトス王国よ。」

「ギフトス王国……」

「組織の説明なんかより、もっと大切なことがあるの。これから重要になってくる話よ。」


 重要な話か……。俺は静かにイエスタの顔を見て、 話を聞く姿勢になった。


「転生者の能力について、あなたは何も知らないでしょう?」

「転生者の能力……?そんなのあるのかよ。」

「普通はあるのよ。()()()の、あなたが例外なだけ。」


 マジかよ。能力持ちのやつだけズルいぞ。俺にも、適当でいいから能力をくれ。


「で、その能力にも、3つ種類があるの。動詞、道具、その他能力の3つね。」

「動詞……?道具は聖剣とか、死んでも生き返る指輪とかだろうけど、動詞って何だ?」

「その名の通り、動詞を操る能力よ。例えば『殺す』の能力持ちなら、相手を殺せる。」

「最強だろそれ。」

「勿論、使用条件があるわ。『殺す』なら、相手と5秒目を合わせないといけないとか、半径0.5メートル以内とか。」


 なーるほどね!その条件を、動詞の強さごとに重くしたり軽くしたりして、バランスを保っているのか。


「転生者は、この動詞の能力持ちがほとんどよ。転生者の九割以上は、動詞の能力持ち。道具やその他能力は、本当に珍しいわね。」

「……なら『覗く』とか、『探す』とかで、ここを見つけられるかもしれないのか。」

「そうね。王国側に転生者が居ないなんて事はありえないし、少なくとも数人は、転生者を味方につけているはずよ。」


 動詞能力か……中々にマイナーな能力だな。

 今まで読んできた作品の中に、動詞能力系が無いわけではない……が、条件でバランスをとるタイプだと、事前に対策を考えるのがきつい。


「動詞能力持ちが複数人居ると、動詞を組み合わせる事が出来るようになるの。『刺し殺す』とか、『捻り潰す』とかね。」

「……なるほど。相手に転生者が複数人居るなら、動詞の相性が良いペアも、警戒しないといけないのか。」


 連れ去るとか、盗み聞くとかの対策も必要って事か……。

 あれ?きつくね?


「『盗み聞く』とか、そもそも対策出来なくね?」

「あくまで知識を入れておいて欲しいの。いざ転生者との戦闘になった時、なんだこれってならないために。」

「……そっか。」


 確かに、戦っている相手の能力が、『動詞』って分かるのは大きい。


「まあ、道具持ちは見れば分かるけど、その他能力持ちは対策のしようが無いわ。」

「その他能力って、動詞以外の能力ってことか?」

「そうよ。」


 異世界転生系でよく見るようなチート能力とかも、軒並みその他能力に分類されるのか。


「でも、その他能力が全部強いって訳でもないの。ピンからキリまであるわ。」

「まあその他能力って、超アバウトだしな。」

「ええ。強い能力は、この世界を支配できるほど強かったりするし、逆に弱い能力は、今の佐久間より雑魚よ。」

「ほんっとに、ピンからキリまであるんだな。」


 今の俺より雑魚って、相当のクソザコだぞ?

 借りパクしてる雑魚Tシャツ(地味に字体がかっこいい)を、あげたい。

 ちなみに今の俺は、雑魚Tシャツの上からジャージを羽織っている。最高にダサい。


「……ギルニアに連絡したよ!ヤバそうなら来るって。」

「ヤバそうって……今がまさにヤバそうな時なのでは?」

「ギルニアは、多分今よりヤバい状況を、何度も経験してるのよ。」

「ギルニアって、一体何者なんだよ……?」


 絶望組メンバーで、唯一会ったことがないし、顔も何も知らない。通話魔法越しに声を聞いたことがあるだけだ。


「ギルニアが何者か……と言われても、イカれた人間としか言えないかも。魔族から見ても、ギルニアは頭おかしいくらい強いから。」

「トワから見ても強いって、マジで最強じゃねえか。」

「ま、私が本気を出したら、多分勝てるけどね!」

「トワといい勝負ができる人間なんて、この世界に数人レベルだから、ギルニアは人類最強レベルね。」


 人類最強レベル……だと?

 異世界系を読み漁ってきた俺でも、ギルニアの戦闘スタイルが1ミリも想像出来ない。


「ギルニアって、どういう戦い方をするんだ?」

「色々……としか。針みたいに小さな武器から、大剣、魔術まで器用に扱えるから、相手によって使い分ける感じね。」

「十徳ナイフギルニアか……。」

「えっ、十徳ナイフって何?」

「転生前の世界の物でしょ。」

「十徳ナイフってのは……」


 ……あれ、十徳ナイフって、どう説明すればいいんだ?


「……えっと、ナイフにもなれば栓抜きにもなれる、万能道具みたいなものだ。」

「なるほどね……カルナカルなら作れるかしら?」

「やってみないと分からんけど、魔道具とか作れるなら、出来るんじゃないか?」


 それほど複雑なものでも無い……はずだからな。


「なるほど……色々片付いたら、頼むことにするわ。」

「色々片付いたら……かぁ。ホントに片付けられるの?これ。」

「俺に聞かれてもな。俺は間に立ってるだけだし。」

「1番の問題は、王国側の動きが全く読めない点ね。いつ、どう攻撃を仕掛けてくるのか。そもそも攻撃を仕掛けてくるのかすら、分からない。」


 そうなんだよな……。王国側が大量の兵を引き連れて凸ってくるかもしれないし、最強レベルの魔族を仲間にしてたりするかもしれない。


「……だから佐久間。あなたにも、まともな戦闘が出来るようになって貰わないと困るわ。」

「まともな戦闘……俺に出来るかな。」

「今日分かった。佐久間の強みは、常人離れした反射速度よ。紫の攻撃を避けるなんて、本来不可能に近いもの。」


 確かに、反射速度には自信がある。反射速度を測る系のゲームを一回やったことがあるが、ツールを使ってると判定されて、BANされてしまった。


「後は、動体視力にも自信あるぜ。」

「ステータスを見てるから、知ってるわ。」

「あっ、そっか。」

「じゃあ、視力強化あたりのバフは教えた方が良さそう?」

「防御魔法と身体強化は必須ね。転移魔法にも興味があるようだし、やらせてみたら?」

「よし!せっかく外にいることだし、特訓開始!風魔術は一旦ストップ!」


 回転する風の弾と、風の刃の同時発射は、一旦保留か。


「防御魔法からになるけど、複数枚、違う場所に出すのは結構難しいんだよね。」

「だよなぁ……」


 異世界系の小説やアニメでは、よく敵の攻撃に合わせて、色々な所に小さな防御魔法を出している。


「思考力強化とか出来れば使えるけど、脳ミソの神経細胞だけ強化するとか、今のさくたんにはムリゲーでしょ?」

「ムリゲーだな。……ちなみに思考力強化は、神経細胞以外も強化すると、どうなるんだ?」

「脳内の血流が一気に増えて、脳内で出血したり、脳が膨張して、頭蓋骨と接触したりするわ。」

「………………マジか。」


 思考力強化……恐ろしや。


「よく拷問に使われるよねー。キツイんだよなーあれ。」

「想像を絶する程の痛みだ……私でもかなりキツかったし、佐久間がやられたら、多分死んでしまうな!」

「拷問の話なんていいから、さっさと防御魔法を教えなさい。」

「そんなすぐに出来るようにならないって!防御魔法なんて、イメージしにくいし。」

「イメージ?」

「魔術は、体内の魔力を様々な物事に変換する術だから、自分のイメージが大切なんだよ。うっすい防御魔法の板なんて、そうそうイメージできないでしょ?」


 トワが、パッと3枚ほど防御魔法を展開しながら言う。縦に長い六角形の、あるあるな防御魔法だな。

 ……防御魔法のうっすい板のイメージなら、俺は誰よりも思い浮かぶ自信があるぞ。それに、こんなにテンプレ的な防御魔法なら尚更(なおさら)な!


 ちょっと水色っぽくて……緑が1ミリくらい入った色の、超固くて、縦に長い六角形の板を……

 右手の前に作り出す!!!


「おりゃっ!!!!!」


 俺の右手の前に、縦に長い六角形の板が浮いている。


「マジか!防御魔法、私まだ使えないんだけどな!羨ましいぞ!!!」

「………………」


 イエスタは、無言で俺の防御魔法にデコピンした。

 俺の防御魔法は、音もたてずに粉々に砕けて、消えた。デコピンの衝撃をほぼ吸収していないせいで、俺の手のひらにデコピンが当たる。


「痛った!」

「こんなんじゃ、防御魔法とは言えないわね。見た目に凝りすぎなのよ。強度に注力しなさい。」

「強度……」


 確かに、見た目に凝りすぎたな。薄い板であればいいから、とりあえずくそ固い板を……


「ふおっ!!!!」

「その掛け声は何なの?」

「よっしゃ出てきた!」


 アメーバみたいな形だし、石鹸の泡を広げた時みたいな、パチモンな虹色をしているけど、硬そうだ。

 

 イエスタは、またも無言でデコピンをする。俺の防御魔法は、コンッと硬そうな音を鳴らす。


「よし!」


 デコピンを耐えて、喜びの声を上げた瞬間、イエスタから魔力の気配が漂ってくる。

 身体強化した指でやるつもりか!?おい、それ貫通したら絶対痛いやつじゃねえか。


「頼む……耐えてくれ……!」


 バァン!と、指からはなるはずのない爆発音が、辺りに響き渡った。

 目をつぶっていた俺がおそるおそる目を開くと、イエスタが人差し指がえぐれて、第一関節から先がぐちゃぐちゃになっている。俺の防御魔法は無事だ。


「おい!?それ大丈夫なのか!?」

「まあ、合格ね。これを自由な場所に出せるようにしなさい。」

「イエスタ、もっと躊躇(ちゅうちょ)とかしてよ!エスマリアたん居ないんだからさぁ!」


 トワが指に回復魔法をかける。みるみるうちに指が再生していくが、見た目が中々にグロい。


「指じゃなくて、氷で試せば良かったのではないか……?」

「珍しく、俺もイグニスの意見に賛同するわ。」

「珍しく、は余計じゃないのか!?」


 イグニスの言う通り、別に指を犠牲にしなくても、防御魔法の強度確認くらい出来たはずだ。


「氷で強くぶつけて、破片が佐久間に当たったら危ないでしょう?」

「思ってた百億倍優しかった。」

「なっ……何よ?何がおかしいの?」 

「別に、何もおかしくは無い。」


 イエスタの白い肌と耳が、ほんの少しだけ赤くなった。

 イエスタはコホンと可愛く咳払いしてから、何事も無かったかのように、身体強化の説明に移った。

誤字、脱字等ありましたら、指摘お願いします!


エスマリアが大変なことになってそうだねぇ…

佐久間はアメーバみてえな防御魔法を出せるようになったり、着実に成長してるし、佐久間が戦闘する日も近いのかも…?

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